やはり俺が315プロにいるのはまちがっている。 作:Hoffnung
今日も今日とて、サンサンと輝く太陽の下のもと俺、比企谷八幡は_____
「よしっ!ゴールっ!!」
「あぁ!ねぇ、今の出てたでしょ!?」
「出てないな、これで3対1だぞ、がんばれ」
「くそっー!!」
……都内の某病院の中庭にてサッカーの審判をしていた。
いや、マジで俺何でこんな事になってんだろ?
ゴールを決められて苦し紛れに反則だと抗議してくる子供に対して公平な審判を下す。
もっと駄々をこねるかと一瞬思ったが、試合の回転率を優先したのかさっさと次の展開に行こうするべく、文句を言いながらもボールを再び追いかけ始めた。
「おーい!飲み物買って来たよー!」
「ついでにお菓子も買って来たから,
欲しい子は順番に並んでね」
「「「わぁーー!!」」」
と、やってる内に俺に
双子が発した魅力的なワード達にさっきまで夢中になってたサッカーボールをほっぽり出して2人に群がる。
一通り配り終わり、子供達は飲み物とお菓子を片手に休憩タイムとなったのか散らばって思い思いにお喋りの花を咲かし始めた。
その様子を確認すると、2人は俺に近づき………
「はい!お疲れ様!助かったぜ♪」
快活な笑顔で俺にもスポーツドリンクを差し入れた。
「へー!八幡ってアイドルやってるんだ!」
「アイドルって言ってもまだ卵ですけどね」
「でもさ、もうCDデビューも決まってるんでしょ?スゲーじゃん!」
先程俺に快活な笑顔を俺に向けた蒼井兄こと、
あの最悪とも言えるファーストコンタクトからかなりの時間が経ったにも関わらず、俺は未だに家に帰らずにスポドリ片手に都内の某病院の中庭にてお喋りの花を咲かせている。
帰りてえ
だが、そんな心中とは裏腹に、会話は続く。
「…正直意外だったな、アイドルなんて予想だにして無かったよ」
「多分、俺がそっちと同じ立場でも予想出来てないと思うので全然大丈夫っす」
多分、つーか絶対だろうけどな。
「ははは、気遣いありがとう、アイドル活動、応援するね」
「おう、あ、じゃなくて、ありがとうございます…」
日本語下手かよ、いつもの調子は何処行った現代文学年3位、唯の社交辞令だろうがよ。
蒼井弟こと、
ほらそこ、自分で言ってて悲しくないのかなんて思わない、そんなの俺が1番わかってるよ。
…はぁ、何故この2人、もとい双子と話している状況になったかと説明すると少し時間を遡る事になる、まぁ出来るだけ短く纏めるさ。
どうやら、子供達がやっていた
消化不良となった子供達の為に、差し入れを買おうと思ったこの双子こと蒼井兄弟は俺に少しの間だけ面倒を見て欲しいというお願いを受けて今の今まで審判役を務めていたのだ。
…拒否しても良かったんだが、邪魔しちまったのは事実だしな。
んでもって、先程休憩タイムとなっていた子供達の元に丁度良いタイミングで親御さん達が来て、一通り自分たちの面倒見てくれていた、この双子、蒼井悠介と蒼井享介にお礼を、言って帰って行ってしまったのだ。
それで、手持ちぶたさになったこの双子に話しかけられ、今に至るって訳だ。
え?これで長い?これくらいで長いとか言ってたら一生文庫本読めねぇぞ。
・子供達帰る
・双子暇になる
・流れで双子、俺に話しかける
・中庭でお喋りタイム←今ここ
これなら大丈夫だろ、まぁ、俺もこんなにこの病院にいる予定じゃ無かったんだけどな、本来なら今頃電車の中で自宅目指して体を揺らしてた筈だ。
帰りてえ
「そんなに硬い口調とか良いって!気楽に喋ってよ!」
「いや、そういう訳にも…」
んな、ぼっちには厳しいハードルを…
「んー…八幡今いくつ?」
「…今年で18です」
「じゃあ、
「うん、俺も享介でいいよ、俺達相手にそんな硬くならなくていいからさ」
「あ、はい、じゃなくて、おう」
こ、コミュ力高ぇ…
出会って1時間も無い人間にそんなにフレンドリーになれるか?
え?これくらい普通?ナニソレハチマンシラナイ。
だが、この提案は俺にとって非常に魅力的だ。
俺は基本的に人名を呼ぶ時は名字呼びだが、この蒼井兄弟は双子という性質上どうしても名字呼びじゃややこしくなる。
蒼井呼びしてたらどっちも反応しちまうからどうしたもんかとこの2人と話してる時に、実はこっそり考えてはいたんだよな。
蒼井兄、蒼井弟なんて文末につけて呼ぶことも考えたが、余りにも回りくどいというか面倒臭い。
「あおいあに」は5文字だからまだしも、「あおいおとうと」になると怒涛の7文字に突入だ、話してる最中にゲシュタルト崩壊起こしそう。
ゆうすけ きょうすけ
うん、字数も普通だし呼びやすい、堅苦しい敬語も無しなんて有難い提案も貰ったし、ここは受け入れておこう。
「わかった、ま、よろしくな悠介、享介」
「おう!(うん)」
そう、この瓜二つの双子は俺に返事を返した。
「2人はいつもこんな事してるのか?」
「あぁ、サッカーのこと?うん、前にせがまれてね」
「オレも病院生活に退屈してたし、それに乗ったって訳♪」
「…せがまれた?一般人だろうに何でサッカーを見てくれなんてピンポイントなお願いしたんだか」
そんな俺の言葉に2人は少し驚いた顔をして、顔を見合わせる。
…え?なんか不味かったか?
「…ひょっとして八幡ってオレ達のこと知らない?」
「知らん」
そう言葉を返すとマジかーっと悠介が空を仰ぐ。
…察した、これ俺が知らないだけで有名人なパターンだろ。
ユニットメンバーの2人と同じ感じがするぞこれ。
「まぁ悠介、俺たちのことを知らないって事はまだまだ知名度が足りないってことじゃない?」
「…だよな、よーし!早く足直してまた2人で頑張ろうぜ!」
「うん!とーぜん!」
…家に帰ったら2人の名前をネット検索にかけてみるか…
そんな事をぼんやり、頭の中で考えた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
バラエティ番組という物がある。
テレビを付けたら高確率で、芸人を始めとする様々な著名人達が出演して視聴者に笑いを提供する事を目的として作られてるアレだ。
今、俺はそんなバラエティ番組で______
『おっと!これは凄い!みるみる内にゲージが溜まっていくぞー!』
「ほらほらもっと走れ八幡!時間無くなっちまうぞ!!」
「わかって、ますよ!そんな事…!」
……ランニングマシンで神波さんと一緒に走っていた。
マシンにある手すりを握って神波さんと軽口を流しながらかなりのペースで並走する。
つか、これ速くねぇ?どう考えても全力疾走してなきゃ転ぶレベルの速さなんですけども。
「うーん…エンカ、エンカ……ポイントカードのことかい?」
ブーッ!!
「お、思ってたより難しいね…」
不正解のベルが鳴り響く。
それと同時に会場から笑い声が響いた。
「後もうちょい…!」
『どうやらゲージが溜まったようです!では、ここでヒントチャンス!どちらを指名しますか?しかし、2度続けて同じ人に指名は出来ません!』
「すまない比企谷君!お願いするよ!」
真丈さんの指名を受けた俺は走ったばかりで火照っている体を奮い立たせてヒントを出す。
エンカ、この意味をそのまま教えずに伝えるには……
「とある和製英語を省略した言葉です、エンカ、から始まる英単語から連想すれば意味は合うと思います」
「あぁ、英単語なのかい?…エンカ、encount!なるほど、誰かと会うって意味だね?これなら『○○(人名)とエンカした』という例文でも不自然では無い!」
『正解です!』
ピンポーン!
「よしっ」
「よっしゃーーーっ!!!」
今度は不正解では無く、正解のブザーが響き渡り、それに合わせて会場からも拍手が鳴り響いた。
真丈さんが安堵した様に声を出すのと、神波さんが喜びの声を上げるのはほぼ同じだった、神波さんうるせえ。
ま、それは置いといて、だ。
直接的に答えを教えるヒントは出しちゃいけないから伝わるか不安だったが心配は杞憂に終わったようだ。
…少し長くなってしまったが、今現在俺の所属しているユニット、Fantastic Dreamersはこんな感じの体育会系クイズ番組に出演している。
いや、クイズなんてインテリな要素あるんだから座ってやらせろよ。
…なんて愚痴があるのは心の中だけの秘密だ。
ここで一応ルールを纏めておこうと思う。
①ランダムで解答者と指令者、もとい走者に組み分けられる。
②クイズのジャンルは数問毎にランダムで切り替わり、解答者は制限時間内に答えを出さなければならない。
③わからない場合は走者が走ることによってゲージが溜まり、ゲージが溜まればヒントチャンス、解答者が走者を指名して問題の答えのヒントを得ることが出来る。
④ただし、指名を受けた走者は直接的な答えを教えるヒントを出してはならない、更に解答者はヒントを出す人を二回続けて指名する事は出来ない。
⑤以上の条件を守りつつ、制限時間内にもっもと多く解答数が多いチームが勝ち。
というルールの番組だ。
クイズをする事で、ある程度の思考能力、走っている姿から運動能力、そして、チームで行うシステムの為、チームワークの高さも見れるとあって結構長年続いている人気番組で、俺達みたいな新人アイドルにとっての登竜門的な番組らしい。
話を聞くところによると、以前この番組に出演したS.E.Mの撮れ高が非常に良かったらしく、それからの伝でプロデューサーが再び営業を掛けて俺達にこの仕事を持ってきてくれたのだ。
マジであのプロデューサー、有能過ぎてびっくりする。
仕事を取って来てあるとは聞いてはいたが一か月以上も仕事があるようにスケジュールを調整してるとまでとは流石に思って無かった。
本当に何もんだよプロデューサー…
そんなこんなでこの番組の収録に参加している訳だが、このルールにしたがって決められた解答者は真丈さんで、必然的に残りの俺、神波さんが走者になったんだが、まぁ予想以上に凄かった。
何が凄いかっていえば勿論真丈さんのことだ、出題された問題の種類は多岐にわたり英単語、漢字といった基本的な事から法学、経済学と踏み込んだ学問、更には日常にも応用出来る雑学、という様にバラエティに富んだ物だが出題されて全て5秒以内には解答し、尚且つ全問正解という快挙を成し遂げたからだ。
解答者に決まったときは「まかせたまえ」なんていつもの調子で次々と問題を正解していく様はおもわず俺も唸ったものだ、正直凄すぎて俺と神波さんの出番が無かったのは気にしない、楽に勝てるにこしたことは無い。
そんな真丈さんの様子にスタジオにいる人達も驚いていたが、やはりというべきかとうとう解答につまるジャンルの問題が出てきてしまったそれが___
『「ワンチャン」という意味は俗に、どういう意味合いで使われているでしょうか? 例 (ワンチャン今日の宿題無いかもね)』
「わ、ワンチャン…?」
「神波さーん、走りますよーっと」
「うい」
若者言葉、それがさっきまで記述していた真丈さんの快進撃を止めた問題のジャンルだった。
俺や神波さんからすれば簡単な問題だが、日本にいた期間が少なく、ユニット中でも若干の世代のズレからなのかさっぱりわからない様でこうやってランニングマシーンを走り出すのも3回目だ。
ええ…?なんて困惑している真丈さんの顔を見ながらひたすら無心で足を動かす…やっぱこのマシン早くねぇ?設定ミスだろ。
そんな事をぼんやり考えていると真丈さんが困惑した表情を正解へと確信した確かな自信を持った表情に変わる。
お、これはさっきまでの…しめしめ、正解すればもう走らなくて済む…
あの聡明な真丈さんのことだ、若者言葉なんて基本的にからっぽの言語のしくみを理解したんだろう、表情からも自信がありありと浮かんでいる。
ヒントゲージを貯めるまでも無い、そう言わんばかりの表情から真丈さんは満を辞して言い放った!
「犬!!!」
ブーッ!!
『ハズレー!』
「ええっ!?」
爆笑
そう呼ぶにふさわしい今日1番の笑い声がスタジオ中に響いた。
確かに、確かに俗に言われてるけどさ……
「ケハハハハハッ!ケハハハハハハッ!!」
うるせえ。
横で大声で爆笑している神波さんの声をシャットアウトしながら俺は更に無心で足を動かした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ケハハハハハッ!!いやぁ傑作!傑作!!」
「もういいじゃないか、そろそろ勘弁してくれたまえ…」
「いや、くっ、ククク、アレは面白過ぎるだろ…」
「神波さん、思い出し笑いとか辞めといた方がいいっすよ」
「うん、そうだね、もっと公共の場の振る舞いという物をだね…」
「うへぇ、いきなり理論で責めて来やがった」
帰り道、収録が終わった俺たちは駅までの道を徒歩で歩いていた。
思い出し笑いもそうだが単純にしつこい、その話だすの局からの道を含めたらもう4回目だぞ。
1回目ぐらいは乗ったが、いつまでも同じ話で盛り上がれる程俺の脳は単純じゃ無い。
ちぇー、なんて言葉と共に神波さんはようやく口を閉じる、やれやれ、やっと終わったか。
「比企谷君、どうだった?今回の収録」
「え?俺ですか?…そうですね…」
落ち着くも束の間で真丈さんから新たに会話の火種を振られる、ただの世間話ぐらいなら適当にはぐらかしても良かったが…収録の感想ねぇ…
「なんつーか、ああいうクイズ番組ってこう、めちゃくちゃ段取りが決められててほぼヤラセみたいなもんだと思ってたので結構自由に動いて良いって言われたのは印象に残ってます」
「ああ、確かにそういう見方もあるか…」
「何だよ八幡、そんなもん気にしてたのか」
そんなもんと言われても俺にとっては気になってた箇所なんだからしょうがない。
「ヤラセ、ねぇ…実際ああいうのやって何が良いんだ?」
「まぁ、テレビ番組って言うのは"TVショー"だからね、ショーの為なら何だってするさ、例えばとあるレストランを取材する際にテレビ用に制服やら食器まで番組側が持参するなんてザラだよ?」
「うげぇ、知りたく無かったな…」
「ま、実際あの番組も相当やってたみたいだけどね…炎上しちゃって今はやってないらしいよ」
真丈さんからさらっと芸能界の闇の一端が語られるがまぁそんなもんだろうと寧ろ納得する。
テレビの情報を鵜呑みにするな、なんて良く言われるが本当にその通りで放送される情報なんざ番組スポンサーによって変わるからイマイチ信憑性は低い。
因みに信憑性の高さを順にすると、まず論文や学術誌、次にそれを基にした書籍に、次点で新聞、ネット、テレビ、んでもって最後に井戸端会議による情報ってなってるみたいだ、これ豆な。
ついでに、さっきの真丈さんの話には無かったが、台本に"ここで転がる"とか一見視聴者から見ればハプニングに見える様な物でも仕組まれたりするからマジで鵜呑みにしない方がいいぞ。
「あ、そういえば…」
「ん、何だい?」
「どうしました?」
そんなドス黒い闇の話の展開もそこそこに神波さんが思い出したかの様に声を上げる、何だろ、スケジュールの確認か?
「今日じゃね?俺たちが出た番組オンエアされんの」
「「…ああー」」
「反応うっっすいな、おい」
忘れてた、確かに今日の夜だったわ、後2時間ちょいぐらいだっけ?
「俺はばっちしダチとかに宣伝しまくったぜ、お前らは?」
「私は日本での知人が少ないからね…一応両親には伝えてあるよ」
「…部活仲間にちょろっと」
「おいおい、地味過ぎねぇ?」
地味だなんだ言われても真丈さんはよくわからないが俺は基本的に交友関係は狭いしな、アイドルになったってわざわざ周りに言いふらす必要も無いし特に俺からの宣伝はしてないな…雪ノ下とかにはバレたみたいだが…
そういやピエールも俺が出た番組を見るって言ってくれたし…へへっ、あんな天使が見てくれるって言うんならあんな目に遭いつつも頑張った甲斐があったもんだ…ん?天使、天使………って待てよ!?
戸塚だ!!元祖天使の戸塚には伝えてない!!
なんてこった畜生!!
俺と!した事が!戸塚に!アイドルやってる事を伝えてない!!
くっそ、どうする?今から実は俺アイドルやってるんだー!みたいなカミングアウトをするのは気が引けるがそんな事言ってる場合じゃない、戸塚に俺の晴れ舞台を見て貰う方が圧倒的に先決だ!
戸塚、ピエールという2人の天使に見守られる俺…もうこれは逆説的に俺は天界の住人と言っても過言では無いのではなかろうか。
やべぇな、ゾンビだの比企谷菌だの言われてたがとうとう浄化されてお空へと還る時が来ちまったみたいだな…
「…比企谷君、こう言っちゃなんだけどその…」
「おい、八幡そんなキメェ顔してんなって」
「あ、神波君!もう少しオブラートという物をだね…」
うるせえ、ほっとけ。
にしても番組が今日放送かぁ…十中八九小町が一緒に見よう見ようと言ってくるだろうが、わざわざリアルタイムで見たいという欲求も無いしな…どちからと言えばお布団に直行して睡眠したい欲求の方が強い。
自己承認欲求よりもしっかりと人類3大欲求の方へと考えが傾いている俺は実は相当人間が出来てるんじゃないだろうか。
え?寝言は寝て言え?おっけわかりました、今日は寝ます。
そんな事を頭の片隅で考えながら3人で帰路へ着く為に歩く。
何だかんだ言いつつもこの3人で話すときの空間は奉仕部とはまた違った心地良さがある気がするな。
さーて……小町にどう言い訳して寝ようかなぁ……
もう少しで身の回りで起こる騒ぎ等露知らずに俺は遂に到着した駅へのホームへと足を踏み入れた。
次回、ちょっとした番外編挟む予定です。
多分皆さまお待ちかねだったんじゃないですかねぇ…ついにアイドル八幡が、原作俺ガイル勢の目に止まります!
書くキャラ一気に増えるだろうけど、頑張らなきゃ…!!
あ、後感想絶賛募集中でござます故よろしれければ…!
次回の更新も気長にお待ちください
オリキャラどっちが好き?
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真丈拓哉(元マジシャン)
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神波狩人(元ストリートダンサー)