やはり俺が315プロにいるのはまちがっている。 作:Hoffnung
「我がプロダクションのアイドルになっていただけませんか?」
……この人は何を言ってるんだ?アイドル?…俺が?あの歌って踊るアイドルを?
全く予想だにしてなかった言葉に思考が一瞬フリーズしてしまったが直ぐに口を開き返事をした。
「あ、結構です、アイドルとかどう考えても無理なんで」
サラっと、当然のように断った。
当たり前だ、俺がアイドルになんてなれる訳がないし何よりもこんな人通りの少ないところで話しかけて来て「アイドルになってください」等、胡散臭いにも程がある。
何故、よりにもよって俺をスカウトしようと思ったのかと疑問に思うが、どこかのテレビ番組のドッキリ企画でもやっているのだろうか。
『いきなりアイドルになってくださいと言われたら本当にアイドルになるのか?ならないのか?』
なんて企画でもやっていて反応をカメラでも撮っているのだとしたら、もしそうなら直ちにこの場から離れねばなるまい。
バラエティ番組で笑いのネタとして放送されるなんて絶対にごめんだ、間違い無く俺の黒歴史上トップクラスの物になるのは確実。
自分がアイドルになれると思った勘違い男のルッテルを貼られることは必須、んでもってSNSで実況をしてるような人達にだってネタとして笑われるまでがセットってとこだろ。
このように、直ぐ様帰ってしまえばテレビに放送される程の取れ高のある映像なんて撮れて等いないだろうし、お蔵入りになる可能性だって充分にある、何よりも俺は一刻も早く帰って自転車の籠の中で揺れている袋の中のラノベが読みたいのだ。
マイソウルドリンクであるマッカンを片手に至福の時を過ごす、こんなところで時間を食ってる場合ではない。
「え、あのもう少しだけでもお話しを聞いていただきたいのですが…」
「結構です、では、これで失礼します」
「えぇ!?ちょ、ちょっと待って下さいー!」
慌てた様子で男性が駆け寄ってくるが俺のそんなこと知った事ではない、さっさと自転車にまたがりこの場を去ろうとした。
「あれ?お兄ちゃんじゃん、今から帰るところ?」
「…え、小町?なんでお前ここに?」
だが、それは1人の人物の登場によって中断された。
俺、比企谷八幡の最愛の妹こと比企谷小町である。
「いや、今日朝からららぽに買い物に行くって言ったじゃん?それが終わったから帰ってるとこだよ〜」
「ららぽにって…ああお前朝にそんなこと言ってたな。」
なんでこんな人通りの少ない所で鉢合わせるんだと思ったが大方歩きスマホでもしながらブラブラとここまで来てしまったんだろう、全く、お兄ちゃんはそんな子に育てた覚えはありません!!
因みに原作をしっかりと読んで下さっている読者様なら知っていると思うが、俺らの言うららぽとは俺を始めとする多くの近隣住民が良く利用する大型商業施設、ららぽーとの略称だ。
ショッピングを楽しむのも良し、レストランで腹を満たすのも良し、映画館等の娯楽施設も豊富にあるのでお金さえあれば1人でいっても困ることはない。
デートスポットとしても有能なので小町みたいな学生だけに限らず連日多くの人が利用する大型商業施設なのである。
小町の話では朝から出かけていたようだが携帯をチラ見すると既に15時を回っていた、朝から出かけているならもう用事が済んでいてもおかしくない時間帯だろう。
「お兄ちゃんは何してたの?朝の様子から今日は一日ぐーたらしてるだけかと思ってたのに…ってその人誰?…はっ!まさかのお兄ちゃんのお友達!?」
「違ぇよ、んーそうだな…ああこの人はな、多分テレビ番組のドッキリの仕掛け役かなんかだろうよ、撮影されるなんて真っ平ごめんだからとっとと帰るところだ。」
「え!?ちょっと違いますよ!僕はドッキリの仕掛け役とかではないです!比企谷さんを是非、我がプロダクションのアイドルになっていただけないかなっとスカウトさせて貰えないかとお話ししていた所でして…」
慌てて手をわちゃわちゃさせて必死に否定しているが、別に本当にドッキリの仕掛け役ではなかろうがアイドルへのスカウトなんて最初から受ける気なんてない。
何が悲しくて自分の顔を晒してアイドル活動なんかしなきゃならないんだ、第一、成功するのが本の一握りという世界である芸能界にだなんてもっての他、第一の就職希望は専業主夫だが、せめて自分で働くとするならばもうちょっと安定した職に就きたい。
丁度いいタイミングで小町もいることだし、これを理由に一緒に帰ろうと踵を返そうとしたところまたもやそれが中断させられた。
「ん?ん〜ん?ほほう?アイドル?スカウト?…すいませんお兄さん、ちょーっとそれ、詳しく聞かせて貰ってもいいですか?」
「おい、小町!そんなの構わなくっていいんだぞ!」
不味いことになった。
どうやらアイドル、スカウトと言ったキーワードに反応したらしい小町が詳しい話を聞こうとしている、良くよく考えてみれば小町からすれば食い付きそうな話題だ、sit!おお、マイシスター、頼むから早く話を切り上げておくれ。
だが、そんな俺の願いも虚しく、そんなの関係ねぇ!と言わんばかりのスタイルで話を聞く気満々だ、どうやら聞く耳を持ってくれなかったらしい。
ねぇ、妹にも無視されたら俺、とうとう死にたくなるよ?泣くぞ?
「はい、あの…比企谷さんとはどういったご関係でしょうか...?」
「あ〜まだ自己紹介が済んでませんでしたね!すいません、私、比企谷八幡の妹で比企谷小町っていいます!よろしくお願いしまーす!」
「なるほど!妹さんでしたか、僕は石川と申します。」
納得がいったようで声を少し弾ませ俺に渡したように名刺をもう一枚小町に両手で手渡した。
「んー何々?315プロダクション プロデューサー 石川って…315プロダクション!?」
「え、何小町そのリアクション、そんなに有名なところなのか?」
妹の予想外のリアクションに思わず疑問を尋ねてしまう、え、315プロダクションって俺が無知なだけでよっぽど有名な事務所なのか?
「有名っていうか少し話題になったの!あのJupiterが移籍した会社だって小町のクラスメイトが話してた所だったからびっくりしたの!SNSとかでも話題になってたんだけどお兄ちゃん知らないの?」
「Jupiter?…ああ、一時期小町がキャーキャー言ってたやつか、あのグループもう見なくなって消えたかと思ってたけど移籍してたのか?結構大手に所属してたって聞いたことはあったけど」
「チッチッチ…違うよお兄ちゃん!Jupiterは961プロを辞めてフリーで活動してたんだけどつい最近移籍したの!それが315プロ!今まで他の大手からのスカウトがいっぱいあったんだけどそれぜーんぶ、断ってフリー活動してたのに無名の事務所に移籍したから話題になったんだよ!」
「へーそうだったのかー」
熱心に語る小町に反比例するような軽い返事を返しつつ記憶を探り始める。
Jupiter
俺が初めてその存在を知ったのは正確な日は全くもって覚えてはいないが小町と2人で晩御飯を食べていた時につけてたテレビの音楽番組だった気がする。
小町の友達に大ファンがいるらしくその友達からたくさん話しを聞かされてた為か大ファン!とまではいかなくともテレビ越しにキャーキャー言うぐらいには好きなグループだというところから知った筈だ。
天ヶ瀬冬馬、御手洗翔太、伊集院北斗の3人でなってるアイドルグループでメンバーの名前を小町から教えられた為なんとなく覚えたのを思い出した。
とはいえ、特に芸能人に興味がある訳でも無く、ましてや男性アイドル、テレビをつけた時に番組に出ていたらなんとなくああ、こいつらかってなるぐらいの認識は持っていた。
しかし、最近では全然見なくなったと思っていたがフリーで活動していたというのなら納得である。
コネや事務所の財力が物をいうであろう芸能界で大手事務所からフリー活動に変わればメディアの露出が減るのは当然だ。
積極的にメディアへの露出ができる大手から何故フリー活動になったかは全くもってわからないがきっとそうせざるを得ない状況だったのだろう。
ゴシップ記事なんか書かれてたっけな?ぜーんぜんわからんぞ。
「お兄ちゃん!このスカウト受けるべきだって!Jupiterだよ?あのJupiterが移籍した事務所なんだからきっといい所に間違いないよ!」
「あー待て待て小町、いいか、まず、俺は全く持ってアイドルに興味なんてない、次に成功するかも定かじゃないし、それにだ…1つ考えてみろよ…」
俺はまたがっていた自転車から降り小町の前まで歩き右手をサムズアップの形にして、その親指で自身の顔を指した。
「……俺だぞ?」
「……納得したよお兄ちゃん…」
我ながらこの説明だけで納得されてしまう事は悲しいものである。
だがここで口を挟んだ男がいた。
「そんな事はありませんよ」
石川と名乗った315プロのプロデューサーその人だ。
「僕は比企谷さんを見つけた時に..."輝き"を感じたんです。」
「…は?輝き?」
俺は思わず疑問に満ちた声がでた、輝き?いきなり何を言い出すんだこの人、妹である小町も自らの兄から"輝き"を感じた、と評されて目を丸くして石川さんを見つめる。
「はい、この人なら多くの人々に未来を、希望を、そして笑顔を…そんな"輝き"を与えることが出来る、そして見せてくれると…そう私は感じたんです」
「…あの、そんな"輝き"だとか大層な事言ってますけど俺は全然そんな人間なんかじゃないっすよ、ほら目は腐ってるし、ぼっちだし、コミュ障だし、数学は壊滅的だしで全然その…"輝き"とかを感じるような人間じゃないと思うんですけど…」
余りにも自分の事を過大評価するこの人に自らの短所を挙げてゆく、自分で言ってなんか悲しくなって来た。
そんな俺の気持ちとは正反対の笑顔でクスっと石川さんが笑う、え、とうとう馬鹿にしに来たんですか?
「ですが、貴方にはそんな短所なんかを軽く跳び超えてしまう程の魅力があります、僕は…貴方がステージで輝く姿を是非見てみたい」
!!!
「こう言ってしまうと唯の僕の我儘のように聞こえますが…僕が貴方を…比企谷さんを見つけた時に思ったんです、この人だ!…って、本当ですよ?」
そう言ってまたクスリと笑った。
余りにもストレートに俺の事を語るこの人に思わず息を呑んでしまった、いつもの俺なら、こんな事を言われようが世迷言だと切り捨てて片付けていただろう、だが…ここまで真っ直ぐに人の事を話す人物なんて少なくとも平塚先生ぐらいしか知らない。
「…お兄ちゃん」
ここで小町が八幡の元に近づいた。
「…お兄ちゃん!やっぱりこのスカウト受けるべきだよ!!小町こんなにお兄ちゃんの事を見てくれる人初めて見たもん!もうJupiterとかそんなの無しにこんな人がプロデューサーやってるプロダクションならもう入るしかないよ!!」
「…小町」
私、感動してます!と言わんばかりに目をキラキラさせて興奮しながら自分にアイドルになれと諭してくる、正直Jupiterと同じ事務所効果補正も入っているだろうがどうやら本気で、そう思っているようだ。
だが俺はアイドルになるつもりなんて毛頭ない、そう返そうとした。
…しかしながら、かくいう俺もこの人が世迷言や戯言で自分を評価してる訳ではないとわかった、わかってしまった。
「………」
数秒程無言になり思考し始める、そしてある結論に達し軽く微笑んだ。
「……もし失敗したら、小町、養って貰うからな…」
小町の方に向けていた顔を石川プロデューサーに向き直し目線を合わせた。
「……俺、全然芸能界とかわかんないですけど…スカウト、受けさせて貰っていいですか?」
「!!、はい!勿論です!」
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後はトントン拍子だった、あの後、両親に連絡し一度石川さんを自宅に招いたのである。
両親は俺がアイドルにスカウトされた事、それにそれを受けた事等に終始驚いてる様だっが石川さんの説明と俺の決意表明を元に成績を落とさないことを条件にアイドルになる許可を得た。
さらにその翌日実際に事務所に出向き、一通りの説明や契約書等を書き俺は晴れて315プロ所属のアイドルになったのである。
そこまで思いを馳せたところで俺は椅子に持たれ掛かっていた体制を戻し内ポケットから取り出した名刺をポケットに入れ直す。
まぁ、なっちまったもんはしょうがねぇか、…はぁ、本当にあいつらにはどうやって説明したもんか…
キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン
朝のベルが教室のスピーカーから鳴り響く、生徒達はお喋りを中断し、自らの席に着き始めた、朝のHRが始まろうとしている。
確か今日は事務所に行って俺の所属するユニットのメンバーと顔合わせするってプロデューサーが言ってたな…
思考を今日の放課後の予定の事に切り替える。
自分がアイドルとして活動するユニットメンバーとの顔合わせが正に今日、あるというのだ、315プロは個人ではなくユニット単位で売り出してゆく方針らしく、つまり、自分がアイドルをやるにあたって重要な要素。
ここからそこそこ距離はあるのでHRが終わったらそのまま向かわねばなるまい、そう判断した所に俺が所属するクラスの担任であり奉仕部の顧問をしている平塚先生が教室へと入ってきた。
……早く学校終わんねぇかなぁとどこか楽しそうに心の中で愚痴を吐いた。
皆さん、エムステでワートレ中国始まりましたね...
作者は翔太の衣装が取れればいいかなぁと思っておりますので少し走ります。
大体500万ぐらい走れば大丈夫ですかね...?
後、次回オリキャラが出る予定です、設定を固めてますので次回の更新は少し遅くなります。
気長にお待ちくださいませ。