死して尚生を求める者よ   作:ビートカヤック乗ってみたい

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生を求める者

 

「ついてねぇっ!!」

 

森の中をひたすら走る子供がいた。十歳ぐらいだろうか。まだ大人にすらなりきれてあない脚を必死に動かし、駆け抜ける。

呼吸を見出し、時折後ろを振り返っては加速して走る。頬に玉粒ほどの汗が吹き出しては、風に揺られて去って行った。

眉間に眉を寄せ、額に流れる汗を拭い、目を走らせて最短ルートを脳内で導き出す。

その子供は何故、そこまで必死に駆けているのか……その理由は子供を追いかけるように後ろを走る存在にある。

たった二本の手で大地を駆け、子供に追いつこうとする存在は人間から見て化け物。紫色の体色に赤い筋が走っている。顔の先端部分には金の輪っかが取り付けてある。と言ってもその輪っかより先端が頭であろうが、そうとしか見えない。

目のような部分の瞳孔に見えていた部分が火花を散らし飛び出した。数秒のラグを得てそれはレーザーへと代わり、子供の横すれすれを横切って行った。

 

「ひぇっ!?」

 

木々を突き破って子供の走る先に着弾したそれは、閃光を放って爆発する。爆風が子供を襲い、思わず脚を止めて顔を庇う。

 

「うっぐぅ……!」

 

爆風が収まり顔を上げれば、そこには爆発によって更地と化した一面がある。その威力にひくりと頬が引き攣り、そしてハッとして振り返ったその瞬間に迫っていた化け物の腕を振り下ろされた。

持ち前の反射神経でかわした子供は何も考えず必死に前へと走り出すが、それは悪手である。前には更地と化した場所がある。森林の中だからこそ見つけにくい子供も、更地と晒されたら狙い易いというもの。

そして案の定、更地へと出た瞬間に先程と同じようなレーザーが上空から放たれた。幸いにも着弾したのは子供のすぐ側で直撃とはいかなかったが、それでも凶悪な兵器。炎が膨れ上がり爆発し、その爆風によって子供は飛ばされて無事だった木へと衝突する。

軽い子供の体。大人よりは衝撃はマシだったとは言え、丈夫さを考慮すれば子供の体には負担が多すぎる。結論を言えば、肋骨を何本か逝った気がする。

 

「げほっ!げほっ!げほっ!!……うぅ……容赦ねぇな……っ」

 

血反吐を吐き、立ち上がる。

 

「あ゛ーもう怒ったよ、オレ」

 

口の中に残った血を最後に吐き出して、口元を拭う。子供の目は先程までの怯えた目ではなく、決意を宿した目であった。

 

「寛容さで有名なオレを怒らせたんだから、アンタ達ついてるな」

 

首に巻いていたスカーフを取って、喉仏の位置にある石を軽く撫でた。

 

「行くぞ。オマエらはオレが直々に」

 

横に突き出した両手が淡い黄色の翼に変わり、そして全身も人ではなくなる。

黄色い体に黒い筋。目の前にいる化け物や、上空を飛んでいるマンタのような化け物とは似て非なる存在。

化け物達を偽物のヒルコを用いて作り出した意識のない生物兵器ヒトガタと呼ぶように、人が真正ヒルコを身に宿して完全なる人の形になったのならそれはヒトガタではなく……ザムドと呼ぶ。

 

〝殺す〟

 

嘴のような突起部分の下から覗いた瞳は、紅く光っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世にはヒトガタという生物兵器を用いて戦争を行う国がある。人々からは北政府と呼ばれるそこは、各国へと戦争をふっかけていった。戦争をふっかけられた国々はやがて大きな連合国となる。それが南大陸自由権。

戦争は北と南に別れた。

ヒトガタとは先程も言ったように生物であり、人から見れば化け物である。操る人が必要だが、操れるのもヒトガタ使いと呼ばれる者達のみ。

そんなヒトガタは戦争を有利に進めた。生物であるために銃器などは効くが、そもそも強い。一つレーザーを放つだけで、村が滅ぶほどだ。高層ビルなどに放てば、中にいる人間や下にいる人間が死ぬだろう。

そんなヒトガタとは別に、ザムドと呼ばれる似たような生物がいる。構造などは変わらないが見た目がヒトガタとは違う。ヒトガタが未完成ならば、ザムドは完成形と言えるだろう。

ヒトガタはどうか知らないが、ザムドは共通してある特徴がある。それは二足歩行をして、正体が人間であること。そしてザムドになる前に白髪の少年少女と出会っていること。

ザムドはヒトガタさえ圧倒する怪物。元は人間だとしても、人からすればザムドも化け物で駆除対象だ。よって市民を守るために軍人に狙われ、そもそもヒトガタを生み出した北政府からも狙われる。なったとすれば居場所がない存在に成り果てる。

隠し通し、周りを欺き生きなければならない。それが生まれて数年でザムドになった子供の宿命であった。

 

「あー、いったい。呼吸するのも辛い……ちょっと出し惜しむんじゃなかった」

 

胸のあたりを押さえて歩く子供。先程ザムドになりヒトガタを退けた者だ。

北政府に運悪く見つかり、しばらく泊まっていた宿に帰るところを方向転換して山にて対処したのだ。もう日が暮れているし、怪我はするしで良いことなしだ。

 

「ついてねぇ」

 

はぁとため息を吐いて、肋骨の痛みに肩が跳ねる。思ったより痛かったそれにまたため息を吐きたくなって我慢する。

どうせ朝になれば治っているのだ。今だけ痛みを和らげる方法をしていれば良い。

 

「(居場所がバレたから、またどっかいかなきゃな……)」

 

歩いて行くのは面倒だ。じゃぁどうすれば良いのか。そりゃ勿論。

 

「(飛んでぶらりと渡りますか……)」

 

気分は渡り鳥。

しかしもう夜更け。一休みして渡る事にしたのか、子供は部屋に帰ってベットへと潜り込んだ。肋骨を気遣うのを忘れて、痛みが走ったが疲れの方が強かったのかすぐさま夢へと旅立っていった。

 

 

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