死して尚生を求める者よ   作:ビートカヤック乗ってみたい

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母の声

 

 

---キ。

 

 

 

母の声が聞こえた気がした。

ガバリと起き上がる。背中には大量の冷や汗が流れ出て、呼吸は荒く、必死に胸を押さえて蹲る。

 

「おかぁ、さん……」

 

確かに今聞こえた気がした。

思い出すのは弟よ、と言って大きなお腹を撫でる母の姿。

 

「あいに、いかなきゃ」

 

生きているはずのない彼女に逢いに行かないと、何故かそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西村ハルは目の前にいる巨大な実験体ザムドに向かっていく幼馴染に向けて叫んでいた。

やめて、敵じゃない!

実験室を抜け出した巨大ザムドは、人の目から見れば化け物。皆は活動を停止させるために、ASPスーツを動かして応戦する。ハルの言う通りそのザムドは反撃などせず、ただひたすらに歩いていた。

他の隊員達はわからないのだろうか。あのザムドが子供を抱えた母子だったかもしれないのを。決して攻撃してこないのを。

翅を広げたザムドを視認したハルは確信した。彼女は飛び立とうとしている。ただ、あの奥に見える塔に導かれて。

 

「もうやめて!フルイチ!ザムドは敵じゃない!」

『じゃぁ何か!ザムドは人だって言うのかよ!』

 

ザムドの膝の裏を正確に撃ったフルイチは、一旦後退してからまた大きな的である背中に向けて照準を合わせた。

あれが当たればあのザムドは活動を停止するだろう。そんな予感がしたハルはきつく歯を噛み締めた。ただの候補生である自分がでしゃばり、あのザムドを庇えば地下牢行きは免れない。ただの予感だけであのザムドを敵じゃないと思って行動しても……結局は多対一で不利だ。

フルイチが照準を見て引き金を引いたその時、飛び出た銃弾は何かに弾き飛ばされて山に着弾した。爆発音が響く。

 

「えっ」

『何だ!?』

 

そこにいたのは一羽の大きな鳥。人の大きさ以上もあるそれは、羽ばたきすらせずにそこに佇んでいた。新たな化け物の出現に騒然とする。

一見すると大きな鳥。しかし羽毛に覆われていない皮膚に走る黒い筋。何より顔の部分についているのは、鳥の嘴のようなものを被った仮面。人の形をしていない……けれど、あれはザムドである。

 

「ザムド……?何で」

 

ハルは目を見開き、佇んでいるザムドを見る。鳥のザムドは再び照準を合わせたフルイチを見ると一瞬でその持っていた銃を壊した。

 

『えっ』

 

いつの間にか目の前に来ていたざむどに目を丸くして、そして衝撃が身体に伝わった。吹き飛ばされたのだ。フルイチの乗っていたASPスーツは飛ばされてコンテナにぶつかり停止する。

 

「フルイチ!!!」

 

爆発しなかっただけマシとは言え、あの衝撃だ。死んでいてもおかしくは無い。ASPスーツを急いで動かし、ハルはフルイチの元へと駆け寄っていった。

オープンになっているメインソウルが乗る部分にフルイチは頭から血を流して気絶していた。眼鏡が割れていることから、それほどの衝撃を食らったのだろう。脳震盪を起こしているに違いないと、ハルは必死にフルイチを救助する。

 

〝おかぁさん……やっと、やっとあえたね〟

 

声が聞こえた。

バッとハルは振り返る。確かに耳に届いた声は小さな子供の少女の声をしていた。

 

〝おかぁさん。おかぁさん。わたしのおかぁさん。だいじょうぶ。わたしがまもるから、わたしがおねぇちゃんだから〟

 

聴こえてきた声はあの鳥のようなザムドからだろうか。寄り添うように実験体ザムドの周りを飛ぶザムドは、クルクルと声を出していた。まるで親に甘える子供のように。

 

「まさか、あのザムド……」

 

羽ばたき一つすると、実験体ザムドの中心部分にいるもう一つの小さなザムドらしき場所に辿り着く。実験体ザムドになる前は生まれる前の赤ん坊だったと思われるそれは、鳥のザムドを見つけるときゃっきゃと喜び始めた。

 

〝あぁ。かわいいおとうと。わたしのおとうと。あんしんして。これからはおねぇちゃんがまもってあげる。よるはこもりうたをうたうし、おひるはいっしょにあそぼう〟

 

楽しみだなぁ、楽しみだ。表情が変わらないのに笑う彼女は、少しどこかズレていて周りはどうしていいのかわからない。ただこの声が聞こえているのは、ハルのみであるが。

 

〝だから……わたしたちのじゃまするひとたちはみんな、みんなおいはらおうね。まってていますぐかたづける〟

 

ふわりと舞うザムド。空中で縦に一回転すると、両腕の翼を広げて天を見上げた。

ヤバイ、ハルは直感的にそう思ってヘルメットについてある通信機器を作動させる。

 

「全員退避してください!攻撃が来ます!」

 

個々の返事は無視して通信を切り、フルイチを抱えて飛んだ。

 

〝ったく、殲滅すんのはオレの役目なんだがな。うん、ごめんね。良いさ別に……手間が少し増えただけだしな。ありがとう〟

 

最後にハルが聞いたのはそんな声だった。一人で誰かと話すような言葉。でも彼女の言葉はどこか吹っ切れたようにも感じて、ハルは少しだけ鳥型のザムドを振り返りながら退避した。

 

〝オマエらはついてるな。オレもついてるし、ナツキもついてる。ここまで最高な日はもうこねぇだろうさ!〟

 

鳥型のザムドが翼を羽ばたかせると、バチバチと青白く光が走る赤い球を発生させた。ヒトガタも良く使うレーザーの前段階だ。

 

〝さぁ!楽しもうぜ!兄弟!オレの一方的な蹂躙で終わるだろうけどな!〟

 

嘴の付け根に輝く石が、赤く爛々と光っていた。

 

 




今更ながら、原作見てないとわからない仕様になってます。
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