ちなみにロリコンである【完】   作:善太夫

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第十七話◆魔皇ヤルダバオト

 解放軍によって奪還されたカリンシャではカスポンド王兄、レメディオス団長、グスターボ副団長がにゃんにゃん☆メイド隊とマジカル☆ロリータとを加えて軍議を行っていた。

 

「……ケラルト最高司祭の死は誠に残念だった。聖王女様に万が一があっても最高司祭殿ならば、と考えていたのだがな」

 

 カスポンドの声は悲痛だった。

 

「王国には復活魔法の使い手がいると聞いている。すぐにも呼んで妹を復活させてはどうなのか?」

 

 憔悴した顔に鬼気迫る目をギロリとむいてレメディオスが発言した。その言葉にすぐさまロリータ☆ピンクが反応する。

 

「……無理だ。『蒼の薔薇』のラキュースが使える神聖魔法でも無理だな。復活させる場合には遺体が損傷していない事が前提だ。こんな状態、ではな……」

 

「……くっ。しかし……クソッ」

 

 一堂は沈黙する。ケラルトの遺体はサークレットに飾られた頭部だけだった。

 

「……なにはともあれカリンシャは奪還出来ました。これからはどうなさいますか?」

 

 沈黙に耐えきれずグスターボが尋ねた。

 

「実は南部の貴族達も兵を上げてこちらに向かっている。彼らの到着を待ってホバンスを……首都を奪還するつもりだ」

 

 カスポンドの言葉にどよめきがおこる。首都ホバンスの奪還はまさに解放軍にとっての悲願でもあった。

 

「……フフフフフ。そんな事はさせませんよ──」

 

 途端に激しい爆発と共に壁に大きな穴があく。

 

「──貴様! 貴様はヤルダバオト! 『聖撃!』」

 

 不意に現れた巨体にレメディオスが必殺技を発動させる。

 

「……随分まぶしい光でしたが……ふん!」

 

 姿を現したヤルダバオトは片手でレメディオスを凪ぎ払う。レメディオスは壁に叩きつけられる。

 

「……くっ。貴様! 何故聖撃が効かないッ? 悪ではないのかッ!」

 

 レメディオスはヨロヨロと起き上がり呟く。

 

「……カルカ様は? カルカ様はどうした?」

 

「……ふむ。誰の事ですかな? ああ、あの女ならば調子にのって振り回すうちに小さくなってしまったので捨ててしまいましたよ」

 

 レメディオスは逆上した。

 

「──貴様あ! カルカ様をぉぉ!」

 

 再びレメディオスが攻撃を試みるがヤルダバオトの尾の一撃になすすべもなく吹き飛ばされる。

 

「……これはこれは……お久しぶりにございます、でよろしいですかな?」

 

 ヤルダバオトの前にセバスがゆっくり近づく。心なしかヤルダバオトの表情に緊張が走る。

 

「……え? あ……うむ」

 

 セバスが身構える。

 

「──なんですと? 『この世界の全ての女性を巨乳だけにする為にやって来た』ですと? そ、そんな事はこの私が許しません!」

 

「──いや、なにを言っている?」

 

「……ぐぬぬぬ。『巨乳以外は生きる意味がない』ですと? 何を仰いますか。貧乳には貧乳の良さがあるのです! 良いですか? 貧乳こそが正義、いや、大正義なのです!」

 

「──いや、打ち合わせと ちが……」

 

「良いでしょう! 貴方の悪の巨乳か私の正義の貧乳か──勝負しましょう! 勝った方の主張が認められるという事でいかがでしょう?」

 

 セバスは強引にヤルダバオトと話を決めるかにみえた。

 

「──スターライトブレイカー!」

 

 ヤルダバオトに巨大な光の束が直撃する。

 

 瓦礫の中から一人の少女が歩み寄る。彼女は白い服に大きな杖を持ち、銀と黒の二色の髪にリボンを結んでいた。

 

 

 

 

 番外席次『絶死絶命』はスレイン法国最高評議会の命を受けてローブル聖王国にやって来た。

 

 ヤルダバオトに対抗する為に魔導国から『魔法少女』が派遣される事を知った法国ではそれらの力量を調査する為に番外席次の派遣を決めたのであった。しかしながら番外席次の存在は評議国に知られる訳にいかず、とりあえず『通りすがりの謎の魔法少女』を装う事にした。

 

 幸いな事に法国の至宝である各種装備や魔法の杖は様々な形に擬態可能であり、法国に伝わる伝説の魔砲少女リリーカルナ・ノーハの姿を模す事にしたのだった。

 

 尚、法国以外の国ではかの魔砲少女は実は白い悪魔だったという伝説もあるらしい。

 

「……えっと……りりかるりりかる。ちょっと頭、冷やそうか、なの」

 

 全身に傷をおったヤルダバオトが立ち上がった。

 

「……フハハハハハ。面白い。これだけの強者、しかも魔法少女がここに集うとはな。よかろう。ちょっとした座興も良い。エバンスにて最強の魔法少女を決定する『魔法少女大戦』を開催しようではないか! そして勝ち残った最強の魔法少女が私と対戦するのだ。楽しみにしているぞ?」

 

 魔皇ヤルダバオトは高笑いをするとグレーターテレポーテーションで姿を消した。

 

 

 

 

「……なにやらおかしな事になったな……」

 

 ロリータ☆ピンクが呟く。

 

 ちなみにロリータ☆ソルトは先程から吐き続けていた。

 

「何がなんでも私達が勝利しなくてはなりません。ロリータこそ大正義とかの至高のお方もおっしゃっていらっしゃいました」

 

「……うむ。しかしのう……セバス殿。妾の本当の姿は──」

 

 ロリータ☆クイーンの言葉は突然乱入してきた五人組にさえぎられた。

 

「ある時は王女の親友の貴族の娘、またある時は王国を代表するアダマンタイト級冒険者チームのリーダー。しかしてその真実の姿は──封印されし世界の(ことわり)魔剣キリネイラムに嫁ぎし処女(おとめ)、マジカル☆ローズ ブラック ラキュース、ここに参上!」

 

「同じくマジカル☆ローズ イエロー、ガガーラン」

 

「同じくマジカル☆ローズ ブルー、ティア」

 

「レッド、ティナ」

 

「えっと……マジカル☆ホワイト、ブレイン……ナ、だ」

 

 心なしかラキュースの顔が赤い。

 

「……なんでありんす? またまた魔法少女でありんすか?」

 

 ロリータ☆アリンスがため息をつく。

 

「──ゲッ! シャッ、シャルティア・ブラッドフォールン!」

 

 ローズホワイトことブレイナの顔が真っ青になり、全身がガクガク震えだす。

 

「いかにも私はシャルティア・ブラッドフォールンでありんすが……はて? どこかで会ったでありんしょうか? 私には覚えがありんせんが……」

 

 シャルティアことロリータ☆アリンスが首をかしげる。と、ブレイナは何やら訳のわからない言葉を叫びながら逃げていってしまった。

 

 

 

 カリンシャの解放軍本部にカスポンド、レメディオス、グスターボが集まっていた。

 

「魔法少女大戦か……我がローブル聖王国からも選抜メンバーを出したいものだが……」

 

 カスポンドが二人を見回す。

 

「……私は嫌です。あんな服など着るものか!」

 

 レメディオスが眉間にシワをよせる。

 

「…………」

 

 グスターボはメイド服の裾を握りしめてうつむいたまま無言だ。

 

 ──お前達のそのメイド服は魔法少女たちの衣装とあまり違わないと思うが──カスポンドは喉まででかかった言葉を飲み込む。

 

「話は聞いたわ! わたちにまかちぇなさい!」

 

 いきなり扉を勢いよく開けて五歳位の幼女が入ってきた。

 

「……まさか……カルカ……さま?」

 

 唖然とするレメディオスに幼女はニッコリと笑う。

 

「レメディオス、久しぶりね。ヤルダバオトに振り回されている内に精気が抜けてしまってこんな姿になってちまったの。お兄様、カルカは戻りました。魔法少女大戦への参加、わたちにお任せくだちゃいな」


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