「セバスぅ! これはどういう事だぁあ?」
新しい衣装を身体にあててみたシャルティアが怒りに燃えた紅い双眼でセバスを睨む。
「どういう事でしょうか? 私にはなんのことか全くわかりませんでして……」
対するセバスは涼しげな様子である。不穏な空気の中で誰かが震えるカタカタカタという音だけが妙に大きく聞こえていた。
シャルティア──マジカル☆アリンスが身体の前に広げた衣装はVラインのセクシーな水着に透け透けなレースのパレオが付いた物だった。
「……ぐぬぬぬぬ……」
マジカル☆アリンスは顔を真っ赤にしながら、でも次の言葉を出せずにいた。
無理もない。この衣装ではパッドでごまかす事は不可能なのだ。しかしこの衣装を否定する為には自らパッドの虚乳を告白しなくてはならない。そしてそれが出来ない事をセバスは見越しているのだった。
重々しい空気が永遠に続くかと思われた時──
「妾も一言よいかの……この衣装じゃが……ちいとばかり肌が見えすぎじゃと思うのだが……もし着るならこう……豊満な身体の方がな……」
おずおずとロリータ☆クイーンが発言する。シャルティアを除く他のメンバーも首を縦にふり、同意する。
「……なんですと? それが良いのではありませんか? 発育途中の裸体を最低限隠しつつ陽の目にさらす。それこそが健全なエロスなのです!」
セバスは拳を高く突き上げる。
「本来のロリータの魅力とは思春期の大人への階段を昇るわずかなひととき、その刹那の一瞬にこそ替えがたい魅力があるのです。良いですか? 蕾の持つ美しさはその内側に今まさに花開かんとするエネルギーが内在する生命の溢れんばかりな美しさなのです!」
セバスは更に叫ぶ。
「本来、この思春期特有の美しさは芸術的にももっと社会的評価を受けるべきなのです。それをいつしか世俗的な視線により、あたかも性的未熟者の欲求を満たす為の要因であるかのように貶め、その純粋な美しさを愛でる行為を変態と同列に見なされているというのは何とも嘆かわしい事ではありませんか? 今こそ私は世に問いたいのです! ロリは正義であると! 可愛く美しいものを素直に認める事は決して間違っていないという事を! かつての賢人の言葉にこうあります。『貧乳は貴重だ! ステータスだ!』と。決して貧乳を恥ずかしがる必要は無いのです。いや、むしろ誇るべきなのです! その小さな膨らみには無限の可能性が詰まっているのですから!」
セバスの演説に誰もが息をのんだ。しばらく静寂が続いた。
「……ううむ。セバス様がどうしてもと言う
ならば仕方あるまい。うん。私は着るぞ!」
ロリータ☆ピンクがいきおい良く立ち上がった。それを見てクイーン、ソルト、ブルーも恐る恐る立ち上がる。
そしてひとり無言のままのアリンスに微笑みかけた。
「……わ……私は……」
マジカル☆アリンス──シャルティア・ブラッド・フォールンにとってこの衣装を着るという事はパッドとの決別を意味していた。
やがて決意したアリンスは自らパッドを外す。他のメンバーが涙を浮かべながらアリンスを囲む。
「……ロリータ☆アリンス様。一緒に頑張りましょう!」
ブルーがそっとアリンスの肩を抱いた。他のメンバーも頷く。
「さあ、私たちマジカル☆ロリータの新しい門出です!」
マジカル☆ロリータは『ロリは正義』を旗印に結束を固めるのだった。
※ ※ ※
「わたちはローブル聖王国のカルカでちゅわ。お久しぶり、ですね」
番外席次ことタカマチ・ナノーハは突然の幼女の訪れに身構える。
「心配いらないわ。あなちゃが法国からのまわし者、いや、法国の切り札だという事は誰にも言わないから」
番外席次は無言で構えたロッドを降ろす。
「……どうやらカルカ聖王女というのは本当みたいね。しかし……よく私の正体がわかったものね?」
「……変装するならその髪と瞳の色は変えるべきだったわ。わたちはひとつ提案があるの。わたち達と一緒に組まないかちら?」
カルカは微笑んだ。
「無理に、とは言わないわ。ただ……断るなら貴女の正体を評議国に伝えるかもしれないけど……」
◆
「最終的に参加を決めたのは『マジカル☆ロリータ』、『にゃんにゃん☆メイド隊』の他は『マジカル☆ローズ』……これは王国のアダマンタイト級冒険者チーム『蒼の薔薇』のメンバーですね。そして『聖少女隊』。これはあの謎の魔砲少女と聖王女カルカ様、レメディオス殿、聖騎士見習いといった顔ぶれとなっています」
ナザリック地下大墳墓のアインズの執務室に集まったメンバーにデミウルゴスが説明をする。
「『蒼の薔薇』ならその実力は把握している。プレアデスなら良い勝負をするだろうが……念のためセバス達との対戦にすべきだろうな。シャルティアがいれば問題ないだろうし、イビルアイもいるしな。気になるのはあのハーフエルフだが……」
アインズは言葉を切る。
「アインズ様。かのハーフエルフならば私達で倒してみせます。ご心配はいりません」
うやうやしくルプスレギナが膝まづく。
「……うむ。私も大丈夫だとは思いたいが……」
アインズは逡巡してみせる。しかしながらルプスレギナの決意の前に首肯くのだった。
「では、よろしいですね。順当に進めば決戦は『マジカル☆ロリータ』と『にゃんにゃん☆メイド隊』とで行ない、勝者がヤルデバオト──憤怒の魔将と対決して勝利する。という事で」
「わかりました」
「お任せ下さい」
デミウルゴスの言葉にセバス、ルプスレギナが首肯く。
「ところでデミウルゴス。憤怒の魔将は倒してかまわないのか? いや、傭兵システムを使用しているのならば勿体なくはないか?」
アインズはデミウルゴスに尋ねた。
「アインズ様。大丈夫で御座います。決戦で使用する魔将は私が召喚しますので問題御座いません」
「うむ。では、みな、宜しく頼む」