ちなみにロリコンである【完】   作:善太夫

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第二十一話◆シャルティアの消失

「……むう。ここがアリンス、いや、シャルティア様が姿を消した現場ですか……」

 

 セバスと残りのマジカル☆ロリータの四名はローブル聖王国の首都、ホバンスに用意された魔法少女大戦参加者向けホテルのスパにやって来た。

 

 大きなプールの様なメインの浴場に付属していくつかのジェットバス──ジャグジーが並んでいる。

 

「……で、シャルティア様はこのジャグジーにつかっていたら突然姿を消した、というわけですか。……ふむ」

 

 セバスは眉間にシワを寄せる。

 

「……その場にいたのはどなたですかな?」

 

 セバスが見回すとピンク以外の三名がおずおずと手を挙げる。

 

「わかりました。では、調査の為に当時の状況を再現する事にいたしましょう。幸いこのスパは本日私が貸し切りましたので気兼ねはいりません」

 

 ブルーとソルトが洗い場の椅子に座り、クイーンは浴場の前で逡巡する。

 

「……私は湯に浸かっておったのだが……」

 

 セバスが突然首をふる。

 

「……違う……違うのです。……そうじゃない!」

 

 セバスはおもむろに両手を拡げて叫んだ。

 

「なぜ、貴女方は服を脱がないのです? 貴女方は服を着たまま身体を洗い、服を着たまま湯に浸かるのですか? おかしくはありませんか? 私は当時の状況を再現しよう、そう言いました。貴女はシャルティア様が姿を消した時に服を着たままだったのですか? 服を着たまま身体を洗っていたのですか? ブルー、いや、ニニャ。そしてソルト、いや、アルシェ。答えて下さい」

 

 ブルーとソルトは真っ赤になってうつむいた。

 

「……いえ……服は着ていませんでした」

 

「……すみません」

 

 セバスは二人の肩をやさしく抱いた。

 

「……わかっていただければ良いのです」

 

「……しかしの……どうせ肌を見せるならこんな平らな胸でなくドーンとある方が良いのではないかの? あんなものは大きいければ大きいほど良いのではないのか?」

 

 クイーンは少しばかり不満そうだった。

 

「……平らではありません。この乳頭付近のわずかな膨らみ……明らかな高低さではない控えめな起伏こそが『ワビサビ』という価値観たらしめるのです。さあ、皆さん、早く服を脱いできて下さい。……ああ、イビルアイさんも、です」

 

 イビルアイは思わずセバスを凝視する。

 

「せ、セバスさま……私はその時にいなかったのだが……」

 

「イビルアイさんにはシャルティア様の役をやって頂きたいのです」

 

 

 

 

「……準備が……出来た」

 

 戦闘メイド(プレイアデス)のシズに先導されて裸のマジカル☆ロリータが入ってきた。イビルアイはタオルで胸元を隠していたが、無情にもシズにより取り上げられてしまう。

 

「ふむふむ。これはなかなか……コホン。では当時の状況を再現してみましょうか。確かアルシェさんとニニャさんはこちらの洗い場で身体を洗っていたのでしたね」

 

 セバスの言葉に弱々しく頷いた二人は洗い場の椅子に腰かける。ふと、アルシェの鋭い目線がニニャの胸元に刺さる。

 

「……コホン。アルシェさん。ニニャさんの胸が貴女より発育しているからと反発するのはやめて下さい。こうしてこの場にいる貴女達だけでもそれぞれの胸の形、大きさ、色とすべてが異なっているのです」

 

 セバスは言葉を続ける。

 

「……そして私は慎ましい、小ぶりな胸が好きです!」

 

 セバスの声がスパに反響する。アルシェの顔がみるみる紅潮していく。

 

「わ、私は──」

 

「本当なのか? 私のような胸が、セバスさまは好きなのか?」

 

 アルシェの言葉はかき消されてしまう。

 

「……イビルアイさん?」

 

 振り替えるセバスの眼前に興奮したイビルアイが立ち上がる。

 

「……あ……」

 

 自らの裸身を恥ずかしがりイビルアイは思わずしゃがみ込む。

 

「……さて、私はこうして湯に浸かっておったのだが……」

 

 タオルを頭に乗せてだらしなく足を投げ出したドラウディロンにセバスが厳しい目をむける。

 

「……ドラウディロンさん。貴女にはもう少し恥じらいが欲しいものですね。せっかくの素材がもったいありません」

 

「──ハイハイ。その辺で次にいく。イビルアイはシャルティア役、ジャグジーに行く」

 

 シズがおもむろに指示を出す。

 

「……うん。えっと……あ!」

 

 ジャグジーの水流の中に突然イビルアイの姿が消える。セバスは素早く浴場に飛び込むとイビルアイを助け上げた。

 

「まさにシャルティア殿と同じだ……」

 

 蒼い顔をしたドラウディロンが震えながら呟く。

 

「……いったい……なにが……」

 

 力なく呟くイビルアイ。

 

「水の流れは吸血鬼の弱点。つまり、シャルティアは流されてしまった」

 

 シズが断言した。

 

 

 

 

「その後の調査により、スパの浴場の隅に頭が通る程度の排水口がありまして……シャルティア様はおそらく……」

 

「流されてしまった、か。わかった。すぐさまニグレドに探させよう。だが……そうなると明日の決勝戦には間に合わないな」

 

 セバスの報告を聞いたアインズはため息をつく。決勝戦に駒を進めた「チームローブル聖王国」の得たいの知れない強さ──恐らく過去のプレイヤーの遺産とおぼしきワンド『らいじんぐはあと』の圧倒的な強さに対してシャルティアがいないマジカル☆ロリータは圧倒的に不利に思えた。

 

「かくなる上はこの私が魔法少女として──」

 

「──それは得策ではないよ。セバス」

 

 セバスは声の主を睨み付ける。

 

「デミウルゴス様。何が言いたいのですかな?」

 

「実はあの、チームローブル聖王国なんだがね。先程更にメンバーを加えたいと言ってきたそうだ。そのメンバーというのはクレマンティーヌという女なんだが……」

 

「……うん? その女なら知っている。確かエ・ランテルでズーラーノンとかいう結社の幹部だったな。二本のスティレットを使いこなす……」

 

 アインズは疑問に思った。確かに彼女は人間としての強さはかなりの実力といえたが、セバスに対抗する程では無いからだ。

 

「アインズ様の疑問はごもっともかと。しかし今回現れたクレマンティーヌはワールドアイテムとおぼしき武器を持っておりまして……」

 

「……まさか、あの……歌いながら敵を虐殺しまくる……伝説の魔法少女……」

 

 デミウルゴスの言葉にセバスが反応した。

 

「……うん? ああ、セバス。むしろそっちの方ならまだ良かったのだがね。その武器は花が付いた弓でね、未確認情報では猫みたいな白い動物を連れていたそうだ。シズによると──」

 

「──人智を超えた神のごとき存在……全ての理は彼女には恐らく通用しない……究極のチート」

 

 シズが目を閉じて静かに答える。

 

「……そんな……そんな馬鹿な事が……」

 

「仕方がないさ。セバス。こうなったらマジカル☆ロリータの残りのメンバーの実力にかけるしか無いのだ」

 

 

 セバスはガックリと肩を落とした。

 

 ──全ては私の力不足。イビルアイさん、アルシェさん、ドラウディロンさん、ニニャさん。私は参加出来ませんが、貴女方にお任せいたします。ロリの灯を消さないため、頼みましたよ。

 

 

 

「……私に大切な話とは……いったい何事でしょうか?」

 

 呼び出しのメモを読んだセバスを待ち受けていたのはロリータ☆ピンクことイビルアイだった。

 

「……明日は大切な決戦があります。早く休んだほうが良いと思いますが……」

 

 突然、イビルアイがセバスに抱きついた。

 

「──!? イビルアイ、さん?」

 

「私の本当の名前はキーノ。キーノ・ファスリス・インベルンです。セバス様、私を女にしてください」

 

「──それは……しかし……」

 

「セバス様。王都で初めてお会いした時よりお慕いしておりました。せめて一夜だけで構いません。私の愛に答えて頂けませんでしょうか?」

 

 セバスは無言でキーノを見つめた。彼女の瞳には強い決意が浮かんでいた。

 

「……わかりました。私でよければお応えさせて頂きます」

 

 セバスはフワリとキーノを抱きかかえる。お姫さま抱っこの状態のキーノは静かに目を閉じる。

 

「……初めてなので優しくして下さい」

 

「……わかりました」

 

 セバスは優しくキーノをベッドに横たえた。

 

 キーノがかすかな声で呟いた。

 

「……これでもう思い残す事はない……」

 

 二人の夜は静かに更けていった。

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