ダイヤのA×BUNGO   作:スターゲイザー

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ダイヤのAとBUNGOにハマったので書いちゃいました。



BUNGOでは名前は石浜文吾ですが、本作では石田文悟と名前を微妙に変えています。
現段階ではまだストレートのみで、変化球は今後習得予定。

家庭環境や家族構成が違うことで、野田ユキオと出会わない代わりに野球に詳しいおじさんにアドバイスを受けた√的な感じで進めて行きます。

ACTⅡでもBUNNGO要素が無いのであればクロスオーバーは外します。




ACT1
第一話 運命の一球


 

 

 

 夏の日の昼下がり、青道高校野球部副部長の高島礼は東京から離れた地のアスファルトを踏んでいた。

 

「ふぅ、暑いわね。踏んだり蹴ったりだわ」

 

 高島の仕事である前途有望な選手のスカウトが上手く行かず、その帰り道で偶々野球場が見えたので電車から降りることにした。

 

「確か今日は試合がやっているはずだったわね。駄目で元々、見るだけ見てみましょうか」

 

 スマートフォンで中学野球の日程を確認すると、聞いたことも無い無名の中学同士の試合があることが分かった。

 このまま何の収穫なしには帰るわけにはいかないが、流石に有望な選手がいるとは思っていない。運が良ければ候補リストに上げれる選手がいるかもしれないと気楽に野球場に入る。

 

「あら、もう7回なの?」

 

 恐らく選手の家族ぐらいだけだろう観客しかいない観客席に出た高島がスコアボードを見ると、既に試合は最終回に差し掛かっていた。しかも、既に2アウト満塁で0-0の終盤も終盤。

 

「の、割には随分と盛り上がっているようだけど」

 

 高島がスコアボードを見るまで試合の終盤と分からなかったのは、野球場を支配する異様な盛り上がりであったから。

 

「この状況なら盛り上がりもするわよね」

 

 両校得点が入らず、最終回2アウトならば例え無名高同士であろうとも盛り上がりはするだろうと納得する。

 

「アンタ、何言ってんだい」

「はい?」

 

 1人で納得していた高島に呆れたような声がかけられ、そちらを向くとビール缶を傍に置いた定年後に暇を持て余して試合を見に来た風情の中年の男がいた。

 

「今、マウンドに立っている投手がノーヒットノーラン目前なんだよ。これが盛り上がらないはずがないだろう」

「へぇ……」

「なんだい、淡泊な反応だねぇ」

「いえ、驚いていますよ」

 

 大きな驚きを期待していた男には悪いが高島は十分に驚いていた。正確には感心していた。

 精々が地区予選の1回戦や2回戦レベルだと勝手に高を括って碌に期待もしていなかったのに、掘り出し物を見つけたかもしれないと興味を唆られたからである。

 マウンドの方を見てみれば、中学生の平均よりかは少し高い程度の細身の少年が集まっている内野手達に何かを言っていた。

 

「あの投手以外は素人って感じでね。満塁になったのもエラーや振り逃げとかでって感じ。まともに打たれたのはまだ一度もない」

「それは、凄いですね」

 

 言われてマウンドを見てみれば、散って行く内野手達の中心で投手の少年が帽子を被り直しているところだった。

 2アウト満塁なのに内野手達の守備位置は定位置で変わらず、特に腰も下ろさずに棒立ちの状態を見るに素人の感じは否めない。

 

「桜ヶ丘中学、か」

 

 スコアボードの中学名を見るもやはり聞き覚えはなく相手中学も同じく。

 この地区自体が決して強くはないとしても、ノーヒットノーランは十分に偉業である。

 

「お、投げるぞ」

 

 高島がスコアボードを見ている間に、投手はセットアップポジションを取っていた。

 遠くからでは分かり難いが深呼吸しているようで、三拍の後にゆっくりとした動きで踏み込んだ。

 オーバースローのフォームで放たれたボールは外角低めの捕手が構えたミットの中にピタリと収まった。

 

「ストライク!」

「あれは振れんわな」

 

 名前も知らない中年の男が言ったように、恐らく球速は130km/h前後ぐらいだろうが外角低めのストライクゾーンぎりぎりのところに投げられたら打者は手を出せない。

 実際、打者は振ろうとして振れずに、捕手が投手にボールを投げている中でコンコンと金属バットをヘルメットに軽く当てていた。

 

「あれ?」

 

 ボールを受け取った投手がミットを触っていない手で膝を指先で叩いたり、右肩を触っている様子を見て高島は疑問符を浮かべた。

 

「もしかして、投手がサインを出してるんですか?」

「らしいね」

 

 ビールを一口飲んだ中年の男が続ける。

 

「5回ぐらいまでは膝を触った時は内角だったけど毎回やってるから相手にも分かって、サインが読まれてるって分かってからは回ごとに変えてるみたい。けどね、サインを読まれて打たれかけた時が凄かったんだよ」

 

 どう凄かったのかが高島には良く分からないので続く言葉を待つ。

 

「こう凄い剛速球を投げたんだ。まあ、あの捕手が取れなくて後逸しちゃったけど」

「今よりも速いと?」

「かなり」

 

 酔っぱらいの話は三割ぐらいしか信用にならないと思っているし、過大な表現をしているだけの可能性もある。

 

「本物か、どうなのか」

 

 帽子の鍔を下に一度下げて投げたボールは低めだったが、打者がバットを振って左方向に流れた。

 ギリギリでファウルラインを超えて、攻撃側のベンチから溜息が漏れた。

 

「帽子の先を下に下げるのは、ただの低めだってバレたな」

「タイムは?」

「さっきのが最後」

 

 つまりはサインを変える時間はないということで、2ストライクに追い込んではいるが厳しいのは守備側であることは誰の目にも明らかだった。

 

「さて、どうする?」

 

 真価を問うのはここだと高島は見極めの目を向ける中で、一度空を見上げた投手が帽子の鍔を軽く触ったのに留めてセットアップに入った。

 今度は踏み込みが深い。

 まるで残っている力の全てを込めたかのように振り被り、投げられたボールは――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 碌に舗装もされていない山道を進みながら高島礼は後悔していた。

 仕事柄、スカウトや視察以外で歩くことが少ないので良い機会だからと送りの車を断ったのが間違いだった。

 

「見栄を張らずに送ってもらえば良かった……」

 

 目当ての人物と家族がいるであろう休日の昼間に訪れようとしたことも失敗の大きさを助長していた。

 森の中なので生い茂る木々のお蔭で日光が直接当たることは少ないにしても、舗装されていない道をあくせくして進んでいると汗がポタポタと流れていく。

 

「なんでこんな山の中に家があるのよ」 

 

 目的の場所は都市部から離れ、辺り一面見渡す限りの山々の奥に家があると聞いた時は奇特な人もいるものだなと呑気に考えていたが、掻いた汗で化粧も流れていくような状況では愚痴の1つや2つも言いたくもなる。

 

「だから、あんなに珍妙なものを見るような目を向けてくるはずだわ」

 

 大きく迂回することになるが車が通れる道ではなく、ショートカット出来るという言葉を安易に鵜呑みにしていた高島を送ってくれた地元のタクシー運転手の目は暫く忘れそうにない。

 

「もう少しのはずだけど」

 

 これでもこの近隣の人達の中では近い方で下ろしてもらい、ショートカット出来るという道を踏破して来たはずなのに進んだ気がしない。

 

「アンテナ立ってないって、どんだけ田舎なの」

 

 道を確認しようとしたらアンテナが立っておらず、取り出したスマホが半分以上役立たずになってしまったことに大きな溜息を漏らす。

 

「真っ直ぐ進めばいいだけらしいから迷いはしないはず」

 

 今まで費やした時間と労力を考えるに、タクシー運転手の言葉を信じて進むしかない。

 

「ん?」

 

 舗装はされていないが踏み均されている道のお蔭で歩き難いことがないのは救いであると考えている最中、犬の鳴き声が聞こえた気がして右側を向く。

 

「――――ワン!」

「キャッ!?」

 

 瞬間、横合いから急に飛び出して来た犬に驚き、疲労の極致にあった膝がガクリと折れた。

 なんとか直ぐ傍の木にしがみ付けたので倒れずにはすんだ。

 犬が来た方角の茂みがガサゴソと音を鳴らし、今度はなんだと高島がそちらを向くと今度は人間が現れた。

 

「あれ?」

 

 良く日に焼けた肌は若く、あどけなさが残る風貌の少年こそが高島がこんな森の中にまでやってきた理由だった。

 

「珍しい。こんな山の中に美人さんが来るなんて」

 

 先程、高島を驚かせた犬が尻尾を振りながら寄って来たのを頭を撫でた少年が近づいて来る。

 

「石田文悟君かしら」

「なんで俺の名前を?」

 

 少年――――石田文悟は警戒するようにピタリと、高島まで後数歩のところで足を止めた。

 

「端的に言えば、あなたのことをスカウトに来たのよ」

 

 不審者ではないというのを暗に示しつつ、暑さで脱いでいたスーツのポケットに入れていた名刺を取り出す。

 

「私は青道高校野球部副部長の高島礼です」

「はあ」

 

 古い高校野球ファンなら全国区で知っている青道の名前を出してもピンと来た様子の無い文悟は差し出された名刺を受け取った。

 

「……………ああ、思い出しました。プロ野球選手を何人も出している有名な学校でしたっけ」

 

 名刺の学校名をしっかりと見てようやく思い至ったらしい文悟に高島は少し苦笑した。

 

「そんな有名な学校の人が俺をスカウトって、本当ですか?」

「ええ、こんなところで話もなんだから君の家にお邪魔させて頂いてもいいかしら」

 

 名刺を見慣れていないのだろう。裏側の白紙側まで見た少年に場所を変えないかと提案する。

 

「分かりました」

 

 少し考えながらも了承した文悟に案内され、実は直ぐそこまで辿り着いていたことに高島は肩を落としつつ森の中腹に立つ広めの一軒家に入った。

 家の大きさに見合った広いリビングに通された高島は出された座布団に座ってようやく一息つくことが出来た。

 

「さっきはすみませんでした。あんまり高校野球に興味がなかったもので」

「いいのよ、気にしないで」

 

 お茶の用意をしている文悟に姿をカウンター越しに見つつ、チラリと大きな窓の外に広がる自然を見た。

 

「自然豊かな場所ね」

「それしかありませんから」

 

 茶葉ってどこだ、と探している文悟の言う通り、自然以外に見えるものは何もない。

 

「近くの家まで4、5㎞離れてるし、学校だって似たようなもんですよ。幾ら自然豊かな場所で俺を育てたかったからって限度があると思いません?」

 

 子育ての方針に何かを言う権利が無い高島は文悟の愚痴にも似た文句に同調することはなく、辺りを見渡した。

 

「ご両親は?」

 

 見つからない茶葉を探すのを諦め、冷蔵庫を開けて取り出したお茶をコップに入れた文悟がリビングにやってきたので聞いてみる。

 

「畑の方に行ってるんで、もう1時間もしたら帰って来ると思います」

 

 高島にコップを差し出し、向かいに座った文悟は正座をする。

 

「足、崩していいのよ」

「これも親の躾でして。目上の人にはしっかりとした態度を、と」

 

 多少、慇懃無礼な面がないわけでもないが基本的に礼儀は守っている文悟に感心しつつ、ならばこれ以上は何も言うまいと決める。

 

「それで、名門校の人がなんで地区予選1回戦負けの投手のスカウトなんて」

 

 全く以て信じられないと顔に書きながら直球に訊ねられた高島は薄らと笑みを浮かべる。

 

「その1回戦の試合を偶々見る機会があって、石田君にただならない可能性を見たのよ」

「負けたのに?」 

「ノーヒットノーランでね」

 

 自分がなんで高評価を受けているのか理解できていない文悟に為した結果で証明する。

 文悟はそれでも信じられないとばかりに眉を顰めた。

 

「最後の暴投を除けば、でしょう。公式記録では押し出しで負けたことには変わりありません」

「あれは捕手があなたの球を取れなかっただけよ」

 

 高島は今でも脳裏にまざまざと刻み付けられた、結果的には押し出しで負けた一投を思い出す。

 

「石田君、あの試合で全力で投げれなかったんじゃないかしら?」

 

 最後に投げた球はど真ん中だったが以前とは球速が全然違った。

 スピードメーターが無かったので確証はないが140km/hを超えていたのではないかという球速で打者も反応出来ず、観客席からでも明らかにノビたと分かるボールを捕手は取ることが出来なかった。

 

「うちの中学、全校生徒合わせても10人ちょっとなんです」

 

 右手で頭を掻いた文悟は一見関係ない話を始めた。

 

「小さな学校だから特定の部活とかなくて誰かがやりたいやつをみんなで協力しようと感じで、その中で野球がやりたいってのは俺1人だけでした。こんな山奥で野球をやれるだけでめっけものですよ」

「全力で投げれなくても良いと?」

「そりゃ投げれるなら投げたいですけど……」

 

 イマイチ煮え切らない文悟に高島は眼鏡の奥の目を光らせた。

 

「今までちゃんとした指導者に教えてもらったことや、刺激を与え合えるライバルもいなかったんじゃない?」

「まあ、そうですね」

 

 勝負はここであると察した高島は一気呵成に攻勢出る。

 

「一度、うちの練習を見学してみない? 高校でも野球を続けるなら全国区の練習というものを見ておいて損はないと思うわ」

 

 全国、という言葉に文悟の瞼が明らかにピクリと震えた。

 

「それと、これはまだ内密の話なのだけれど」 

 

 獲物が餌に反応したので、高島の秘策中の秘策を以て吊り上げる。

 

「あなた達の世代でNo.1キャッチャーが青道に入る予定なの。きっと石田君の全力の球であっても楽々と受け止めてくれるはずよ」

「全力、ですか」

 

 後は吊り上げるだけというところで、急に文悟が立ち上がった。

 

「石田君?」

 

 そのままリビングの窓を開けて外に出た文悟が靴を履いたので、高島も後を追うと目を僅かに見開いた。

 

「これはマウンド?」

「手作りですけど」

 

 リビングの外は大きめの広場ぐらいのスペースが広がっており、その中央は土が盛ってあって野球のマウンドのようになっていた。流石にプレートまではなかったが、ホームベースもしっかりとある。

 

「小さい頃は近くに住む友達に会いに行くことも出来なくて、ずっと家に向かってゴムボールを投げてたら壁が傷んできちゃって父さんがネットを買ってくれたんです」

 

 ホームベースの奥にはネットがかけられていて、使い込み具合からかなりの練習が行われていると推測するのは簡単だった。

 

「作った野菜を卸している人との付き合いで草野球に参加させてもらって、そうしたら捕手までの距離が随分と遠くて」

「壁当ての投球練習では距離感が狂うと言われているわね。横幅と高さだけ目に入って奥行きが感じ取れないから。遠くに投げようとすると、肘が下がってボールが甘くなってしまう」

 

 文悟は直ぐ傍に置かれていた大量の野球のボールが入った籠に手を入れてボールとグローブを取り出した。

 ボールを持った文悟がマウンドに向かっていく後を高島もスリッパを借りて追う。

 

「その草野球にいた昔に甲子園で投げたことがあるって人にも同じことを言われました」

 

 マウンドに立った文悟はグローブを右手に嵌める。

 

「2、3ヶ月に1回しか草野球はやらなかったけど、色んなことを教わりました」

 

 軽くボールを上に放ってキャッチして握りを確認するようにボールを見下ろす。

 

「去年、その草野球も人数不足で無くなって、学校も最後の大会で負けたから野球は止めるつもりでした。推薦をくれた高校には野球部が無かったから」

 

 勿体ない、と口から出かけた言葉を高島は呑み込んだ。

 

「それでも俺はまだ野球をやりたい!!」

 

 真っ直ぐに立ち、軸足を少し曲げて力を溜めた文悟は並進運動で大きく踏み出した前足の着地と同時に軸足を内旋した。一度も止まることなく前足を外旋して腰・胸・肩を回転させて生み出して来たパワーを指先で弾いて爆発させた。

 斜め後ろから見る高島の目にはストライクゾーンのど真ん中を通ると思われたボールはホップしたかのように浮き上がったように見えた後、大きな音を立ててネットに突き刺さった。

 

「高島さん」

 

 投げ終えたその姿に青道のユニフォームを着て1番のエースナンバーを付けた姿を幻視した。

 

「練習、見に行かせてもらっても良いですか?」

 

 勿論、高島に拒否する理由などなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 予定よりも大分早く一度帰って来た両親と話をして、息子が決めたことならばと見学が決まった後で高島は気になっていたことを聞くことにした。

 

「あの試合の後、あなたのことを探したのだけれど見つからなかったのよね」

「ああ、それは簡単ですよ」

 

 迎えのタクシーを呼んで待っている間、雑談のつもりで聞くと文悟は口を開く。

 

「あの後直ぐに卓球の大会もあったんで、みんなでそっちに行ってました。あ、これ個人戦のトロフィーです」

 

 壁際に飾られていたトロフィーを渡されて見ると、個人戦3位入賞と書かれていた。

 

「ああ、推薦って卓球の」

 

 妙な納得を覚えた高島は東京へ戻っていくのだった。

 

 

 




主人公・石田文悟

身長・高め
家族構成・両親と文悟のみ
ごっついストレートを投げる
中学は人数がギリギリしかおらず、卓球の方が人気あり
弱小の上にやる気がないので一回戦負け
試合に出てもらう為に卓球の大会に出たら個人戦で入賞




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