手には弓を 頭には冠を   作:八堀 ユキ

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エデンズ・ゲート壊滅・・・。
英雄ジェシカの物語はまだ続く。

ここからエンディングとなります、次回最終回はこの後。


エンディング
Dawn of New Legend-新しい伝説の誕生―


 世界は壊れなかった。

 アメリカは崩壊などしなかった。

 そんな世界を見ても、神はやはり沈黙を貫いている。

 

 

 ノースコリアの撃ち放った核攻撃は2発のみ着弾し、実際はそのどちらも狙いからは大きく外れていたことがのちにわかった。

 世界に張り巡らされた情報網はリアルタイムで混乱と攻撃に意気消沈する人々の姿をカメラに収め、TVでは痛ましいことだと美麗字句をつけて流し続けた。

 

 殴りつけた側は快哉を上げ、喜びの声にわき。

 独裁者が続いて下した攻撃命令に従い、南に向かって――国境の目と鼻の先にある同胞と呼んでもおかしくない人々の住む都に向け。廃墟になれとばかりに砲弾を撃ち込み。地上軍を向かわせた。

 

 これは電撃戦により、早期決着もあるかもしれない。

 専門家の一部はそう口にして力ないアメリカの敗北へ、不安をあおったが――奇跡は起こらなかった。

 ただ現実だけがそこにあった。

 

 

 デジタルが伝える人々の姿と違い。この攻撃に激怒する32億もの国民達は待っていた。

 メディアを通して現れたのは、メディアがこの国の大統領に最もふさわしくはない男だとする人物であったが。彼は皆が求めることを力強く口にし、やつらの望み通りにはさせない。野蛮な独裁者はやはり罰するしかないのだ、という復讐を公然と口にする下品さをみせた。

 それに国民はただただ熱狂する。

 報復心が燃え上がり、復讐の時が来たのだ。

 

 大統領はさっそく艦隊を差し向けたが。それが日本海に到着した頃には勝利はもう確実という状況が揃っていた。

 報復攻撃を口にする米国に追従し、ロシアとチャイナが固く手を握り合って。この横暴な小国の独裁者をたおしましょうとの意見が一致したからだ。

 

 もっても1か月といわれた独裁者の抵抗は。

 2週間――正確には12日でもって終了してしまった。

 

 軍人たちは敗戦明らかな戦場になど目もくれず。配備された食料と燃料の囲い込みを始めると、あっというまに部隊は崩れていき。小国を守る軍隊と呼べるものは消えてしまった。あとには飢えた国民と彼らの独裁者だけ。

 冷酷と復讐心をたぎらせた兵士たちがそこへ進軍していった。

 

 その後は当然のことが当然のように行われた。

 大国は破壊した小国の国民達への援助を約束しながらも、それに関してはあまり熱心ではなかったし。そもそもにして囚われた独裁者は自身の安全だけを望んでいたので、彼らを気にするものはこの星にはいなかったということになる。

 ねじくれた恨みと怒りだけが残された。

 

 

 戦争は終わった。

 混乱はその後にも続いたが――なぜか半島の統一を当然のように大国に向けて主張する奇妙な人々がいたが。大国はそれを寝言としてまったくとりあうことはなかった――半島の北部はさらに分割され大国の飛び地として扱われることが決まり。

 アジアは強大な中国が、その他の大国と組んで平和を導いていく、そういうストーリーのキャンペーンが開始されていく。

 

 これは皮肉にもアジアにおけるアメリカの同盟国たちの立場を弱くさせたのだが、彼らではアメリカが欲しがるものを用意できなかったのだから。力を得た中国にむけて文句が言えるはずもなかった。

 

 

 モンタナとネバタの爆心地はそれから彼らが望む平和を取り戻すのにさらに2年の時間を必要とした。つまりホープカウンティの人々はそれまでずっと闘いの日々が続いていたことになる――。

 

 

 帰宅を認められた日、人々は希望を胸に迷うことなく故郷へと戻っていった。

 復興し、あの日のような日常を取り戻すのだと。あきらめるつもりはまったくなかったのだ。

 そしてジェシカも――。

 

 

――――――――――

 

 

 アジアの独裁者による北米への核攻撃から15年の月日が流れた――。

 アメリカはそれから新しい大統領が何人か生まれ、また新しい戦争を用意している。

 

 そんな時、『ホープカウンティの悪夢~希望を捨てなかった英雄たち~』と題されたドキュメンタリーが話題となった。

 聞いての通り、あまり楽しそうな番組とは思えぬ題名だったが。そこで取り上げられたのは、戦争の開始という混乱によって存在から疑われているという怪事件――真実は不明とされたホープカウンティ暴動であることが、犯罪マニアたちを喜ばせてしまったらしい。

 

 以下に紹介するのはこの番組の流れである……。

 

 

 オープニング、核がアメリカへと放射線を築いて着弾するまでのシミュレーター、苦しむ人々、報復の誓いを立てる大統領演説、艦隊出撃風景と続く中。

 暗い部屋の中で椅子に座る男性が、合間に割り込み。静かに語りだす。

 

「あの日のことは忘れられないと皆は言います。私もそうです、ずっと――ずっと苦しんできました。

 でもそれはあの戦争のことじゃありません。

 もっと恐ろしいものが、恐ろしいことがあったんです。そこは私の生まれ故郷でした。でも、もう私はそこに戻れないでしょう。あの女が、それを許すはずがありませんから」

 

 2019年、秋――モンタナ州ホープカウンティは異常気象に襲われ。例年よりも長い夏の中にあった。

 そしてあの日、1発の核ミサイルが彼らを襲った。そういうことになっている。

 

 だが、あまり知られた話ではないが。

 その時のホープカウンティはすでに地獄であったということを。

 ホープカウンティ暴動。当時の混乱とミサイル攻撃の影響もあり、FBIは早々に調査を切り上げ。再捜査の可能性は限りなくゼロに近いという異例の発表をしたことで犯罪マニアの興味をひかせた。その事件は確かにあった。

 

 

 ナレーションが終わると、病院の待合室に夫婦が呼ばれるのを待っている様子へと切り替わる。

 女は青い顔で緊張しているようだったが。男は軽く笑顔を見せながら「今は結果を待っているんだ」とカメラに向かって言う。

 次のシーンでは医師と共に病室に入り。結果が入っているという封筒を開け、何事かを伝えると。それまで緊張していた2人の顔は、パッと花が咲くように喜びの表情へと変わって抱き合った。

 

 さらに自宅へと戻ると子供や老人ら家族にもそれを伝え、喜びの中。今度は電話で誰かにそれを伝えようとしていた。

 

――2033年、春。

――僕はついにガンに3回目の勝利をおさめ。再びサバイバーとして生きていけることが分かった。

――僕の名前はバリー。バリー・コーガン。

――映像作家として30年近く活動しているが。その半分は病気との戦いだった。

――でも、今回はその話じゃない。

――実はこの時、僕はひとつの自分に約束していたことがあったんだ。

――「もしも、もしもこの先でも生きていられるなら。僕はあの事件にもようやく決着をつけよう」ってね。

 

 映像作家、バリー・コーガンの若かりし姿から現在までの映像がシャッフルされていく。

 しかしそれが1枚の写真で止まる。

 そこは森林に囲まれた発着場。ただひとりでカメラなどの機材を置き、近くには民間のものではあるのだろうが軍用輸送機らしき一部が見える。

 奥の建物に掲げられた看板は『ニック&サンズ航空』。混乱の中のホープカウンティを訪れた彼の姿である。

 

――2019年は僕にとっても運命が大きく揺れ動いた。

――あのアジアでの戦争の話じゃない。僕の、自分自身との戦いのことだ。

――辛い思いをした。僕だけじゃなく家族もみんな。だから記憶は封印しよう、ずっとそう思っていた。

――モンタナ州ホープカウンティ。

――犯罪史には暴動として記録されているそこに僕はいた。

――多くのものをそこで見て、聞いてきた。あそこはまさに戦場……地獄のようなひどい場所としか思えない光景が広がっていた。

 

 おどろおどろしい音と共にFBIが発表した何点かの映像が流される。

 次に映像作家バリーがなぜホープカウンティにいたか、当時のモンタナ州の異様な状況についての説明が始まる。

 

 

 10年近くの間、ビックプロジェクトのドキュメンタリーを連発し、どちらも大成功を収めたバリーのチームは。そこで1年の長期の休暇にはいることになった。

 すでに子供がいたバリーだったが。ようやく結婚式とハネムーンで私生活にけじめをつけたが。

 ここで彼は仕事に戻りたいと精神を不安定にさせてしまう。。

 

 ただ気分を紛らわせたいと彼はハリウッドの3流たちが集まるバーに顔を出す。そこで彼はガイ・マーベルの噂を聞いてしまった。

 

――新作を撮影中のガイの奴。モンタナでトラブルに見舞われてるらしいぞ

 

 車に撮影機材を乗せていたバリーは、気が付くと飛行場でチケットを買っていたそうだ。

 

 モンタナ州についた彼はそこで異常事態が起こっていることを初めて知る。

 まるでそこにはホープカウンティなどないというように。「行きたい」とバリーが告げると、あらゆる人々が顔を恐怖に引きつらせ。関わりたくないし話したくもないと嫌がっていた。

 

 ホープカウンティへの道路は土砂崩れからまったく手が付けられておらず。州は再開通などありえないといっているようで。

 そこに入り込む正規のルートは存在しなかった――。

 

 

 CNNが土砂崩れについて報じる短いシーンから次へと切り替わる。

 2033年の冬。バリーはスタッフと共に、復興したホープカウンティで車を降りていた。

 

「参ったな。季節も何もかも過去のことで。別物だと思っていたのに、ここはなんだか見覚えがある気がするよ」

 

 そう懐かしそうに口にするバリーだが、表情は歪んでいる。

 

「当時のモンタナは本当に不気味だったんだ。

 警察、州知事、地元の新聞社。どこに聞いてもホープカウンティのことで話ができなかった。

 

 そこで僕は非常手段に出るしかないと思ったんだ。

 海外で取材した時のツテをたどって、ある人物を紹介された。彼は僕をそこに連れてはいけるが、それ以上は約束できないと言った。僕はそれで構わないと……躁状態だったんだよ。怖いもの知らずだった、今の僕がそこにいたら。あの時の僕をなんとしても止めるだろうね」

 

 雪景色の山々は狩猟期に入り、ここを訪れる客の多くが男性のようだ。

 パブやダイナーには猟銃を背負い、地ビールを楽しんでいる彼らの姿があった。その中の何人かにインタビューをする。

 

「ここにはいつも?」

「ああ、いい場所だよ――それでも6年ほど前からだね。

 やっぱりほら、あれだよ。ここは攻撃を受けたとあって、色々とイメージが悪かったから」

「ああ、わかるよ」

「でも政府はもう大丈夫だと10年以上も前に宣言していたし。当時は全く信じちゃいなかったけど――核だしな、もうここは毒されてどうにもならないだろうって思ってた。気の毒だなってね。

 でも、友人からここは良いところだって繰り返し勧められたんだよ。今じゃ、ハハ。自分も心からそう思うよ」

 

 核攻撃から2年後、政府はホープカウンティ市民の帰宅を許した――と説明文が表示されている。

 

(中略)

 

 スプレッドイーグルの前に立ち、バリーは快哉を上げた。

 

「あるとは風の噂で聞いていたけどね――信じられなかった。

 攻撃による混乱の後は何もかもが燃えてしまって、呆然とするしかなかった。でもここはフォールズエンドだ。消えたりはしなかったんだね」

 

(中略)

 

 ライ&シスターズ航空の看板の下。滑走路に立つエディ。

 そこに彼の名前を呼びながら近づいてくるのはここを経営する一族。ニック・ライと妻、そして2人の娘たちであった。

 ひとしきり抱き合って再会を喜び合う。

 

「彼はニック・ライだ。彼の一族はここの古くから住んでいるんだよ」

「そうさ!ここが我が家だ、だからここにいるんだ」

「お互い年を取った。でも――まるで嘘みたいだよ、君のインタビューを取ったあの倉庫がまだそこにあるんだもの」

「建て替えたのさ、会社と一緒にね。当然だろ!」

「ああ、ごめん。その、ちょっと涙が出てくるよ」

「なんだよ、それ。でもついにここまでやってきたんだな」

「君たちは僕の救世主だよ。君たちがいなかったら、君たちが助けてくれなかったら。僕は焼け跡の中から生きては出られなかった……」

 

 僕もニックも年を取ったけど、彼は今でもこの空を飛んでいるって話だった。

 家族は嫌がってて、墜落死するって注意するけど。俺はそんなにへぼにはなってない、真っ白な頭になってたけど彼はあの頃と同じでまったく変わっていなかった。

 

 ニックの会社は娘たちへと継がれ。老夫婦は孫たちと遊ぶのが今の仕事みたいなもの、だそうだ。

 僕が勘違いしていた倉庫は確かに新しいものだった。あの頃の映像を見直してみてたらそれがわかる――。

 

 シーンが変わると夕焼けの倉庫の中で、自慢の複葉機をいじっている若きニック・ライの姿があった。

 

 今はもうどこにもないこの会社で受け継がれてきた黄色の飛行機を大事に思い。

 これから生まれる子供――彼は息子だと言ったが、現実は違った――との未来を口にする。

 でもそれはないのだと、奴らがいて。皆が恐れているのだとニックの口調が変わる。

 

「俺は、戦争の経験はない。興味もなかったんだ。

 でもよ、俺の家族にアイツらが手を出そうっていうなら。話は別だ」

 

 倉庫の片隅に隠されていた機銃を運び出し、それを機体にとりつけていく。

 

「戦う覚悟ならできているさ。彼女の、保安官のおかげだ。

 ああ、やってやる。守って見せる絶対に!」

 

 映像はブラックアウトしていく。

 

(中略)

 

 暗い部屋の中、顔の見えない証人は証言を続けていく。

 

「エデンズ・ゲートは、聖書を時代に合わせて理解するっていう。ただそれだけの会でした。

 神の教えを理解しようと、ジョセフ・シードは皆を家族と呼んで。自分を(ファーザー)と、そう呼ぶようにと。

 

 それをカルト教団と呼んで、さげすむ人はいました。多かったと思います、彼らは理解できないと言って恐れてたんです。

 でもジョセフはそれを非難したり。攻撃するようなことは決して口にはしなかった。ただ彼らは無知なだけだと、神の声を聞こうとしないのはそのせいだって言って」

 

 教会の中、信徒を前に語り掛けるジョセフ・シードの写真が画面に入ってくる。

 

「暴動だと言われてますが。僕の記憶では、それはわかりません。

 でも混乱はあったとは思います。

 

 父は混乱を鎮めようと、家族に団結を訴えましたが。なぜかそれを他の人たちは憎悪としてとらえてました。

 僕らは互いに危機感を高めあっていたんだと思います。もうその頃には教団でも武装していて、なにか起きたら仲間を守ろうとしていた。危険な状態ではあったんです」

 

 ジョン・シードがバンカーらしき場所で、信者と共にライフルを構えて柔らかな笑みを浮かべている写真が。

 ジェイコブ・シードが数名を引き連れ、見回りをしているような写真がフレームインする。

 

「僕はあの夜が恐ろしい。あの女が、今も怖くて怖くて仕方がないんです。

 ジェシカ・ワイアット――保安官。今もそこにいます、恐ろしい女性(ひと)だ。

 

 彼女は法に携わるものでありながら、公然とジョセフの殺害を。僕らの家族をペギーと呼んで危険なものだと主張した。憎んでいたんです。

 そして人々に向かって攻撃を煽り、殺戮を行うことを命令もしました。僕の耳にはあの声が……まだこびりついて離れないんです」

 

 画面の背後に雑音によってほとんど聞き取れないが。

 女性によるエデンズ・ゲートといった単語がそこに混ざっているものが流される。

 

「僕は家族の――母と兄、一緒に山に隠れていました。

 町に近づけばどんな目にあわされるかわからないって、母が怯えていて。それでも父がいつか指示をくださるかもしれないからって、ラジオをつけて兄とひとつの毛布でくるまり、抱き合って震えてた。

 その時です。ラジオから彼女の声がしたんですよ。あれを間違えたりはしない。

 恐ろしい声で、恐ろしいことを言っていました。「もうペギーに怯えることはない」とか。「銃を持つペギーが戻ってこないホープカウンティを実現するんだ」とか」

 

 そこでいちど大きく呼吸をする。

 冷静になろうとしているのだろうか?

 

「朝が来た時、地獄が始まったんです。

 町の人間たちが銃を持って山狩りを始めた。隠れていた信者たちを引きずり出して、殺して回ったんです!保安官の言葉に従った!

 

 母とはぐれて、兄と2人で何日も危険な山の中を歩きました。

 こうなったらホープカウンティの外に脱出するしかないってなって――でも兄は捕まり。八つ裂きにされた。

 兄をなぶる男たちは笑っていて。町まで引きずって、吊るし首にしてやるって叫んでた。

 

 僕は震えていて、見ていることも出来ずにそこから逃げ出した。

 彼らは兄を助けたとは思えません。女も老人も、子供もお構いなしだったんです。兄は彼らが望んだように、きっと……」

 

 人影はこらえるように嗚咽を漏らす――。

 

 続いて画面が切り替わる。古くて荒い映像だった。

 ナレーションでバリーの声がする。

 

――当時の僕は、今の彼の証言とはまるで別の地獄を見ていた。

――そのひとつをここで紹介したいと思う。

――当時の混乱の中。さっき紹介したジェローム神父が助けた少年がいた。

――彼は映画監督になるという夢を持っていたが。僕がその子に会ったとき、彼の目は希望を失ってカメラを抱えて離そうとはしなかった。

――彼にも兄がいたんだ。

――エデンズ・ゲートは彼の兄を追い立てて殺した。少年をそのすべてを映像に収めていた。罪の証拠だと震える声で繰り返していた。

――僕は彼と話し。コピーを取るという約束でカメラを受け取った。そして持ち帰ることができた。

――彼は穏やかな表情になったけど、あの顔は忘れられない。

――少年は生き延びることは結局できなかったから

 

 牛のいない牧場で、青年を暴行する銃を持った男たちの姿が見える。

 そのうちに彼らは動かなくなった青年をひきずっていくと、かかしに縛り付け。布で目を隠し、距離を取った。

 音声には草むらに隠れている少年のものらしき荒い息がつづいているが。ライフルを構えると男たちは青年に向けて発砲する。

 

 5分ほどの映像はそれからかかしの青年の体が崩れていく様を克明に記録していた。

 内臓が飛び出し、それでも引き裂かれ続け。悲鳴はなく、痣の残る頭と肩、なんとなくついている腕だけが残っていた――。

 

(中略)

 

 ホープカウンティ町長のトレイシーと共にホワイトテイル自警団に見送られ。

 暴動の記憶を残す記念館をかねた事務所を出ていく。

 

――ホワイトテイル自警団の英雄の物語を聞いたところで、次に僕らは生きた英雄と会うことになっていた。

――ジェシカ・ワイアット保安官、署長。

――今も彼女はここにいます。この場所の治安を、人々の生活を守っている。

 

 トレイシ―と何事が笑顔で話しながら歩き続け、すると視界にホープカウンティ保安官事務所が見えてくる。

 その入り口には遠めでもわかるが、ひとりの女性が立っていた。

 

 あの頃よりも横幅が成長し、髪には多くの白いものが混ざっていて。

 しかしまだ老いを感じさせるものはそれだけで、しっかりと立ち。保安官が持つには似合わないデザートイーグルを腰に下げていた。

 

「保安官!ジェシカ保安官!

 僕はあなたにもっと早くに会いに来るべきでした」

 

 

 映像はこの後も生きた英雄へのインタビューへ。狂信者ジョセフ・シードとの決着へと続くのだが。

 この2時間を超えるドキュメンタリーは2024年の話題となり。その後、さらに再編集と映像の追加によって50分の12エピソードの番組となって再登場することになる。

 

 ホープカウンティ暴動の英雄、ジェシカ・ワイアット。

 それらを扱った15冊近い本のどれもがベストセラーとなり。カルト教団の暴走と、それに抵抗した人々の戦いに皆が感動し。同時に汚されたホープカウンティの名誉と価値を取り戻す役割を担った。

 

 英雄を望まなかったジェシカの人生でこの時が最も輝ける時代であった。




(設定・人物紹介)
・世界は壊れなかった
ニュードーンという新作が出てしまいましたが。原作では現実のように北との険悪な関係だけがわずかに伝えられているだけなので、このようになりました。
やっぱり中国とミサイル撃ちあうくらいでないとね、やっぱ設定に無理がある。


・ノースコリア
ここまで出来るだけリアルな名前は出さないようにしてきましたけど。面倒くさくなって思わず書いた。ここではファークライ的未来としての結果を書いてますが。
別になんにもないですので。癇に障ったからと噛みつかれても言えることないんで、スルー願います。よろしくお願いします。


・15年
本当はこの前に「ニック・ライの火星大戦争編」が入り。
ホープカウンティからアブダクションされた一家の、原作のDLCとは違うお話が入り。核が落ちて数時間後にフォールズエンドへ帰還。遠目にだが2人の最後の対決を目撃する、という流れがありました。
この作品は短編という計画で始めたのです。ええ、カットしましたよ!バッサリと。


・ドキュメンタリー
27話でメアリーなどフォールズエンドの住人の話を聞いていた男がここでようやく登場します。オリジナルキャラクター。

彼は核攻撃の後、ここでの記憶を封印して背を向けるのですが。血液の病にかかり、また別の地獄を見ることになりました。
残念ながらこの病は完治しませんでしたが、彼はさらに2度戦いに勝利します。そして仕事もこの後もいくつかのプロジェクトを成功させています。

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