ギルドの一角、私とゆんゆんが隣り合って椅子に座り、テーブルを挟んで正面にダクネスが座っている。
「なるほど、そのタイムマシン、とやらで過去から戻ってきたら、世界が魔王軍の手に落ちようとしていた・・・・と。」
ダクネスが、普段見せない理知的に考え込む姿勢を見せる。
カズマがいないこの世界。
ダクネスの変態キャラは、カズマの影響が強いのかもしれない。
「それは調べてみる価値がありそうだな。正直、我々はこのままだと魔王軍の進行に耐えられないだろう。歴史を変えるという反則技のようなものでも、今は藁にもすがりたいところだ。」
どうやら、ダクネスが手を貸してくれそうだ。
「改めてよろしく頼む。えーと・・・名前が・・・・」
「めぐみんです。」
「ゆんゆんです。」
ダクネスは顔が頬を引きつらせる。
「め・・・めぐみん?・・・に・・・・ゆんゆん?・・・・・あ、いや紅魔族だったか。」
「おい、今私たちの名前を聞いて微妙な表情をした理由を吐いてもらおうか。」
そんな話をしていた最中だった、
息を切らした冒険者がギルドに入ってきて叫んだ。
「ハァ、ハァ・・・みんな大変だ!!!!!魔王軍の幹部がこの街に来やがった!!!」
「なんだと!?早すぎる!!」
ダクネスは立ち上がり、その冒険者のもとに行く。
「現状は?相手はどれほどの規模だ?」
「ハァ・・・ハァ・・・ダクネスさん・・・相手はたった2人だけだ・・・正面の門を突破された・・・今は、中央通りで、近くにいた騎士たちと冒険者とで包囲しているが・・・いつまで持つか・・・」
「くっ!!すぐに現場に向かう!!」
そういってダクネスはギルドを駆け出していった。
ゆんゆんが私に声をかける。
「めぐみん!!!」
「ええ。私たちも向かいましょう。」
私とゆんゆんはダクネスの後を追って走る。
■■■
現場につくと、冒険者と騎士とが魔王軍の幹部らしき者から距離をとって包囲しているのが見えた。
近づくにつれて、そこに異様な空気が漂っているのがわかってくる。
この異様な空気は・・・・間違いない。
「やっと来たか!そこの、時をかける頭のおかしい少女よ!」
「なっ・・・!」
やっぱりこいつだ!!
仮面の悪魔、バニルだ!
どうやら私たちが残機を削った事実も変わってしまい、今も魔王軍の幹部をやっているようだ。
・・・というか、今この悪魔は何て言った?
「時をかけるって、私が過去に行って世界を変えてしまったことを知っているのですか。」
「あぁ、いらんことをしおって全く、おかげで魔王軍の幹部に逆戻りだ。せっかく、相談業も軌道にのり、離婚相談から過払金相談まで幅広く相談しやすいバニルさんとして巷でちょっとした話題になりつつあったところを!」
この悪魔は弁護士か何かを始めたのだろうか。
というか、辞めたいのなら魔王に辞表を突きつけるとかできないのだろうか。
悪魔の契約か何かだろうか。
いや、今はそんなことより・・・・
「カズマのことを!アクアのことを!知っているのですか!?」
私はバニルに詰め寄る。
「我輩は全てを見通す大悪魔だ。一部のファンから女体化されまくっているTS小僧と、チンパンジーとの比較動画をアップされる哀れなプリーストのことだろう。」
突然のメタ発言に、え?それ本当に当人たちですか?とも一瞬思ったが、見通す悪魔がいっているのだからそうなのだろう。
悔しいが、こんなふざけた悪魔でも、私の日常を共有できる者が現れたことに嬉しくなってしまう自分がいる。
妙な悪魔だが、私の大切な日常の不可欠な一員だったのかもしれない。
・・・・・・
「おい、魔王軍の幹部の者、めぐみんから離れろ!」
ダクネスがバニルに向けて剣を構えた。
「そうよ!めぐみんを懐柔しようなんて許さないわ!」
ゆんゆんがバニルに手をかざして魔法を放つ態勢になる。
この世界の2人が私のために戦おうとしてくれる事実に私は嬉しさを感じてしまう。
でも、私の知っている、人間が大好きなこの悪魔なら、街や人の破壊をしにここへ来たわけでは無いだろう。
「ダクネス、ゆんゆん、この幹部は見通す悪魔のバニル。どうやら私の知る世界のことも見通しているようです。私の知っている世界では敵対関係にありません。あなたたちとも知り合いです。」
「フハハハハハハ、その通りである。そこの、出番が多いはずなのに人気投票でパッとしない結果に終わる残念クルセイダーよ!久しぶりである。」
「なぁぁぁ!!」
ダクネスは剣を取り落としそうになる。
「フハハハハハハ、それから、そこの・・・・そこの・・・・・えーと、誰だっけ?」
「えぇぇぇぇぇ!!!!!」
ゆんゆんが今にも泣きそうな顔になる。
「なんつって!冗談冗談。いつも際どい格好でグッズ化されまくるR指定紅魔族よ、久しぶりである!・・・・おおっと!これは極上の怒りの悪感情、美味である!フハハハハハハ!」
ゆんゆんの顔が真っ赤になって、むぐぐぐぐってなっている。
私たちを囲う冒険者も、え?こいつ本当に幹部なの?って感じで戸惑っている様子だ。
少なくとも一触即発な空気はどこかにいった。
私は場の緊張が和らいだことを確認してバニルに尋ねる。
「バニル、あなたの後ろにいる、その奇妙な人物は誰ですか?幹部の誰かですか?」
バニルは彼の後ろにいる人物に親指を向けて紹介する。
「うむ。こいつは、地獄の公爵の一人、つじつま合わせのマクスウェルという。二つ名のとおり、物事のつじつまを合わせるという、二次創作の作者に極めて都合の良いトンデモ能力を持つ悪魔であるな。」
そういえば、アクアも二次創作がどうとか言っていた。
気になるけれども、今それは置いておこう。
そいつは、とても異様な悪魔だった。
金髪で左右の目の色が違い、ぞっとするくらい綺麗な顔立ちでバニルと同じくタキシード姿。なんといっても異様なのは、後頭部がまるっきり無いのだ。
ヒュー、ヒューと喘息患者のような息をたてている。
ただ、その悪魔からは公爵級にふさわしい途方もない魔力を感じる。
「こいつは、豚足領主の屋敷の地下に契約によって縛られて捕らわれていたのだ。だが、デストロイヤーの襲撃で領主責任が問われるゴタゴタの中、我輩がちょっと領主に接触してマクスウェルとの契約を解消するよう仕向けたのだ。ちなみに領主は今、行方不明になっている。」
バニルがニヤリと笑った。
豚足領主とは、ここらを治める領主アルダープのことだろう。前の世界でもダクネスの嫁入り事件など何かと関わりあいになることが多かった。
「それで、なぜその悪魔を連れてきたのですか?」
「うむ。貴様の知っている、もとの歴史に戻すことに、マクスウェルのつじつま合わせの力を利用しようと思ってな。」
え?
もとの歴史に戻す?
「それ!!詳しく聞かせてください!!!!!!」
私は悪魔の話に食いついた。
解決編入ります。
まぁ、一筋縄ではいかないのですが。