いつもより長いです。
分割しようか迷いましたが、説明回をグダグダやるのは良くないと思ったので一気に駆け抜けます。
ダクネスやゆんゆん、他の冒険者や騎士たちが私とバニルを囲う中、バニルは語りだす。
「まずは、あの小僧のことだが、あの小僧は異世界人だ。そして日本とはこの世界に存在しない国、異世界の国だ。」
「なっ・・・・・!!!」
いきなりショッキングな話しが飛び出す。
確かに、カズマはあまりに常識知らずなところがあったり、想像の斜め上の挙動があったけれども・・・一応、別の国の人だから、と納得していたけれども・・・
「そして、チンピラ女神だが、きゃつは正真正銘の女神である。日本の死者をこちらの世界に案内していたようだな。」
「・・・・・・」
確かに規格外の浄化能力や蘇生能力で、アクアには何かしら秘密があるのだろう、とは思っていたけれども・・・
これだけの話でもうお腹がいっぱいだ。
心を整理するため休憩をはさみたい。
しかし、バニルはこちらの心のうちなど知ったことかと言わんばかりに説明を続ける。
「では、なぜあの小僧がチンピラ女神とともにこの世界に来たか。それは、小僧が異世界で死んだからである。そして、死者を案内するあの女神によってこちらの世界に転生させられた、という経緯である。」
私は聞き漏らすまい、と悪魔の話に集中する。
「だが・・・・」
悪魔はニヤリと笑って続ける。
「小僧のこの世界への転生の遠因となったのは、あの女神が日本で小僧に祝福魔法をかけたことである。」
「・・・は?どういうことですか?」
「どういった法則が働いたのかは分からぬが、小僧が死んだのはあの女神の祝福魔法の影響だとうことだ。まったく、人殺しの祝福魔法など、本当に愉快なことをしてくれるネタの尽きないネタ女神であるな。フハハハハハハハハ!」
「・・・・・・・・」
なぜ、祝福魔法がカズマを殺すきっかけになったのだろうか。
いや、でも、アクアの祝福魔法ならあるいは・・・・・
「な、なるほど、アクアが祝福魔法でカズマを死に追いやり、死んだカズマをアクアが女神として案内してこの世界に連れてきた・・・・」
「・・・・・・・」
「ねぇ、めぐみん、それってマッチポンプっぽくない?」
「言わないでくださいゆんゆん、私もあえて口に出さないようにしていたのですから。」
でも、でもだ!
そのおかげでカズマはこちらの世界に転生し、私はカズマやアクアと会うことができた。
そう思うと、アクアの祝福魔法は私たちが出会うきっかけになったとも考えられる。
うん、多分そうだ。
そう思っておこう。
「・・・さて、今までの話が本来の歴史の話だ。」
バニルは一拍おいて続ける。
「では、なぜ小僧がこちらの世界に来ない、という我々の今いる歴史になってしまったか。そのターニングポイントはどこか、だが・・・」
「アクアの祝福魔法・・・」
私はぽつりとつぶやく。
「そう。貴様がタイムマシンで過去の日本でやってしまったこと、それは、あの女神が小僧に祝福魔法をかける前にこれに介入して、その事実を無くしてしまったことだ。その結果、女神の祝福魔法によって転生するはずだった小僧が転生しないという歴史が生まれてしまった。そして、今の状況がある、ということだ。」
「なるほど・・・・」
つまり、過去の日本で・・・
①アクアの祝福魔法がカズマにかけられた場合、カズマとアクアがこの世界に来る(本来の歴史)。
②アクアの祝福魔法がカズマにかけられない場合、カズマとアクアがこの世界に来ない(今私がいる歴史)。
・・・ということだろう。
正直、過去の日本の記憶が全く無いので、祝福魔法に介入したといわれても、覚えがないのだけれども。
「では、私は、もう一度、過去の日本に戻って、カズマとアクアの邪魔をしないようにすればいいのですね。」
「その通りだ。ただ、問題はどうやって過去に行くか、だ。」
「それは、あのタイムマシンで過去に戻ればいいのではないのですか?」
「それは不可能だ。あのタイムマシンは可動限界を迎えており、修復する技術がこの世界には無い。」
仮面の悪魔はきっぱりと言い切る。
「ではどうするのですか?・・・後ろのその悪魔の力を使うのですか?」
「勘違いするな。マクスウェルの力がいくら強大だとしても、これ程狂ってしまった歴史のつじつまを合わせるのは不可能だ。歴史改変をするのは、小娘、貴様だ。マクスウェルのつじつま合わせの力は歴史改変後の微調整のため使う。貴様が歴史改変に成功したとしても、もとの歴史と些細ずれが生じてしまうだろうからな。その部分のつじつまを合わせるのだ。」
私は後ろの奇妙な悪魔を見て顔をしかめる。
「悪魔にそんなことをさせて、何か代償でもとられるんじゃないですか?」
「もちろん代償は頂くことになるな。だが、貴様はもうこのマクスウェルに前払いしておる。なぁ、マクスウェルよ。」
「ヒュー、ヒュー・・・君の絶望の悪感情、とってもとっても美味しかったよ!!」
マクスウェルと呼ばれた悪魔は無邪気に笑う。
「ヒュー、ヒュー・・・君の望む通り、手を貸すよ!!」
私はバニルにジト目を向ける。
「あの・・・全部知ってて、私が絶望する姿をこいつに食わせるために今まで傍観を決め込んでいたのですか?」
「フハハハハハハ!流石は紅魔族!賢いではないか!おおっと!これまた美味なる怒りの悪感情、馳走である!フハハハハハハ!」
・・・・・やっぱりこの悪魔は嫌いです。
「・・・で、タイムマシンも使えないとすると、一番肝心な、過去に行くための方法は具体的にどうするのですか。」
私はバニルに強い口調で問う。
「ふむ。それなのだが、忌々しい神々がタイムリープなどというこれまた忌々しい秘術を隠し持っているようでな。」
「ようで?貴方の力で見通せないのですか?」
「我輩の見通す力は、神気によって阻まれてしまうからな。それに、神々にとってもタイムリープは秩序を崩壊させる禁忌とされる程の絶大な力のようで、実際に使われることは滅多に無いらしい。」
「神にお願いしてもタイムリープできる確証が無いのですね・・・」
私はハァ、と息を吐く。
「それで、どうすれば神とやらに会えるのですか?」
まぁ、さっきのカズマの転生の話でうすうす答えに気づいているが。
「簡単だ。神に会うには、死ねば良いのだ。」
やっぱり。
ハァ、と私は再度息を吐く。
そして、バニルに言い放つ。
「では私を神の下まで送ってください。」
・・・・・・
数舜、場が鎮まる。
「・・・何言っているのめぐみん!!こんな悪魔のいうことを信じるの!?」
「そうだぞ!私の前でこの街の者をみすみす殺させてなるものか。」
ゆんゆんとダクネスが私を守る形でバニルとの間に割って入った。
「ゆんゆん、ダクネス・・・・」
私はそんな彼女達にできるだけ穏やかに告げる。
「私の知ってる歴史では、ゆんゆんはこの悪魔が一番の友達でしたよ。」
「え!?友達??」
ゆんゆんが顔を赤くしてバニルの方をチラチラ見る。
「ダクネスもこの悪魔に体を乗っ取られて、ノリノリでしたね。意気投合してましたよ。」
「体を・・・乗っ取られるだと・・・」
ダクネスが顔を赤くしてバニルの方をチラチラ見る。
なんてちょろい2人組なのだろう。
「それに、この悪魔は利害関係が一致していれば、それなりに信頼できるやつです。」
多分。
「でもでも!今の話だと、タイムリープできる可能性なんてほぼ無いに等しいじゃない!」
ゆんゆんがすかさず反論する。
「ゆんゆん、今は他に方法がありません。可能性が無いと言い切れないなら、私はそれに掛けたいんです。」
「でも・・・!でも!死ぬのよ!?わかってるのめぐみん!?」
ゆんゆんは真っ赤になって私に詰め寄る。
「わかっています。それでも、本来の歴史は、私にとって命を懸けるに値する場所なのです。」
「で、でも・・・・!でも・・・だって・・・」
ゆんゆんはそのまま黙ってしまった。
ダクネスは私の方を向き問う。
「しかし、この悪魔の言うとおりにするとして、そのカズマという男を祝福魔法?で殺すことになるのだろう?いいのか?お前の大切な者なのだろう。」
「カズマには本当に悪いと思います。もしかしたら、カズマは今頃、二ホンで幸せに暮らしているのかもしれません。」
私は、ダクネスの瞳をまっすぐに見て伝える。
「それでも・・・・すごく、すごく、わがままかもしれませんが、私はカズマとダクネスとアクアと一緒にすんでいたあの屋敷にどうしても帰りたい。」
そして、私は、決意を込めて告げる。
「私がカズマを、絶対、絶対、二ホンにいた時よりも、もっと幸せにしてみせます!出会ったことを、カズマに後悔なんてさせません!!」
「そうか・・・。」
ダクネスは頷いた。
そして、続けて私に問う。
「その、聞きたいのだが、アクアとカズマとはどんな者たちなのだ?私もパーティーの一員だったとのことだが、どんなパーティーだったのだ?」
「そうですね・・・」
私は、2人の姿を思い浮かべる。
「アクアは、いろんなものに好奇心を示す子供みたいな女の子です。いつもちょろちょろしていて、喜怒哀楽が激しいですね。屋敷では、よくカズマに泣かされています。人の話題の中心になることが多くて、特に宴会では場を盛り上げる天才的な才能を持っていますね。」
「カズマは、最弱職の冒険者です。天性の引きこもり気質で一日中ゴロゴロしていることも多いです。一時、億単位の借金を作っていました。私達に向かって暴言は吐くし、女の子を見ると鼻の下を伸ばしたり、私たちもたまにセクハラ被害を受けていたりします。」
「なんて素敵な殿方なんだ!是非とも婿に欲しいところだ!」
ダクネスはやっぱりどの歴史でもダクネスだった。
「私たちは4人で屋敷に住んでいます。」
そこで、ゆんゆんが恐る恐る聞いてきた。
「・・・ねぇ、めぐみん、私は?」
「ゆんゆんは一緒じゃないですよ。一人で宿を拠点にしているようでしたよ?」
「なっ!?」
どの歴史でもぼっちなゆんゆんが涙目になる。
私は続けてダクネスにパーティーのことを話す。
「私たちのパーティーは、デストロイヤーとか魔王軍幹部とか強力な敵を相手にすることも多かったですが、カズマの機転や皆の活躍で何とか討伐に成功します。王都は健在で、私たちの活躍を耳にしたアイリスが、冒険話を聞きにくるなんてこともありましたね。」
ホームシックを拗らせている私の口が勝手に動き出す。
「私たち四人は屋敷で毎日、賑やかに暮らしています。カズマがゴロゴロしているところにアクアが茶々を入れて、泣かされ、ダクネスが嬉々として混ざっていったりして。みんなで爆裂散歩に行ったりして。・・・・」
「・・・それと、ちょむすけという私の使い魔がいます。最近、成長してきたようで、アクアが隠れて餌でもあげているのでしょうか。それから、アクアが大事にしているゼル帝というひよこがいるのですが、・・・」
「・・・・それと・・・その・・・ダクネスと私は・・・カズマに惚れています。2人でカズマのことを話していたら盛り上がって、いつの間にか朝を迎える日もありましたね。・・・・」
「・・・・あ、最近のダクネスはカズマに対するボディータッチがちょっと酷いと思うのであれは・・・って・・・・ダクネス?」
ダクネスは真剣な顔で私の話を聞いていた。
目からぽろぽろと涙をこぼしながら。
「ダクネス?」
「あ、あれ?何だ。何故かとても懐かしい気持ちになって・・・」
ダクネスは涙を、グシッと拭って、
「そうか・・・それは、必ず取り戻さないとな。」
と、力強く私に頷いてくれた。
ゆんゆんがとても不安そうな声で私に問いかける。
「・・・めぐみん、私を・・・ライバルをおいていくの?」
私は、ゆんゆんに向かって応える。
「ゆんゆんには本当に感謝しています。ゆんゆんがいなければ、私はこの世界で壊れてしまっていたかもしれません・・・」
「めぐみん・・・・めぐみんの頭が壊れているのはこの街の・・・・イタっ!もう!何よ!まだ途中までしか言ってないじゃない!」
おっぱいを叩いた私に向かい、ぷんぷん怒ってゆんゆんがわめく。
「勝負はいったんお預けです。私のライバルにして最高の親友のゆんゆん。ちょっと歴史を変えてきますので、少しだけ待っていてくださいね。」
ゆんゆんは顔を赤くして黙った。
「待たせました。」
私は、バニルに向きなおって言う。
「これからの確認です。私はこれから死に、神のところまでいってタイムリープの秘術で過去に戻る。そしてカズマとアクアの接触に介入せず、アクアに祝福魔法をかけさせる・・・。これでよいのですよね。」
「うむ。それで過去から戻ってきたときにはもとの歴史にもどっているであろう。」
「思ったのですが、私はどうやって過去の日本から帰ってくればよいのですか?」
バニルは、淡々と説明する。
「タイムリープは、自分の記憶をそのままに全ての時間を巻き戻す、といった時間移動の方法だ。」
なるほど。つまり、大人になった人が、記憶を保持したまま、子供時代をやり直す、とか、そういった方法なのだろう。
「汝が過去の日本にいた間、可動限界に達していないタイムマシンがそこにあっただろう。それで戻ってくればよい。」
さらに、バニルは、ふぅむ、と顎に手を当てて言葉を続ける。
「もっとも、タイムマシンを見つけた当時よりも前の時間に戻って、そもそもタイムマシンに乗らないようにすれば、過去の日本に影響を与えることも無くなるだろうから、それでも歴史は元通りだろうな。」
私が過去の日本に行かなければ歴史が変わらなかったのだから、過去の日本に行く前の爆裂散歩の時点で、タイムマシンを爆裂してしまえばいい、ということだろう。
待った、タイムリープで時間を巻き戻せるということは・・・
「おぉっと!くれぐれも、小僧がやたらカッコよく見えた紅魔の里の一件や、小僧と布団の中でイチャイチャやっていたあの時点まで戻ろうとするでないぞ!そんな長時間遡れば、また歴史に変な影響を与えてしまうかもしれぬからな!フハハハハハハ!」
「・・・・・・・・」
・・・・もう今爆裂魔法でこの悪魔の残機を削ってやろうか。
「わかりました。では、さくっとやっちゃいましょう。」
私は仮面の悪魔に向けて言った。
「うむ。我輩自ら、貴様を神のいる天界まで送ってやろう。」
バニルが、殺さずの信念を曲げて宣言する。
いや、歴史がもとに戻れば、きっと私を殺すという事実が無くなるからノーカンだろうか。
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私の目の前に仮面の悪魔が立っている。
「覚悟はよいな、紅魔の娘よ。ここには、あの薄汚い女神もいない。蘇生は不可能だ。」
悪魔が言い放つ。
傍らにいるゆんゆんが泣きながら言う。
「やめて・・・めぐみんを殺さないで・・・」
・・・・・・
私はそんなゆんゆんに笑い顔を作って見せる。
そして、
「抵抗はしません。ひと思いにやってください。」
悪魔に向けて言う。
「ふむ。その度胸や良し。では、さらばだ。」
次の瞬間、ザンッという音とともに首に激痛が走る。
視界に広がる世界がゆっくりと回っている。
私の首が宙を舞ったのだ。
私の目に映る絶望的な世界は暗転していって、
急速に意識が闇に飲まれていく・・・
その最中、私は何度も何度も反芻する。
絶対に、絶対に、カズマ達の待つ屋敷へ帰るんだ・・・・
ちょっと情報量が多かったと思いますが、説明に納得できましたか??