久々の天界での話。
タイトル詐欺甚だしい二次創作とは、この二次創作のことです。
【めぐみん視点】
気がつくと私は、一面真っ白な部屋にいた。据えられた椅子に座っている。
目の前にはこれぞ聖母というような神々しい美女がひとり。
・・・神々しいのですが、何か違和感がありますね。
うーん・・・胸が不自然?
美女は私に向けて口を開く。
「めぐみんさん、ようこそ死後の世界へ。私は、あなたの死後の案内をする女神エリス。辛いでしょうが、あなたの人生は終わってしまったのです。」
「エリス・・・・」
エリスといったらエリス教の御神体だ。国教として崇拝されており、お金の単位にまでなっている。
エリスはこの世界で最も有名な存在といっても過言ではない。
エリスは辛そうな表情で言葉を続ける。
「めぐみんさんは、魔王軍の幹部に首を両断されたようですね。さぞ、痛くて苦しかったでしょう。」
そうだ、私はバニルに首をはねられたんだ。
どうりで首のあたりがジクジクすると思っていた。
いや、今はそれよりも・・・・
「あなたには二つの選択肢が用意されています。記憶を消去してこの世界で赤子からやり直すか、天国に行って穏やかな日々を送るか。」
「どちらも選びません。」
「え?」
私の返事にエリスはきょとんとなる。
私がバニルに殺された理由、それは、神の秘術タイムリープで過去に戻るためだ。そして、歴史を元に戻して、カズマ達の待つ屋敷に帰るんだ。
「私をタイムリープさせてください。」
エリスの眉がピクリと動く。
「できません。」
エリスは厳しい口調で私の申し出を拒絶した。
「めぐみんさんには、先ほど伝えた二つの選択肢から選んでいただきます。この世界は魔王軍に滅ぼされつつありありますので、私としては、是非とも赤子となり、この世界を救う英雄となっていただきたいところです。」
「・・・・この世界を救うのであれば、歴史を改変させるのが一番だと思うのですが。」
「・・・・・・」
エリスは真剣な表情になり、無言で私をまっすぐに見る。
そのまま数秒、私とエリスは視線を交差させる。
やはりタイムリープは神にとっても滅多に用いることができない代物なのだろう。どうにかエリスを説得できないか。
私はエリスに向けて言葉を続ける。
「私は、タイムマシンで歴史を変えてしまいました。今、魔王軍に滅ぼされつつあるこの世界は私が招いてしまった状況です。本来の歴史では、カズマとアクアという冒険者がこの世界に降り立ちデストロイヤーや魔王軍の進行を止めるはずでした。」
「アクアって・・・・アクア先輩が・・・・?」
「そうです。女神アクアはカズマと一緒にこの世界に来たのです。でも、私がその歴史を変えてしまいました。お願いです、エリス。元の歴史に戻すために、手を貸してください。」
「そんな馬鹿な・・・信じられません。」
「でも本当のことなのです。」
エリスは依然として真剣な眼差しで私を見ている。
「どのように歴史を変えたのですか。」
「ノイズという国の研究者が作ったタイムマシンに偶然乗ってしまい、過去の二ホンに行ったのです。」
「あの罰当たりな国ですか・・・」
エリスは殊更に顔をしかめる。
私は話を続ける。
「過去の二ホンでは、本来、アクアがカズマに祝福魔法をかけるはずでした。」
「日本でアクア先輩が・・・と、いうことはあの時・・・」
エリスは心当たりがあるように呟く。
私は話を続ける。
「ですが、私が介入して、その祝福魔法をかけたという事実を無くしてしまったようです。それで、カズマの転生しない歴史に改変されてしまいました。」
「・・・アクア先輩の祝福魔法が、カズマさん?という方のこの世界への転生のターニングポイントだった・・・ということですか?」
「はい。そうです。」
この女神様はアクアより数倍ものわかりがよさそうだ。助かる。
と思うも束の間、エリスはとても厳しい表情で言い放つ。
「めぐみんさん、仮に今の歴史が変えられたものだとしましょう。それならば、変わってしまった今の歴史こそが真実の歴史です。仮に選択肢を間違えてしまったとしても、それを糧に歴史は積み上がっていくものなのです。自分に都合良い歴史にしたいとは誰もが思うこと。誰か1人だけに歴史改変の手段を与えることはできないのです。」
エリスは毅然として告げた。
「それに、タイムリープは常に一方通行であるはずの時間を捻じ曲げるもの。秩序を維持することを責務とする我々神々が、おいそれと使っていいものではありません。」
「でも!!このままでは魔王軍にこの世界が滅ぼされてしまいます!!!」
私は声を張り上げた。
「女神としてそれでいいのですか!?世界が滅ぶのを黙って見ているのですか!?」
「もちろん、この世界を救うために、他の世界から強力な武器や能力を持った転生者を招いて対応にあたっています。」
「でも、転生者が来ても、魔王軍にここまで圧されているのですよね!?」
「・・・・・・」
「カズマやアクアの力が絶対に必要なのです!だから・・・・!!!」
「めぐみんさん・・・・」
エリスは声を低くして私に告げる。
「我々が取れる手段をとっても魔王軍に滅ぼされることがこの世界の運命ならば、それが歴史の理なのでしょう。タイムリープを使って、歴史を捻じ曲げても良い理由にはなりません。」
「・・・・ッ!!!」
建前では駄目だ・・・・
私の本心を訴えるしかない。
「私は、前の歴史に、大事な仲間と大事な場所があります。どうしても、どうしても仲間のもとに帰りたいのです。」
「・・・・・・・・・」
「お願いです!エリス!私に協力してください!」
「・・・・・・・・・」
エリスは厳しい表情を崩さない。
「死んだ人には誰しも心残りがあるものです。めぐみんさんと同じように仲間のもとに帰りたいと訴える方がいます。しかし我々はその申し出を受けることはしていません。」
「ぐっ・・・・・・!」
私は椅子から腰を下ろして土下座の格好になる。
そしてエリスに乞う。
「・・・お願いします!どうしても!どうしても帰りたいのです!」
「・・・顔をあげてください、めぐみんさん。」
何度も乞う。
「お願いです!エリス・・・タイムリープしか手段が無いのです!」
「駄目です。」
何度も何度も乞う。
「・・・お願いです・・・どうか・・・お願いします・・・」
「すみません・・・何度乞われようともそれはできません。」
しかし、エリスは首を横に振るだけだった。
駄目だ・・・・・どうすれば・・・・・どうすれば・・・・・
私はエリスを睨んで、
「・・・・・・・・爆裂魔法でここら一帯を吹き飛ばしますよ。」
脅しにでる。
「そんなことをすれば強制的に地獄送りです。タイムリープなんて絶対に不可能になります。」
駄目だ・・・
エリスを説得できそうにない・・・
「女神チェンジで・・・」
「どの女神でも同じです。タイムリープが許されることはありません。」
「・・・・・・・・・」
エリスは表情を少し穏やかにして、私を包み込むよう言う。
「さぁ、めぐみんさん、どちらになさいますか?この世界のことを考えてくださるのであれば、是非とも赤子に転生して魔王軍を撃つ矛になっていただけませんか?貴方ならば新たな人生でも強力な魔術の素養を持てると思いますよ。」
「あの・・・・タイムリープを・・・・」
「できません。」
「・・・・・・・・」
あんなに絶望して、
「タイムリープを・・・」
「駄目です。」
あんなに寂しい思いをして、
「タイムリープを・・・・」
「無理なのです。」
あんなに痛い思いをして、
「タイムリープを・・・・」
「・・・・・・ごめんなさい。」
・・・・・せっかくここまで来たのに。
「わ・・・・私は・・・・」
「駄目です。」
「・・・・か、帰りたいんです。」
「・・・・・・・・」
カズマ達とは・・・もう会えないの?
あぁ、もう。
涙が溢れてくる。
私はこんなに泣き虫だったのか。
「たいむりーぷを・・・・か、かじゅまと・・・・あくあと・・・・だ、だくねすのいる・・・あの屋敷に・・・・」
「ダクネス・・・?」
エリスがぴくりと私の言葉に反応する。
「わ、わたしを・・・うぐっ・・・え、えりす・・・どうか・・・・たいむ・・・・りーぷさせてください・・・」
「めぐみんさん・・・・」
エリスが困った顔をする。
「タイムリープを使わないのは神の都合というだけではありません。めぐみんさんにとっても、物凄く危険なのです。」
エリスは言葉を続ける。
「まず、そもそも成功しない可能性が高いのです。失敗するとめぐみんさんの存在自体が永遠に歴史の狭間を彷徨い続けることになります。仮に成功しても、狙った日の狙った時間に送ることは困難です。天界がタイムリープを察知すると妨害もあるでしょう。私の最大限の力でも成功率は5%未満でしょう。」
ハァ、とエリスはため息を吐く。
「仮にタイムリープに成功したとしても、とても強力な天兵という天界の兵士に追われる可能性があります。天兵に捕まれば、問答無用で地獄送りです。永遠に地獄で苦痛を味わうことになります。」
エリスは頬をぽりぽりと掻いて困った顔をする。
タイムリープを使わないのは、本心から私のことを思ってのことなのだろう。
エリスは優しい声で続ける。
「どうか、私の手でそのような不幸の道案内をさせないでください。さぁ、次の人生ではもっと素敵な出会いが待っているかもしれませんよ。」
・・・・・でも私は・・・・・
涙をぐしっとぬぐう。
「わたしにとって・・・かずまとあくあとだくねすいじょうに・・・すてきなであいはありません。」
「ダクネス・・・」
私はずずっと鼻水をすする。
「・・・ばくれつまほうしかのうのないわたしが・・・ようやくみつけた・・・いばしょなのです・・・」
「・・・・・めぐみんさん、ひとつ問いたいのですが。」
エリスが私に問を発する。
「ダクネスも貴方たちと一緒のパーティーなのですよね?彼女の様子はどうだったでしょうか。貴方たちとの関係はどうでしたか。」
私はダクネスの姿を思い出す。
「だくねすも・・・ぐずっ・・・・わたしと同じように・・・・カズマやアクアのことをかけがえのない存在と感じていると思います。」
私はもう一度鼻水をすすり、深呼吸をして言葉を続ける。
「ダクネスが・・・・・借金の肩代わりに嫁に行くという事件が起こったのですが、それは私たちが作った借金の肩代わりでもありました・・・・カズマもアクアも、もちろん私も・・・ダクネスの望まぬ嫁入りを阻止しようと必死になって・・・」
アクアは必死になっていただろうか?まぁ、いいか。
「ダクネスは・・・ちょっと変態が強いですが・・・私は彼女以上の強固な前衛を知りません。私が強敵相手に爆裂魔法を振るえるのは彼女が私を敵から遠ざけてくれているからに他なりません。カズマもアクアもダクネスを支えに感じていると思います。私たちのパーティーには不可欠な存在です。」
そう、彼女は肝心な時に役に立たないとか言われるが、私は決してそう思っていない。
いつもパーティーの土台を支えて、守ってくれているのはダクネスだ。
華となる立場ではないが、私たちの活躍は彼女の存在無くしてありえない。
「そうか・・・・ダクネス、友達できたんだね・・・信頼してくれる仲間ができたんだね・・・」
エリスは頬をぽりぽりと掻きながら、優しい声で呟いた。
そういえば、なぜエリスはダクネスのことだけ呼び捨てなのだろうか。
それに頬をぽりぽりとかくこの動作・・・・
それに、この瞳に髪・・・声もなんとなく・・・・
私はエリスと出会った時に感じた違和感が晴れていくのを感じた。
不自然な胸の違和感じゃなかった。
「・・・・もしかして、クリス?」
「え?」
エリスは目を見開いて狼狽する。
「ななな、何を言っているのですか!?」
「銀髪盗賊団のお頭ですよね!!!」
「銀髪盗賊団??」
なんということだろう、世間を賑わす大盗賊にして女神なんて反則だ。
設定盛られすぎでずるい。
私はぐしっと腕で目元の涙をぬぐい、エリスに伝える。
「元の歴史では、クリスとカズマが二人で銀髪盗賊団を名乗っていました。クリスは銀髪盗賊団のお頭で、カズマのことを助手くんと呼んで信頼しているようでした。銀髪盗賊団は神器回収を主な目的としつつ、悪い貴族なんかを狙って平民を助ける正真正銘の義賊です。王都を賑わす義賊でした。私の憧れです。」
「そうですか、そんな歴史が・・・」
エリスは目を細めてつぶやく。
「王都を賑わす、義賊・・・か・・・」
この歴史の王都は陥落したようで、思うところがあるのだろう。
エリスは憂いを帯びた表情となる。
「私も銀髪盗賊団に憧れて盗賊団を結成しました。銀髪盗賊団を陰から支える下部組織みたいな組織です。・・・だから、私にとってもクリスはお頭みたいな存在です。」
そう、私は、憧れたのだ。目の前の彼女の義賊としての姿に。
「・・・・・・・」
エリスは静かに私の話を聞いていた。
私は、一縷の望みをかけてエリスに乞う。
「ですから、お頭・・・・」
「不出来な部下を・・・・」
「助けてくれませんか・・・?」
・・・・・・・・
エリスは静かに目を瞑る。
そして、そのまま私に問う。
「カズマさんにアクア先輩、ダクネスに、それからめぐみんさんは、今のこの荒廃しきった世界を変えることができるんですよね?この世界を救う英雄になれるんですよね?」
「当然です。」
エリスの問いに私はしっかりと返事を返す。
エリスは、フゥと息を吐いて、呟く。
「部下を助けるのも、お頭の努めか。」
「え・・・・?」
そして、エリスは開眼する。
「わかりました。実は私、秩序に背いてまで大事なものを取り戻す、そういう熱い展開、大好きなんですよ。」
そう言ってエリスはニカッと笑った。
それは、私の憧れるお頭の笑みだった。
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「いいですか。これからめぐみんさんをタイムリープによって転生させます。強調させていただきますが、この転生方法は禁忌中の禁忌です。どれくらい禁忌かというと、設定で行き詰まった二次創作の作者が、もういいや、設定盛っちゃえ、タイムリープさせちゃえ、とご都合主義に走るときに使うくらい禁忌なものです。」
なぜみんな二次創作で例えたがるのだろうか。
そもそも二次創作ってなんなんだろう。
「めぐみんさんは、どの時点まで戻ろうと考えているのですか?」
エリスが私に問いかける。
「えーと・・・二週間前に私はもとの歴史でアクアと散歩にでかけています。その時に偶然タイムマシンを見つけて乗ってしまい、過去のニホンに遡って歴史を変えてしまったので、その散歩の時点に戻ってタイムマシンに乗る前にタイムマシンを破壊したいです。」
「わかりました。ただし、先ほども説明したとおり、狙った時点にピンポイントで戻れる確証はありません。」
「そして、一つ、忠告です。」
エリスは真剣な顔で私に告げる。
「仮に、もう一度日本に行くことになったら、間違っても、日本で爆裂魔法なんて使わないでください。日本という国は、めぐみんさんが想像するよりずっとずっと平和です。日本で爆裂魔法の一発でも放てば、世界中を巻き込み大騒動になりかねません。取り返しのつかない程に歴史は歪曲するでしょう。日本からの転生者を招いているこちらの世界への影響も大きいものと思います。」
ニホンには爆裂魔法は存在しないのだろうか。まぁ、この世界でも爆裂魔法を使う者はほとんどいないのだが。
「わかりました。」
私はエリスに返答する。
そして、エリスは微笑みつつも、少し困った顔をして、ハァ、と息をつく。
「これで私も女神追放ですね。」
「え?」
エリスは頬をポリポリ掻いて言う。
「タイムリープでの転生というのは、それ程に罪なことなのです。」
無性にエリスに対して申し訳のない気持ちが湧いてくる。
「あの・・・・」
何か言わなくてはと思い口を開いた私を遮り、エリスは言う。
「大丈夫です。もとの歴史に戻すことができれば、私がめぐみんさんをタイムリープさせる理由もなくなります。つまり、今ここでタイムリープさせるという事実も消えるでしょう。この罪は不問です。」
「エリス・・・」
本当にそんなにうまくいくのだろうか。
「そんな不安そうな顔をしないでください。確かにとてつもなく危険で分の悪い賭けです。ですが、私、賭け事で負けたことは無いんですよ。なんたって・・・・・」
エリス様は笑みを浮かべる。
「私は、幸運の女神様ですからっ!」
本来、有り得ないことだというのはわかる。
私は神に祈ることなどほとんどないが、エリスには本当に感謝だ。
「エリス、絶対に歴史を変えてきますね。」
できるだけ力強く言う。エリスに私の決意が伝わるように。
エリスは微笑み、頷いてくれた。
■■■
「では、始めます。」
エリスはこちらに両手を向けて、詠唱を始める。
と、私の周りの空間にとてつもなく膨大な神気が渦を巻く。
エリスの額に大粒の汗が吹き出す。
浮遊感があったと思ったら、私の体が宙に浮いていた。
私たちのいる空間にバチバチと太い電流が走り出す。
空間が大きく揺らぐ。
エリスが詠唱を終えて、私に向けて大声で言う。
「めぐみんさん・・・・いや、めぐみん!!!」
エリスはお頭がそうするように、ニカッと満面の笑みを私にくれる。
「それじゃあ歴史改変・・・・・」
エリスは片手を大きく上げ、指を鳴らす。
「いってみよう!!!」
「エリス!!!本当にありがとうございます!!!!」
私が叫んだ瞬間、私の周りの景色がどんどん巻き戻っていく。
あ、バニルに首をはねられた時だ。
と、思った瞬間、ゆんゆんとダクネスが私に向けて真剣に何かを言っている。
と、思った瞬間、ゆんゆんが私と並走している。逆走しているのがなんだか滑稽だ。
ダクネスに泣きつく私、
タイムマシンを調査する私、
ゆんゆんに泣きつく私、
そして、過去のニホンへ・・・・
・・・・と、その時、バチン!と、大きな音がして、目の前が暗転する。
・・・まさか、タイムリープ失敗!?
天界の妨害だろうか!?
これまで感じていた浮遊感が無くなっていき、体が重さを感じ始める。
い、意識が・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・