この素晴らしい天界に祝福を!   作:勾玉

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今日は2話更新です。
めぐみん編大詰めです。



第19話 ただいま

タイムマシンのところへ戻る道の途中、そいつは待ち伏せていた。

 

 

「貴様が禁忌を犯して過去に転生した紅魔族の娘だな。私は天界の天兵だ。」

 

 

異様な気配を放つ、翼の生えた男だ。

一目見ただけで強キャラであることが伺える。

エリスが言っていた天界の追っ手のようだ。

 

 

「エリスは・・・無事なのですか。」

「あの女は神の座から追放された。今は天界の一角の牢の中だ。近いうちに地獄に送られるだろう。」

 

 

その原因が私にあることに胸が痛む。

 

 

「天界規程により、禁忌を犯した貴様には転生も天国送りも認められぬ。地獄送りとなる。ここで引導を渡しに来た。」

 

 

そういって天兵が手をかざすと、一瞬にしてその手の内に光の槍が収まる。

 

 

「死ね。」

 

 

と、言った瞬間、天兵が物凄い速さで私に接近してきた。

 

 

ヤバい。狩られる。

 

 

 

「ライトオブセイバー!!!」

私は叫ぶと同時、杖に爆裂魔法の光を込める。

 

 

 

「!!!」

天兵は私の前で急制動し、私と距離をとる。

 

 

 

「む、その光は上級魔法では無く、爆裂魔法の光か。姑息な手を使いおって。」

 

 

もちろん私はライトオブセイバーなんて使えない。ハッタリだ。

カズマっぽいこずるいやり方が伝染ってきた気がする。

 

 

 

「貴様、この日本で爆裂魔法を放つつもりか。日本で爆裂魔法など使えば取り返しのつかないほど歴史が狂うぞ。」

「・・・・・・」

 

 

そう。私は、歴史をもとに戻すためにここまできたのだ。エリスにも、日本で爆裂魔法を使えば間違いなく歴史があらぬ方向に変わると忠告されている。

 

 

 

「まぁよい。これで終わりだ。」

 

 

天兵はそう言って、ぶつぶつと詠唱を始める。

 

天兵の前に人の大きさ程の魔法陣が浮かび上がる。格好良い。

 

って、見惚れていてどうするのですか!!!!

 

 

このままだとヤバいです!死にます!

 

 

あぁ、魔法陣の輝きが増してきました!

 

 

地の文が敬語になってしまうくらいテンパっています!

 

 

もうなりふり構わず爆裂魔法で終わらせたいのですが!!

 

 

 

天兵の魔法が発動する・・・

 

 

 

・・・・・・

 

 

・・・・・・

 

 

・・・・・・

 

 

 

『ちょっとあんたら!!私の世界で何やってるの!!』

 

 

甲高い叫び声。

 

毎日屋敷で聞いていたはずの彼女の声だ。

 

彼女の姿は見えない。天界から直接声をかけてきているのだろうか。

 

天兵の目の前の魔法陣が掻き消える。

 

「む、女神アクア様!?」

 

『あんたはエリスのところの天兵ね!それに、あなたはさっきのコスプレ嬢!その光・・・爆裂魔法!?エリスのところの紅魔族の子ね!エリスはあとで説教ね!まったく!』

 

そして、パチンという指を鳴らす音と共に、周りの景色が歪む。

 

次の瞬間、私と天兵は別の場所に飛ばされていた。

 

どこまでも真っ白い床が続く何もない空間だった。

 

 

『ほら、そこならいくら暴れても、外に影響はないでしょ。喧嘩ならそこでやってちょうだい!』

 

「アクア様!!あなたにも通達が行ってませんか!?女神エリスがタイムリープの禁忌に触れ投獄されたと!それで紅魔族がこの世界に送られたと!」

 

『はぁー?私さっきまで出かけてたから通達なんてわかんないんですけど!てか、パッド女神ならさっきまで私のとこにいたんですけど!アンタ、ちゃんとわかるように説明しなさいよ!!』

 

「・・・ですから!!」

 

 

私はアクアと天兵のやりとりを唖然と眺める。

 

・・・たまに、アクアは美味しいところを持っていく天才に感じることがある。

 

「・・・・全く・・・アクアは・・・・・」

 

こんな状況なのに、何故か笑みが浮かんでくる。

 

 

 

私は杖先を天兵へと向けた。

 

 

 

 

 

「・・・くっ、駄女神のことは後回しだ。『なんですってー!!!』今は紅魔の地獄送りを・・・・」

「『エクスプロージョン』ッッッッ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

真っ白な空間に、真っ赤な爆裂の華が咲く。

 

 

 

■■■

 

 

『・・・あのクソ天兵、最後にとんでもない暴言吐いていったわね。エリスの教育はどうなっているのかしら。今度、胸パッド取り上げて、メルカリで出品してやるわ!』

アクアの姿は見えない。声だけが空間に響く。

 

『それにしても、アナタ、天兵を倒すなんてやるわね。アナタの世界の基準でもかなり強いのに・・・って、アナタなに寝てるの?』

限界を超えた魔力を使ってうつ伏せに倒れる私にアクアが問いかけてきた。

 

 

「私は今の超魔法で動けないのです。天兵と戦ったところの先の丘に、自動車があるのですが、そこまで移動させてもらえないでしょうか。」

『自動車?あぁ、そういえば何だかこの世界に存在しない妙な力を放つ車があったわね。』

 

そういえば、今アクアと会話してしまっているが、歴史に悪影響は無いのだろうか。

まぁ、してしまったことは仕方がない。バニルの連れてきた、あのつじつま合わせの悪魔の力にも期待しよう。

 

と、私が寝そべる床に魔法陣が浮かび、だんだんとその発光が強くなる。

 

『そこまで移動してあげるから、あれもエリスの世界に持って行ってよね。』

 

目の前に広がる白い空間が魔法陣の光に包まれていく。

 

 

■■■

 

 

 

気がつくと私は、タイムマシンの運転席のところまで移動していた。

 

 

「うぐぐぐぐ・・・・・」

 

 

私は魔力の枯渇した体に力を込め、なんとか『戻る』ボタンを押す。

 

タイムマシンがキューンなどと音をたてて起動する。

 

「ハァ・・・・ハァ・・・・」

これ以上は動けない。私はシートに体を預ける。

 

 

やるべきことはやったと思うけれども、これで本当に帰れるのだろうか。

 

 

・・・・・・・・

 

・・・・・・・・

 

 

戻った先が、またおかしな歴史だったらどうしよう・・・・

 

元の洞窟からアクアが消えていて、アクセルの街が廃墟となっていて、屋敷に誰もいなくて、誰もカズマとアクアを知らなくて、ダクネスが私のことを知らなくて、死ぬほど痛い思いをして・・・・

 

タイムマシンは宙へ浮遊して高度を上げる。

 

 

お願いします。どうか、私を元の歴史に返してください。

 

神様、エリス様、ついでにアクア様・・・・

 

どうか・・・・どうか・・・・どうか・・・・

 

 

 

■■■

 

 

 

 

そして、一面真っ白な光に包まれていく・・・・・。

 

 

気がつくと、私は元の洞窟へと戻ってきていた。

 

 

「めぐみん!大丈夫!?」

アクアがタイムマシンのドアをあけ、心配そうな顔で私を見ている。

 

なぜ、アクアはそんな顔をしているのだろう。

 

確か、タイムマシンが急に動き出して空を飛んで・・・・気がついたら、元いたこの洞窟だ。

 

なんだか、すごく長い夢を見ていた気がするけれども・・・・

 

 

「めぐみん?あなた、泣いてるの?」

「え?」

アクアが心配そうな顔をして私を眺めている。

 

 

「あ、あれ?本当ですね。どうしたのでしょうか。」

アクアの顔を見た途端、ものすごい安堵の気持ちがあふれてきたようだけど。

 

 

 

「大丈夫です・・・・あれ、体が・・・」

これは爆裂魔法を撃った後の魔力枯渇の症状だ。

 

「めぐみん、もしかして、日本で爆裂魔法撃ってきたとかじゃないわよね・・・そんなことしたら、大騒動になっちゃうじゃないの。ん?でも今は私の担当じゃないし、別にどうでもいいの?まって・・・・あれー?」

『可動限界に達しました』

 

アクアが頭の悪そうなことを言っている最中、タイムマシンがボンッと音を出して煙を上げる。

 

「あら、そう言えば、今の警告メッセージがしたらタイムマシンはもう二度と動かせないってあの手記に書いてたわ。めぐみんがタイムマシンで過去に行ってる間、読み直してみたのよ。」

「そういうのは出発する前に知っておきたかったですよ。もし過去に行った時点で可動限界を迎えてたら帰ってこれなくなってたじゃないですか。」

「まー帰ってこれたからよしってことで。」

アクアが、にへら、と笑う。

 

まぁ、そうですけども。

 

と、そこで、なんとなく気になったことをアクアに聞いてみる。

「ところで、アクア、私たち、アクセルで出会う以前に会ったことありませんでした?」

「め、めぐみん!」

アクアは驚愕に目を見開く。

 

 

「いったいどこでそんな口説き文句を覚えたの!?誰に教わったの!?ダメよ。アナタは美少女なのだから、そんな周りくどいこと言わずに正面から気持ちをぶつけるだけでいいの!」

 

どうやらアクアには心当たりがないようだった。

 

 

 

■■■

 

 

アクアにおぶってもらい、屋敷の道を行く。

 

途中で私が過去に行っていた間のことを聞いたが、数分程度で私は戻ってきたようで、その間、特に何も無かったとのことだった。

 

 

途中で見たアクセルの街の風景は今日も平和だった。街の景色を見るのが怖いような、そんな気がしたのはなぜだろう。

 

 

・・・そして屋敷の前までやってきた。

 

 

「ア、アクア、ちょっと屋敷に入るのは待ってください!」

「え?どうして?」

 

カズマとダクネスがそこにいないのではないか、という妙な不安が襲ってくる。

 

 

「い、いえ、何となくなのですが・・・・」

「そうね、カズマさんが玄関にフリーズをかけて足を滑らせる罠をはっているかもしれないわね。慎重に行きましょう。」

「あ、いや、そうではなくて・・・・」

 

アクアは私の不安を意に介することなく、屋敷の扉を開け放つ。

 

 

「ア、 アクア!?ちょっと・・・・・」

 

 

怖い・・・・怖い・・・・・怖い・・・・・・

 

 

 

■■■

 

 

「ふん!お前の息子など、エクスカリバーなどという名剣とは程遠い。精々、ちゅんちゅん丸がいいところだ。」

「い、言ったな!言っとくがな、男の子の待機状態はみんなちゅんちゅん丸なんだよ!俺が戦闘態勢になったら、それはもうデストロイヤー級だぞ!」

 

屋敷に響くいつもの喧騒。

 

「まったく。今まで喧嘩していたのかしら。どう転んだらこんなセクハラトークになるのよ。ただまー!!!」

 

 

「あー!!!ペロティーナ!!!今鼻で笑いやがったな!!」

「なぁあああ、ペロティーナはヤメロォ!!」

「ペロティーナ、おかえりを言ってほしんですけどー」

「アクアまでッ・・・」

 

懐かしくて懐かしくて、胸に満ちていく安心感。

 

「アクア!戻ったか!お前もダクネスに何とか言ってやってくれよ!」

「アクア、ダスティネス家の権力でこの屋敷の名義をアクアに変えてやるから、一緒にクズマをこの屋敷から追い出すぞ!」

「あら、いいわね。それなら、ゼル帝にクズマの部屋を使わせてあげましょう。」

「よし、今日の晩御飯は唐揚げだな。えーと、片栗粉はあったかなー。」

 

 

 

 

 

 

 

・・・・あぁ、やっと帰って来れた。

 

 

 

 

 

ダクネスとカズマが、アクアの背中におぶさる私に声をかけてくれる。

 

「おかえり、めぐみん。騒々しくてすまんな。」

「あぁ、めぐみん、おかえり。今日の爆裂は何点だった?」

 

 

 

 

その言葉に、私は、

 

「た・・ただい・・・あ、あれ?」

「ど、どうした!?」

 

なぜか、涙が溢れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「た、ただいまっ!!!」

 

 

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