この素晴らしい天界に祝福を!   作:勾玉

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第24話 ある黒髪黒目の冒険者

魔王軍討伐の任務から戻った私は兵たちと別れて城下町で復興の様子をうかがっていた。

 

 

少し前まで、城下町は一帯ガレキだらけだったが、今ではガレキの撤去も済み、ちらほらと露店も現れ始めている。

だが、未だに建物の多くは崩れた部分に簡易に布を張って風雨を凌いでいる状況だ。

人手不足の現状、もとの王都の活気を取り戻すにはもう数年はかかりそうだ。

 

そんなことを考えながら歩いていると、私に掛かる声があった。

「ダクネス、ダクネス!」

 

私が声の主に目をやると、そこには銀髪の盗賊クリスの姿があった。

「やっほー、ダクネス。なんだか久しぶりだね。」

「クリスか。本当に、久しぶりだな。確か、最後に会ったのはデストロイヤーがアクセルを襲うよりも前だったか。」

本当に、そのあたりからパッタリとクリスの姿を見なくなったのだ。

 

「あー、そのあたりからちょっと立て込んじゃってさぁ。」

なんだろう、デストロイヤー襲来後に盗賊職の需要が増えたという話は知らないが。

土木作業のバイトでも始めたのだろうか。

 

「今日はダクネスに伝えたいことがあってね。」

「私に伝えたいこと?」

クリスの前置きに私は耳を傾ける。

 

「ダクネス、魔王軍の動きがおかしいんだ。もしかしたら、この王都への総攻撃が近づいているのかもしれない。」

「・・・魔王軍の総攻撃か」

人手が足りない王都、防衛の要である騎士たちも本来の職を離れて復興作業に加わっているような状況だ。

もし本当に総攻撃が迫っているなら騎士たちを本来の防衛業務に戻さないと、魔王軍の攻撃を凌げないかもしれない。

 

「貴重な情報、ありがとうクリス。しかし、よくそんな情報が手に入ったな。」

「ん、いやぁ、盗賊職って結構情報に長けるものだよ。」

 

まぁ、そんなものか。

 

「これでは、また一緒に冒険ができるのは、だいぶ先になりそうだな。」

私は苦笑しながら言う。

 

「今度はもっと長期で冒険をしたいのだがな。クリスは突然いなくなることが多いから。」

「あ、あはは。まぁ、私も臨時の仕事とか多いからね。平和になったら、ダクネスも長くパーティーを組める素敵な仲間がみつかるといいね。」

「・・・何だ、なんだが距離を感じるのだが・・・。」

私はむすっとクリスを見る。

クリスは頬をポリポリしながら苦笑している。

 

「仲間か・・・」

 

その時、真っ先に頭に浮かんだのは、夢に見たおかしな3人のことだった。

 

「・・・そうだな、最近は私も苦楽をともにできるパーティーが欲しいと思っていたのだ。」

 

いつか平和になった時に、あの3人組のような仲間と巡り合えるだろか。

 

「そっか、ダクネスずっと言ってたもんね・・・」

「・・・ずっと言ってた?そんな話、クリスにしてたか?」

「・・・え?あー、いや、なんかほら、友達とか欲しそうにしてたでしょ!」

「む。そんなにぼっちに見えていたのか・・・まぁ、そうなのだが。」

 

確かに私はずっと冒険仲間を探していたぼっちだった。

それは、毎日エリス教の教会でエリス様に、友達ができますように、と祈りを捧げるほどぼっちだった。

 

「そういうクリスは、平和になったらやりたいことはあるのか?」

これ以上ぼっちネタを持ち出されるのも恥ずかしいのでクリスに話を振る。

 

「やりたいことか・・・」

クリスは人差し指を顎に当てて、うーん、と少し考えて、思いついたようにいう。

「私は盗賊団とか結成して巷をにぎわす義賊とかやってみたいね。」

「おい、それを貴族の娘の前でいうか。」

「あはは、そうなったら、ダクネスも一緒にやろうよ!」

「ふふふ、そうだな。平和な世の中を取り戻したら、な。」

 

 

平和。

 

魔王軍の侵攻に日々怯える現状。

私達が平和を手に入れるのはいつになるのだろうか。

 

 

希望。

 

アイリス様と私が夢に見た世界。

きっとそんな世界がどこかに広がっているはずだ。

 

「ダクネス・・・死なないでね、ダクネス。もし死んじゃったら、女神エリスはダクネスを許してくれないかもしれないからね。」

 

 

クリスは強い口調で、私を戒めるように言うのだった。

 

■■■

 

「ぐぉぉぉぉぉ!」

目の前のモンスター、一撃熊が叫ぶ。

 

一撃熊のその剛腕は私の胴をとらえて、ゴン、と鎧を揺るがす重い音が響く。

 

「ぐ、ぐぉ??」

 

しかし、この程度では私を満足させることなど到底できない。

 

どのあたりが一撃なのか。これではただの熊ではないか、と説教をしてやりたい。

 

目の前のモンスター、一撃熊は、え?確かに入ったよね!?、みたいなキョトンとした顔を浮かべる。

 

「『バインド』!!」

その隙をぬって私の仲間の男が一撃熊を拘束する。バインドの縄は一撃熊の手足を拘束して見事にその動きを封じた。

 

男は叫ぶ。

「ダクネス!いまだー!」

 

「はあああああ!!」

私は目の前の敵に力を込めて剣を振るう。

 

幾千回も続けてきた動作。

 

刃はまっすぐと相手の首をとらえて・・・

 

 

 

 

スカ!!!

 

 

「「「・・・・・・」」」

 

私達二人と一撃熊の時間が数秒停止した。

 

「ばかー!!!お前それ、逆にどうやって外すんだよ!!目をつむって振ってもあたるだろ!!物理法則捻じ曲げてんだろばかー!!」

「う、うるさい!!いや、確かにとらえたと思ったのだが・・・なんというか・・・相手にあたったと思ったら、こう、スルッと・・・」

「何がスルッとだ!お前もう剣もつな!ナックルダスターとかのほうが絶対強い!!」

「馬鹿かお前は!ナックルダスターで戦うクルセイダーがどこにいる!それにそんなもので殴って戦えば簡単に敵を葬ってしまってつまらないではないか・・・」

「もういいです。もういいんで、早くその熊を葬ってください。」

その男はすべてを諦めた表情で私を見る。

 

「そ、そんな目で見ないでくれぇぇ!!ええい!もう剣などいるか!くそたりゃぁああああ!」

私は剣を捨てて相手に殴りかかろうと・・・

 

目の前の一撃熊が腕を振り上げていた。

 

「だ、ダクネス!危ない!」

男の声が響く。

 

今のやり取りの間で、一撃熊がバインドの拘束を破っていた。

 

一撃熊が私に向けて手を振り下ろし・・・

 

「ダクネスーーーーーーーー!!!」

 

男の叫びが聞こえる中、私は一撃熊の攻撃を防ごうと咄嗟に手を前に出し・・・

 

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