この素晴らしい天界に祝福を!   作:勾玉

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第3話 ヒキニート

私はオタク少年の姿を探すも、結局彼を見つけられないでいた。

結構遠くまでいってしまったのか。

 

私はたまたま見つけた公園のベンチに腰をかけ、ハァ、と深く息をついた。

 

そういえば、私、何しに下界におりてきたんだっけ?

 

 

と思うも束の間、さっき別れた男の子が公園の前を駆けていくのが見えた。

私は咄嗟にその子に叫びかける。

「ちょっとアナタ!」

男の子はビクッと身を震わせて私の方を見た。

 

「あ・・・」

私に気づき、近づいて来る。

かなり急いで走ってきた様子で、酷く息切れしている。

「はぁ、はぁ、あの・・・はぁ・・・俺のゲーム・・・はぁ・・・」

「それなら、さっきのラーメン屋で預かってくれてるみたいよ。」

「よかったぁぁぁ・・・」

男の子は心底安心した様子で胸に手をあてて息をもらした。

 

「・・・そんなに大切なものなの?」

「え、あぁ、あれはとあるゲームの限定版なんだ。数量限定で、この機会を逃したら手に入らなかったかもしれないんだよ。」

「ふーん。人気なの?」

「うーん、そんなに人気じゃないかな。っていうか、クソゲーの部類かもしれない。主人公は能力低いし、仲間はポンコツばっかりだし、なぜかプレイヤー指示を無視したりするし、敵は鬼畜設定だし、人もモンスターも食べ物もみんな揃って大馬鹿設定だし。」

「なにそれ、クソゲーじゃない。」

「でも・・・」

 

彼は懐かしい出会いでも語るかのように・・・

 

「何というか、どうにもポンコツな仲間達がほっとけないっていうか。いちいち突っ込みたくなる設定も、なぜか居心地がいいっていうか。最初は酷いゲームを掴まされた、PV詐欺だ、とか思ってたけれども、気がつけば、そんな世界が好きになってたよ。」

 

それにしても、随分楽しそうに語るものだ。

私も何となく、彼が語るゲームの世界に興味を抱く。

そういえば、エリスの冒険話を聞いばかりだ。

 

「冒険・・・か・・・」

私は彼の楽しそうに語る姿を見て声が漏れていた。

 

事務的な仕事を長い間続けてきた女神な私にとって、それはとても遠く、尊いもののような気がした。

 

 

「まぁ、でも俺なんかがゲームの世界に行っても瞬殺されちゃうだろうな。」

彼は苦笑する。

「やっぱり、強力な装備やら能力やらで無双するほうがいいな。それで、パーティーメンバーと恋に落ちたりなんかりしてさ。」

そう言って、彼はいろんなゲームの事を語ってくれた。

 

 

私はそれほどゲームに詳しいわけではない。

 

けれど、

 

彼のゲームの話は、何だかこっちまで楽しい気分になるものだった。

 

 

 

■■■

 

 

 

「そういえばあなた、名前はなんていうの?」

自己紹介もまだだったことに気づき、私は彼に問う。

 

 

「あ、あぁ・・・ごめん、俺の名前は、佐藤和真。そっちは?」

「私は、水のめが・・・」

「水のめが?」

 

そこまで言ってハタと気がつく。

流石に正体を明かしては不味いだろう。

ツイートされて、女神降臨のニュースで瞬く間に世界を巻き込む騒動となってしまっては大変だ。

100万リツイートは硬いだろう。

 

「み、ミズノメガ・・・そう、ミズノ メガよ!」

「何だその、最上もが、みたいな名前は。」

「ちょっとー、人の名前に文句つけないでくれますぅー?」

「あ、ごめん。なんだかツッコミ欲が抑えられなくて・・・」

・・・わかる。

なぜか彼の前だと、私も芸人魂に火が付くというか・・・芸人じゃなく女神だけれども。

 

「ところであなた、見たところ学生のようだけれども、今日は学校じゃないの?」

そう聞くと、彼は、ウッという声を出し顔を引きつらせる。

「今日は平日よね?体調も特段悪そうじゃないし。どこかの宗教の安息日か何かかしら?宗教はね、しっかり選んだほうがいいわよ。」

と、尊くも告げてあげるが、彼は目を背けたままだった。

 

 

ははぁ、なるほど。

 

「今流行りの引きこもりってやつね。ニートともいったかしら。まさかこんな街中でエンカウントするなんてレアな体験もあるわね。倒せばどれだけ経験値がもらえるのかしら。」

「おいこら。人をどこかのレアモンスター扱いするな。そもそも、こうして街まで出てきている時点で引きこもりではない。それに、引きこもりとニートは一緒じゃない。ってか、俺は学生だからニートでもない。」

「んなことどうでもいいわ。ほら、こんなところで油売っていないで、とっとと学校へいきなさいな。」

「うっ・・・・」

 

そのまま引きこもりのニートさんをしっしっとするが、彼は目を泳がせてその場から動こうとしなかった。

仕方がない。ここで会ったのも何かの縁だ。女神たるこの私が迷える子羊を導いてあげるとしますか。

 

「とある偉大な宗教の、とある高名な女神様はこう言ったわ。明日頑張ればいいじゃない、と。とりあえず、今日は一生懸命遊んで、明日から頑張りなさい。」

「な、なんて駄目な女神だ・・・」

「それで、アナタは学校をサボってゲームを買いに来たの?」

私は引きこもりのニートさんに問う。

 

「まぁ、それもあるけど、いつも着ていたジャージがダメになったんでそれも買いに来たんだよ。」

「じゃあ、一緒にジャージを買いに行きましょう。私も暇していたところなのよ。ついて行ってあげるわ。ほら、座っていないでいくわよ。」

私は引きこもりのニートさんの手をとって引っ張った。

 

「あぁ、ちょっと。まずはゲームソフトを受け取ってからだ。」

慌てて引きこもりのニートさんが・・・・って、この呼称は長ったらしいわね。ヒキニートとでも変換しておきましょ。

 

私たちは公園を後にした。

 

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