この素晴らしい天界に祝福を!   作:勾玉

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第33話 ホームレス女神

【クリス視点】

 

 

「お腹すいた・・・」

 

女神の能力と権限を封じられた私は着の身着のままでクリスとして下界におりていた。

 

困ったことに私はこの世界に資産を全く保有していない。

手に入れたお金はほとんどをエリス教の教会に寄付しているし、余った分も酒代に消えてしまっている。

それでも衣食住は天界で確保されていたから、困ることは全くなかった。

 

それがまさか、身に覚えのないタイムリープの罪で一転、無一文となって路頭に迷うことになろうとは・・・

 

まったく、私にタイムリープをそそのかした頭のおかしい人は一体誰なのか。会ったら文句の一つもいってやりたいところだ。

 

・・・と、半ば八つ当たり的なことを考えるのはここまでにしよう。

 

とりあえず、当面は下界で過ごさなければならないのだからまずはクエストでもこなしてお金を稼ぐしかない。さすがに私利私欲のため盗みに入るわけにもいかないし・・・

 

クゥ、と私のお腹が音をたてる。

 

「あぁ、お腹すいた・・・」

 

エリス教会の炊き出しに・・・いや、女神である私が信者の炊き出しのお世話になるのはちょっとどうなのか。

 

でも、このまま飢えていてはクエストもままならない。

 

私はすがる思いで、事情を理解してくれそうな彼のもとにむかうことに・・・

 

 

■■■

 

 

「女子会よ!女子会をするの!」

 

目の前の水の女神様が高らかに宣言した。

 

「では安楽少女の駒をこのマスに移動して安楽女王に進化です。・・・いきなり女子会とはどうしたのですか?アクア。」

ボードゲームで遊んでいためぐみんが反応する。

勝負相手のカズマ君も・・・

「アクア、大体お前は女子じゃなくバB・・・

『ゴットブロぉぉぉぉぉ!!』・・・グっハァァァァ!!!」

「ああああああああああ!女王ーーーーーーー!」

「にゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

いろんな叫び声が屋敷に響く。

ボードゲームの駒を盛大にぶちまけつつカズマ君が居間の隅まで吹っ飛ばされ、めぐみんが叫び、近くで寝ころんでいたちょむすけまでが巻き込まれている。

 

・・・・・・

 

そう、私は当面天界に戻れないため、ダクネスやカズマ君のいる屋敷に厄介になることにしたのだ。カズマ君には私の境遇を説明して了解をもらった。アクア先輩達も私のことを歓迎してくれた。

そして、この屋敷の女性人口が増加したことでなにかしらピンと来たらしいアクア先輩が唐突に女子会の開催を提案したのがここまでの話だ。

 

そんなアクア先輩にダクネスが口をひらく。

「女子会といっても、別にカズマがいなければできないような話もないだろう。仲間外れはいささか可哀想ではないか。」

「まったく!ダクネスはこれだから女子力が低いと言われるの!可愛いララティーナちゃんの名が泣く・・・いたい!なにするの!ボードゲームの駒を投げつけないで!この間、ダクネスがこっそり可愛いクマさんの下着を通販で取り寄せたのを黙っていてあげたの・・・いたい!いたい!ボードゲームの盤で叩かないで!カズマさーん!カズマさーん!」

ダクネスに叩かれているアクア先輩にカズマ君が声をかける。

「何?じゃあお前ら今日の晩御飯は外で食べてくるのか?言っとくけど、小遣いはやらんぞ。」

「何言ってるの?外に出ていくのも面倒だし、屋敷で女子会をやります。カズマは料理スキルで私たちに美味しい料理を提供してから外泊でもどこでも好きなとこにいくがいいわ。」

「なめんな。」

 

ダクネスに加えてカズマ君にも叩かれそうになったアクア先輩は私の影に隠れた。

「クリス!守って!女神に害を及ぼそうとする悪しき者どもから女神の従者として私を守って!」

 

従者でなく私も女神なのですが・・・休職中だけれども。

 

でも2対1は少しかわいそうな気がするので、私はカズマ君たちをなだめる側に回る。

「まぁまぁ、私もキミの料理を手伝うから。部屋を借りるんだからそれくらいはさせてよ。ほら、ダクネスも許してあげな。アクアさんも意図せず煽る形になっちゃったみたいだし。」

「意図せずってのが厄介なのだが・・・」

ダクネスはぶつくさ言いながらボードゲーム盤をテーブルに置き、めぐみんと一緒に駒を拾い出す。

「じゃあいいわ。女子会じゃなくて女子風呂にしましょう。今日はみんなで一緒にお風呂に入りましょう!」

「もちろん俺もみんな一緒で構わんぞ。」

「このやり取り、前にもやった気がしますが、もちろんカズマは別ですよ。」

めぐみんから当然のように一蹴されたカズマ君はぶつくさ言いながら晩御飯の支度をするために台所に向かっていった。

私は彼の手伝いをすべく後を追いかけた。

 

■■■

 

 

「おーい、お前らーご飯ができたぞーテーブルを片付けろー」

 

カズマ君と私は調理を終え、料理をもって居間に戻った。

 

ん?なんか人数が一人増えて・・・

 

「アクア様!ご飯が来ましたよ!ささっ、上座へどうぞどうぞ!・・・これはクリームシチュー!?ちょっと、このお酒と合わないでしょ!もっとこってりしたものを!こってり系を要望するわ!申し訳ありませんアクア様、すぐに作り直させま・・・はぶっ!」

「・・・あんた、何でいんの?」

 

カズマ君が平手打ちで突っ込んだ相手はアクシズ教のプリーストのセシリーという女性信者だった。

居間ではアクア先輩とセシリーが早くも酒盛りを始めていて、もう二瓶めにとりかかろうというところだった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「お客様に向かって、何でいんの、とは随分なご挨拶ね。なけなしのお金で手土産のお酒を買ってきてあげたというのに!」

「その手土産、今自分で飲んでるよね。というか、あんたの分のご飯は作ってないぞ。」

「なっ!?目の前にそんな美味しそうなクリームシチューがあるのにお預けなの?あなたには分かち合いの心は無いの?」

「おい、酒に合わないからって作り直しを要求したやつがどのツラ下げて言いやがる。そんなに飯を食いたきゃ、ちょむすけ用のキャットフードがあるからそれをくれてやるよ。」

 

カズマ君は、そう言いながらも追加で一人分の食器を準備する。

 

めぐみんがちょっと引き気味に呟く。

「ほんとにアクアが二人になったみたいですね・・・あ、カズマ、私も配膳手伝いますよ。クリスはお客さんなので座ってもらって結構ですよ。」

「いやいや、居候ってのも肩身が狭いんでこれくらいはやらせてよ。」

 

めぐみんとそんな会話をする私をセシリーの目が捕らえた。

「あ!あなたはエリス教徒のくせに妙にアクシズ教の気質のあるクリスさん!ここであったのも何かの縁!ぜひ私と一緒にアクシズしませんか?」

「いや、アクシズって何さ。ってか私は前にも言ったけど改宗するつもりは・・・」

「そういえば、クリスはアクア祭りの時にアクシズ教の出店を手伝ってくれたりしたわね。あの時はありがとうねクリス。」

「えぇ!そうなのですかアクア様!それはもう半分くらいアクシズ教といっても過言ではないのではないじゃないですか!ほら、ここに入信書があるから署名するといいわ。多分、そのぺったんこなおっぱいもエリス神の呪いだと思うのよ。いい?アクシズ教の経典に記される真実、それは、エリスの胸は・・・」

「うるさいよ!!!」

私はそこにあったボードゲームの駒を掴んでセシリーに投げつけた。

「きゃー!何をするの!背教者めー!」

「なんだ、クリスとセシリー、知り合いだったのか。」

私達の様子をみて、料理を並べていたカズマ君が何気なくいう。

「あ、あはは、まぁちょっとね・・・」

絶賛アクシズされた直後の私は落ち着くために水を一口飲むことにする。

 

私とセシリーはめぐみんが結成した盗賊団の構成員として顔を合わせていた。

そこでなぜか息が合ってしまい、アクシズ教への勧誘を受けている。

 

「それで、何しに来たんだよ。」

「そうそう、ここに来た目的は他でもないわ!お宅のめぐみんさんを私に下さい。」

「は?」

めぐみんが冷ややかな目線をセシリーに向ける。

セシリーの頼みにカズマ君が即答する。

「どうぞ持って行ってください。」

「おい!!!」

「おぎぎぎぎ・・・やべろ!べぐびん!うそうそ、冗談だ!あんたも変な冗談はいいから本当の目的を言ってくれよ。」

めぐみんに首を絞められたカズマ君がセシリーに向けていう。

「あら、お姉さんは本気だったんだけど。まぁ、もう一つの相談事の方なんだけれども・・・」

 

セシリーは一拍置いて真剣な声でカズマ君に語り始める。

 

 

「暗黒神エリスがついに信者を洗脳してアクシズ教団への破壊工作を始めたの!」

 

 

私は口に含んでいた水を豪快に噴き出した。

 

 




やっぱりコメディ路線に舵を切るならカズマパーティーがいないとダメですね。または魔道具店の店主と仮面。

そういえば、この小説では一回もウィズが出てこない問題
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