この素晴らしい天界に祝福を!   作:勾玉

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第35話 恋心

助手君の部屋でやんちゃしてしまった翌日、私にあてがわれた部屋の片隅で私は体育座りで頭を抱えていた。

 

「うぅぅ、私はなんて馬鹿なことを・・・」

 

酔った勢いとはいえ昨日の自分の言動を振り返って酷く鬱になり、軽く死にたくなる。

ダクネスやめぐみんの気持ちを知っていながら酔った勢いで助手君に手を出そうとするなんて・・・

 

私のバカ!バカ!私ってホントバカ!

 

「ああああああああああああ・・・もう・・・死にたい・・・」

 

もう天界の処分など待たずに書置きでも残して地獄に旅立とうかと思っていた矢先、コンコン、と部屋の扉がノックされた。

 

「どうぞー・・・」

乾いた声しか出ない。

 

ガチャリと部屋の扉が開き、私の苦悩の中心たる人物が姿を現す。

「おはよクリス、昨日はよく眠れたかー?ご飯出来てるから居間に集合なー」

「あー、ありがとう・・・」

そして彼は何もなかったかのように戻っていった・・・

 

・・・って待った。

 

え?何で彼はあんなにも平然としているの?妙にスッキリとした顔をしているの?昨日あんなことがあったのに、あの賢者然とした態度は何?もしかして気にしているのは私だけ?私が勝手に舞い上がったり落ち込んだりしているだけ?もしかして私ってすごく間抜けなの?バカなの?死ぬの?

 

ひとしきり疑問が頭を駆け巡った後、今度は彼の態度に納得いかなくなる私。

なぜ私ばっかりこんなに悩まなきゃいけないのか。

それに、私が彼に対してあんな態度を見せたにもかかわらず、相手に全く意識されないのは面白くない。

 

そんな理不尽かつ面倒くさいことを考えていることを自覚して、ぽろりと言葉が漏れる。

 

「まるで普通の女の子だ・・・」

 

私は、悲しいような、嬉しいような、切ないような、折り合いの付けられない気持ちのまま、トボトボと朝食の席へと向かう。

 

■■■

 

「「「王都へ行く??」」」

 

この屋敷の三人娘の声が午前の食卓に響いた。

 

「あぁ、俺も行くから、さっそく準備しようぜ。テレポート屋は白スーツのせいで使えないし、めぐみん、テレポートが使えるゆんゆんにお願いしておいてくれよ。」

「テレポート屋が使えないのはクレア殿のせいではなく、9割方お前の自業自得なのだがな。」

「うるさいぞ、クマさんパンツ。」

「んなああああ!」

ダクネスが真っ赤になって叫ぶ。

 

その傍ら、私は少し驚いていた。

彼のことだから、あの時は酔ってたし王都行きの承諾は無効だ、とか言い出すのかと思ったけれども・・・

私のわがままにちゃんと答えてくれたんだな、と妙な嬉しさがこみあげてしまう。

 

・・・あぁ、これはもう重症だ。

 

めぐみんは助手君の態度に疑問をもったようで彼に問いかける。

「別にゆんゆんをアッシーにするのは、いいぞもっとやれなのですが、カズマは昨日あんなに頑なに行きたくないと言っていたのに、どういった心変わりですか?というか、大声で屋敷から飛び出していった理由を未だ聞いてないのですが。」

すかさずダクネスも同調して追及に加わる。

「そういえばクリスも昨日の夜は部屋にこもりきりだったな・・・お前たち何かあったのか?」

私にも話をふられ、脈拍が早くなる。

昨日のことを追求されるといろいろ不味い。

冷や汗も出てきた・・・

「きき、昨日はちょっとアレがソレでああなって・・・」

私が訳のわからないことを言い始め、めぐみんとダクネスが顔をしかめたところ、すかさず彼がフォローしてくれる。

「あー昨日は、ちょっと王都の毒混入の件でクリスと話しててな。クリスに面倒事を押し付けられそうになって逃げたんだ。でも、困った人々を放っておけない英雄気質な俺は一晩たって使命に目覚めたんだよ。」

「カズマさん、私は突っ込まないわよ。」

「その使命に目覚めたきっかけが何かを聞きたいのですが・・・もういいです。どうせ、ロクなことじゃないでしょうから・・・」

「クリスもこの男の腰を浮かせる難儀さがわかっただろう。いつもクエストを嫌がる男だから、その気にさせるのにどれだけ私達が苦労しているか・・・。」

「あ、あははは、・・・」

それ以上、追及を受けたくなかった私は、唐突に話の舵を別の方向に切る。

「それにしても!毒混入の事件、セシリーの話だと、王都の冒険者たちでも犯人捕獲に失敗してるんだよね!王都の冒険者は高レベルの強者ぞろいのはずだけど・・・犯人は相当のやり手のようだね。」

と、思いついたことを早口でしゃべる私。

「まぁ、うちには数多の強敵を屠ってきた超つよいカズマさんがいるから大丈夫よ!」

「はっはっはっ、お前、一番の関係者のくせに完全に俺に丸投げしようとしているだろー。」

「超つよいカズマさんが、死んじゃってもちゃんと蘇生させてあげるから大丈夫よ!」

「はっはっはっ、お前、一番の関係者のくせに巻き込まれただけの俺に命張れっていってるだろー。」

アクア先輩と助手君がそんな漫才をしている中、蘇生に関して、私は一点、気づいてしまった。

 

助手君の服をクイクイする。

そして彼の耳元で他の人に聞かれないようひそひそと小声で話しかける。

(ねぇ、今回キミが死んじゃっても私が案内するわけじゃないから生き返してもらえないかもしれないよ・・・おそらく昨日言ったお役所系女神な先輩が案内してるだろうから・・・)

(・・・まじかよ。なんかもう辞めたくなってきたんだけど・・・)

すかさずヘタレる彼に私は苦笑した。

 

 

■■■

 

 

その後、準備も整い、私たちはゆんゆんのテレポートで王都に到着した。

今現在のパーティは、助手君、アクア先輩、めぐみん、ダクネスに私だ。

 

セシリーは『ごめんなさい!アクセルの街の教会を離れられないの!あ、お土産はよろしくね、ところてんスライム☆しもふり赤ガニ味(王都限定)を所望するわ』とのことで一緒ではない。

 

ゆんゆんはテレポートで私達を送ってくれたときに『仮面の友達と約束があるけれども、どうしてもというなら・・・』とかボソボソ言っていたところ、めぐみんに『は?なぜ私達がゆんゆんを誘ったことになっているのですか?馬鹿なのですか?死ぬのですか?』とか言われて泣きながらテレポートでアクセルに帰ってしまった。

助手君は、戦力になるゆんゆんには一緒についてきて欲しそうで、めぐみんに文句を言っていた。

 

そんなこんなで、私たち一行は事件の詳細を聞くべくアクシズ教会を目指して王都の通りを歩いていた。

ちなみに私は銀髪盗賊団として捕らえられないよう、目深にフードを被り、銀髪を隠している。なお、フードは猫耳つきだ。

フードを買うとき助手君が『異世界なのに猫耳のついてないフードを被るなんてとんでもない!』と言って引かなかったためだ。

 

王都の賑やかな雰囲気にテンションの上がったアクア先輩は声を上げる。

「さぁ、せっかく王都に来たんだしおしゃれな飲み屋に行きましょう!」

「アクア、遊びじゃないのだぞ。」

ダクネスがすかさず突っ込む。

 

私達が向かうアクシズ教会は、今いる王都の繁華街を抜けた先だ。

繁華街は屋台やら路上芸やらで活気にあふれている。

仲間連れや家族連れの姿も見え、カップルらしき人達もちらほら見える。

そんな往来の人々を眺めつつ、私はふと思う。

・・・そういえば私、今までデートとかってしたことが無かったんだ・・・

 

・・・・・・

 

「・・・ねぇ、助手く・・・」

「カズマ、この一件が終わったら、一緒に食事にでも行きませんか?王都には爆裂ラーメンなるものがあるらしいのです。」

 

・・・・・・

 

「なんだそのネーミングからしてアウトなものは・・・それにしても、その名前どこかで聞いたことがあるような・・・?」

「素敵なネーミングじゃないですか。それで、一緒に行くのですか?行かないのですか?」

「あのなぁ、俺はあんまり王都をうろうろしてるといろいろ不味いんだって。」

「大丈夫ですよ。カズマが捕まりそうになったら、爆裂魔法で王都を更地にしてやりますから。」

「お前・・・魔王軍もビックリだよ。はぁ、しょーがねぇなぁ・・・」

 

・・・・・・

 

めぐみんに向けられた承諾のセリフは、昨夜、私だけに言ってくれたものなのに・・・

 

いやいや、考えるのはよそう。

 

この胸が締め付けられるような痛みも、きっと一過性のものに過ぎないのだから・・・

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