この素晴らしい天界に祝福を!   作:勾玉

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第2話 サキュバス店のリッチー①

私の魔道具店は差押を受け、さらに保全処分とかで中に入ることも禁止されてしまった。

立入り禁止の理由は私が経営を続けると借金返済から遠のくからということようだ。なんて勝手な判断なのだろう。

 

「…まったく、汝は魔道具店経営という手段を失って、どうやって借金を返済するというのだ?」

「…うぅ、冒険者としての登録が残っているはずですので、クエストでも受けようかと…」

 

殺人光線を受けたことによる戦闘不能状態から立ち直った私はバニルさんに向かって言う。

 

「…または高価に買い取ってもらえるはずのリッチーの爪を売ります…ふふふ…両手両足で20枚は用意できますので…うふ…」

 

私が震える手でペンチを持ちながらそんなことをいうと、バニルさんが危ない人を見る目つきで、ちょっと引き気味に私を見る。

 

「脳みそが杏仁豆腐のような汝のことであるから、そんな考えしかないと思ったわ。」

「杏仁豆腐!?」

「ちょっと我輩についてくるがよい。」

 

 

バニルさんはそう言って、そそくさと歩き出した。

 

いったいどこに行くつもりだろう。

 

まぁ、バニルさんには何かしら考えがあるのだろう。

 

悔しいがバニルさんは杏仁豆腐な私より何手も先のことを考えている。

 

 

 

バニルさんはアクセルの街でもあまり人の通らない路地をズンズンと歩いていく。

 

 

やがて薄暗い路地に入って何やら怪しげなお店の扉をあけたところで、私は恐る恐るバニルさんに問いかけた。

「あ、あの、いったいこのお店は…」

「いいから入るのだ。」

 

バニルさんは私に構わず薄暗いお店の中に入っていく。

 

私も後を追ってお店の中に入る。

 

 

■■■

 

 

照明でほんのりと照らされた店内は紫やピンクといった配色が目立っていた。

 

息を吸うと、甘い香りで鼻腔が満たされる。

 

 

なんだか…

 

なんだか…変な…

 

なんだか…妙に…いやらしい!

 

いやらしですよバニルさん!

 

 

「あ、あの、バニルさん…そろそろ私をここに連れてきた理由を…」

 

しかし、バニルさんは私の問いかけに構わず黙って店内をきょろきょろしている。

 

 

も、もしかして…

 

ここがあの噂の『らぶほ』とかいう施設で…

 

借金は我輩が返すから代わりに汝の体を我輩によこすがよい、とか言って…

 

「ばばばbバニルsあん…わわwwたし、こ、こッころの準備が…い、いえ、けっして嫌というわけではなくですね!たた確かにずっと一緒に働いているわけですし!いつかはそんなことも…なんて考えなくもないですが…ですが、わ、わ私もまずは安心させてほしいというか、ま、まずはシャワーでも浴びて落ち着いて…」

「落ち着け、変換ミス店主よ。汝にはここで働いてもらおうと思って連れてきたのだ。」

 

 

「………え?」

 

働いて?

 

らぶほの従業員になれってことだろうか?

 

いや、そもそもここは、らぶほなる施設なのだろうか?

 

 

 

 

 

………待った。

 

もしかして、だ。

 

 

私はある答えに辿り着き、冷や汗をたらたら垂らす。

 

 

もしかしてここは、あっち系のお店じゃないだろうか。

 

そう、いわゆる個室付き浴場とかってやつじゃないだろか。

 

それなら、このいやらしい雰囲気もうなずける。

 

 

 

 

…あぁ、絶対そうだ。

 

バニルさん、今回は本当に頭にきているようなので、私に体で稼いで来いってことを言いたいのだろう。

 

確かに短期間でそれなりに稼ぐならこれも一つの手かもしれない。

アンデッドな私でも、ちょっと特殊な趣味がある人には需要があるかもしれない。

でもでも、人間を捨ててはいるが、私だって捨てたくない一線があるのだ。

私だって、そういう〇ナホとしてじゃなく、そういう行為に愛が欲しいというか…

 

そんなことをぐるぐると考えていると、店の奥から小柄な可愛らしい少女が顔を出した。

 

 

「バニル様!いらっしゃいませ!どうされました?」

「おぉ、最近チンピラ冒険者と行動を伴にすることが多く何かと世話をやいているうちに少し好意が芽生えてきてしまったロリサキュバスよ、いらっしゃいましたー。」

「ばば、バニル様!出会いがしらにどうでもいいことまで見通さないでください!だいたい私達悪魔の悪感情なんて美味しくないじゃないですか!」

「ふむ。して、店長はいるか?ちょっとお願いがあってきたのだ。」

「お願いですか…?まぁ、私たちのお店はバニル様の庇護下にあることで、ヤクザみたいな青髪女の難を免れておりますので、大抵のことでしたらお受けできると思いますが…」

「まぁ、お願いというのは難でもない。このポンコツリッチーをこの店で働かせてはくれないだろうか。」

「はぁ…」

 

バニルさんにロリ呼ばわりされたサキュバスさんは私のほうをしげしげと見る。

 

この子、体つきはめぐみんさんのように平べったい感じではあるが、着ている服が妙に艶めかしい。

 

布面積が非常に狭い。

 

 

「はは…ど、どうも…」

とりあえずぎこちない感じになってしまったが私はその子に挨拶する。

 

バニルさんは続けて口をひらく。

「このポンコツ店主は、前に魔道具店で汝に有無を言わさず襲い掛かったポンコツぼっち紅魔族とポンコツ勝負をして僅差で勝利するくらいのポンコツリッチーではあるが、見てのとおり体だけは男好きするものをもっているのでな。」

「バニルさん!酷いです!」

私は涙目でバニルさんの服を掴んでゆさゆさ揺さぶる。

 

そんな私たちに向かってロリサキュバスさんが言う。

「はぁ…まぁ人手はいくらあっても助かるので問題ないと思いますよ。この店はあまりお客様からお金をいただいてませんから、お給金はそんなにだせませんが…」

「構わぬ。悪いが、このポンコツをこき使ってやってくれ。」

「あぁ!ついに店主やリッチーって部分を取りましたね!!めぐみんさんみたいに変な通り名がついちゃうのでやめてくださいよ!」

 

揺さぶる手をさらに強くしてバニルさんに食って掛かる。

が、バニルさんはそんな私には気にせずロリサキュバスさんと話しを進めていく。

 

「では、店長にその旨を伝えてきてはくれぬか。」

「え、えぇ、分かりました。ちょっと待っていてくださいね。」

 

私のことなのに私は蚊帳の外で話が進められていくのだけども、そもそも私は肝心な部分を理解していない。

 

「ちょっと待ってください!!そもそも、ここは何のお店なんでしょう!?」

「む?なんだ今更。話しておらんかったか?」

「話しておらんかったですよ!この店の雰囲気!この子の衣裳!これはどう見てもソーp…」

 

 

 

「この店は、男性冒険者に良い夢を見せるというサービスを提供しているサキュバスの店だ。」

 

 

 

■■■

 

 

 

今、リッチーな私はなぜかサキュバスさん達が経営するお店でサキュバスの格好をしている。

 

結局、お店で働くことについては面接もなくあっさり決定された。

まぁ、公爵級悪魔のバニルさんの依頼なので、下級悪魔のサキュバスでは逆らいようが無いのだろうけれども。

 

このサキュバスのお店は本番行為などは一切無し、サービス内容は男性冒険者が希望する夢を見せるというだけのようで私も渋々ながら承諾して今に至る。

 

バニルさんはいつの間にかお店から姿を消していた。

 

 

 

「………」

 

 

 

それにしても…

 

 

 

衣裳がすごい。具体的にどう凄いかというと布面積が凄い。

 

普段太陽光から身を守るために厚手のローブを羽織っている私からすると、これはいささか防御力が低すぎる。

 

胸を隠す部分もおやまのてっぺんは隠されているものの、それ以外の部分、形が露わになっている。

 

お腹や背中なんて堂々と出ているし、おへその下のきわどい部分なんてハートマーク型に肌が露出されている変態形状だ。

 

お尻の部分には悪魔の尻尾がぶら下がっており、頭には蝙蝠の羽をモチーフとしたカチューシャを被り、一見するとサキュバスだ。

 

 

「はぁ…しかし店主さん、こう改めて露出して見ると本当に立派なものをお持ちですね…私達サキュバスでもこれほどのものを持っているのはそうそういませんよ?」

「あ…ありがとうございます。」

私の胸をしげしげと見つめながらロリサキュバスさんが関心している。

 

「さて、お店のシステムは先ほど説明した通りです。ここはそういうお店ではありませんが、お得意様なんかには別料金でお酒を出してお話を聞いたりするスペースもあります。まぁ、こういう接待は別に嫌ならしなくても構いません。とりあえず、ウィズさんにはお客様を席までご案内する部分をお願いします。」

「は、はい。わかりました。」

 

ロリサキュバスさんから一通りの説明を聞き、いざ接客開始となった。

私の指導はこのロリサキュバスさんがしてくれるらしい。

私たちは、入り口付近に立ってお客さんを待っている。

私も一応魔道具店で荒くれたお客さんたちの接客はしていたので、接客自体に不安は無いのだが…

 

ちらり、と下を向いて自分の格好を確認する。

 

うん。大事な部分は隠れている。

逆に言うと大事な部分しか隠れていない。

これは少し激しめに動けば布がずれて、見えちゃいけない部分まで見えてしまうのではないだろうか…

 

 

「こ…これも慣れでしょうか…」

「慣れだと思いますよ?私なんか生まれてこの方、こんな格好をずっとしていますので。まぁ、私たちサキュバスは男性の精気がご飯のようなものなので何かとこの格好が都合がいいんですよね。」

 

…サキュバスも大変だ。

 

いや、性という面で見ると優秀なのだろうか…

 

私も人間だった頃から、もっと勇気を持っていれば、いろいろ拗らせることもなく…

 

 

とか軽く自分の人生を振り返っていると、私が働き始めて第一号となるお客さんが店に入ってきた。

 

 

「「いらっしゃいませ」」

 

私とロリサキュバスさんが合わせて挨拶をする。

 

「あぁ、今日もよろし…」

 

そこまで言って目の前の人物は私と目が合ったまま固まった。

この人は…確かダストさんと一緒にパーティを組んでいたクルセイダーのテイラーさんだったか。

テイラーさんが口を開く。

「て、店主…さん…?」

「は…はい…店主です…まぁ、今は店主じゃありませんが…」

テイラーさんは、冷や汗を流しながら固まっている。

 

何だか見られたくないものを見られてしまったような、そんな表情だった。

 

テイラーさんはアクセルの冒険者の中では真面目で通っている。

きっと、いろいろイメージとかに気を遣っていたのだろう。硬派を意識していたのだろう。

 

そんなテイラーさんに対してロリサキュバスさんが無慈悲にも無邪気に笑いかける。

「テイラーさん!いつもいつも本当にありがとうございます!今月は特に利用が多いですね!何かむしゃくしゃすることでもあったの…」

「ああああああああああああああああああ!!!」

テイラーさんは突然叫びだす。

 

そして私に向かって手を合わせる。

「て、店主さん!お願いだ!ここに来たことは仲間のみんなには…いや、この町の冒険者には…いや、俺が来たことは忘れてくれ!なかったことにしてくれ!頼む!!」

「は、はぁ…」

私は圧倒されつつ返事をする。

それなりに人生経験がある私は、男の人が溜まったものをすっきりさせるために、こういうサービスを利用したくなるというのは理解しているので、別に気にしないのだが…

硬派なイメージを保つのも大変だ…

 

その後、テイラーさんはチラチラ私の方を気にしながらもロリサキュバスさんの案内を受けて夢のオーダーをして帰っていった。

 

それを見送った後、ロリサキュバスさんが口を開く。

「テイラーさんは、いつも他に人の来ていない早い時間帯にくることが多いですね。」

「は、はぁ…」

 

この子、結構プライバシー意識が低いみたいだ。私も気を付けなければ…

 

 

その後、ちらりとテイラーさんのオーダーの内容を見たところ、『いたいけな少年になって強気な女性冒険者に押し倒されたい。』との夢の要望が書かれていた。

 

これにはさすがに少し引いた。

 

■■■

 

 

その後、冒険者や機織り職人さんなどを相手にこの店でオーダーを受け続け、ある程度慣れたところで今日の仕事は終わった。

 

なんだかテイラーさんと同じようにお客さんがみんなこちらを気にしてチラチラと私への視線を向けてくることが気にはなった。

 

まぁでも、トラブルもなく一日は過が過ぎたので、よしだ。

 

「それにしても、日当が5000エリス…食事は砂糖水で我慢するとして…借金の返済まで全然足りない…」

 

私が途方にくれていると、私が退店するのを待ちわびたかのように声が掛かった。

 

「フハハハハハハハ!バイト初日はどうであったエロコスプレ店主よ?街の男性冒険者が汝のエロコスプレを噂しておったぞ!」

「エロコスプレ呼ばわりは止めてくださいバニルさん!だいたいバニルさんがあんな恰好させたようなものじゃないですか!」

私はバイトで溜まったうっ憤をここぞとばかりにバニルさんに吐き出す。どうせ怒りの悪感情は食べられるのだ。であればたっぷり食べさせてあげよう。

「バイトは恙なく終わりましたけど、ここでバイト一か月していたって全然借金なんて返済できないじゃないですか!!ほかにも返済の宛を探さないと…」

「汝には魔道具店から離れてもっと巨視的に取引というものを学んでもらいたかったのであるが…まぁよい。初日は仕事を覚えるのでそれどころでは無かったであろう。」

「はぁ…今日は早く帰って休みたいです…」

 

私がとぼとぼと歩き出そうとするとバニルさんは私に疑問の声を向ける。

 

「汝、魔道具店で寝起きしていたのに、そこが立入禁止になって、どこで休む気なのだ?」

 

私の足がピシッと止まる。

 

そういえば魔道具店で暮らしていた私だったが、泊まる場所も無くなってしまったのだ。

 

今日の給料で宿を借りる?それじゃ借金なんて一生掛かっても返済できないじゃないか。

 

私が途方に暮れているとバニルさんが声を掛けてくれる。

 

「そんなことだろうと思ったわ。どれ、我輩についてくるのだ。」

「うぅ…バニルさぁぁん…」

 

私は、バニルさんが寝床のことを気にしてくれていたことに感動しつつ、バニルさんの後についていく。

 

 

 

………

 

………

 

「…それで、これは何ですか?」

 

私は目の前の何やら箱状のモノを呆然と見ながらバニルさんに尋ねる。

 

「うむ。よくぞ聞いてくれた。これは我輩が汝のために用意した今日からの汝の屋敷だ。」

 

ちなみに私たちがいるのは河川敷。川に掛かった橋の真下の空間だ。

 

「店主よ。この素敵な一軒家は成金小僧の知識で我輩が再現した段ボールハウスなるものだ。小僧の国では段ボールハウスで河川敷なんかに居を構える者が無数にいるらしい。引っ越しが大変便利であるし、馬小屋なんかよりもプライバシーが守られ、何といっても家賃が破格の0エリスである!」

「そ、そんな…こんな寒空のもと吹けば飛ばされるような紙の家で寝泊まりしろと…」

 

私が茫然自失に陥っていると…

 

「ちなみに我輩、今日は自分のへそくりでアクセルの街で一番高級なホテルのスイートルームを抑えておる。」

「え?それなら私も…」

「あぁ残念、汝も泊めたいのはやまやまであるが生憎部屋は一つしかとっていないのだ。サキュバス店での汝の態度を見るに、男と一緒に泊まるのはどうも危機感を覚えるようなので、まことに遺憾ではあるが我輩は独りで泊まることにする。うーむ、まことに遺憾である!」

「バニルさん!いつも悪魔には性別が無いとか言ってるじゃないですかああああ!!もう胸でもお尻でも触っていいんで私も一緒でいいじゃないですかぁぁぁぁぁぁ!」

「うーん、やはりリッチーの悪感情はさして美味くないな。人間であった頃の汝の方が美味であったぞ。」

「余計なお世話ですッッ!!!」

 

 

私の借金完済までの道のりは果てしなく遠い…

 

 

 

■■■

 

借金:2000万エリス

日当:5000エリス

猶予:残り1カ月

 

 




テイラーごめん…

連載のペースは週一くらいになりそうです。よろしくお願いします。
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