やはり俺のクロスオーバーはまちがっている。 作:餃子の教え子
いや、ミアさんも……いや受付嬢までもか……
今回は八幡side→リ○ーさんsideという感じになっています!
それでは、どうぞぉ!!
俺にとって、見覚えのあったこの店員は、地球で会ったことがあるとかでは決してない。
ぼっちで他人との接触が少ない俺にとって、記憶を辿っても彼女のような人には会ったことがないのは、容易に思い出せる。
だからこそ、思う。まさか、と。
テトに会った時のように、俺は自分の目に映る
視界を疑っていた。
「貴方は、これからラフコフと戦うと言うのですか?」
次の瞬間、彼女が発した言葉は、冷淡として強弱のない言葉であったが、どこか痛々しさを感じ、理解する事のできない激情を感じた。
そうして、そんな彼女に俺は気遅れさせられた。
彼女から溢れ出る何かしらの強い感情のようなものによって。
「あ、あぁ」
俺は若干戸惑いながらも返事をする。
すると、彼女は俺を疑っているのか、エイナさんの方へと向き返り、
「本当なのですか? ラフコフは冒険者組合公認の上位ギルドです。それはよくご存知のはず」
「……本当は待つつもりだったわ。けど、そうね。私は決心したの。あそこの闇を明るみに晒す必要がある。ある人を助ける為に! 私は戦うわ!」
エイナさんは負けじと、その店員に向かって堂々と言い放った。エイナさんからすると、『もう彼が傷付くのを見ていられない』という気持ちからだろう。
そんなエイナさんの覚悟に店員は「そう」と小さく呟いた。その瞬間、彼女がどう思ったかは分からないが、俺には彼女が少し笑みを零したようにも見えた。
「今の貴方は、良い目をしている」
すると、エイナさんに向かって彼女はそう言った。それは変わらず無表情のままであったが、どこか嬉しそうでもあった。
ここまで、冷静に観察できているなんて、これまでのぼっち人生で培ってきた人間観察力が生かされてきたな。
そうして彼女は、エイナさんの次に再び俺の方を見てくる。
俺をじっと見つめてくる彼女の瞳は、蒼くて綺麗で、俺は無意識に目を逸らしてしまう。俺の顔が赤くなっていないことを祈る。
「貴方の目も良い目だ」
……あぁ。笑顔でそんな事言われたら、意識しちゃって赤くなってしまうだろ。
俺の腐った目を褒めてくれるなんて……。
そうして、目を合わせずらくなった俺は目の前のエイナさんの方を見ると、エイナさんは何故かむくれている。
エイナさんも元々が美人なわけであって、可愛かったのは言うまでもない。
「……ヒキガヤ君。何デレデレしてるの?」
あ、エイナさんの目のハイライトが消え始めているじゃないか……や、やばい。
「お、俺もエイナさんの目、き、嫌いじゃないですよ……」
「ヒキガヤ君……うんうん、私も好きだよ、君の目」
エイナさんはそう言い、笑顔になる。
少し身震いがしたのは気の所為だろうか。
俺はぼっち特有の危険センサーによって、咄嗟に話を変えるため、店員の人に気になっていた事を聞いてみる。
「ええっと、すみません。ラフコフがどうかしたんですか?」
その質問に店員は、一瞬眉を歪めたが、再び無表情に変わり、
「昔……色々あった、からでは、駄目でしょうか……」
そう言って彼女は、エイナさんの方を見た。エイナさんも彼女のその表情を察したのか表情が暗くなる。
二人は顔見知りっぽい感じがする。
エイナさんとも、先程会ったばかりの俺には分かるはずもない秘密を抱えているんだな、と俺は知り、知りたいと思った。
それに、店員の彼女も気になる。なので、再び観察してみることにした。
……やっぱり似ている、よな。
すると、店員の方から質問がきた。
「貴方方は、何故奴ら──ラフコフを敵と見なすのですか? 」
「先程も言ったと思うけど、その助けたい彼はラフコフによって新人潰しにあっているの。そんなの……見逃せるはずがないッ!」
エイナさんは間髪入れずに強く答えた。俺も一応、その通りなので頷いておく。そんなエイナさんに彼女は、また「そう」と言うだけだった。
……どうすればいいんだ。聞いてみてもいいのだろうか。
俺は本当の事を言うと、彼女に心当たりがある。
前に気になっていたんだ。そして、惹かれていた時期があった。その性格や過去に……。
この彼女が他人の空似の可能性もある。けど、気づいてしまった。そうなると、次々に思い出してくるものがある。
例で言うと、彼女が着ている黄緑色のウエイトレス衣装や、このお店、先程飯を届けてくれたおばさんだって、よくよく考えてみれば……。
それに、俺の目の前にいるハーフエルフの受付嬢であるエイナさんだって……。
俺は気づいてしまった。心当たりが出来てしまった。
彼女らは、
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』
その原作に登場するキャラクターだということに。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
私の名前はリュー・リオン。
私は、この『豊饒の女主人』に、ある時からお世話になっています。
ここには、感謝していますし、友と呼んでいいのでしょうか……
シルという大切な友人兼恩人にも出会えました。
そんな私は今日も当然、いつものように給仕として働いていました。
そして、お客さ様に呼ばれたので、ある角席へと向かいました。
そこには、冒険者組合の受付嬢をしているエイナさんと、見た事のない黒髪の青年がいました。
とりあえず、青年の方は私に気付いていないようなので、私はエイナさんに、要件を尋ねました。
それだけで、私はここでの接客は終わると思っていました。
しかし、ここで、ある会話が耳に入ってしまったのは、ただの偶然でした。
突然、青年は大声で「エイナさん!」と叫び、
「俺の実力を、見誤ってませんか?」
彼は若さ故なのか、そんな事を口走りました。長い間、戦いに身を置いていた私からすると、彼が到底強そうには見えません。虚言なのだろうと思いました。
しかし、この後、彼が言った言葉は見逃せるものではありませんでした。
「俺は、その『彷徨いの森』を単独で抜けて、このコヒキーア王国に入国してきました。なので、魔物にやられることはないでしょう。それに、敵がラフコフであろうと、俺なら倒して、彼を救うことが出来る。それも今すぐにでも!」
……
この言葉は、私の人生で決して忘れる事も目を逸らす事も出来ないものでしょう。
私は無意識のうちに口が動いてしまっていました。
「敵が、ラフコフですか」
彼はラフコフを敵と言いました。ならば、私と同じかもしれない、そう期待してしまった自分がいたんです。
少し昔話をしましょう。
私は昔、冒険者でした。そして、あるギルドに所属していました。そこで、仲間と共に依頼を受けたり、冒険をしたり、楽しい日々を過ごしていました。
しかし、そんな楽しい日々はある時、崩壊しました。
通称『
他パーティーに魔物を押し付けて、魔物の攻撃対象変えさせ、加害者側は逃げていくという卑劣な禁止行動。
あの日、私たちのギルドは、ラフコフのギルドによって魔物を押し付けられました。
そうして、私たちのギルドは全滅。
正確には、私を残して全滅した。全員、死んだ。生きているのは、私だけ。
当然、泣いた。嘆いた。私がもっと強ければ仲間は死なずにすんだ。なのに、私だけ生き残った。生かされた。
それが、何より悔しくて、苦しくて、自分の無力さを恨んだ。
けど、そんな私の心の中には、もう一つの感情が生まれていました。
『復讐』
その二文字でした。仲間達の為にも、と。
そして、私のラフコフへの復讐生活が始まりました。
片っ端から、ラフコフに対して闇討ちを仕掛けていき、沢山の命を殺めていきました。当然、冒険者ではない彼らの知り合いでさえも。
そうしていつしか、私は冒険者組合のブラックリストに載り、冒険者としての資格を剥奪されました。
しかし、そんな些細な事はどうでもよかった。
私は復讐を続けました。
けど、それにも限界があったようで、多数の追っ手との戦いで瀕死の重症を負い、野垂れ死にする所をシルという少女に拾われました。
幸いにもシルは、ここ『豊饒の女主人』で働いている給仕のようで、私は彼女の勧めで、ここに向かい入れてもらいました。
そんな私なのですが、あの日の事を忘れた事はありません。
目の前で、魔物に蹂躙されていく名前達など、もう見たくない。もう起きてはならない。
私の『復讐』心は、今でも衰えていません。
「貴方は、ラフコフと戦うと言うのですか?」
なので、私が思っていた事を不意に口に出してしまったのは、仕方がないことでした。
そこには、私の言葉の中に潜む復讐心が溢れ出ていたかもしれません。
そんな私の質問に彼は威圧されたのか、「あ、あぁ」と曖昧な返事をするだけでした。
そして私は彼に聞いたのが間違いだと思い、冒険者組合の受付嬢をしているエイナさんを見ました。それなら、少しは言葉に信用が出来ます。
「本当なのですか? ラフコフは冒険者組合公認の上位ギルドです。それはよくご存知のはず」
「……本当は待つつもりだったわ。けど、そうね。私は決心したの。あそこの闇を明るみに晒す必要がある。ある人を助ける為に! だから戦うわ!」
彼女は迷いのない目で私を見つめ返しながら、そう言いました。それは、まだ私が冒険者をやっていた頃の彼女とは違い、とても人間らしく、堂々としていました。
そんな彼女に私は、少し感心し、
「今の貴方は、良い目をしている」
昔の彼女と比較しながら私はそう言いました。彼女は私の言葉に少し驚いているようでした。
そして、先程から彼女ではない彼にずっと見られていた事に気付いていた私は、再び彼の方を見てみました。
表現し難い腐りきったような目……。
けど、その目の奥は鋭くて綺麗で心地よくて、吸い込まれていくようで……。
「貴方の目も良い目だ」
私は久しぶりに笑顔になってしまったかもしれません。
それから、一悶着あったようですが、彼は話を変えるためか、私に厳しい質問をしてきました。
「ええっと、すみません。ラフコフがどうかしたんですか?」
……私はその理由をここで話す気には、どうにもなれません。
何より今日会ったばかりのはずの彼に、私の暗く汚れた過去を語りたくありませんでした。
だからでしょうか……。
「昔……色々あった、からでは、駄目でしょうか……」
そう私は濁してしまいました。彼はそんな回答に、眉を歪めていました。
……彼の考えている事がよく分からない。
なので、ふと彼と同席するエイナさんが気になり見ると、完全に目が合いました。彼女は申し訳ないような表情をするだけです。
私は先程の彼女の言葉を思い返しつつ、再び問いました。
「貴方方は、何故奴ら──ラフコフを敵と見なすのですか?」
「先程も言ったと思うけど、その助けたい彼はラフコフによって新人潰しにあっているの。そんなの……見逃せるはずがないッ!」
彼女は強い意志を持ちながら、そう言いました。そんな彼女に同意しているのか、彼は頷いています。
そうでしたか……ラフコフによる新人潰し……
ありえる話だと私は思いました。
奴らなら、やっていてとおかしくはない、と断言できます。
なので、私は小さくはありましたが、「そう」と呟きました。
そうして、私は二人を見ました。
エイナさんからは、覚悟を決めたことが分かります。本当に彼という人物を救いたいのでしょう。
けど、ラフコフは生半可な気持ちで挑んでいい相手でないことは私が一番よく理解しています。
奴らは強い。
だからこそ、彼女らが奴らと戦えば、かなりの確率で死ぬ。
それも証拠も残らず、誰にも見届けられずに……。
そんなのは、私も見ていられません。これ以上、奴らによる被害者を増やしてはならないのです。
何より私だって、戦いたい。それ程に奴らが憎い。
それが私の本心なのですから。
だから、私は……
「……私も同行させて貰っても宜しいでしょうか?」
彼らに力を貸すことにしましょう。
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