やはり俺のクロスオーバーはまちがっている。 作:餃子の教え子
エリートぼっちともなると……自己紹介が難しい……らしい。
「同行させて貰っても宜しいでしょうか?」
リューさんの口からそう言われた時、俺は不意に目を見開いてしまった。
「え……あ、えっと……」
よく覚えていない俺を恨みたいところだが、確か『ダンまち』の中では、リュー・リオンというキャラは強かったはず。
それこそ、元冒険者?だったけ……なんか、ワケありっぽかった、よな。
あと多分、レベル3、4くらいの実力はあったはず。
あぁ……こうなるんだったら、もっと原作読み込んでおけば良かった。何してたんだ、あの時の俺。
けどまあ、この人達のことを思い出せただけ、マシと思っておくか。そうしないと、やっていけねぇ。
けど、そんな俺でも思った。いきなり会話に入ってきて、同行しようとする彼女の不自然さを。
俺は当然、不思議に思った。
───なにが、目的なんだ。と。
俺はいつもよりも目が鋭くなっていたと思う。
それが、どうやら伝わったのか、リューさんと俺の目が合った。
「駄目、でしょうか?」
「……」
……
…………
永遠のようにも感じるリューさんとの、見つめ合い……
……………………
………………………………
………………………………………………ぷいっ。
い、いや、まじで、ぼっちには見つめ合うとかレベル高すぎるから。
ほんと、見つめられすぎて、全身が視線によって溶けちゃうまであるから。
こう言ったことは、俺みたいなエリートぼっちには刺激が強すぎる。
……はぁ、なんでだよ。何見つめ合っちゃったんだよ、相手はエルフだからってさ。何デレてやかをる。けど、エルフだしな、エルフだしなぁ〜、エルフさんですもんね……綺麗だな」
ふとリューさんの方を見ると、ほんのりと頬の赤くするリューさんがいる。
え、これはもしや……
い、いや、そんなわけない。
ほ、ほんとにまじなんなの、惚れてるの?俺に惚れちゃってるんの? 惚れてるんなら、俺は今すぐ告って振られるまであるからね、いいんだね、いいんだよね? 告っちゃうよ?けど、振られちゃうのは分かってる。出会って数分だよ。馬鹿なの。ねぇ、俺の頭馬鹿なのだろうか。やはり俺の脳内妄想はまちがっている。
「ヒキガヤくん……」
……そして、エイナさんは俺を睨んでくるし。あっ。まさか、貴様、心の声を!?
「さっきリューさんに向かって『綺麗だな』とか声に出ちゃってたからね」
「……へ?」
ま、ままま、まじかよ。顔が熱を帯びていくのがわかる。うわっ、恥ずかしすぎるだろ。何口走ってんだよ、おれ。
ちらっと俺はリューさんのほうを見てみる。そこには顔を俯けつつ未だに赤いリューさん。可愛い。これってなんて名前のギャルゲー?
って、違うだろ。怒らせてしまったみたいだ。
「えっと……その……」
こういう時、なんて言えばいいんだよ……あっ、リューさんが顔を上げた。それで、俺の方をまた見てくる。
「同行させて貰っても宜しいでしょうか?」
え? 同じ台詞を二回目だとっ!?
……そういうことか。テイク2ということだろう。先程のは無かったことにするらしい。
いい策だ。それに乗っかるとしよう。うんうん、そうしよう。
「も、もちろんです」
俺は勢いよく肯定の返事をした。何が目的とか、どうでもいいだろ。多分、大丈夫だ大丈夫。この人、原作だと主人公の味方ポジだったし。
そんな俺の返事に安堵したのか、リューさんは肩を撫で下ろす。
「はぁ、ヒキガヤくんがそう言うのなら、私も同行を認めざるおえませんね。それに貴方なら戦力として申し分もないですし」
「いえ、此方こそ、機会を与えて下さった事に感謝を」
ふぅ、エイナさんも認めてくれたようで良かった。
「では。ご存知かどうか分かりませんが、私の名前はリュー・リオンと言います」
そう言ってリューさんは、俺に向かって右手を差し出した。これは……握手か。
そういえばだが、俺は今、リューさんの名前を知らない設定だった、な。
ってことは……次は俺の自己紹介か……。
「ええっと、その……俺の名前は、ひきぎゃや、はちまんです」
くっ、噛んでしまった。ひきぎゃやになってしまったじゃないか。くそぅ、あの時の俺を殴りたい。
そう思いつつ、俺はリューさんと握手を交わす。
「ふふっ、これからよろしくお願いしますね。比企谷さん」
けれども、リューさんは俺の噛みを華麗に修正して、正しく読んでくれた。や、優しい。
「は、はい。此方こそよろしくお願いします」
そうして、俺とリューさんの共闘の契りは結ばった。
「……して、エイナさんは彼の事を随分と高く評価しているようだ」
……ん? 彼って俺の事か?
「へ? あぁ〜うん。そうだけど……」
「強いのですか?」
「え……そ、そういえば……」
………ん? んん? なんか俺睨まれてる? ぼっちは視線に敏感なんだぞ。
「……ヒキガヤくんって強いの?」
エイナさんにそう聞かれた。そんな事を俺に直接聞きますか、普通。弱かったら、精神的に来る質問ですよ、それ。
……はぁ、どうしようか。どう答えようか。
多分、俺はチートだ。勇者の称号を与えられている時点で強いと思う。
世界を救う為に異世界から連れてこられたくらいだしな。
てか、これはあれだ。まるで……
──俺の異世界生活の在り方を決める分岐点だな。それも大きく二つに分かれる分岐点。
一つは、俺のステータスの全てを打ち明けて無双するルート。名付けて八幡TUEEEEルートだ。どやっ。
そしてもう一つは、俺のステータスを秘密にする影の実力者ルート。実は俺って強いんだぜっていう男のロマン溢れるルートだ。どやっ。
……はっきり言ってどちらも捨てがたい。
けど、強いて、強いて選ぶとすれば、
「俺は強くないですよ、多分」
俺──比企谷八幡は後者を選ぶ。
だって、目立ちたくないもんっ!てか、影の実力者とかめっちゃやってみたいし。何より、そんな俺が勇者だとバレた時なんて……
「そ、そうなんだ」
「そうでしたか。なら尚更こうしてはいられませんね。今からの食後の予定、お二人は空いていますか?」
「え? う、うん。大丈夫だと思うけど」
そう言ってちらっと俺の方を見るエイナさん。
面倒臭いが、牡羊座の勇者為だ。「俺も大丈夫だ」と伝える。それに、無一文の俺がする事なんて野宿以外にないのだから、暇人だったしな。
「それは良かった。森に行く前に寄っておきたい場所があります」
「寄っておきたい場所?」
寄っておきたい場所か。当然だが検討もつかないな。
「はい。そこに住んでいる方に助っ人を頼もうと思います」
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「……それで、その寄りたい場所というのが……この家ですか」
「はい、そうです」
そうして俺たちは店の奥へと戻り、ウエイトレス衣装から黄緑のローブ姿に着替えた戦闘着姿のリューさんに連れられ、店を出て通りを歩き、ある一軒家の前に来ていた。
その一軒家は、何処にでもあるような大きくも小さくもない。それでいて、どこか落ち着いた雰囲気のある一軒家だった。
見覚えは……ないな。まあ、普通はあるわけがないか。
「……あ、まさか、ここって」
ん? 隣で家をずっと見つめていたエイナさんが、突然何かを思い出したように声を上げ、リューさんへと顔を向ける。
そんなエイナさんを見て、リューさんは応えるように頷き、呼び鈴を鳴らした。
……なんか二人で通じ合ったようだ。
「やっぱり……あ、ヒキガヤくんは知りませんか? ここって、あの有名な冒険者さんのマイホームですよ! そうですよ! 絶対そうだった気がします! ですよね、リューさん」
エイナさんの呼び掛けに、リューさんはもう一度頷いている。
有名な冒険者か。
そう言われても……俺は異世界から来たばかりの新米だから、この世界の冒険者事情なんて知らない。
知っている事、俺が持っている事といえば、原作知識しかない。
……ん? 原作知識?
……ま、まさか『ダンまち』の誰かの家だったりしてな、ははっ。
…………え、まじで、そういう事なんじゃないか? なんか、ダメもとで言って答えが当たってしまった系じゃないのか、これ?
どうしよう……当たっていそうな気がする。
「その通りですよ、エイナさん」
「へぇ〜噂には聞いていましたが、本当にギルドのホームには、住んでいなかったのですね」
誰だ。『ダンまち』の冒険者って誰がいた?
その中で、有名な冒険者って言ったら……あの……アイズ……ヴァレンなにがしさんだっけ?
それとも、その人が所属していたロキファミリアの仲間達の誰かか?
確か、相当に強かったと思う。
あとは……フレイヤ?の隣にいつも居た筋肉ゴリゴリの男とかが強かった気がする。
けど、こんな落ち着いた雰囲気の家に住んでそうにないしな。いやでも、もしかしたら……
え、本当に誰なんだよ、八幡わからん。
『ダンまち』には他にも強者は沢山いた気がするし、本当に、誰なんだよ……。
「比企谷さん、ここはですね……」
すると、呼び鈴を鳴らしていたリューさんが振り返って俺に話しかけてきた。
………………ゴクリ。
「【閃光】の家なのですよ」
「あっ、こんな夜に誰かと思えば、久しぶりね、リュー。それと、エイナさんもお久しぶりです」
すると、リューさんの言葉と同時にその奥の玄関から一人の女が出てきた。多分、俺と同じくらいの歳だと思う。
栗色の長い髪に、容姿は可愛いと言ってしまう程の女性。腰にはレイピアを携え、白に赤のラインが特徴的な服を装備している。それにより、カッコ良さすらも感じる。
なんだ、リューさんが紹介したかった人ってこの人か。
俺の知っている人だ。それも、そう、有名人だ。
……っておいいいいいいッぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
らしくもなく、心の中で叫んでしまった。
普通はこれから紹介される人を、俺が知ってるのおかしいから。
え、え、まじか、完全に予想外だった。
ここって『ダンまち』の世界じゃなかったのか?
俺の目の前で家から出てきた人って違う作品じゃないか。
だって、だって、この人って……絶対に……
どう見たって『
【閃光のアスナ】さんじゃん。Asunaさん!
おいおい、一体どういう事だ。
何故、『
俺は頭を抱え込みたくなる衝動に襲われる。
確かに
けれども、まさか二つの作品が融合していたなんて、俺の想像を超えていた。
この世界は一体どうなっているんだ。
「ん? リュー、その後ろにいる男は誰なの?」
「あぁ、この方は……説明するのならば、そうですね……先程知り合った冒険者です」
「先程って……危険じゃないの?
……まあ、いいわ。リューが信用しない男を此処には連れてきたりはしないよね」
そう言って俺を値踏みするように見てくるアスナさん。
だから、ぼっちは視線に敏感なんですよ? めっちゃ見てるのは分かっちゃいますからねぇ……
「私の名前はアスナよ。冒険者の中では【閃光】って呼ばれてるかな。よろしくね!」
……俺に向かって今、ちゃっかり自己紹介しやがったな。アスナさんや。
自己紹介……か……次は俺の番だよな。
大きく深呼吸をする。よし。
「俺の名前は比企谷八幡でしゅ。よろしゅく」
…………あぁ……もう俺なんて、俺なんて…………穴を掘って埋まってますぅ………
「ヒ、ヒキガヤくん!? 何処からそのスコップ取り出したの!? てか、何で穴を掘ってるの!?」
「……凄まじい魔力コントロールだ」
「あははは。比企谷くんって面白いね」
って、なんで俺の手にスコップがあるんだよ……あ、これは俺の闇魔法か。闇魔法でスコップを形作っちゃってるんだ。
というか、今は穴を掘って埋まっていたいんだ。止めないでくれ。
「はいはい、ヒキガヤくん。お外に出ようね!」
……エイナさんによって俺の穴埋まり生活は阻止され、一分も持たずに終わった。[完]
「それで、リュー。何の用件なの?」
「はい。ラフコフについての件です」
それを聞きアスナさんの目が真剣になる。
「……ラフコフね。私のギルドも今、作戦を練っている所よ。あそこはこれ以上放置できない! 調査した結果、人殺しの証拠だって集まりつつあるし。確か、リューだって昔……」
「……アスナ。その話はやめてください」
やっぱりリューさん、過去に何かあったんだな。それを俺が深く聞くのは……駄目だな。
「あ、ごめん、リュー」
「いえ……大丈夫です。それで、用件はというと、私達はこれから奴らの新人潰しを止めに行きます。一人の少年を救う為なので、奴らにそこまでの戦力は居ないと思いますが、アスナには、念には念として助っ人を頼もうと思い、此処に来ました」
「そう、なら私はその助っ人引き受けるよ!」
アスナさんは胸を張ってそう言った。ラフコフには何かしらの思いでもあるのだろう。
「丁度運がいいことに、遺跡の調査が終わって帰ってきたばかりで装備したままだし、今すぐ行けるよ」
「あ、極東に出来た新しい遺跡の調査終わったんですね!」
「うん! 団長達が今頃、組合に報告に言っているはずだよ」
……今思ったけど、エイナさんとアスナさん……声似てる。というかこれ、声優さん、同じだっただろ!?
ご都合主義かなんか知らんが、いいの? 声同じだよ?
微妙に違う感じはあるけど。
「二人とも、その話はまた後程にでも。今は時間が惜しい。これ以上、夜も深くなり日を跨ぐわけにはいきません。ただでさえ、夜は魔物が活発になるのですから」
「そうね。私も直ぐに準備してくる。少し待ってて」
そうして俺は、四人で『彷徨いの森』に向かう事となったのだった。
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