やはり俺のクロスオーバーはまちがっている。   作:餃子の教え子

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ここからの勇者物語は……シリアスパートへと向かっていくんです。

そう、異世界は極甘珈琲(マッカン)のように甘くはいかない。
それが異世界(リアル)──現実(リアル)

それでは、どうぞ!!


第12話:命の軽さと重さ

「エイナさんって戦うこと出来たんですね」

「もう! ヒキガヤ君! これでも私はエルフの血が流れているのよ。弓や風魔法は少し使えるんだから!」

 

 エイナさんはそう言い、ぷんぷんと頬を膨らましている。少し可愛い、と思ってしまったが、いけない、集中しなくてはいけない。

 

「……二人とも、私達は此処に遊びに来た訳じゃない。いつ敵に襲われてもおかしくないんだよ。気を引き締めてついてきて!」

 

 ほら! ほらほらっ! アスナさんに怒られちまったじゃないか。

  そして、リューさんは注意はしなかったものの、表情が無表情。お怒りかもしれないんだぞ。

 リューさんは表情の変化があたりないので、何を思っているのかが怖い。いい人ではあると思うが。

 

 そんなこんなで、俺達は今『彷徨いの森』を駆け抜けている。

 

 この状況を説明するならば、

 

 あの後、アスナさんの家から、直ぐに俺たちは森へ出発する事になった。

 

 そうして、俺たちは今に至るわけだが、森の中を駆ける俺たちを先導するのはリューさんとアスナさん。

 

 リューさんは、元ダイヤモンド冒険者。

 

 アスナさんは現役のミスリル冒険者らしく、二人ともこの森には何回と来ており詳しいらしい。そして、エイナさん曰くこの中で二人が一番実力があり、任せられるということで、こう決まった。

 

 そうして、森を駆けているわけだが、魔物にも出会わず暇で、俺は少し考え込んでいた。

 

 それは、あまり今、必要性のないことなのだが、『何故、リューさんが同行したのか』ということだ。

 先程はむやむやに終わってしまったが、俺はリューさんを警戒しなくてはいけないだろう。

 

 アスナさんはまだいいんだ。目的というか、参加した理由が、分かる。

 それはリューさんに頼まれたからだ。彼女は依頼を受けてやっているだけに過ぎない。そう思える。

 

 けど、リューさんは違う。自分から同行をお願いしてきた。

 

 それが、どうも俺の中で腑に落ちない。

 

 なぜなら、このエイナさんの言う彼を救う話に、彼女への何もメリットも感じなかったから。

 

 彼女にとって、あくまで俺とエイナさんは他人。

 

 そんな俺達二人に、わざわざ危険を犯してまでラフコフと戦おうとするなんて、余っ程のお人好しか何かしらの理由があるワケありに違いない。

 

 当然、彼女が、前者とは思えない。

 

 なら、彼女はもしかしたらラフコフ()なのだろうか。

 その推論を信じたくはないが、わざと俺たちをおびき寄せているなら警戒しておかなければならない。

 

 そう考えてしまうのもしょうがない。

 

 けど、そうでなくて欲しいと思った。

 

 もしかしたら、彼というか、牡羊座の勇者と知り合いで惚れているとかのラブコメ展開がありそうだしな。

 

 どうせ、あれだ。

 

 牡羊座の勇者って《ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか》に出てくる主人公。

 

 

『ベル・クラネル』

 

 

 なんだろ?

 

 ふふっ……ここまで来れば俺でも分かってしまう。

 

 だってこの街に来てから出会って深く関わった人達って『ダンまち』のキャラクターばかりだ。一部、アスナさんのようなイレギュラーはあるけれども、多分『ダンまち』。

 

 ならば、自然と見えてくるものがある。

 

 それは、この先にいる牡羊座の勇者はベル・クラネルだということ。

 

 我ながら名推理だと自負している。

 

 

 そんな妄想を膨らませながら、俺は森の奥へと進んで行った。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 ──キッ!? ンッ!! ガキッ!!

 

 すると暫くして、森の奥から金属音が聞こえてきた。

 その音に俺達は互いに目線を交わす。

 そうして、近くにあった茂みに四人で身を隠す。

 

 おそらく今の音の発生源は、牡羊座の勇者だろう。それも金属音が鳴るという事は対人戦だということがわかる。

 

 なんでも、この森にいたクマが金属のように固かった覚えはない。この世界に変異種とかがあるなら分からないが、少なくとも対人戦だと判断できる。故に牡羊座の勇者は、ラフコフと交戦中と推測できる。

 

「……ここからは慎重に行きましょう」

 

 リューさんがそう俺たちに忠告する。

 その言葉に俺たちは黙って頷く。その通りだと思う。ここから先は敵がいる。そう思っていて間違いない。

 エイナさんは、思わず息を呑んでいる。

 

「見張りの敵がいなければ良いんだけど……二人とも、私とリューが先行してくるから、待ってて」

 

 アスナさんはそう言ってリューさんと共に、音を立てずに茂みを出た。

 

 すると途端に、リューさんとアスナさんの頬から少量の血が流れる。

 その直前、俺には微かにだが発砲音が聴こえた気がした。

 

「あれぇ? 少し手元が狂っちまったなぁ〜。まさか少し動揺しちまうとは。いやいや。けど、誰が予想出来たか。まさか、あの【疾風】と【閃光】が侵入者だったとはなぁ」

「……ちっ」

「運が悪い。嫌な敵に会ったわね。まさか、コイツがいたなんて」

 

 リューさんは舌打ちをし、アスナさんは真剣な口調でそう言った。対して相手はこちらを煽るような巫山戯た口調。声質から男だろうか。

 

「こんな周辺監視と魔物の間引きで退屈していた所に、こんな美味しい獲物が自ら来るなんてねぇ!」

「──っ! 二人とも今すぐ後ろに飛んでっ!」

 

 何かを察したアスナさんがそう叫んだ瞬間、言われた通り、俺とエイナさんは茂みから出て後ろに飛ぶ。

 

 すると、

 

 ──バンバンッ!!

 

 と何かを発射する音が聞こえた。否。何かではない。

 

 茂みから飛び出した俺の目には、その正体がハッキリと見えてしまっている。

 

「銃……」

「へぇ? そこ隠れていた君。そうそう、その腐り目の君。この武器知ってるんだ?」

 

 異世界の地球出身の俺が知らないはずがない。

 

 てか、腐り目だと? 初対面の人にそう言われたよ。この野郎。本当にはちまん、泣いちゃうからね。

 

「最近出たはずの新兵器のはずなんだけどなぁ〜。まあ、いっか。雑魚は引っ込んでろ」

 

 銃口が俺に向けられる。

 

 ──や、やばい。打たれる!?

 

 心臓の鼓動が高まったのが聞こえた。人間、真に緊急事態に陥ると動けないものだ。

 現に俺は銃口を向けられるという恐怖に動けなかった。

 

 そして、銃声が森に鳴り響く。

 

「させませんっ!」

 

 次の瞬間、リューさんが俺の前に疾風の如き現れ、武器である木刀を振った。

 

「ちっ。腕は衰えてねぇーようだな」

「えぇ。貴方達に復讐するためですよ……赤目のザザ」

 

 赤目のザザ……。

 その名前を俺は知っている。

 

 SAOでも居た人物だ。それでいて、ラフコフのメンバーの一人だ。

 

 あと余談で、彼の弟だったと思うが……アサダサンアサダサンの連呼は、やはり印象に残っている。

 

「へへっ! その名は昔のやつだ。今はなぁ〜

『デス・ガン』って呼ばれてんだよッ!冥土の土産に覚えときなッ!」

 

 そうして戦闘が始まった。

 

 リューさんは、木刀を携え風魔法で多彩な攻撃を仕掛ける。だが、それは尽く躱されたり、銃弾によって弾かれてしまっている。そして、アスナさんも果敢に攻め込もうとしているが、荒れ狂う銃弾の嵐に奴に近づく事が出来ていない。

 

 そう、始まってすぐに分かる。戦闘素人の千葉県民ですら分かるんだ。明らか俺達が劣勢だと。

 

 ……あと現実逃避したくなるんだが、異常な事に、奴から放たれる銃弾は、直線的に動かない。

 

 なんかいきなり曲がったりする。

 

 その証拠にリューさんとアスナさんの周りには既に何十発もの銃弾があらゆる方向に飛びまくっている。

 

 ……ほんと、どうゆうことだよ!

 

「「──っ! っ!? ……くっ!」」

「ひひっ。風魔法と銃弾の組み合わせはどうだい? この技は名付けて『銃の舞(ガン・ダンシング)』。まるで銃弾が踊っているようだろう? ひひひっ!」

 

 二人とも銃弾が掠ったりして服や肌が少しずつ損傷を始めている。未だに致命傷がないのが、幸いな状態だ。そんな激しい戦闘を俺とエイナさんはただ見つめることしか出来ていなかった。

 

「案外、俺には銃の才能があったみたいでねぇ〜。ラフコフ内でも一番の使い手なのさ」

 

 ──どうすれば、いいんだ。

 

 聞くまでもないのは分かっている。助けないといけないことは分かってる。

 

 けど、けど……身体が動いてくれない。

 

 ──このままだと……援護しないと……っ!!

 

 すると、突如、視界の端からリューさんとアスナさんの元へと近づく人影がうっすらと見えた。それも一つではない。

 

 数えるに五人。それらが俺には見えた。

 

 そうして気が付く。

 

 これらの五人は、隠密系統の《スキル》を使用していると。

 

 多分あの人影は、隠密系統の何かしらの《スキル》持ちの人間によるもの。だから、周りにいるリューさんやアスナさんは、その存在に気が付けていないんだと思う。

 

 そんなスキル持ちと同類である俺でなければ、気付かなかったと思う。

 

 そして当然、彼ら五人の狙いは想像できる。

 

 そんな人影達は、今も音を立てないように静かに静かに銃弾の間を上手く躱すように、二人へと近付いているのだ。

 

 ──このままだと……リューさんとアスナさんが危ないっ!

 

 

 そう思った次の瞬間の俺の行動は早かった。殆ど無意識であった。

 

「《闇の炎に抱かれて消えろ(ダークフレイムマスター)》」

 

 闇炎の支配者としての黒いローブへと衣装がチェンジする。そうして、湧き上がってくる力の奔流。

 

 この力に溢れる感じが心地よい。

 

「《闇魔法》」

 

 そうして俺は《闇魔法》を使った。けど、この時の俺は何も考えていなかった。何一つ理解していなかった。

 ただ、目の前にいる敵からリューさんとアスナさんを早く救いたかった、だけ。それだけだった。

 

 俺の《闇魔法》で無我夢中で力いっぱいに黒い火の玉を作った。そしてそれを、思いっきり投げ飛ばした。それらは投げた瞬間に五つに分かれ、人影に向かって飛んでいく。

 

 そうして、リューさんとアスナさんの元へと近づいていた人影達は、躱す暇もなく、その全てに黒い火の玉が当たり、その人達は為す術もなく弾け飛んだ。

 

 そう、弾け飛んだんだ。

 

 

 

 ──ぐちょ。

 

 

 

 勿論、その影響により、付近の地面に転がり落ちたり、潰れたものがあった。それは俺の目の前にだって落ちている。

 

 

 

 ──……え? これは……なんだ? え? え?

 

 

 

 

 ……本当は分かっている。既に理解は出来ている。けど、受け入れたくない。

 

「へぇ、こりゃひでぇな、腐り目くん。ここまで破裂させるなんて中々の《闇魔法》の使い手だ。まさか、アイツラを一撃でころす(・・・)とはね。あれでも彼ら、そこそこ強かったんだけどなぁ〜」

 

 ……ころす? なんだよ、それ。何言っているんだ。

 

「……気が付きませんでした。比企谷さん、ありがとうございます」

「……いつの間に……比企谷くん、私からもありがとう」

 

 ……え? ありがとうございます? ありがとう?

 違うんだ。確かに救えたかもしれないが違うんだ。違うんだよ。リューさん、アスナさん。

 

 俺は、俺は、俺は……

 

「ひひっ、全くいい殺しっぷりだったな。敵ながら気持ち良かったぜ」

 

 ──殺したんだ。俺は、人を……殺したんだ。

 

 たとえラフコフの人間だったとしても、俺は俺は……

 

「あ、あぁ、ああぁあああぁ、ああああぁあ」

「ひ、ヒキガヤ君? 大丈夫なの!? 正気を保って! ヒキガヤ君っ!」

「お? おぉ? ひひひっ」

 

 頭が真っ白になる。そうして思わず、倒れるように意識を失いそうになる。

 

 ──あぁ、これらは俺がやったのか。

 

 今になって後悔し始める。

 

 全くもって、俺には覚悟というものが出来ていなかった。

 

 そもそも、俺は対人戦(・・・)なんて人生で一度もした事がなかったんだ。

 森で魔物を倒すのはできた。それは、運が良かっただけに過ぎない。

 

 情けないことだが、俺は悪者として、言葉で人を傷付け、敵意を向けさせることは出来ても、

 

 

 人を物理的に傷付け、殺すことは出来ない人間だったんだ。

 

 

 ……こんなの所詮は甘えだ。正義のためにと理由付けをしてでも、殺さなくてはならない敵だった。

 俺は正しい事をしたんだ。そういう考え方もある。

 

 けど、違う。違うんだ。

 

 全く知らなかった。俺はそういう人間だと。

 

 あの人に理性の化け物と言われた俺の本当は、こんなにも脆くて弱い。

 

 忘れていたんだ。俺は臆病な人間だと。

 

 俺は《闇の炎に抱かれて消えろ(ダークフレイムマスター)》を無意識のうちに解除する。

 

 あ、あぁ。人に魔法を使う事が、こんなにも身体が震え、怖いものだったのか。

 

 怖い。殺してしまった事もだが、俺にそんな力がある事も怖い。何よりも怖い。この異常な力も怖い。

 

「……まずい」

 

 すると、リューさんが煙幕を張る。辺りが真っ白の煙に包まれ、見えなくなる。

 そうして、敵の銃弾の間を縫って俺に近づいてきていた。

 

 ──やめてくれ。こんな俺に近付かないでくれ。

 

「……二人とも、一時撤退をしましょう。今の彼は危険です。これ以上、刺激させるわけにはいかない」

「私もそれに賛成。今の彼は危険すぎる」

「……ヒキガヤくん。そうですね、分かりました。一刻も早くっ!」

 

 三人は小言でそう言い、俺はリューさんの片腕で抱えられる。

 

 ──やめてくれ。触らないでくれ。

 

 俺は必死に抵抗しようと腕の中で暴れた。けど、上手く力が入らない。

 

 三人は、互いに目で見つめ合って、霧の外へと走り出した。

 

「ちっ……おい、お前ら、奴らが逃げる。追えッ!」

 

 そう後ろから奴──デス・ガンの声が聞こえる。銃声だって聞こえる。

 

 ……あぁ、何やってんだろ。もう嫌だ。何も考えたくない。

 

 

 俺は、俺は……人を五人殺した。




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