やはり俺のクロスオーバーはまちがっている。   作:餃子の教え子

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シリアスパートは、まだ始まったばかりに過ぎない……

これは、
一人の少年が勇者(英雄)たる存在に至る為の物語。



第13話:おれは、ひとごろし

「ハァハァ……ここまで来れば、大丈夫でしょう」

 

あの後の事はあまり覚えていないが、俺はリューさんに抱えられ、ラフコフの追っ手から逃げていた。

その間、森の道無き道を駆け抜け、上手く奴らを撒くことに成功したようだった。

 

けれど、俺を抱きかかえていたリューさんや慣れない全力疾走にエイナさんは疲れが見えていた。現役のアスナさんでさえ、気を抜くと疲れが出ている始末だった。

 

そんな中、そんな追っ手から逃げ切れたという喜びは俺の中にはない。自己嫌悪する気持ちがドンドン強くなる。

 

「……比企谷くん、大丈夫?……じゃない、よね」

 

アスナさんが俺のことを心配するような言葉を発する。

 

大丈夫か……あぁ、大丈夫、なわけがない。

 

 

……………ッ!!!!?!!!

 

 

 

遠くから何かが……くる!?

 

 

「アスナさんっ! 危ないッ!」

「え?」

 

俺は咄嗟に抱えていたリューさんから脱し、俺はアスナさんを突き飛ばした。

 

三人ともそんな俺の突然の奇行に理解が追いついていないようだ。

 

そして次の瞬間、俺の腹部に激痛が走る。

 

俺の腹部には銃弾が貫通した跡があった。

 

 

……知りたくもなかった。銃に撃たれるのって痛すぎんだろ。

 

 

その跡からは絶えず血が体外へと溢れ出てくる。

 

「ッ! 比企谷くん!? こ、これは……は、早く治療を! 治療をして! エイナさんッ!!」

 

「──ッ!!!!」

「は、はいッ!《治癒(ヒール)》!」

 

エイナさんは、そんな血を流す俺を見て、直ぐに駆け寄って《治癒(・・)》をかけてくれた。

 

 

けれど、

 

「……なんで、なんで傷口が塞がらないの!?」

 

俺の傷口はエイナさんの影響を受けず、未だに血が出てきている。

 

 

……このままだと俺は……一体どういうことだ。

 

 

「あれぇ? なんで、腐り目くんが撃たれてるわけ?」

 

すると、上から奴──デス・ガンの声が聞こえた。

 

すぐに俺らは臨戦態勢に移る。撒いたはずだと思っていたが、撒けてなかったようだ。

 

「《能力》の対象者を【閃光】にしたはずなのにな……ま、いっか。どうせ、全員殺すわけだし」

 

「……っ! 赤目のザザ……比企谷くんは私を庇って……もう十分苦しいはずなのに私を庇って……腹に傷を……私は……私はお前を許さないッ!」

「……エイナさん。比企谷さんの治癒は続けてください。私がコイツを始末します」

「分かりました。リューさん、アスナさん! ヒキガヤくんは任せてください!」

 

そう言われ、俺はエイナさんに連れられ後退する。

 

「俺の事をお前やコイツ呼ばわりとは自分の身の程をまだ分かってないらしいなぁ、雑魚共が」

 

二人とデス・ガンは互いに見つめ合い、一触即発の雰囲気だ。

 

「《治癒》《治癒》《治癒》」

 

そんな中、エイナさんは自分の魔力を気にしないかのように、俺に《治癒》を重ねがけしてくれる。

 

……俺の為に、そこまでの事してくれなくてもいいのに。

 

 

「ん? おいおい。まじかよ……ひひっ、あははははははハッ!」

 

 

すると、デス・ガンはそんな俺らを見ながら、派手に笑い出す。

 

「……何を笑っているのですか? 殺しますよ」

 

リューさんは風の刃を場違いにも笑うデス・ガンに向かって飛ばす。けれど、それをデス・ガンはまた見えているかのように地面に降りることで躱す。

その地面に降りたデス・ガンにアスナさんが、一瞬で近付いて細剣で刺突しようとするが、それも続けて全て躱され、アスナさんは腹に蹴りを食らって元の位置に戻された。

 

そして、そんな二人を無視するかのようにデス・ガンの笑いは止まっていない。そして、攻撃を続けようとする二人に向かって、

 

「ひひっ、だってよ〜。あんなの見せられたら笑わずにはいられないっしょ」

 

何ともないように先程のリューさんの問いに答え、俺とエイナさんは奴に指を差される。

 

「だって、あの腐り目くんは、俺の《能力》によって撃たれた。その《能力》である《死を導く銃弾(デス・ガン)》は、対象者を追い続け、貫き、永続的に傷口を治癒できなくする。そんな《能力》に、ただの《治癒》が効くはずねぇーだろうが。それなのに必死こいて治そうとするハーフエルフを見てたら……なんか笑えてきてね。ひひっ……」

 

永続的に傷口を治癒できなくする《能力》か……はは、どうしようもないじゃないか。

 

あぁ、俺は、出血で死ぬ、のか。

 

「っ! 比企谷くんに……なんて、ことをッ! そして、そんな比企谷くんを一生懸命救おうとしてくれているエイナさんに向かっても……なんて、ことをッ!!!」

「……アスナ、落ち着いて」

「落ち着いてなんていられないよっ! 大体リューはなんで落ち着いてるの!? おかしいよっ! だってだって……そんなの……だって……」

「アスナッ!いい加減しっかりしなさいっ!!」

 

突然のリューさんの大声にアスナさんはビクッと肩を震わす。

 

「アスナ……どうか、冷静さを忘れないでください。私達が冷静さを失ってしまったら、比企谷さんを助けられるのも助けられなくなってしまいます。それでは……奴の……ザザの思う壺……私でさえ怒りでどうにかなりそうです」

 

リューさんは、そう言って直ぐにデス・ガンに向かって木刀を構える。アスナさんは、リューさんの言葉を受けて俯いたままだ。

けれど、直ぐに顔を上げ、

 

「そう、だよね……リューありがとう。どんな時でも冷静に。今すぐにアイツを殺して、《能力》の効果を消し去ればいいだけのことッ!」

 

そう言ってアスナさんもデス・ガンに向かって細剣を構えた。

 

「ひひっ、怖いねぇ〜。けど俺が、おいそれと敵を懐まで近づかせるわけねぇだろ? 『銃の舞(ガン・ダンシング)』をもう一度味わわせてやろう」

「……アスナ。ここは私に任せてください」

「分かった。なら、その後は私に任せて」

 

無数の銃声が森に響き渡った。多数の銃弾が踊るように二人に迫っていく。

それを、リューさんとアスナさんは二手に分かれ、銃弾を躱すように必死に駆け回る。

 

そうして、リューさんは駆け回りながら、

 

「今は遠き森の空。無窮の夜天に(ちりば)む無限の星々 。愚かな我が声に応じ、今一度星火の加護を。汝を見捨てし者に光の慈悲を。来れ、さすらう風、流浪の旅人(ともがら)。空を渡り荒野を駆け、何物よりも疾とく走れ。星屑の光を宿し敵を討てっ!

 

【ルミノス・ウインド】」

 

 

戦闘と並行して詠唱をし、彼女の最高火力の《能力》である【ルミノス・ウインド】を発動した。

この《能力》は、周囲に展開させた風をまとわせた光球を無数に放ち攻撃をする魔法。

 

俺は『ダンまち』を読んだりしていた時にでも見た事がある。

 

そうして、放たれた光球は『銃の舞(ガン・ダンシング)』の無数の銃弾を一気に一掃し、デス・ガンの元へと飛んでいき、デス・ガンに直撃した。

 

デス・ガンのいた辺りには砂煙が舞い、大きなクレーターが出来ている。

 

控え目に言って……強い。流石はリューさんといったところだ。

 

けれど………

 

「や、やりましたか!?」

 

それでやられる程、デス・ガンは弱くはなかった。

 

「ひぇ〜、痛い痛い。かなり大ダメージを食らっちまったぜ。流石は【疾風】。過去に名を馳せた冒険者だけはあるぜ」

 

砂煙が晴れると、そこには全身に傷を負ったデス・ガンがいた。けれど、その表情は何処か嬉しそうだ。

奴はその後、ちらっと後ろを確認して、

 

「……今ので何人か殺られたか」

 

小さく何かを呟いた気がした。

 

そんな棒立ちをするデス・ガン。二人だってこの機会を逃すわけがない。そのリューさんの攻撃後を狙っていたアスナさんが、デス・ガンに一気に近づく。

 

そして、アスナさんの細剣は奴の(うなじ)に刺突した。

 

 

 

 

そうして、デス・ガンは刺突によって姿が消えた(・・・)

 

 

「「…………え?」」

「君達は馬鹿だなぁ〜、此処だよ、ここ♪」

 

奴は木の幹の上にいたのだった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「《治癒》《治癒》《治癒》」

 

……エイナさんがずっと《治癒》を掛けてくれる。けど……

 

「……エイナさん、もうやめてください。魔力の無駄遣いですよ」

「い、嫌です! やめませんっ! だって、このままだと、出血多量で……ヒキガヤくんが死んでしまいます!」

 

 

……死ぬ、か。決して死にたくはないが……償うためには……

 

 

「……別にいいですよ、俺なんて」

「──っ! ダメです! 絶対に駄目です!」

 

けれど、エイナさんの《治癒》が俺に効くことはない。

 

そうだ……誰も俺には効かないんだ。

 

 

だから、そんな泣きそうな顔で俺を見つめないでくれ、エイナさん。

 

「っ……効かないというのなら!」

 

エイナさんは、思いっきり自分自身の服を破る。そうして、俺の撃たれた腹部にその服の布地を巻き付け、強く縛る。

 

「これで、少しはマシになったはずです。ヒキガヤくん、軽々しく命を、別にいいだなんて言わないでくださいっ!」

 

確かに、これなら古典的だが多少の止血になるだろう。

 

……そして、エイナさんが俺に詰め寄り、強くそう言った。

 

軽々しく命を……か。

 

 

 

 

……軽々しく命を五つも消し去った俺にそう言うのか。

 

 

 

あぁ、駄目だ。思考がマイナスに向かってしまう。何を言われても、俺はあの罪から逃れられない。

逃げたくても、それを俺自身が許してくれない。

 

 

……俺にはどんな言葉も響かない。

 

 

「……キガヤくん! ヒキガヤくん! 聞いているんですか!」

「え? ……あぁ、聞いている、きいてる」

 

 

──ズドンッ!

 

 

すると、前方で大きな地鳴りが聞こえ、砂煙が舞っている。

 

「「リューさんっ! アスナさんっ!」」

 

俺とエイナさんは無意識に思わず、叫んでしまう。

 

「「はぁ……はぁ……」」

 

そこには胸を押さえるリューさんとアスナさんがいた。息も切れていて、服や皮膚には銃弾の通った跡が目で見てわかる程に現れている。

そんな二人の前方にはデス・ガンがいる。

 

「所詮、あの【疾風】と【閃光】でさえ、この程度の実力か」

 

デス・ガンはそんな二人を冷たく見下ろしている。

そうして、銃口をリューさんに向けた。

 

──このままだと、リューさんが本気で危ない。

 

俺は何もかもを忘れて、一気に加速してリューさんの前へと躍り出た。

 

 

──バンッ!

 

 

…………また、腹か

 

………………腹が……痛すぎるッ。

 

 

「比企谷さん!?!?」

「……はぁはぁ……比企谷くんッ」

「ヒキガヤくん!!!」

 

 

咄嗟のことに三人とも俺の名を呼んでいた。デス・ガンでさえも、いきなり現れた俺に驚いているように感じた。

 

「まだそんな速度で動くとはね……君の力が気になってきたよ……腐り目くん」

 

そう言って、俺を見つめてくるデス・ガン。見られていて気持ちが悪い。

 

 

「……作戦変更だ。殲滅に移行する。全員、待たせたな。襲い掛かって、いいぞ」

 

 

……え?

 

ぞろぞろと辺りの草むらや木の上から、人が現れてくる。そんな光景に俺は絶望したように、周りを見渡す。

 

気が付かなかった。

 

銃に撃たれて、冷静さを欠いていた影響で索敵を怠っていた。

 

……俺のミスだ。

 

「ひひっ、いつから敵が俺だけだと思ってた?」

 

……そうだ。デス・ガンだけがラフコフメンバーではない。

あの時、俺が、ラフコフメンバーを五人殺した時だって……追っ手から逃げていた時だって、それは分かっていたはずだ。気付けたはずだ。

 

この状況は、かなり絶望的じゃないか。

 

敵は見渡した限り十人程度はいるように思えた。それに、まだ、隠れているかもしれない。

 

俺たち四人は、一つの場所に集まった。

 

 

……けど……どうすればいいんだ。

 

 

「……やるしかありませんね」

「……そう、だね。やるしかない」

「……そのようですね。来る時にも言いましたが、弓なら任せてください!」

「はい。比企谷くんの事もお任せしますよ」

 

 

リューさんとアスナさん、エイナさんは既に戦う覚悟が出来ている。

というか、リューさんとアスナさんは敵のど真ん中に突入しに行った。既に敵の戦力を削りに頑張っている。

 

けど、俺は……俺は……

 

「ヒキガヤくん! 私の後ろに!」

 

うじうじしていた俺はエイナさんに手を取られる。そうして、エイナさんの後ろに連れてかれる。

 

……あぁ、駄目だ。覚悟が、決められない。

 

エイナさんは既に弓を放って敵と戦っている。その姿は勇ましく、堂々としている。

俺とは違う。全く違う。

 

「よしっ! 一人行動不能っ! ……この調子で…… 」

 

けれど、これは数の暴力。

 

多数VS4人。いや実質3人だ。

 

この布陣が崩れるのは目に見えていた。

 

「っ! 三人同時に!?」

 

──っ! 敵が三人同時に連携しながら俺たちに向かってきた。このままだと、エイナさんが危ないッ!

 

けど、けれど、倒すには力を……力を使わないと……

 

「……やるしかない」

 

エイナさんは必死に弓を三本四本と同時に放っている。その弓たちは一直線にラフコフに向かっていくが、

 

……威力が足りない、んだろうな。

 

弓は余裕で弾かれてしまっている。

 

 

……本当に……このままだと……

 

 

あぁ、そうして、俺達は敵の一人に接近を許してしまった。

そして敵は何もしなかった俺を標的としたようだ。

 

俺は……俺は……

 

 

接近した敵の一人を無我夢中で殴り飛ばした。多分、顔面を思いっきり殴ったと、思う。

 

「ヒキガヤくん!?」

 

エイナさんが心配したように俺の名を呼んでいる。けど、それは敵にとって好都合なこと。

 

──っ! あと二人っ!

 

残りの敵二人はそんな俺に意識を向けて無防備になってしまったエイナさんを標的にしたのか、エイナさんの背後に飛びかかっている。

 

俺がとった行動は考えるまでもなかった。

 

咄嗟にエイナさんの正面に移動する。

 

そして、その二人を先程と同様に、思いっきり殴り飛ばした。

 

 

……あは、ははははは、ははははははは

 

 

「ヒキガヤくん、助かり……っ」

 

 

……なんだろう。手が……熱い。

 

ははっ、なんだ、これ……なんだよ、これは……

 

 

……俺の手って、いつから真っ赤(・・・)だったけ?

 

 

俺はゆっくりと視界を上げ、殴り飛ばしたラフコフの方を見る。

その視界の先には、木にせき止められて力無く倒れる顔面の潰れた三人の血だらけな人間がいた。

 

 

……ははっ、はははは、

 

 

あぁ、まただ。俺はまたやってしまったんだ。

殴り飛ばした時、骨を破壊する音が聞こえた。感触が伝わってきた。それに、脳が覚えている。俺はしっかり見ていたから。

 

自分が三人の顔面を殴り潰した記憶を。俺は知っている。

 

「……ヒキガヤくん、泣いて、いるんですか?」

 

背後からエイナさんの声が聞こえる。

 

泣いて、いるか。こんな醜い顔、彼女には見せられないな。

 

こんなの……泣かずにいられるわけないだろ。

 

──っ!!!!

 

「へぇ〜? 腐り目くん。人殺して泣くんだ?」

「っ!! 赤目のザザ! なんで、ここに!」

 

俺の隣にいたエイナさんは今気づいたようで、咄嗟に手に持つ矢を射ようとした。

対して俺は、情けないが、戦える気分ではなかった。故に奴が近づいても何も出来なかった。

 

「……ハーフエルフ。邪魔だ」

 

次の瞬間、デス・ガンは俺の隣にいた。

 

い、いつの間に……。

 

ズトンッという大音量の衝撃音が後ろから聞こえる。見ると、エイナさんが痛々しそうに木に叩きつけられていた。

 

そして、俺の横で脚を上げているデス・ガン。

 

……あぁ、エイナさんは、奴に蹴られたんだな。

 

 

俺は……ただ見ている事しか出来なかったんだ。

 

「……腐り目くん」

 

すると、俺の肩に手がかけられる。俺は反射的にその手を置く人物を見た。当然、横にいる全ての元凶。

その赤い両眼に俺の目が赤い奥へと吸い込まれていく。

 

『デス・ガン』

 

俺の目と鼻の先に『デス・ガン』がいる。

 

そうして、優しく包み込むように、微笑む彼は俺に向かって囁いた。

 

「沢山、人を殺したね?」

 

沢山……そうだ、俺は八人も人を殺した。否定はしない。絶対にしてはいけない。それが、事実なのだから。

 

……俺は殺してしまったんだ。

 

俺は……俺は……どうしたら……俺は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君もこれで、僕達の仲間だね」

 

 

 

 

……あぁ……おれは、ひとごろしを、した。

 

……やつらと、いっしょ……

 

 

「ようこそ腐り目くん(比企谷)殺人(ラフコフ)の世界へ」

 

 

ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ッッッッ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おれは、奴らと同類だ。




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