やはり俺のクロスオーバーはまちがっている。 作:餃子の教え子
今回もシリアス!シリアス!絆の芽生え?でお送りします!
それでは、どうぞ!!!!
「……人って嘘をつくと、案外分かりやすいものなんですよ、アスナさん。もう言いたくもない嘘を言うのはやめてください」
「……え? ……ひ、比企谷くん、何を言って……」
「……っ」
あぁ、俺は心の中で思っていた事をアスナさんに口走ってしまった。本当は言うつもりはなかった。けど、彼女の言葉を俺は真っ向から否定してしまった。
嘘だと。あなたの言葉は嘘だと言ってしまった。
アスナさんは、そんな俺の言葉が予想外だったのか、困惑しているようだった。リューさんは何か悔しそうに自身の唇を噛んでいた。エイナさんは……まだ泣いている。
「さっき言ってましたが、笑顔が見たい? 何言っているんですか。笑えるわけないじゃないですか。まず誰得ですか、俺の笑顔。気持ちが悪い。そんな思ってもないこと、無理して言わなくてもいいんですよ。俺、気にしてないですから」
「え……そ、そんなことっ」
俺の笑顔なんて、見たいと思うか、普通。
──思わないだろ。
けど、なんでそんな事をアスナさんが言ったのか。
──アスナさんが、俺の笑顔を求めたからか?
ははっ、自惚れるのもいい加減にしろ、俺。
そんなの誰も得しない。アスナだって、何の得もしない。馬鹿馬鹿しい。これこそ、嘘だ。虚言だ。
……なら、次に考えられる答えは、簡単だ。
「……そんなに
「っ!?」
「……っ」
……当たりだ。アスナさんとリューさんの目が大きく見開いた。驚いた証拠だろう。
「……やっぱりそうか……図星のようだな」
「ち、ちがっ……」
「違うわけないだろッ!!!」
俺は思わず、否定しようとするアスナさんに対して怒鳴ってしまった。
「一ヶ月後、お前らはラフコフの本拠地に奇襲を仕掛けるんだろ?」
「そ、そうだけど、そ、そうじゃなくて……」
そう、一ヶ月後、三人はラフコフの本拠地に奇襲を仕掛けると、先程言っていたのを俺は覚えている。
本拠地を叩くんだ。それもアスナさんの所属しているギルドが主体となっての大規模な作戦。確か、森に行く前もアスナさんがそんなことを言っていたような気がする。
そして、俺は知っている。
ラフコフは、冗談抜きに強い、と。
実際にラフコフの幹部であるデス・ガンを見て、俺自身そう思ってしまった。
けれど、そんなラフコフを簡単に葬り去った男を俺は、エイナさんは、リューさんは、アスナさんは知っている。知られてしまっている。
「あぁ、分かってる。お前らの反応で分かってんだよ。お前らが求めているのは、
俺は勇者だから、ステータスも高い。スキルだって能力だってある。チートだ。チートになってしまったんだ。そんなチートの力を三人は見ている。
「ははっ、そんな俺の力があれば、さぞ、奇襲時には楽して戦えるんだろうな、アスナさん」
「ひ、比企谷くん、そういうことじゃないの。も、もう……そんなこというのは……」
俺がこの力を奮って戦えば……沢山のラフコフを殺せば、いいんだろうな……そうだろう。
俺がラフコフを殺せば殺すほど、お前らが相手する敵が減るんだから。
都合がいいだろうな、俺の力は。
「……だから、もう無理して嘘つかなくても大丈夫ですよ。俺の事なんてどうでもいいんでしょ。どうぞ、好き勝手に勧誘してくださいよ、この
そう、俺は、都合のいい殺戮兵器だから。
「さぁ! やれよ! 誘えよ! ははっ、俺に人を殺させてくださいよッ!! アスナさんッ!」
「あ、あぁ……あぁあぁ……ひ、比企谷くん……グスッ……ごめんなさい……ごめんなさいね……わた、ヒグッ……し……のせいで……こんな……」
「っ!!!!」
……だからさ……そんな、泣かないでくれ、アスナさん。
リューさんだって、唇を強く噛みすぎですよ……血が唇から少し滲み出ているじゃないですか。
「……さぁ、ご自由にどうぞ。俺は、俺の本心は変わりませんけど。俺の人を殺す力が欲しいんですもんね。役に立ちますもんね。そりゃ……説得してでも戦いに参加させたくなるわな。俺が起きるのを待っててくださり、ありがとうございました」
──俺のことなんて、誰も見てやしない。見ているのは、
誰も
はぁ、俺も馬鹿馬鹿しくなってしまったな。
期待しているのか。いや、してない。諦めている。
本当になんで……俺が、ここに連れてこられたんだろうな。願うなら、来たくなかったよ。こんなとこ。
「……ははっ、やっぱり俺は、俺が大嫌いだよ」
小さくそう再び呟いてしまう。
俺は自分が嫌いになってしまった。こんな汚れてしまった俺のことが、大嫌いだ。
もう、いい。なんでもいい。自暴自棄だ。
……はははは、すまないが、乾いた笑顔しか出せないや。
「……比企谷さん」
すると、今までずっと黙っていたリューさんが俺の名前を呼んだ。目と目が合う。目が少し赤い気がする。
……ははっ、どんな虚言を俺に言うんだろうな。
パンッ!
痛い……頬が痛い。俺はリューさんに頬をビンタされた。
「……比企谷さんが自分のことを大嫌いと言うならば、私は……比企谷さんよりも、もっともっと自分の事が大嫌いです」
……この人は、いきなり、何を言っているんだ?
「貴方が自分のことを嫌いと……最低な人間と言うなら、私はもっともっと最低な人間です」
……本当に何を言っているんだ。意味がわからない。さっきの俺の話からどう繋がって、そうなっているんだ。
「何故、なら……」
リューさんが口を噤んでいる。唇はふるふると震え、視線だって俺の目から外し下を向いている。
言いたくないのなら、言わなければ……いいじゃないか。
けれど、覚悟を決めたようにリューさんは再び俺を見る。
「……私は人を沢山殺してきている。それこそ、貴方より多くの命を殺めてきた。この両手では数えきれない程に。それも結局は自己満足……私自身の復讐の為だけにです。そして、そんな人殺しを貴方のように悔やんでいたりなんて、私はしていません。むしろ、私はその逆。私はその為に生きているようなものだから。それが、私──リュー・リオンです」
俺は驚きのあまり目を見開いて絶句してしまった。
「……」
「……信じられませんか?」
……信じるか……そうだな……信じられないだろうな。
「……あぁ」
何も言えない。
けど、俺は、俺も……
「……そんな私にとって貴方は光って見えるんですよ。この世界は命の重さが軽い。人はすぐ死ぬ。弱肉強食の世界。そんな世界で貴方は死を……たとえそれが悪人であれ誰であろうとも、悔やむ。苦しむ。そんな貴方は素晴らしい人だ。その事に胸を張って生きてください。そうすれば、彼らも報われるはずだ。そんな人を思いやれる貴方は良い人だ……そして……何より貴方は……私の恩人なのですよ?」
………ほんと何言っているんだ、リューさんは。そ、そんな嘘っぽいこと言われても、俺は、俺は……
「だから、そんな現実逃避するような事しないでくださいっ! 聞いているのですか! 何でですか! なんで私達の言葉が信じられないんですか! そんなに……そんなに私達のことが信じられないんですかっ!」
信じるか……そんな、こと……
「比企谷さん! 私達を……貴方が守ってくれた命である私達を……信じてくださいよ!!」
「ッ!! ……おれ、は……信じられない。俺たちは……たかが会ったばかりで一度共闘しただけの他人同士だから。分かりあっているとは、信じきれるとは言えない」
「「「っ」」」
あぁ、そうだ。俺たちは一度共闘しただけ。それも、少しの間。
それ以上でもそれ以下でもない。俺とリューさんとエイナさんとアスナさんの関係はそれだけだ。
それだけなんだ。それだけなんだ。
それだけなんだ、よ……俺たちは。
「……治療してくれた事は感謝する。だから、もう出ていってくれ。俺はもう、お前達と話すこともない。だから、早く……出てけよっ」
「……ヒグッ……ヒキガヤぐん……」
「……比企谷くん……ごめんなさい……ごめんなさい」
「……分かりました。では……
……はぁ? また来るだと?
何を言っているんだろう、このエルフは。
俺の事を理解しようとしないのものもいい加減にして欲しい。
俺は彼女の『また来ます』という言葉に思わず、 激情を抑えきれなくなるところだったが、それを必死に押さえつけた。
「……あぁ、じゃあな」
そうして、無理して作った笑顔を表に出しながら、別れの言葉を言い放った。
その言葉に三人は返事をしなかった。重い足取りで部屋から出ていっただけだった。
その後、部屋には平静が訪れる……はずもなく、
しばらくして、咽び泣く一人の少年の悲痛の声だけが、苦しげに部屋に存在していただけだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「はぁぁぁぁぁあああああッ!!!」
「なっ!?」
下から叩き上げるように振るわれた的確な剣筋により、相手の剣が空中に弾き飛ばされる。見事なまでの剣技だ。
「……ま、参りました」
それにより、剣も無くなり丸腰となった相手は両手を上げ降参した。こちら側の勝利だ。
その決闘終了により、勝利した彼は直ぐに剣を鞘に入れ、こちら側に拍手を贈る男の方へと視線を移す。
その男は、勝利した彼の結果に満足をしたような顔をしていた。無論、拍手も賞賛している感を受けた。
「いや〜お見事だったよ。回復したばかりだと言うのに、クラディール君を倒してしまうとはね。私の想像していたよりも遥かに君は強かったようだ。これは……流石は、というべきかな」
そうして、その男はそう言いながら近づいてきた。
そんな男に彼は申し訳なさそうな顔をしながら、
「いえいえ、これくらいなら身体が付いてきてくれるんで。回復させて頂いたこと、改めてありがとうございました。お陰様で、怪我をする前よりも身体が動く気すらしますよ!」
「ふむ、それは何よりだ。是非うちのヒーラーにでも礼を言ってやってくれ」
そう言われ彼は「はい!」と元気よく返事をした。全く昨日まで意識を失っていた人とは思えない。
そんな彼は少し間を置いた後、真剣な表情で男に聞いてみた。
「それで……1ヶ月後……俺を連れて行って貰えますか?」
連れて行って貰えるか、それが彼の今の望み、すなわち先程の決闘をした意味でもあるから。
彼にとってこれは、それ程までに大きな意味を持つ。
そして、その答えは、
「あぁ、勿論だ。今は出来るだけ戦力が欲しい。それ程までに戦えるのであれば問題もないだろう。私は君を歓迎するよ。それに、」
男は彼の目の前に右手を差し出す。彼はほっとしたように安堵を浮かべた。そうして、そんな彼を見て、男は笑顔で、
「まあ、
「……っ!? え……知っていたの、ですか?」
そう、先程の決闘で勝利した彼──牡羊座の勇者である。
今まで誰に対しても勇者だと打ち明けたことの無かったので、牡羊座の勇者は男の言葉に尚更驚きを隠せなかった。
──どこでバレた。というか、バレてどうなる。そもそも、この世界の勇者とはなんだ。俺はなんで勇者になったんだ……
疑問は尽きない。
それもそのはず。彼には誰も状況を教えてくれる人がいなかった。不安で不安でしょうがないのが、本心なのだ。
聞きたくて堪らない。
「あぁ勿論。その右手が何よりの証拠だ」
「この羊の紋章、ですよね。これが、証拠なんですか……なら、俺が勇者だと知っていて尚実力を見る為にわざと知らない振りをしていた、と。案外、意地悪な所もあるんですね」
「ははは、悪かったと思っている。怪我から回復したばかりだと言うのにね。けれど、驚いたよ。まさか、こんなに若い君があの御伽噺に出てくる勇者の一人だったなんてね」
そう言いつつ、男は肩を窄めた。けれど、どこか嬉しそうでもあった。
「なんでも、うちの中に、
「え……い、いえ! そんな! 知られて減るものでもありませんし! 何とも思ってませんよ」
「……そうか。なら良かった。では、ラフコフ討伐の短い間だが、よろしく頼む」
そんな男──団長から差し出された手と自身の手を交互に見た後、牡羊座と団長は互いに握手を交わした。
「共にラフコフを壊滅させよう」
「は、はい! これ以上、奴らの好き勝手にはさせれません!」
互いに目標とすることは一致している。
『ラフコフ』
一ヶ月後に予定されているラフコフ本拠地への奇襲作戦。秘密裏に進められてきたこの作戦で、極悪殺人ギルドを壊滅させるのだ。
気合が入る。手に力が篭る。
牡羊座の勇者の目に闘志が滾る。
「絶対に……絶対にっ! ラフコフを倒しましょうね。
「あぁ、勿論だ。
ここに交わし合う握手は、さらに強く固く結ばれた。
まじ……八幡何してやがる……早く仲良くしてくれよ(筆者の願望)
そして今回は、
そんな二人が熱い握手を交わす(意味深)。さて、どうなるやら……これからもお楽しみに〜!
是非お気が向いたら、お気に入り・感想・アドバイス・評価の方、よろしくお願いします。