やはり俺のクロスオーバーはまちがっている。 作:餃子の教え子
ハーメルン初投稿です。私自身が書きたいなと思った作品です。
私の好きな色んな作品のキャラが登場しますので、楽しみにしていて下さい!
それではどうぞ!!
第1話:別れ
「おめでとう、少年。君は選ばれた」
「⋯⋯え?」
それは夕焼けの綺麗なある日のことだった。
突然後ろから肩を掴まれ、耳元に聞こえてきた声に、俺は反射的に振り向いてしまう。
それは内容からして意味不明だったが、その声はどこかで聞き覚えがあった。
けど、振り返った後ろには誰もいなかった。
でも、肩に置かれていた手の感触というか余韻は、未だに残っている。それに確かに声も聞こえた。幻聴の類いではない、はず。
⋯⋯まさか新手のイジメとかじゃないだろうな。それも、顔を見せないなんて、手が込んでいる。
やだそんなの八幡こわい。
「⋯⋯んぱい! 先輩! 反応しないなんて、どうしちゃったんですか? それに、いきなり後ろなんか振り向いちゃって、何もないじゃないですか」
だが、隣を歩いていた一色のおかげで、冷静になれた。というか、頬を膨らますな。あざとい。
どうやら、あのままずっと後ろを見て、立ち止まっていたらしい。
「あぁ、そうだよな」
そんなの自分でもらしくないと思う。そんな些細な事、いつもは気にしないのに、何故か忘れられない。
それに、ボッチで鍛えられた直感が、嫌な予感を告げている。ちょっと不安になってきたな。
「⋯⋯一色。荷物、持つぞ」
「え、えぇ!? あっ、もしかして今のって口説こうとしてましたかごめんなさいそういうシチュ妄想したことあるし一瞬ときめきかけたけど冷静になるとやっぱり無理です。ごめんなさい」
そう言って一色は頭を下げ。チラチラと俺の方を見てくる。
てか、告ってないのに、やっぱり振られるのか。毎度のことだが噛まずによくあの早口で喋れるものだ。
俺は黙って一色の荷物を受け取る。
何だよ、どうせ持つのか。まあ、気を紛らわす為にいいだろう。
それから荷物を渡す時、一色は何か言いたげにしていたが、気にしちゃダメだ。どうせ、休日が潰れることになる。
それに、今日の俺はどうかしてる。
さっきの声もだし、疲れているんだろう。
さっきまでの海浜総合高校との合同生徒会イベントの打ち合わせは、色々と大変だった。一日目だと楽観視していた俺が間違いだった。本当に。
本当にあの打ち合わせ、まじウケるわ〜。全く会議にまとまりが無くて八幡頑張っちゃったし。そんな八幡なんてらしく無さ過ぎて、八幡超ウケるんですけど〜。
⋯⋯重症かもしれないな。早く家帰ってプリキュアでも見よう。
「⋯⋯んぱい! 先輩! 歩くの速いですぅ。上げてから落とすなんて、何でそんな意地悪するんですかぁ〜。あっ、まさかこれも口説いてるんですか? 先輩これ知ってますよ。上げてから落とすとかですよね? ごめんなさい正直やり方が子供っぽくて先輩らしくないしほんと気持ちが悪いのでまだ無理です」
うん、あざとい。それにまた振られるのね。
というか、無意識のうちに歩く速度が速くなっていたのか。自分でも気づかなかった。
これは、一色に悪いことをしたな⋯⋯。
「すまん無意識にな。お詫びに⋯⋯今度何か奢る」
「ふぇ!? せ、先輩本当に変ですよ! 嬉しいんですけど、ほんと嬉しいんですけど、やっぱりおかしいです! だから、いりません!」
いや、別に普通だろ⋯⋯まあ、いい」
口ではそう言ったけど、俺もおかしいと思ってるんだ。
本当に俺らしくない。俺は一色と目を合わせるのが耐えられなくなって再び歩き出す。
すると次の瞬間、手の裾の部分を何かに掴まれた。もしや、さっき肩を掴んだ犯人かと俺は急いで振り返ったが、そこにいたのは顔を赤くした一色だった。
「あ、あの⋯⋯そのかわりに、なんですけど、今度私の買い物に、手伝ってください」
その時、一瞬俺の頬に熱が帯びたのは、何かの間違えだ。多分、夕焼けのせいだと思う。そう、断じてときめいたとかではない。
そんなこんなで、俺たちは駅までやって来れた。
「ではでは、先輩! 明日もよろしくでーす! そ、それから買い物の件も忘れないで下さいね!」
敬礼しながらのウインクに、可愛らしい笑顔。そして、一色はほんのりと頬を赤くしている。
これが、一色の計算し尽くされたあざとポーズだとは分かっている。
けど、相手が悪かったな。鍛え抜かれたエリートボッチである俺じゃなく、そこらに居る男子だったら一色に落ちていた。
いや、中学の俺だったらここで告って振られている。って結局振られるのか。
そう思いながら、俺は一色が見えなくなるまで見送った。
何だか、今日一緒に一色と、帰れて良かったな。
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「ただいま〜」
「お兄ちゃん、おかえりー! 今日は、いろはお義姉ちゃんと帰ったんでしょ? ねぇねぇ何かあったー? というか、もうそろ小町を紹介してくれてもいいと思うんだけど。小町はいつでもウェルカムだよ、お兄ちゃん」
「いや⋯⋯何もねぇし、何がウェルカムだ。俺は駅まで送っただけだ」
玄関までお迎えに来てくれた小町には悪いが、俺はそう言って自室へと向かう。早くベッドに行って寝転がりたい気分だ。
「えぇー! お兄ちゃん、そこは家まで送ろうよ! 小町はどのお義姉ちゃんも大好きで公平な立場だけど、お兄ちゃんには、本当に幸せになって欲しいって思ってるんだからね。あっ今の小町的に超ポイント高い」
「あーはいはい。そうだな」
道中に何か小町が言っていたので、適当に相槌を打つ。それより、もう疲れた。早くベッドに向かわねば。
「はぁ〜。これだから、ごみぃちゃんは⋯⋯分かってないんだから」
後ろから小町の溜息混じりの声が、聞こえるが無視。そんな元気は俺には残されていない。
「お兄ちゃんに足りないのは、押しだよ! 押し! それさえあれば、今頃は⋯⋯はぁ。部屋行ったら誰かに電話でもしてみることだよ。小町が思うに上手くいくと思うよ?」
すると、最後に小町の必要ない助言が聞こえた。いつもなら、流すようなものだったが、何故か耳に残った。
「⋯⋯電話か。俺からした事なんて無かったな⋯⋯小町、受験勉強頑張れよ。何かあったら言ってくれ。お兄ちゃん、高校で待ってるから」
「え、えぇ〜。発言がシスコン過ぎて、キモいよお兄ちゃん。でも、まあ勉強頑張るね! 待っててお兄ちゃん!」
振り返ると、笑顔の小町。不覚にも可愛いと思ってしまった。けど、それを見て俺は何か安心できた。だから、頷いて俺は部屋へと入った。
考えてみると、小町の助言の中の『電話』には何かを感じた。
しなければ、後悔するような何かを。それが何かは分からないけど、俺の求めてる物へ近づくなら。
そう思いながら、俺はベッドに寝転がる。
寝転がると、かなり重い睡魔が襲ってきたが、携帯を手に取り、連絡先を見てみる。
所詮エリートボッチである俺だ。すぐに数えられる程度しか電話番号は入っていない。
その中でも、俺が一番目に入ったのは『由比ヶ浜結衣』。
何故か喋りたいなと思った。
やっぱり俺らしくないと思う。でも、俺はいつ頃からかあの二人と居ると何か掴めそうな気がした。それが何かはまだ分からない。
けど、俺はそれを心の底から欲しいと思った。
ピピッピピピ、プルルルルプルルルルッ⋯⋯
なんかこの待ち時間って緊張するな。
⋯⋯プルルルルッガチャ!
「ひ、ヒッキー!? どうしたの!? ヒッキーから掛けてくるなんてっ」
⋯⋯何故か繋がって早々、由比ヶ浜の様子がおかしいけど、気にするだけ無駄だろう。馬鹿につける薬はないのだから。
「いや、なんだ。由比ヶ浜と話したいなと思ってな」
「ふぇ!? ひ、ヒッキー本当にどうしたの!? ヒッキーなんだよね? 本人? 私と話したいだなんて⋯⋯えへへ」
けど、由比ヶ浜のおかげで、俺の緊張も少し和らいだ。それに、何故か由比ヶ浜の声を聞けて、良かったと思っている自分がいた。
それから、俺は由比ヶ浜と色んな話をした。
世間話だったり、学校の事、生徒会イベントの事や流行の事、雪ノ下の事もあった。
そんな事を話していると、時間はあっという間に過ぎていった。気付けば、二時間近く話していた。こんなに長電話をしたのは人生で初めてだった。
そんな電話も、もうそろそろ満足してきたのか、終わりが近づいていた。
「あはは、最初に戻るけどさ。まさかヒッキーから電話掛けてくるなんて思わなかったよ。明日ゆきのんに自慢してみようかな〜。ゆきのんにも掛けるの?」
「雪ノ下か⋯⋯いや、お前だけだ」
詳しく言うなら、電話したかったけど電話番号知らないんだよね。てへっ。
「え? ⋯⋯ヒッキーその言葉⋯⋯ずるいし」
「ん? 何か言ったか?」
「い、言ってないし! ヒッキーのバカ!」
俺は、いきなり由比ヶ浜の声が大きくなって、思わず携帯を耳から遠ざけてしまった。
というか、突然人をバカ呼ばわりなんて、俺が悪いことをしたのか。解せぬ。
「でも、その⋯⋯ヒッキー⋯⋯電話掛けてくれて⋯⋯ありがとね。最近は、あんまり話せてないし、電話越しだけど話せて良かったよ」
「あ、あぁ。俺こそ由比ヶ浜と話せて良かった。話したかったからな。そ、そのなん、だ⋯⋯楽しかった。ありがとうな由比ヶ浜」
「⋯⋯う、うん!」
その時、由比ヶ浜の満面の笑みが思い浮かんだのは、俺だけだろうか。少しドキッと来てしまった。
らしくないな俺。また明日も会えるというのに。
「じゃあまたな、由比ヶ浜」
「えへへ⋯⋯あっまたね! ヒッキー! この後ゆきのんにも電話掛けるんだよ!」
そう言われて俺は咄嗟に返事というか、雪ノ下の電話番号を聞こうと思ったのだが、遅かった。電話は切れてしまっていた。掛け直すことも出来るが、何故か掛ける気が出なかった。
そして何故か電話し終わった瞬間、どっと疲れが押し寄せてきたが俺は耐え、先程までのことを思い返す。
何はともあれ、由比ヶ浜と話す事が出来て、本当に良かった。俺は純粋にそう思った。らしくない、けど心は何だか温かかった。
あと余談だが、電話の途中に一回トイレに行く為、部屋を出た際、廊下にいた小町が俺を見てニヤニヤしていたのをよく覚えている。何かいい事でもあったのだろうか。
「あと、やり残したことと言えば⋯⋯雪ノ下か。こんなことなら最初、由比ヶ浜に雪ノ下の電話番号聞いておけばよかった」
ベッドの上で仰向けになり、そう呟いてみるが、もう手遅れ。日頃から聞かなかった俺も悪い。
「我儘を言うなら、最後に雪ノ下とも話したかったな」
そう言って、俺は目を瞑る。
すると、浮かんでくる雪ノ下の顔。
部室に入る度、罵声を飛ばしてきたりするけど、何だかんだで今になって懐かしく思う。決して俺はドMじゃないが。
けど思い返すと、雪ノ下とも色んな事があったな、と改めて思う。
そして、脳内に思い浮かぶ雪ノ下。それは色々。
静かに本を読んでいる雪ノ下。由比ヶ浜と一緒に喋る雪ノ下。猫とじゃれ合う雪ノ下。一回思い出すと、溢れ出てくる記憶。それも雪ノ下だけじゃない。
俺は高校で、沢山の思い出を作った。それこそ、沢山の人とも関わった。
それは、全てが決して良いものばかりではなかったけど、俺にとってはその一つ一つがかけがえのないもの。
特に奉仕部に入ったのは、運命のように感じる。
あの部室で過ごした日々は心地よかった。
もし俺は許されるのならば、あの場所──奉仕部に居たい。
まだ居座りたい。
ずっと居座り続けたい。
そこでなら、俺は"本物"を見つけられるような気がするから。
⋯⋯何回も言うが、もう疲れた。体に力が入らず、ベッドに深く倒れ込んでしまっている。それに、気を抜くと目が閉じてしまう程に凄く眠たい。
『それじゃあ行こうかッ! 僕の世界へッ!』
⋯⋯ん? 今なんて? 僕の世界? 行く?
突如、脳内にあの時の聞き覚えがある声が、聞こえた。
しかし、あぁだめだ。それ以上何も考えられない。俺の意思とは別に、意識が遠のいていく。これを止められることは出来ない。
そうして俺──比企谷八幡の意識は完全消えた。
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