やはり俺のクロスオーバーはまちがっている。   作:餃子の教え子

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遂に明かされるこの世界の秘密。




第3話:異世界ゾディアック

「まずは、この世界──『ゾディアック』についてだよね」

 

  そうして『ゾディアック』について語り出したテト。

 

  ここで要約するならば、『ゾディアック』は、モンスターや魔法等があって創作物によくあるファンタジーな世界そのものだった。

 

  当然、人類種(イマニティ)だけじゃなくて、様々な種族がいるそうだ。その辺は旅をして自分で確かめろと言われたが、何となく推測はつく。

 

  まあ、そんな冒険溢れる『ゾディアック』をテトは創造し、管理しているらしい。

  だから、やはりテトはこの『ゾディアック』の神様という位置付けにあたる。

 

  やっぱりこの世界の神様だったみたいだけど、ここで少し疑問に思った。

 

「あの、質問したいのですが?」

「お! 勿論! さぁさぁどんな質問?」

 

  俺は、説明しているテトを遮って質問の許可を取った。テトはご機嫌のように見えるので、大丈夫そうだ。

 

  人と話すのは大変たが、仕方がない。聞くしかない。

 

  その内容は、空白たちのいる『ディスボート』とこの世界『ゾディアック』の関係性。

  というか、何故テトがここにいるのかも気になるところだ。

  少なくとも話していて、空白は存在している。そして、現在進行形で『ノゲノラ』は進んでいると見るべきだろう。

 

  じゃあ、この世界は何なんだという事になる。

 

  その事を『ノゲノラ』等の言葉を使わず慎重に選び、テトに聞いてみた。その答えは予想外で想像もつかないものだった。

 

「それについて簡単に言えば、ここと向こうは、ほぼ関係が存在しない。それは僕自身についてもね。けど、それでも、関係性を見出すとすれば、僕自身が記憶の共有をしているくらい、かな」

 

  と最初に言われたが、意味が分からなかった。そんな俺の様子を察してか、テトは分かりやすく言葉を続けた。

 

「所謂、向こうの僕は本垢(・・)。今、君の前にいる僕は、サブ垢(・・・)ってこと。ゲーム風に言ってみればね。僕は一人じゃないんだよ」

 

  ⋯⋯結論は、テトは二人いたということ。

  それは少なくともだが、この世には『ノゲノラ』の世界を運営するテトとこの世界『ゾディアック』を運営するテトがいるということを示す。

 

  俺はその予想外の事実に、らしくもなく口を大きく開け唖然としてしまった。

 

「あはは驚いているようだね! 僕はゾディアック担当のテト! 理解出来た? 比企谷八幡君?」

「⋯⋯あぁ、何となくだが、理解した」

 

  この世界は、第ニのテトによる世界ということ。

 

  といっても、目の前にいるのは偽物ってわけでもない。

 

「流石に一つの世界だけを管理すればいい程、神様って楽じゃないんだよ。それこそ、常に人員不足さ。遊戯の神である僕も遊んでばかりだと、神様失格になっちゃうからね」

 

  ⋯⋯そこら辺の神様事情を、俺みたいなぼっちが知るはずもない。神様って意外とブラックな職場なのかもしれない。

 

  将来の夢が専業主夫である俺からしたら、たまったもんじゃない。テトが意外に働き者だとは思わなかった。

 

「ちなみに地球を担当している神は僕ではないから、文句を言うなら僕には言わないでね。そうだ! 何か地球の神に言いたいことでもある?」

 

  ⋯⋯俺には文句なんて言う権利はない。全てが自業自得。今までもこれからも俺は自己犠牲をしていくだろう。それは俺が決断したこと。神様のせいにするのは筋違いで、間違っている。

 

「ない。⋯⋯けどもしも文句を言うなら、何で俺が『ゾディアック』に連れ去られるのを止めなかったっと言いたい。俺は来たくてここに来たわけじゃないから」

 

  すると、何がおかしかったのかテトは笑いを堪え始めた。

 

「アハハ⋯⋯ッごめんごめん。笑ってしまって。けど止めるも何も、地球の神はバカで地球のことも放ったらかし。殆どを人間達の自主性に任せるような神だ。だから、君が『ゾディアック』に連れ去られたことも知らないんじゃないかな。あ、勿論、君の存在感が薄いからではないよ」

 

  ⋯⋯なんか、最後に慰められたんだが。

 

「だからこそ、君のような逸材をここへ連れ出す事が出来たんだけどね。そこはあの神にも感謝しておくよ。ほんと馬鹿だけど役に立ったよ、くそ女神でもね」

「⋯⋯あ、あの〜、テトさんはその神様のこと嫌いだったりするんすか?」

 

  テトの言い方や態度に俺は思わず聞いてしまった。どうでもいいことだが、あいつらのいる世界だ。無自覚にも、その神様について少し興味があった。

 

「う〜ん。嫌いではないけど、興味がないっていうか答えにくいね〜。数千年前にその神とチェスをやったんだけど、結果は僕の圧勝。最初から最後まで僕のペース。それも含めて作戦かと最初は思ったけど期待外れ。正直、チェスと呼べるものでもなかった。ほんと、あの神の頭の中はどうなっているのやら。遊戯の神である僕も、流石に呆れてしまったよ。それ以来、会ったこともないね。会っても面白くないし」

 

  とテトは口ではそう言っているが、間違いなくイライラしている。

 

「ほんと何でアレが神様なんだよッ!」

 

  あ、テトが殴った地面に亀裂が入った。流石、神様だな〜あのパンチ普通に人殺せるぞ。

 

  って、こういう身の危険を感じた時は話を変えないといけないと小町から教えて貰ったことがあった。これはこの話を振った俺が悪い。

  全くぼっちは空気を読むのが苦手なのに。さらにいえば、空気を替えるのはもっと苦手だ。ここ重要。

 

「え、ええっと⋯⋯は、話変わるんだが、『ゾディアック』では、十の盟約(・・・・)はど、どうなるのでしょうかテトさん?」

「今度会ったらあの神に神様というものを身をもって⋯⋯って、君、十の盟約(・・・・)って言った? ま、まさか、何でそれを。比企谷八幡、(本垢)の定めた十の盟約を知っているとは、本当に興味深いよ君」

 

  テトが一瞬動揺し、興味を示したのがわかる。

  そして、何とか話を替えることが出来た。

  今のテトは、地球の神様よりも十の盟約に興味の対象が変更した。どうにか、話を戻せただろう。八幡頑張った。

 

  まあ、地球の神様が残念な方だったのは少し思うところもあったが、いずれまた聞いてみよう。

 

  そんな思考をやめると、目の前には熱い視線を俺に送るテトがいた。よく見ると目が輝いている気がする。

 

  けど、やめて欲しい。

 

  俺はそんな大した人間じゃない。

 

「さらに興味が湧いたよ⋯⋯えっとね、結論から言うと、ないよ。十の盟約は存在していない。この『ゾディアック』に神が決めた盟約はない。だから、ここでは向こうでは禁止されている殺傷、戦争、略奪は可能。日常茶飯事さ。それこそ弱肉強食の世界『ゾディアック』」

 

  その最後の台詞に俺は少し身震いした。ニヤリと笑うテトは悪魔のようで、ここから先が地獄だと告げているような恐怖の感覚に陥った。

  けど、俺は必死にその感情を隠し抑え、思考する。

 

  実は少し変更され、この世界に合った十の盟約が存在していると思っていたが、まさか全くないとは思わなかった。

 

  それに殺傷、戦争、略奪がありなのか⋯⋯。

 

  『ノゲノラ』ではそれらは禁止され、そのかわりにゲームがあった。逆に言えば、ゲームの勝敗で全てが決まる世界だった。

  それを決めたのはテトであり、いつも「ゲーム! ゲーム!」言ってそうな神様として『ノゲノラ』に登場していたからか、俺は今のテトの姿に少しギャップを感じた。

 

  本垢とは記憶こそ共有しているけど、根本的には別なんだろう。

 

  すると次に、テトは一回俯いた。何事かと思ったが、テトかを再び顔を上げると、その表情は真剣なものへと変わっていた。

 

「そして、この世界は今、危機に陥っている」

 

  その言葉に俺は息を呑む。テトは、真剣な表情なのだが、どこか悔しそうで寂しそうで辛そうだ。

 

「この世界は、魔王軍による侵略を受けているんだ」

 

  ⋯⋯なんかよくある設定が出てきたんだが。

 

  ということは、俺はそういう事なのだろうか。

 

  いや、それではテンプレ過ぎな気がするし、全く俺には似合わない。でも、そんな気がするとぼっちで鍛えられた直感が告げている。

 

  ちょっと言ってみようかな。

 

「⋯⋯お、俺はその魔王を倒す為に『ゾディアック』に来た、とか? ⋯⋯こう、なんか勇者みたいに」

 

  言ってみて少し恥ずかしくなってきた。

  けど、少しの期待を膨らませ、俺はテトを返答を待つ。

 

  これは、創作物やラノベでよくある展開に似ていた。

 

  強大な敵を倒す為に主人公は異世界へと召喚されたとか。

 

  なんかそれは今の俺にお似合いだと思う。勿論、俺──比企谷八幡には似合ってないんだが、状況が雰囲気が、示してくれているような気がする。

 

  それに何故か当たっている気がするのは俺だけだろうか。

 

  俺は改めてテトの様子を観察する。

 すると、テトは目を見開いて驚いていた。

 

  それで確信がついた。これは八幡TUEEEEのお時間が来てしまったようだ。

 

「そ、その通りだよ。な、何で分かったの? 何度も言うけど君、本当に何者なんだい? その能力──眼で当てたのか? どういうことだ⋯⋯本当に君は何なんだ」

 

  そう言ってテトが俺を強く睨みつけてくる。

 

  悪い気はしないが、ここに来てからよく睨まれているなと思う。

  多分、俺の眼を見て、何か分からないか疑っているんだろうけど。

 

  しかし、俺は何者でもない、ただのぼっち高校生。俺にはそれの他に何もない。

 

「まあ、いつかは解明してみせるさ! それで話を戻すと、君には魔王を倒す者──勇者になってもらいたいんだ」

「断る」

「エッ!? こ、断るだって!?」

 

  いや、だって、面倒臭いし。あと目立ちたくない。

  なんか影の実力者っぽいのが好きなんだよね。だから、勇者は荷が重いというか、注目を浴びたくはないというか⋯⋯。

 

「じゃあ勇者をしてくれるなら、異世界特典として《能力》を与えると言ったら?」

 

  すると、テトは聞き捨てならないことを言い放った。当然、俺も咄嗟に反応してしまう。

 

「ッ!⋯⋯異世界特典の《能力》」

「ふふっ、いい反応。そうさ、この世界は、戦う術無しで生きていける程甘くはない。だから、勇者となるなら、それ相応の特典を与えようかとね。まあ、尤も君に《能力》は不必要かもしれないけど⋯⋯」

 

  顎に手をあて、嫌な笑みを浮かべるテトだが、勇者にならないと与えないとか言わないよな。

 

  それは駄目だ。絶対にダメだ。

 

  戦う術を貰えないと、俺は本当にただの高校生になってしまう。テトが言うには、この世界は甘くない。このままでは、俺は異世界に来ちゃっただけの無力な高校生になってしまう。

 

  死ぬ。すぐに死んでしまう。

 

「やります」

「よし! じゃあ異世界特典はあげよう」

 

 良かった。これで、俺は戦える。

  《能力》というから、世界に一つしかない俺だけの魔法かなんかだろう。

 

  これがもしオリ主召喚だとするなら、ここが俺の命運を分ける。貰わないなんて選択は出来ない。

  よく材木座と共に不本意ながら語り合ったのが、今となって役立った。俺は無限に広がる魔法の中から、選び取ってみせる。

 

「テ、テトさん? 出来るなら、時を止めたり、敵を一撃で倒せるような身体能力とか神様が創った武器類とかダークフレ⋯⋯」

「あ、もう君の《能力》は決まってるよ」

「⋯⋯え、選べないんすか」

 

  少年心が戻り、頭の中で色々考えていた俺には辛い一言だった。少し浮かれていた俺が、ちょっと恥ずかしい。

 

  おかげで、色んな漫画やアニメの能力の有能性を真剣に考え、使っている姿を思い浮かべてしまったじゃないか。

  それに不覚にも、中学時代の黒歴史すらも思い出してしまった。

 

「う〜ん。選ぶというより《能力》は決められないんだ。それこそ《能力》が君を選ぶと言っても過言ではない」

 

  そう、能力が俺を決めると言われても困る。

 

  けど、まさかとは思うが《隠密系統》なのか。なんか似合っている気が自分でもする。

 

  俺は影が薄い。何故なら、俺がぼっちだからだ。

  長年のぼっち経験で鍛えられた俺には似合うだろう。何なら《ステルスヒッキー》とかが来る可能性だってありそうだ。

  それは、全く嬉しくないし、笑えないけど⋯⋯。

 

「けど、覚えていて欲しい。《能力》はどれも強い。どんなものが来たとしても、正しい使い方をするように心掛けてくれ」

「あぁ勿論、そのつもりだ」

 

  そんな変なことに使うわけがないだろ⋯⋯ククッ。

 

「最後に説明しておくよ。この世界の人々は、極稀に神からの賜物として《能力》が与えられている。それはどれも世界に一つしかなく、強力な力を発揮する。勿論、《能力》以外にも、自身の経験によって創り出される《スキル》というものだって存在する。これらは、僕が人々が魔王軍に勝てるように手助けした結果できたもの。この世界の常識さ」

 

  そして聞いたところ、《能力》は無限にあり種類によっては、神の力にすら届くものも出てくるかもしれないらしい。

 

  ⋯⋯これは本当に八幡TUEEEEが来てしまったか。

 

  それともう一つの要素である《スキル》。

  これも気になったので聞いてみると、本人の意思と経験により発現するものらしく、さらに《スキル》は成長・変化をし、無限の可能性を秘めているらしい。

 

「なら、俺にも《スキル》があるのか?」

「さぁ? 流石に召喚されてすぐ《スキル》はないんじゃないかな。⋯⋯でも、もしかして君なら持っている可能性がありそう」

 

  テトは俺の《スキル》所持を否定した。後半何か言っていた気がしたが聞こえなかった。

  そして、目の前で手を動かすテト。空気中で何をやっているんだと思ったが、その手元は、何かを触るような感覚でキーボードに文字を打っているようにも見える。

 

  それは中学二年生の頃、憧れていたものに似ていた。

 

「あぁ、言ってなかったね。この世界では【ステータス画面】というものが存在するよ」

「え⋯⋯そ、それってフィクションでよく見るVRゲームのメニューみたいなやつ、ですか?」

「ん? それが何かは知らないけど、実際やってみるといいよ。ほらこうやって指を上から下にスライドすれば、画面が出てくるはずさ!」

 

  とテトの言う通り、指で空中を上から下になぞるようにすると、何やら画面が出てきた。

 

  ⋯⋯まさかこれをやる日がくるとは。

 

  俺自身、空中を触って画面が出てくる体験が出来るなんて、夢にも思ってみなかった。

 

【ステータス】

 

  そして、俺の目の前に浮かぶのは、その五文字。

 

  けど、その【ステータス】という項目が俺の心を躍らせる。

 

  それはらしくないかもしれない。

  けど理性の化け物と呼ばれ、エリートぼっちでもある俺にとって。しかし、俺──比企谷八幡だって、勿論男だ。

  さらに俺には中学二年生の時、病を患わっていた。勿論その黒歴史は封印した。しかし、こんな【ステータス】という文字を見せられたら、耐えられるに耐えられん。

 

【ステータス】

 

  俺はこの一手に、この震える指先に期待と希望、そして少しばかりの不安を託して、【ステータス】の元へと指を持っていく。

 

  ここは重要な場面だ。これで俺──比企谷八幡の異世界チート生活の有無が決まる。

  ここで何らかのチートスキルなり能力があるはず。

 

  そんな間にも徐々に【ステータス】へと近づく指先。ワクワクし過ぎて、心臓の鼓動が聞こえてくる。

  それを止める者などいないはずだった。

 

「押しまぁ〜「"え"ッ!?」⋯⋯す!」

 

  テトの奇声が邪魔をしてきたが、俺はそれを遮ってでも押してやる。気になって仕方がないんだ。

  テトが何でそんな反応をしたのかは気になるが、後で聞いても遅くはないだろう。

 

  ポチッとな。

 

  すると、目の前に広がる俺の【ステータス】。

 

「⋯⋯はぁ?」

 

  えっ? な、何この《スキル》達。何でこんな《スキル》が沢山あるんだよ。いや、あること自体嬉しいんだよ。けど、このスキル名は嬉しくないような⋯⋯。

 

 

 

【ステータス】

  比企谷 八幡

  レベル:0

  職業:勇者

 

  スキル

 《孤独に認められし者(エリートぼっち)

 

 《理性の化け物(モンスターオブセンス)

 

 《消滅しつつある存在感(ステルスヒッキー)

 

 《死んだ魚のような眼(アンノウン・アイ)

 

 《極甘珈琲創造(マッカンクリエイト)

 

 

 

  あっ、けど、やっぱり一番下の《極甘珈琲創造(マッカンクリエイト)》だけは嬉しいかも。




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