やはり俺のクロスオーバーはまちがっている。 作:餃子の教え子
それでは、どうぞぉ!!!
【追記】受付嬢の名前が間違っていたので修正しました。ここ重要。
「あ。あの、しゅみません……」
「ヒ、ヒィッ!?すみませんすみません!」
「え、あ……逃げられた」
……俺、もう無理かもしれない。何でこうも恐がられるんだ。
俺はあれから、歩き出し、冒険者組合を探そうと、勇気をだして人に尋ねているのだが、結果は見ての通り。どの男も逃げてしまう。
流石にここまで来ると、怖いぞ。異常だぞ。
お陰様で、メンタルはズタボロだ。
俺の目ってそんなに腐り切ってしまったのか。いや、そうでないと願いたい。生まれつきなんだ。察してくれ。
「はぁ。このままじゃ、先に進めないな」
俺の目標は、勇者探し。それは言ってみれば、テトに依頼されたもの。依頼された以上、断ることはできなかった。
「どうしたもんかな……」
先程まで高くにあった太陽は既に西の空に隠れようとし始めている。このままでは、直に夜が来るだろう。
「こうやっていると、だんだん働かないとという精神が湧き上がってくるな。俺も……何やかんや言って、あの両親の子というわけか……」
何としても、早く冒険者組合に行って、冒険者にならないとな。
そうしなければ、俺に居場所はない。
それに、異世界に来て以来ずっと、何も味付けのされていない料理や、風呂無しの生活。その生活から早く脱出したい。だからこそ、宿に泊まりたい。
「まあ、とりあえず、歩けば出てくるかもしれないか」
俺は自力で探す事にした。最初から、らしくない事をすべきではなかったんだ。
異世界に来て浮かれてて、この世界の住民と会話をしてみたかったとか、仲良くなりたかったとか、そういう考えは一切ない。そう一切ないから。断じてないからね……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
──はぁはぁ、よし。これで今日も凌げる。
ある少年は、路地裏の冷たい地面の上に座りながら、今日得た食糧を齧っていた。そこには新鮮さはない。けど、少年は文句を言わず、大切そうにそれを食らう。
服はボロボロ。剣だって刃こぼれが見え始めている。そんな貧相な格好。顔にだって、体全体にだって腫れた後が出来ている。
──こんなはずじゃなかったんだけどな。
少年の独り言は誰にも聞かれない。
少年の目は潤んでくるが、直ぐに所々に穴の空いた袖でそれを拭った。
──泣いてなんかいられない。俺は、元の世界に帰るんだ。だから、そのためにも生きないと。
少年は生を諦めない。死んだら終わりなのだから。
そして、力を欲す。
誰にも負けない、邪魔されない、痛みつけられない強さ。それを貪欲に欲す。
何故なら、この世界は命の価値が低い。所謂、この世界は死にやすい。
それも、元の世界で中学二年生だった彼には、この世界『ゾディアック』はあまりに厳しすぎであった。
弱肉強食。少年はそんな世界の理に為す術もなく、無知故に巻き込まれ、今に至っている。
そんな少年には、誰も知り合いのいない意味も分からないこの状況が、不安で堪らなかった。正直、限界であった。
──やっぱり泣かないなんて出来ないな。
先程、袖で拭ったはずの涙は再び流れ始めている。
もはや、止める気すらない。誰かに気づいて欲しい。今の俺を。俺が何をしたというんだ。悪い事をしたのか。ただ
なんで、こうなった。
少年は運命を恨む。そして、祈る。縋る。神様でも誰でもいいから。
そして、ひと言。
──誰か助けてくれ。
けど、少年の独り言は……
誰にも届かない。
少年の食事は既に終わっている。
少年は一人、立ち上がった。いつまでも泣いてなんかいられない。
「依頼受けないとな……」
そう言って少年は、夜の街の中に消えていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「って正面にある建物……冒険者組合って書いてあるし」
日は沈み、街が夜の闇に包まれ、人々が活気づいてきた時間帯に、人の並を避けながら、歩いていた俺の目の前に、丁寧に『冒険者組合』という看板を屋根に取り付けた三階建ての横に大きい建物が通りの正面に建っていた。
──いや、なんで今まで見つけられなかったんだよ。
立地的に、街路から見ても目立つし、存在感を放っている。看板だってある。
「けど、そういえば、この辺りには来てなかったか」
何やってるんだ俺はと、昼頃の俺を叱りたい。
けど、そんな事よりも、俺は躊躇なく冒険者組合の建物内に入った。
もう、今日は寝ないで朝を迎えようと決め込んでいたが、流石に身分証を持っていないと心許ない。
そうして、入ってみると、そこは色とりどりの様々な冒険者達で賑わっていた。中でも目立つのは、宴会のように酒を飲んだりしている冒険者達だろうか。
ここのロビーは酒場としての機能も果たしていると見た。
「なんだぁ? 兄ちゃん? 見ねぇ顔だなぁ?」
すると、すぐに一人の男が、ジョッキを片手に肩に手を回してきた。これは酔っ払ってやがるな。
それに、男は細身ではあるが、どこか不気味な印象で、俺は嫌な予感を感じ、身を屈めることで、その手から抜け出した。
こんな奴に絡まれたくない。
「冒険者になりにきた。どこに行けばいい?」
けど、折角なので、受付の場所を聞いてみる事にした。見た感じ、ここの組合に所属する冒険者なのだろう。
「あぁん? 新人なのか。くくっ、それなら、あのねぇーちゃんのとこだぜ?」
そう言って、男はニヤける。嫌な笑みだ。
俺はそれに顔を顰めたが、その嫌悪感を抑え、礼を言い、言われた女の人のいる所へ向かう。
嫌な予感がした。
あいつは注意した方が良いかもな。
そう心の中で決めつつ、俺は受付に着く。
「あら? 君、冒険者登録をしに来たの?」
「あぁ。今すぐ登録をお願いしたい」
「そう……」
そう言って、受付の女性は少し悲しそうな寂しそうな顔をした。けど、引き下がるわけにはいかない。
俺の事を貧弱なやつだとでも思っているんだろう。
それか、最悪の場合を想定すると……。
「はい。ここに書いてある必要事項を記入して。筆記は出来る?」
「大丈夫だ」
「なら、早速書いてみて」
そうして、登録用紙を見てみたが、案外普通だ。
名前に年齢、出身地は必須だが、職業や《スキル》や《能力》といったものは任意だ。
俺は必須の所は埋め、任意は全て記入しなかった。
一通り見直して、再び受付の女性に用紙を渡すと、彼女の目が大きく開かれたのを俺は見逃さなかった。
やはり、何かあるな。ここは。
「ヒキガヤ君ね。君、出身地が『日本』と書いてあるけど……」
「聞いた事がなかったか?」
俺は少し仕掛けてみる。もしかしたらという期待を、密かに抱いていた。
「いいえ。あるわ。それもつい最近……」
よし、来た。俺は心の中でガッツポーズをする。
この街に勇者がいるのは分かっている。そして、生きている以上、お金を稼がないといけない。それは、世の中の常識だと思う。
そこで、職を探す。その中でも勇者を活かせる職といえば、冒険者に繋がるはず。
なら、ここ最近、この場所で登録をした可能性があると思った。
各勇者がどんな世界から、分からない。テトが教えてくれなかった。
もしかしたら、そこは地球ではないかもしれない。そんな世界なのかもしれない。
けど、もしも、地球を舞台とした世界だったら。
この街にいるであろう勇者が、出身地を『日本』にした可能性が一番高い。俺に出来たのはこれだけ。
仮に『日本』ではなく、『千葉』や『東京』とか詳しい地名を書いていたなら、通用しなかったし、全く地球とは違った世界だったなら、意味すらなかった。
けど、俺は安心したかったんだろう。同郷である同類と呼べる存在を知ることで。
現に安心している俺がいる。
「そう……あの子と一緒の、所なのね」
……やはりワケありだな。
俺は気持ちを切り替え、彼女を観察する。
何とも悲しそうな表情は、未だに晴れていない。そして、口を噤んでいると思いきや、話したそうにし、また噤む。
一体何がしたいんだ。
周りをキョロキョロと見回しているのも、気になる。
本当に、出来るなら関わりたくない。面倒事に巻き込まれるのは、嫌だ。
けど、放ってもおけない。
だって、俺は頼まれたのだから。勇者なのだから。
そんな理由付けをして、深く溜息を吐いた。
「何が言いたい?」
「え? ……いえ、何でもないわ。はい。ギルドカードよ」
あくまで、はぐらかすつもりなのか。それとも、話せないような事情が。
そう思考しつつ、俺はギルドカードを受け取る。色は銅色。ブロンズ。
「あっ。冒険者には階級があってね」
受付の女性は、思い出したかのように、現実逃避するかのように、説明をしてくれた。
略すと、冒険者の階級は、ブロンズから始まり、シルバー、ゴールド、プラチナ、ダイヤモンド、ミスリル、アダマンタイト、レジェンドという八段階らしい。
何とも、心躍るが、今はそんな事はどうでもいい。
俺は使命を果たす為に、踏み込む。こうして客観的に考えて見ると、異世界の風に当たって、俺も何か変わろうとしているのかもしれないな。
「……で、出身地が『日本』という話を詳しく聞きたい」
「え? そ、それは……」
彼女は露骨に笑顔を引き攣らせた。彼女にとって、言いたくない事なのは、分かっている。けど、俺は前へ進まないといけない。
日本に帰るために。
彼女は、再び周りをキョロキョロと見回した。俺も見てみたが、特に変わった様子はないように見える。
賑わうロビー。冒険者達は、男であろうと女であろうと等しく酒や何かを摘み、騒いでいる。
すると、先程、入口で絡まれた男と目が合う。そいつは、俺を見て、再び嫌な笑みを浮かべた。正直、俺は、その視線の意味を考えたくもなく、目を背けた。
けど、気になって再び見ると、そいつは、いつの間にか仲間と思われる男たちを呼び、何やらひそひそと話し出したのを見て、ちょっとだけ確信に近づいた。
「嫌な世界だな……」
「え?」
「いや、何でもない」
「そう……私、あとちょっとしたら仕事が終わるのだけど、君はこの後、予定ないかしら?」
恐らく、ここでは話せないんだろうな。
「あぁ、分かった。入口の外で待ってればいいか?」
「いえ、それはやめて欲しいかな。ここにいて……もしかしたら、君も、目を付けられているかもしれないから」
あ、もう目を付けられていると思いますよ。
俺は軽く目を逸らす。それを見て、彼女がどう思ったかは、分からないが、
「やらかしたっぽいね」
あぁ、駄目だ。彼女から、ジト目で見られている。目を逸らした事で、バレちゃってるな。
「……まずかったか?」
「えぇ。まずいわね」
そう言って沈黙が訪れる。耳には男どもの煩い声しか聞こえない。
「ええっと、とりあえず、すまん」
「えぇ!? あ、謝らないでよ! いい? 目立つような事はしないで! あなたまで……」
そう言ってボソボソ喋られては、困る。後半部分は何を言っているのか聞き取れなかった。
けど、思い出してみると久しぶりに人とまともに会話したな。
街中ではずっと、怖がられてばかり。まともに会話すら成立しなかった。
そう思うと、何故だろう。彼女からは怖がられている気がしない。
俺はふと疑問に思い、彼女の方へ向き返る。受付の女性という認識だけで、意識して見ていなかった。というか、よく見ると、耳がとんがってるような……
「……エルフ?」
「ん? 私の事? 正確にはハーフエルフだけど。それが、どうかしたの?」
や、やばい。初めて見たぞ、エルフ。しかもハーフ。
年甲斐もなく、心の中ではしゃいでしまうじゃないか。
異世界と来たら、一度は見てみたいと思っていたエルフ。
心のどこかで期待していた。
こうして見ると、中々綺麗な人だ。スタイルも……
「あのね〜。あまり女性の体をジロジロと見ちゃだめだよ?」
そう、注意され、俺は言い訳を頭の中で考える。が、上手く言えない。ただの興味本能でしたとしか言えん。
らしくないな。
けど、俺も材木座みたいに異世界に憧れるような部分が、残っていたんだな。
注意されたおかげが、少し冷静になった俺は、「すまん」と一言いい、俯く。再び見るほど、ぼっちには度胸がないんです。
俺なんて、ただでさえ目が腐っているせいか、女性を見つめただけで、視姦されたと訴えられるまでありそうだからな。油断出来ない。
「あれ? エイナ? まだお仕事中?」
すると、違う女性がエルフの後ろから現れた。
正直、気まずい状況だったので、助かった。
それと、エイナさんっていうのか、このエルフ。
「え? あぁ、もう終わりよ。ね? ヒキガヤ君?」
「そ、そうですね」
いきなり俺に話を振ってくるとは……
「なら、交代ね! お疲れ様〜!」
「うん。お疲れ様! じゃあ、ヒキガヤ君、荷物すぐに取ってくるから少し待っててね」
そう言って、エイナさんは組合の奥へと消えていく。
「へぇ。エイナってば……」
なんか、新しい受付の人、あの注意すべき男とは違う、怖い笑みを浮かべているんですけど。それに、獲物を狙うような目で俺を見つめられても…いえ、。
早く帰ってきてくれ。エイナさん。
けど、それもすぐにエイナさんが戻ってきたことで、終わった。
「お待たせ」
そうして、心の中で感謝しつつ、俺は二人で組合の外へ出たのだった。
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