*リーフィアside
「さて、あれで倒れてくれれば楽だったんだけど。そう甘くはいかないみたいだね」
岩の残骸に埋もれたミカルゲが立ち上がる。容姿は要石のひび割れから紫色のガスみたいなものが円状に吹き出していて、グレイシアがタックルできたことから一応実体はあるらしい。
「追い打ちをかけるぞ!ソーラービームはできるか?」
「もちろん」
昨日のソーラーブレードはソーラービームを高密度に形作ったもの。であればソーラービームも当然できる。
"ツインソーラービーム"
ロズレイドの花に、リーフィアの葉に、淡い光が集約していく。
陽が沈むということは即ち草タイプの力の源である太陽の恵みを失うということ。そして同時にゴースト・悪タイプの時間になるということでもある。黒い物体ーー恐らく影だろうーーを扱っていたミカルゲもその例に漏れない。
加えて御霊の塔の封印が解け、力を封じているのは要石の封印のみ。ミカルゲも指を咥えて封印を放っておく道理はないだろう。
だから溜め時間が長いことを差し引いても一撃で仕留めるためのこの選択は限りなく最適解だった。
ただ一点を除いて。
「フハハハハ!大事な子供達を傷付けてもいいのか?」
力なく項垂れたゴンベとマネネがミカルゲを守る様に立ちはだかる。
「ゴンベ!マネネ!」
ロズレイドが呼びかけるがスボミーの時と違って応答がない。2匹の様子からも操られていることは明らかだった。ロズレイドとリーフィアの光は萎むように消えていき、それとは対照的にミカルゲの2つの玉が黄緑色の蛍光を妖しく発する。
「お前…卑劣な手を…!」
「卑劣?面白い冗談だな。3対1で更に追い打ちまでかけようとしていた奴がよく言える。弱者の立場なのだからどんな手段でもなりふり構わず使うのは当然だろう?」
「お前こそ面白い冗談だな。子供達の意識を掌握したのは私たちが着く前だろうに」
「ククク、騙されないか。だが、我は単に人質をとるために操っているのではない。あくまで魂を集める目的のついでだ」
「魂を集める…?」
封印を解けばそれで終わりじゃないのだろうか。
「ああ、我は108の魂からなるポケモン。して、御霊の塔や要石の封印を解けば力は戻るが完全ではない。再び108の魂を揃えて初めて完全体になるのだ」
なるほど、今はゴンベとマネネの2つだけ。とりあえず猶予はある訳だ。
であれば依頼のもう1つの目的。
「1ヶ月前の怪現象で記憶を奪ったのもお前か?」
「知らないな、そもそも我は500年間もの間封印され続けていたのだからな。あぁ、だが1ヶ月前に封印が弱まったのは確かだ。おかげでこうして復活できた。その怪現象の主とやらにも礼を言わねばな」
今回も解決に繋がる手がかりはなしか…
いや待てよ?ミカルゲを封印した伝説のポケモンなら何か知ってるかもしれない。
「リーフィアすまない」
"???????"
「これ以上は時間をかけられないんだ」
ロズレイドが紫の玉を放ち、ミカルゲはゴンベを盾にする。
「気でも狂ったか」
しかしそれがゴンベを傷付けることはなく当たる間際で霧散していく。続けてゴンベの影からロズレイドが飛び出して急接近する。ミカルゲはハッと驚くがもう遅い。
「操ることにばかり気を取られているから懐に入られるんだよ!」
"毒突き"
毒に染まった蹴りが炸裂し、ミカルゲが再度吹っ飛んでいく。
何が起きたか。
紫の玉の正体は恐らくシャドーボール。威力よりも速さを重視した弾だったからミカルゲも咄嗟に近い方のゴンベを盾にした。
それが分水嶺だった。
ゴンベはノーマルタイプ。陽動用の軽いシャドーボールが効くはずもなく、更にミカルゲからは盾にしたゴンベが障壁になってロズレイドが見えなくなった。その間にもロズレイドは走り続け、後は先の通りだ。
死角からの近接攻撃ーーどれだけ操ることに長けていようと操る暇を与えなければいい。
"silver bullet"を耐えたことからも分かるように防御が堅くあまり効いてないようだが、状況は今のでグッと有利に傾いた。
理由としては
1つ、高耐久のポケモンには毒が有効であること。外は防御が堅くとも内までは守れない。毒のダメージは皆等しく蓄積していくのである。
2つ、ミカルゲを子供達から離せたこと。
「とりあえず」"草結び"
外は頑丈で中は寝心地のいい、子供達を覆う草のゆりかごを作って
「今はお休み」
"草笛"
清らかな音色が流れると共に子供達の表情が安らいでいく。さすがのミカルゲも寝ることによって活動を休止したポケモンを操るのは不可能であろう。
余談だが、子供達が寝てミカルゲとロズレイドが寝ない違いは感情が昂ぶっているかどうかの違いである。要は無感情で操られている子供達を寝かす方が容易いということ。
「やっとスタートラインに立てましたね。今は少し手伝えそうに無いけど」
「子供達を守ってくれるだけで充分さ。ミカルゲは私が倒す」
そう言ったロズレイドの目には覚悟の炎が宿っていた。
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