*ミカルゲside
「フン、簡単だったな。仲間と言えば聞こえはいいがそれを利用されていてはただの足枷でしかない。実に愚かでぬるい。これなら完全体になれる日も近いな」
グレイシアを影が包んでいく。
はずだった。
目を疑った。
何せムクバードの時と同じ光景が広がっているのだから。いや、今回はそれ以上か。
「何故だ。何故お前が…」
ムクバードのようにノーマルタイプだからという訳ではない。
目の前の小娘はどう見ても500年生きているようには見えない。そもそも500年前に我を封印したのは別のポケモンだ。
なら何故…
そうか、あのペンダントか。
忌々しい力を感じるのは。
あれは壊しておかないとまた同じ轍を踏む、本能がそう告げる。幸いなことに小娘に戦意は無い。であればペンダントを壊すくらい訳無い。
"影うち"
グレイシアの目の前まで移動し、先端を尖らせた影をグレイシアごと貫く勢いでーー。
○
*グレイシアside
眩しくて目を開けると影が光に塗り潰されていた。
誰かが助けに来てくれたのかと見渡してみるも、その姿はどこにも見当たらない。
「何で…………」
やがてその光源が胸のペンダントであることに気が付いた。
ーー「神聖な力がこもってるのはお守りだからって訳じゃないんだね」
ーー「分かるのかい?それは神話にも登場する花だからだろう。いろんな言い伝えがあるけれど希望や慰めを象徴する花であり、死を象徴する花でもある。1本でどうこうなったりはしないから恐れる必要はないけどね」
彼が守ってくれたんだ。
私のパートナー、こんなにすごいポケモンだったんだ。
誇らしいはずなのに涙が溢れてくる。
ーーだって彼も皆もいなくなった世界で生きる意味なんて無いもの。
今は救ってほしくなんてなかった。
彼を忘れた私に救ってもらう資格なんて無いのに。
いや、これはそんな私に神様が与えた孤独の終身刑なのだろう。
「ねぇ神様。
「お望み通り」
ーー影がペンダントを貫く刹那
再びお守りが光り
"ソーラーブレード"
ミカルゲを含めた一直線上の地面が抉れた。
○
*グレイシアside
「どうして…」
「お守りに呼ばれたんだ。君を守れってね。きっと君がピンチになった時、発動するように術式が組み込まれていたんだろう」
「よかった…本当によかった…!」
「喜ぶのはまだ早いよ。封印して全てが終わった後だ。それでグレイシアには酷なお願いをするかもしれない」
「何?」
「封印にはそのお守りの力が必要だ。そのお守りを手放す覚悟はあるか?」
「………………」
「無理にとは言わない。それが大切なお守りだってことも分かってる」
「…………いいよ。それで全てを終わらせてくれるなら」
「ああ、終わらせてくるさ」
○
*リーフィアside
倒れているミカルゲの前に立つ。
「いいのか。我を封印すれば4匹の魂は戻らぬぞ」
「それくらいは考えてあるさ。何の準備も無しに500年前の怪物に挑んだりはしないよ」
「分かった、改心する。4匹の魂も解放するから。だから許してくれ」
「随分と下手な演技だな」
「…………影に潜れない…?」
「対策しないはずが無いだろう」
その絡繰りはエテボースから貰った"清めのお札"。草を通して大地に退魔の力を流し込んでいる。
どうして最初から使わなかったか。
これでは足りなかったからだ。確かに魔の力に手を出しているミカルゲに退魔の力は有効だ。だが
その足りないピースを埋めたのがグレイシアのお守りだった。魂を奪われた私はお守りに呼び戻され、お守りの神聖な力が宿った"ソーラーブレード"を放った。清めのお札とは格の違うその力は確信していた通り、ミカルゲに致命傷を与えることができた。
後は封印するだけ。
"草結び"
ミカルゲを拘束して清めのお札を貼り付ける。
「グァァアアア゛ア゛ア゛」
すると、けたたましい呻き声と共に黄緑色の蛍光が消え魂が解放されていく。
「チェックメイトだ」
お守りに術式を組み込んで
"封印"
そうして一歩間違えればウォンシ地方が壊滅しかねない短くも長いバトルが終わりを告げた。