ポケットモンスター待雪草   作:プシュケ

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p.17 漆黒の放浪者

*グレイシアside

 

マスターが言った通り怪現象の謎を解く鍵は『スノードロップ』に間違いないと私も思う。灯台下暗しとでも言おうか、パートナーのことしか頭に無くて見落としていたが、『スノードロップ』は怪現象で()()()()()()()()()()()数少ない共通項(希望の光)なのであった。そんな希望の光を頼りに聞き込み調査をしているのだけど…

 

収穫は0、調査難航中よ。

 

当然よね。花のプロ(ロズレイドさん)ですら分からないのにすぐに見つかる訳が。

 

「ぐあ〜どこから探せばいいのよ…」

 

「こらこら、一端(いっぱし)のレディがそんな声出さない」

 

項垂れる私をリーフィアが(なだ)める。そうは言ってもこれは『砂浜で落とした確証もないビーズを探す』ような作業。終わりは見えずこんな声も出したくなる。

 

探すものが分かっているだけまだマシだけどね。でも近くて遠いこの感覚、分かるだろうか。

 

「おやおや、これはこれは。最近話題のチーム『スノードロップ』さんじゃないですか」

 

突然知らない声が聞こえて振り返ると声の主ーーシックなドンカラスーーとキザなマニューラがいた。見覚えのない2匹だ。

 

「話題なんて照れるわね。初めて見る顔だけど自己紹介してくださる?」

 

「おっと失礼。お初にお目にかかります(わたくし)はドンカラス。マニューラと旅をしている者です」

 

深々とお辞儀するドンカラスとは対照的にマニューラは無言で軽く目を合わせる。なるほど、旅をしてるとなれば初顔合わせなのも納得できる。

 

「それであなた方は何を探しておいでで?」

 

「スノードロップっていう花を探しているわ」

 

「ほぉ…それはまた何故?」

 

「怪現象の謎を解くためよ。貴方達は何か知らない?」

 

「それは興味深いですね。しかし誠に残念ながらそのような花は存じ上げません」

 

半分諦めながらマニューラを見てみるも同様に首を横に振る。

 

「そうよね…各地を旅してるポケモンだったら何か知ってると思ったのだけど現実はそう甘くないわよね…」

 

「では見つけたらギルドに連絡しておきますので私たちはこれで。あなた方とはまた巡り会う、そんな気がします。その時はよろしくお願いしますね」

 

「そう…ね?」

 

現実逃避から顔を上げるとそこにドンカラスとマニューラの姿はもうなかった。

 

 

 

 

*リーフィアside

 

「あれ、いつの間に…?」

 

「さっきマニューラを乗せて飛んでいったよ」

 

その様は夜なのも手伝って闇夜に紛れるようであった。それこそ下を向いていたグレイシアが気付けないほどに。

 

敢えて口を出さずに見ていたが、個人的な印象としては胡散臭いの一言に尽きる。能ある鷹は爪を隠すと言うが、黒鷹隊よりも似合ってるんじゃないかと思う。というか隊長は脳筋の鷹は爪を隠されるが正しい。

 

そんな冗談は置いといて今日初めてネオンシティに来た旅人なのに昨日今日発足したチーム『スノードロップ』を知ってるものなのだろうか。根拠はないが、手放しで信用できる相手ではないと本能が囁いていた。

 

「礼儀正しく答えてくれたから別れの挨拶くらいしたかったのに…」

 

この鈍感お人好しグレイシアは大丈夫だろうか。


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