*リーフィアside
ドドドドド
「いぃぃやぁぁああ」
グレイシアの悲鳴がエレキ平原に響き渡る。いったい何が起きているのかというと、私たちはパチリスの群れに追いかけられていた。
ーー原因は遡ること数時間前ーー
「あれとこれとそれと…」
グレイシアが呪文を唱えている。
訳ではなく私たちはエレキ平原にむけて準備をしていた。
「長い」
「女の子のショッピングと準備を待てない男はモテないわよ」
「そう言うグレイシアはさぞおモテになるんでしょうね」
「なっ…大人のお姉さんな私がモテない訳ないじゃない!」
「………そういうことにしておこうか」
「何よそのリアルな間は?ほら、こんなに美味しそうなオレンの実のポフィン作れるポケモンなんてそうそういないわよ?」
2匹くらい思い当たったが、何なら大人のお姉さんなポケモンも2匹くらい思い当たったが自ら地雷に突っ込むのは愚策だ。せめて自爆してる時くらいは避けるのが賢い。
「確かに。でもダンジョンに持ってく食料なら手軽なりんごとかでもよくないか?冒険前にわざわざ手間をかけて作る必要は…」
「全く、リーフィアは全然分かってないわね。冬の険しいダンジョンで疲れた時に味わうお菓子がどれだけありがたいことか。過酷な冒険には"花"も必要なのよ。それにオレンの実は体力も回復してくれるから一石二鳥ね!」
意外と考えてられていて感心した。ーーこれが後にパチリスの群れに追いかけられる原因になるとも露知らずに。
ーー場面は戻ってエレキ平原ーー
ドドドドド
「大人のお姉さんはモテて大変だね」
「ものに釣られてるだけじゃない!」
オレンの実のポフィンの甘い香りに誘われたパチリスの群れは過激さを増していた。
「うん、諦めてポフィンは置いていこう」
「嫌よ!せっかく美味しく作れたのに。何で野生のパチリスなんかにあげなきゃいけないのよ!」
「パチリス達を鎮めるにはそれしかないんだ!悪く思わないでくれ」
ポフィンはグレイシアの荷物ではあるが、幸い持っているのは荷物持ちである私。ポフィンを置いて様子を見ると、予想通りパチリスの群れは鎮静化した。
「あぁ…私の唯一の楽しみが…」
そしてグレイシアも鎮静化した。
「まぁまぁ、こんなに美味しそうに食べてくれたんだ。よかったじゃないか」
「「「ありがとう!お姉ちゃん!!」」」
「ええ、いいのよ。今度また作ってあげるからね」
悲壮感漂うグレイシアだったが可愛いパチリス達のお姉ちゃん攻撃には敵うはずもなく、少し得意げに頰を緩めるのであった。
○
*グレイシアside
ポフィンを犠牲にパチリスを振り払った私たちは再びエレキ平原の奥地を目指して歩いていた。
「ところで幻の花ってどんな花なのかしら」
「幻の花って言うくらいだから見れば分かるんじゃないか?それこそスノードロップみたいに神聖な力が宿っていたり」
「リーフィアには神聖な力が分かるの?」
「分からなきゃミカルゲの時に使えてないだろう?」
私にはただの花にしか見えないのだけれど、リーフィアには神聖な力とやらが分かるらしい。バトルの強さといい封印術といい、記憶を失う前は案外すごいポケモンだったのかもしれない。
「それもそっか。なら心配無さそうね」
「いや、そうとも言い切れない」
「何で?」
「ネオラントにエレキ平原のことを聞き忘れた。どんなダンジョンなのか。奥地はどう目指すのか。何に注意したらいいのか。」
「あ…………。今からでも遅くないわ。マスターに貰った調査隊バッジで聞きましょう」
怪現象の解明に繫がるかも!と意気揚々に飛び出してきたが、確かに私たちはエレキ平原のことを何も知らない。何も知らないまま奥地を目指すのと情報がある上で目指すのとでは労力がまるで違う。主に面倒事に巻き込まれる確率的に。さっそく調査隊バッジの電源を入れてみる。
ジーーーー。
返ってくるのは音信不通を知らせる雑音のみ。
「残念ながらエレキ平原と言うだけあって特殊な磁場が発生してるみたいだね」
「じゃあ食糧も少なくなっちゃったし、今日の所は出直しましょ!ネオンシティはエレキ平原の東よね。マスターに貰った方位磁石…………」
当然の如く、方位磁石は特殊な磁場の影響で忙しなく回っていた。パチリスに追いかけられて方向感覚は分からなくなり、平原なので辺りは何の目印もなく真っさら。おまけに霧もかかっていて視界が悪い。もしかしなくても私たち、迷子?
○
*ネオラントside
あの子たち、私が仕組んだものじゃないって知ってすっ飛んでいったけれど大丈夫かしら。具体的に強いポケモンがいるのかは聞いたことがないけれど、それって情報が無いからなのよねぇ。そう、エレキ平原は電子機器も方位磁石も頼りにならない立派な未開の地。一度その霧の中に入ると無事には帰ってこれないとか。
「今回も一波乱ありそうね。
まぁあの子達なら大丈夫でしょう」