*レントラーside
リーフィアが目を閉じる。
諦めたか?ルクシオを襲撃する手際の良さ、もう少しやれると思っていたが…案外呆気なかったな。この霧の深さでは仕方ないか。これで終わりにしよう。
"電撃波"
その時リーフィアの目が見開かれ、視線が合う。リーフィアはそのまま攻撃に転じた。
"はっぱカッター"
馬鹿な。見えているとでも言うのか?いや、考えるのは後だ。精度はないものの威力で負ける。瞬時に判断して避けるも、はっぱカッターが頬を掠める。
「見えて…いるのか?」
「いいや?全く見えなくて困ってるよ」
リーフィアはあっけらかんと答える。まさか適当に攻撃したということはあるまい。タイミング的にもあれは確信をもった攻撃だった。
「それなら感知か…?」
「もっと単純だよ。見えないから音を聞いた」
…なるほど。普通なら音より光の方が早く届くが、この霧の中では電撃が視認されるよりも早く音が届くということか。目を閉じたのは視覚の余計な情報を断つことで聴覚を鋭敏にするため。そうは言っても電撃のスピードは並外れている。少しでも攻撃が遅れれば直撃だ。普通のポケモンなら思いついても実践しないだろう。
頬から血が滴るのはいつ以来だろうか。ルクシオを傷付けた容疑者と戦っているのに、浮かぶのは喧嘩ばかりしていた2つの探検隊と笑みだった。
久し振りに本気で戦えそうだ。
「面白い…決めたよ。今までは生け捕りしようと手加減していたが、守護者の名に恥じぬよう全力で戦おう。全力で交われば自ずと人となりも分かるだろう」
「手加減やめて本気出すとか言ってるじゃない何余計なことしてくれてるのよ!」
「でも攻撃しないと一方的に痛ぶられるだけだぞ?」
「あのー、私弱いので見学とかは……」
「「そんな3秒で分かる嘘はつかなくていい」」
そもそも霧の中で電撃を防げている時点で只者じゃない。
「全力を出す前にその実力を認めて1つだけ教えておこう。俺がお前らを的確に狙えているのは音を聞いてる訳でも感知をしている訳でもない。
……透視だ。
霧などあってないようなもの。俺にとってエレキ平原は見通しのいい平原でしかない。この悪条件で本気の守護者にどれだけ抗えるか…
罪を晴らしたくば、全力で足掻いてみせよ!!」
○
*??side
チッ、仕留めそこねたか。まぁいい…レントラーも本気を出すと言っているし、チーム「スノードロップ」の負けは確実だろう。俺たちは守護者様が戦いにうつつを抜かしてるうちに弱っている神様とやらを探すとしよう。
○
*リーフィアside
"電撃波"
同じ技ではあるが、今までとはまるで違う。今までとは比べ物にならない量の電撃が多方向から次々に飛んでくる。即ち、音が聞こえた方に反撃をしたとしても、そこにはもうレントラーはいないし、更なる電撃が飛んでくるということを意味している。
「リーフィア、どうする…?」
「どうするも何も…!」
そもそも速すぎて常時リフレクターを展開していないと反応しきれない。そのリフレクターも時間が経つに連れてヒビが入り始めていた。本来、リフレクターは物理攻撃の威力を弱めるための技。無理やり遠距離攻撃を防御しているため、当然長くは保たない。
透視できるレントラーがそれを見逃すはずがなかった。
パリン
ヒビが入った場所に電撃を集中することでリフレクターは崩れ去り、被弾する。身体が痺れて膝をつくが、レントラーは待ってなどくれない。すかさず電撃を纏いリーフィアへ追撃する。
「グレイシア避け…」
「何て…?」
"スパーク"
「ガッ」
グレイシアが振り向くも、状況確認は間に合わない。後ろのグレイシアごと吹っ飛ばされ、地面を転がっていく。
「ごめ、ん」
「私は大丈夫。リーフィアは?」
気を遣って心配してくれるが、今は戦闘中。レントラーは尚も追撃の手を緩めない。
"スパーク"
まずい…体が痺れて動けない。せめてグレイシアだけでも…
「避、け…ろ…」
「トドメだ」
閃光が2匹に突っ込む。刹那、
"
グレイシアが前足をつくと同時に地面から氷塊が現れた。スピードを出していたレントラーは初めて見た下からの攻撃に対応できず、
私のことを心配してくれてはいたが、言葉自体は簡素。グレイシアは気を抜いてなどいなかった。
「ここは私がやる。リーフィアはルクシオと一緒に休んでて」
一歩前に出て
「誰だか知らないけど、私を犯人に仕立て上げようとしてるポケモンがいる。そのせいで霧に迷って、理不尽なバトルを仕掛けられて、リーフィアも傷ついて、ほんっと迷惑してるのよ!!
バトルは好きじゃないけど、今度は逃げない。
助けられてばかりじゃかっこ悪いから。
自分の大事なものくらい自分で守りたいから!
例えどんな霧の中でも大事なものを見失わないこと、証明してあげる!!」
○
*ルクシオside
血を流したレントラーも
本気を出したレントラーも
こんなに楽しそうに戦うレントラーも、初めて見た。
少なくとも僕が見てきた冒険者は皆、霧に成す術なく敗れるか、バトルをする前から逃げ出す者さえいた。
仕方のないことだと思う。
目隠しという大きなハンデを背負って、守護者として認められたポケモンと対等に戦えなんて到底無理な話だ。
僕も
ずっと迷っていた。証拠が揃いすぎている2匹を、しかしながら犯人には見えない2匹をレントラーの元へ案内するか。案内したら最後、容疑者である手前、いつもの冒険者のように逃げ出すことは許されないだろう。つまり、残された道は1つ。それでも僕は自分の感情を押し潰して神様をお守りすることを優先した。それが神様にお仕えする者としての務めだから。当然罪悪感はあった。演技かもしれないけど、僕を助けてくれた心優しい2匹を地獄へ案内するようなものだったから。
それがどうだ。2匹であーだこーだ言いつつも、互いに背中を預けて必死に喰らい付いている。熾烈な電撃の応酬にも決して諦めることなく、反撃の
平和で退屈な時間が流れるエレキ平原でレントラーはきっとこんな冒険者を待ち望んでいたのだろう。そして試している。襲撃の容疑者だとか関係ない。2匹を対等と認め、試練を与えている。
そんなバトルを見ていると、どうしても浮かんでしまうのだ。
神様にお仕えする者としては間違った感情かもしれない。
だけど、
ーー願わくは、