*リーフィアside
「クラボの実、食べますか?」
意外にもルクシオは私を邪険に扱わなかった。
「敵かもしれないのにいいのか?」
「相方はまだしも貴方はまともに攻撃を当てれそうにないですからね。それに、仮に貴方達が犯人だったとしてもお兄様に勝つのは不可能です」
「辛辣だなぁ」
先ほどレントラーとの戦いを見ていたルクシオが痛いところを突いてくる。確かにルクシオの言う通り、移動しながら攻撃されたら対抗する術は無い。
しかし、ルクシオの言葉は内容とは裏腹に不思議と嫌味な感じはしない。信頼に値すると認められたか、警戒に値しないと評価されたか、いずれにせよ敵視はされていないようだ。
「その、あくまで治療の借りを返すだけですから。勘違いしないでくださいね」
……このルクシオ、素直じゃないな。
グレイシアへの対応と同じ要領でそんな言葉を抑えつつ、ありがたくクラボの実をいただく。すると身体の痺れはさっぱり消え、上品な甘酸っぱさが口一杯に広がる。気のせいか、普通のクラボの実よりも美味しい気がする。
「美味しいね。もしかして
「分かりますか?神様の恵みを受けた土地で、もう1匹の守護者様が育てていらっしゃるんですよ。僕たちがよく冒険者を痺れさせてしまうのでよくお世話になってます」
「レントラーだけでも理不尽なのに守護者がもう1匹…冒険者が可愛そうだ。現在進行形で」
「それはこのタイミングで来た貴方達の自業自得ですよ。ちょっとだけ同情します」
「同情するなら出口まで案内してくれ」
「それはできない相談です。でも、お兄様があれだけ楽しそうにバトルをされるのは初めて見ました。少しだけ連れてきてよかったと思います」
「こっちはいい迷惑だよ」
と言いつつもやはり悪い気はしない。例えるなら気の知れた友人と何でもない話をしている、そんな感覚だ。この本音が知られたらグレイシアからは「戦ってないから気楽でいいわね」と非難されそうだが。
当のグレイシアは霧で見えないものの、思っていた以上に善戦しているらしい。
いつの間にこんなに強くなったんだろう。
否、強くなったのは心の方か。今までグレイシアは積極的にバトルに参加することはなかった。グレイシア自身も言っているように、バトルが好きではないからだ。特にミカルゲの時はトラウマを呼び起こされたのか、戦意喪失していた。
そんな守らなければ今にも崩れ落ちてしまいそうだった雪の女王が、今は覚悟を決めて大事なものを二度と手放さないように戦っている。
「私もそれに見合うパートナーにならないとな」
「
「何か言った?」
「何も」
敵同士の少し噛み合わない氷解は霧の中に溶けていった。
○
*グレイシアside
「自身を弱いと言っていた割には中々やるじゃないか」
アイスエッジが直撃して倒れていたレントラーから驚きを含んだ言葉が発せられる。それもそうだ。霧の攻略法を見つけたリーフィアからではなく、自身を弱いと卑下していた私から今日初めての直撃をもらったのだから。
「ええ、私は弱かった。でも、リーフィアのおかげで強くなれた。今度は私が守る番」
けど、守ってもらうだけの弱い私はもう終わり。そのせいでパートナーを危険に巻き込みたくはないし、何もできないまま失うのは絶対後悔する。
これは単なる強がりではない。実際、このバトルにおいてはリーフィアよりかは勝算があると思っている。
だって、今の季節は『冬』だもの。
"霰・雪隠れ"
リーフィアとルクシオにはなるべく当たらないように霰と吹雪を展開する。
「ほぅ…面白い…!だが、さっき言ったことをもう忘れたか?透視ができる俺にそんなのは通用しない!」
"電撃波"
そう、透視ができるレントラーには霰を打ち消すまでもなく雪隠れは通用しない。本来の目的は別にある。
"オーロラベール"
霰でより強固になったオーロラベールはレントラーが放つ電撃波を
次に、リーフィアが教えてくれたこと。見えないからって
「そこ!」
"氷の礫"
直線的で単純な攻撃だ。ましてや、この
重要なのは攻撃を当てることではない。
私にも戦えると確信した。
「完全に霧を克服したか。最高だ…最高だよ、グレイシア!!」
霰が降っている
それが『雪の女王』たる所以。