*レントラーside
「そこ!」
"氷の礫"
俺はリーフィアに反撃されたのを踏まえて走りながら電撃波を放っていた。感知能力もない、透視もできない、適当に攻撃しても当たるはずのないこの状況、グレイシアは見事正確に狙撃してみせた。
「完全に霧を克服したか」
どうやって俺の位置を割り出したかは知らないがこの際どうでもいい。鼓動が高鳴るのを感じる。久しく感じていなかったこの胸の高鳴り…言葉にするならば
「最高だ…最高だよ、グレイシア!!」
「それはよかった。けど、私をここまで強くさせたこと、精々後悔しないことね!」
「上等!!」
"電撃波"
"氷の礫"
技と技の応酬。
俺は守護者という立場上ここを離れる訳にはいかないし、ここで戦う以上は濃い霧が付き纏う。当然、幾度となく戦意を無くされた。今までしてきたのはバトルとは名ばかりの一方的な蹂躙だった。もう普通の冒険者と対等にバトルすることなんてないだろうと思っていた。だが今は違う。技を撃ったら返ってくる。それがどんなに嬉しいことか。あぁ…飢えていた心が満たされていく。叶うことならこのバトルが一生続いてほしいと思えるほどに素晴らしいバトルだった。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
しかし、現実は残酷でグレイシアにも体力の限界が近付いていた。
「このバトルは終わらせるにはあまりにも惜しい。だが、このまま長引かせても霞んでしまうだけだ」
"充電"
あのオーロラベールを破るには最大限まで威力を引き上げる必要がある。名残惜しい気持ちを抑えながら電気を集約させてグレイシアへ向けて加速する。
"ワイルドボルト"
「ありがとう、楽しいバトルだった」
◯
*グレイシアside
「はぁ、はぁ、はぁ…」
オーロラベールを酷使しすぎたからか、もう限界のようね。レントラーもそれを察してか、最後の一撃に賭けてきているようだ。充電により、威力を高められたワイルドボルトはオーロラベールでも防ぎきれそうにない。でも、最後まで戦わなきゃ……
今度は私守る番って言ったから
"
最後の力を振り絞ってレントラーが通るであろう場所に氷塊を出現させる。
「甘い!」
躱された。
分かってる。
2度は通用しない。
花開けーーこれが私の成長の証。
"
「ーー完敗だ」
尤も、最後の力を使い果たして気を失ったグレイシアにはその言葉は届かない。
◯
*ルクシオside
「まさか本当にお兄様に勝ってしまうとは………」
開いた口が塞がらないとはこのことを言うのか。お兄様が負ける姿なんて見たことないし、想像したことさえなかった。しっかりとこの目で見ていたというのに未だに信じられない。
「驚いてるところ悪いけど、かなり激しい戦闘だったようだしまずは応急処置をしよう。グレイシアが倒れている位置まで連れていってくれないか?」
「……あ、ええ。……この辺りです」
「グレイシア、お疲れ様。私も約束を守れるようにもっと強くなるよ」
リーフィアは優しく声をかけながら応急処置をしていく。お互いのことを信頼し、思い合っているいいチームだなと感じた。そんなことを思っている束の間
「はい、レントラーの分の復活草。レントラーの方はルクシオが治療してやってくれ」
「……!?こんな高級品いいんですか?」
「特別に黒鷹隊から貰ってるからね。今使わないでいつ使う」
「疑いをかけて勝負を仕掛けたのはこちらの方なのに…ありがとうございます」
あぁ…この2匹の優しさが偽りじゃなくてよかった。いや、この2匹が優しいのは手負いの僕を治療してくれた時、リーフィアがグレイシアを庇った時、グレイシアがリーフィアを庇った時から分かりきっていたことか。それでも改めてリーフィアの優しさが身に染みる。
あれだけ濃かった霧が晴れ、まだ2月だというのに桜吹雪が舞う。
「…………………!?」
「今まで霧が晴れたことなんてあったか?」
「いえ、そんなことは全く」
「嫌な予感がする…!」