*ルクシオside
「ルクシオ、何か心当たりはないか?」
今起きていることを困惑している頭で何とか整理する。物心ついた時から今まで一度も晴れたことのないエレキ平原の霧が晴れた。まだ2月だというのに桜吹雪が舞っている。そして暖かい。まるで今が春だと言わんばかりに。多少の気候の変化ならあるかもしれない。しかし、目の前で起きている現象は常軌を逸していた。これほどの気候変動を引き起こせるポケモン…考えるまでもなく1匹のポケモンが思い当たった。舞っている花びらからも間違いない。それは僕もよく知っているもう1匹の守護者
「おそらくチェリム様です」
だけど僕の知っているチェリム様は争いを好まず極めて穏やかな性格で、お兄様に負けた冒険者のことを心配してしまう始末。リーフィアとグレイシアを疑いつつも、どこか心の片隅で信じていたのはその優しさをチェリム様に重ねていたからかもしれない。
そんなチェリム様が力を使われている。それが意味することは…
「急ぎましょうリーフィアさん!神様が危ない…!」
◯
*リーフィアside
ルクシオと共に桜の舞う方へ向かい、私たちが目にしたのは心奪われてしまうほどに壮大で美しい桜、それを映す鏡のように透き通っている湖、ポジフォルムのチェリム
そして倒れているマニューラ、気を失っているドンカラスだった。
「……………………!?」
思わぬ光景に言葉が出ないでいると、マニューラが口を開いた。そのマニューラも喋るのがやっとな様子で、かなりのダメージが窺える。
「へへっ…俺たちの罠にまんまとかかってレントラーにやられたと思ったが…生きてやがったか」
「……お前だったのか。リーフィアさんの、グレイシアさんの善意を踏みにじるような真似をしたのは…!許さない…!!」
とても挑発なんてしてる余裕もないだろうに、それでも挑発するマニューラにルクシオが激昂する。
「それは構わないが…お前たちも早くここから逃げた方がいい」
「何故お前などの言葉を聞かないといけない!」
「マニューラの言う通りだ。チェリムの様子がおかしい!」
ルクシオや神様を狙った犯人であるマニューラとドンカラスに制裁が下された、それまではいい。しかし、マニューラとドンカラスに制裁が下された今、チェリムが力を使う必要はない。つまり、春の陽気と桜吹雪は収まっていって然るべきなのだ。なのに、それらは収まるばかりか強まっていく。
チェリム自身が放つ濃密な狂気と共に。
「貴方たちも神様を狙う敵?でもそんなことはどうでもいいの。こんなにも気持ちのいい春だから私と踊ってくださらない?」
「チェリム…様……?僕です、ルクシオです!」
「そんなの私の知ったことではないわ。そこの2匹は期待外れでした。貴方たちはどうかしら?そこの2匹みたいにすぐに踊り疲れないでくださいね」
クラボの実(サクランボ)は西洋実桜という桜になるそう。