*リーフィアside
「チェリム…様……?僕です、ルクシオです!」
「そんなの私の知ったことではないわ。そこの2匹は期待外れでした。貴方たちはどうかしら?そこの2匹みたいにすぐに踊り疲れないでくださいね」
"花びらの舞"
桜の花びらが、さながら舞を踊るように一面を埋め尽くす。普段なら宴会料理と共にゆっくりお花見したいところだが、今回はそうもいかない。花びら1枚1枚に神聖な力ーーお守りの力に似ているーーが込められていて、私と本来味方であるはずのルクシオまでをも狙う。言動や漏れ出る狂気からも分かるように、やはりチェリムは正気を失っているようだった。
"リフレクター"
神聖な力が込められているということは即ち、それだけ威力も高いということで、防御も一時凌ぎに過ぎない。とは言え、ルクシオに伝えるには充分な時間だった。
「ここは私が凌ぐ!ルクシオは神様を探してくれ!」
「リーフィアさんだけに任せる訳には…」
「チェリムを鎮めるには神様の力が必要だと思う。私は神様と会ったこともないし、居場所も知らない。
…なるべく早く戻ってくれると助かるよ」
「……分かりました。呉々も無理はしないでくださいね」
ルクシオも今のチェリムの危険さを理解しているようで、それだけ言い残すと湖の方へ走っていった。
「…足手まといを逃したか。いい判断だ」
大人しく休んでればいいものを、マニューラがまた嫌味を口にする。ただ、マニューラの言うことも事実。チェリムは今、冬であるにも関わらず気候を春にするほどの力を持ち、"フラワーギフト"で攻撃面も防御面も大幅に強化された状態にある。言うなれば先ほどのグレイシアと同じ、一番力を発揮できる条件下にあると言える。傷がまだ癒えきっていないルクシオには荷が重く、ルクシオを庇いながら戦うのも厳しい。
また、チェリムからはミカルゲと似た性質を感じる。力の性質自体は正反対なのだが、エネルギーが膨大というべきか無尽蔵というべきか。出所はあの桜。推測ではあるが、このままではあの桜にチェリムが乗っ取られるのも時間の問題だ。強大すぎる力は使い方を間違えると身を滅ぼす。しかし、敵ではない、ましてや守護者様を封印する訳にはいかないので、神様に鎮めてもらう他方法はないという訳だ。
私がするのはそれまでの時間稼ぎ。
「あとはお前も逃げれば完璧だったのにな。どうしてあんな狂った化け物と戦おうとする?」
「聞いていたんだろう?グレイシアならきっと暴走したチェリムを放っておいたりしない。あのレントラーにもトラウマを克服して立ち向かったんだ。私が逃げる訳にはいかないよ」
「………………」
リフレクターが壊れると同時に残りの花びらを"リーフブレード"で散らす。幸いにもチェリムがルクシオを阻むことはなかった。
「あら、貴方がデュエットしてくださるの?」
「私じゃ不満かな?」
「いえ、全然。貴方となら素敵なハーモニーを奏でられそう」
「それは何より」