*グレイシアside
「ううっ、ずっとポケモンセンターの中にいたから分からなかったけど、外はこんなに寒かったんだな…」
寒さのピークは過ぎ去ったものの、今は静寂とした白銀の世界でしんしんと雪が舞い踊る冬真っ盛りなのであった。更にウォンシ地方は北に位置する地方であるため、寒さは過酷を極める。とは言っても氷タイプの私にとっては心地いい季節であって
「冬は嫌い?静かで神秘的で、私は好きよ」
「氷タイプに草タイプの気持ちは一生分かるまい」
リーフィアはカタカタと震えながら恨めしげな視線を送る。
「あら、そんな言い方していいの?血塗れの破れた上着が使い物にならなくなっていたから、新しい上着を縫っておいたのだけど」
そう、私は裁縫もできて頼れるクールビューティーなお姉さんなの!ネーミングやデリカシーのないタマンタちゃんにあたふたしてたのは事故よ、忘れなさい。思い出したら少し恥ずかしくなってきた…まぁリーフィアとは出会ったばかりだし、印象はいくらでも挽回できるはず。"できるお姉さん・名誉挽回大作戦"すたーと!
「そういうのはもっと早く言ってくれ。ネオラントといい君といいもったいぶって楽しんでるのか?趣味が悪」
「あら、そんな言い方してていいの?」
もふもふの手編みセーターとマフラーを人質に今年一番のステキな笑顔を作る。
「悪かった悪かった。グレイシア様、どうかその暖かそうなセーターとマフラーを凍え死にそうな哀れなリーフィアめに恵んでくださいませ」
「よろしい」
リーフィアは恭しく片膝をついて頭を垂れ、グレイシアは満足げにセーターとマフラーを渡す。
「ありがとう、生き返ったよ。それにしても裁縫上手いなんて意外と器用なんだな」
「ふふん、もっと褒めてくれてもいいのよ?」
第一作戦だいせいこー!
○
*リーフィアside
グレイシアが得意げに胸を張る。このグレイシアちょろいな。しかし、裁縫自体はとても丁寧に仕上げられていて女子力の高さが見てとれる。クールビューティーに見えて実は影で努力してたりするのだろうか。それはさておき
「…どうしてグレイシアまでお揃いのセーターとマフラーを着るんだ…?」
「生地が余ったから2着ずつ作っておいたのよ。別に私は寒くないけど、私だけが着てないってのもあれでしょ?こういうのは雰囲気が大事なのよ!」
てっきりリーフィアとお揃いのファッションは嫌!とか言うようなタイプだと思っていたが案外無頓着らしい。なら気にすることもないかと今回の依頼に思考をシフトする。
「ところで今回目指すテンガン山ってどんなところなんだ?」
「西に雲をも穿つ大きな山が見えるでしょう?あれがテンガン山。この世界で一番高い山なのよ。ウォンシ地方自体が寒い地域な上に標高も高いから、そこに住んでるポケモンじゃない限り登ろうなんて物好きなポケモンはまずいないわね」
「へぇ…私たちはそんなところに登ろうとしてるのか?」
「まさか、麓で復活草とってくるだけだし大丈夫よ」
「そうだよな、病み上がりのポケモンを酷使するブラック依頼じゃなくて安心したよ」
「そうね、サクっと終わらせちゃいましょう」
*ネオラントside
「久し振りに面白い子達を見つけたわ。…でもあなたは戦っちゃダメよ?あなたが戦うと辺り一帯更地になっちゃうんだから」
「ムクバード達を倒すほどに強かったら戦」
「だーめ。だめったらだめよ」
「まぁいい、お前が面白いと言うなら間違いはないのだろう。どんな戦い方をするか、楽しみに待つとしよう」
○
*リーフィアside
リーフィアは先導してくれるグレイシアに続いて"ぼす、ぼす"と雪道に足跡をつけながら歩いていく。防寒具を身につけてもなおも厳しい寒さと、出歩くポケモンなどリーフィアとグレイシアの2匹以外にいない静寂の世界を紛らわすために会話を続ける。
「なぁ、タマンタも言ってたけど何で私を助ける時にそんなに必死だったんだ?」
「っ…その話はもういいでしょ!」
「おっと危ない。普通知らないポケモンのため泣いたりしないだろ?何かあったのかなって」
グレイシアは頰を赤く染めれいとうビームを放つが、タマンタの
「そりゃあ血塗れのポケモンがいたら焦りもするでしょう?泣いてたのは…あなたのためじゃなくてこのお守りのポケモンを忘れてしまったからよ。急にぽっかりと消えて涙が止まらなくなったの」
「そうか…そんなに辛い状況だったのに私を助けてくれるなんてグレイシアは優しいね。お礼にその大事な記憶、命を賭けて取り戻すと誓うよ」
「ふぇっ?簡単に命を賭けるとか言っちゃダメよ。昨日も言ったけどそういうのは大切なポケモンに」
「命の恩人は充分に大切なポケモンだよ。君に救われた命を以て、君への恩返しとしよう」
○
*グレイシアside
何であんな告白めいたことをぽんぽん言えるのかしら。しかも自覚は無いときた、更にタチが悪いわ。今私顔赤くなったりしてないかな。違うのっ、これは寒いからで
「大丈夫か?顔赤いぞ。グフっ」
この無自覚女誑しを殴った私は悪くないはずだ。お腹を抑えて蹲る哀れな肢体が出来上がったが、当然の報いなのである。
「話は終わりましたか?お揃いのファッションに夫婦喧嘩とは見せつけてくれますね。年齢=伴侶がいない歴の私への当てつけですか?甘ったるくて虫歯になりそうです。まぁそれは百歩譲って見逃すとしてムクの縄張りに一体何のようだ!」
「えっ私たちは依頼で復活草を取りに来ただけで…っていつから聞いてたの?それに夫婦ってそそそそそんな訳ないでしょ!?」
リーフィアとの会話に気を取られていたらいつのまにかムックルとムクバードの群れに囲まれていた。っていうか夫婦って何よ!クールビューティーなお姉さんをからかってるの?まぁでもさっきのリーフィアは少しかっこよかったし……ブンブンブンいや私は何を考えてるの。リーフィアとはまだ出会って間もないし、私にはお守りをくれた大切なポケモンが…
「復活草は現在ポケモンセンターとしか取引していない貴重な薬草だ。我ら以外が採取することは禁止されている。尚更無事に帰す訳にはいかない!」
ふぅ…クールビューティーともあろう私が取り乱してしまったわ。幸いリーフィアは気絶してるから聞かれていないはず…!ムクバード達は相当怒っているわね。ここはネオラントの依頼で来たことを伝えて穏便に解決しなきゃ!
「私たちはそのネオラ…」
「問答無用!リアじゅ…復活草を盗もうとする無法者は成敗するのみ!」
「…聞いちゃいないわね。そっちがその気なら力尽くで奪い取るだけ!行くわよ、リーフィア!」
あれ…リーフィア?
…そうだった、私が気絶させたんだった…あはは。ってことはこの群れ私一人で相手にしないといけないのかなぁ……お家帰りたい。
しーくさん(Twitter→https://mobile.twitter.com/takumasiku )から挿絵をいただきました。
グレイシア「素敵な挿絵ね」
ええ、本当に筆者にはもったいないくらい。改めてありがとうございます!ただ…
グレイシア「ただ…?まさかこんな素敵な絵に不満が?」
いやね、通話で実際に描いてる所を見せてもらったのにもかかわらず気付けなかったんだ。
リーフィア「確かに致命的なミスが1つあるね」
グレイシア「非の打ち所は無さそうに見えるけど…もったいぶらずに教えなさいよ」
リーフィア「じゃあ作中の季節は?」
グレイシア「あっ…」
タマンタ「きっとこれはグレイシアさんから見たリーフィアさんなんですよ!リーフィアさんがかっこよかったから恋は盲目ってやつで…バタリ」
グレイシア「あー!あー!何か言ったかしら!?リーフィア、聞こえなかったわよね?あー、すごく気になるけどタマンタちゃん倒れちゃったから聞き直せないわね。残念で仕方ないわ」
リーフィア「私はこれをくらったのか…次回生きてるかな」