*ネオラントside
「しかし、本当に行かせてよかったのか?」
そう問いかけるのは嘗て一緒に旅をした
「スノードロップの2匹?確かにあの2匹をあの
「
さすがに脳筋と言っても長い間共に旅をしているだけあって誤魔化せないわね。ムクホークの言う通りタマンタちゃんは正直バトル向きのポケモンではない。代わりに繊細なコントロールを必要とする回復に特化している。
しかし、今回送り出したバクバク砂漠は水とは対極に位置するダンジョン。水・飛行タイプだから地面タイプに相性が良いと見せかけて、それはバトルを本職としないタマンタちゃんにとっては関係の無いこと。空気は乾燥し暑い日差しが照り付ける中での水のコントロールは困難を極め、相性は限りなく最悪と言える。そもそも回復役は自身が怪我をしないためにも過激な戦場へ出向くべきではない。
「あら、電気タイプ
「それとこれとは話が別だ。ムクバードは霧を払えるし、その辺の電気タイプなら返り討ちに出来るくらい強い」
「清々しいまでの親バカね。役割は違えど、私も同じことを思っているわ。必ずチーム"スノードロップ"の役に立てるって。あまりタマンタちゃんを侮らないで頂戴」
それに嫌な予感がするのよね。近々ウォンシ地方全域を巻き込んだとんでもない事件が起きる予感。そのためにもタマンタちゃんには今以上に成長してもらわないと困る。未来を担うのはあなた達なのだから。
「……悪かった。いつの間にかあいつらも頼もしくなってきてるんだな」
「お互いの指導が良いからかしらね」
「儂から見たら虐めてるようにしか見えんが」
「せっかくいい話で終わらせようとしたのに喧嘩を売るなんてとんだ命知らずね。今から昔みたいにバトルで軽く捻り潰してあげてもいいのよ?」
「おいおい冗談はよせ。軽く捻り潰された記憶など全く無い。お前の方こそギルド長の仕事ばかりでバトルの腕が鈍ってるんじゃないか?」
「死にたいようね」
「はいはい喧嘩は終わり。チーム"スノードロップ"の家を作ってる最中にどこ行ったかと思えば。君たちが喧嘩したらせっかく作ってる家が全壊どころか、この一帯更地になっちゃうから勘弁してくれ」
「あなたもローズちゃんとよく喧嘩してたくせによく言えるわね」
「お前もロズレイドとよく喧嘩してたくせによく言うわ」
「大変仲がよろしいようで」
一方その頃
*ムクバードside
「隊長どこですか〜?部下が一生懸命働いてるっていうのに隊長はまたこっそりサボって。これはまた罰が必要ですね。日が落ちて家作りが出来なくなったら就寝時間まで休憩無しの事務仕事とか…それもこれも日頃からサボって仕事を溜める隊長が悪いんですよ?もっと黒鷹隊隊長としての自覚を持ってもらわないと!」
○
*タマンタside
ウォンシ地方には不憫なポケモンが3種類います。
1、食べ物を強奪される者。
「あ〜私の愛しい愛しいヒメリパイがぁ…」
仕方の無い犠牲です。
2、気絶しても放置される者。
「……………………」
「「うんめ〜でやんす!こんなに美味いもの初めて食ったでやんす!」」
仕方の無い犠牲です。幸い命に別状は無さそうなので放置しておきます。
3、いつも不憫な扱いを受ける者。
きっと仕方のない犠牲です。依頼に集中しましょう。
「約束通りヒメリパイを1ピースずつ差し上げたので、神様と守護者様、大将さんについて教えていただきましょうか」
「「え〜これだけでやんすか。もっと食べたいでやんす…」」
マズいです。一度は成功した交渉が食欲に負けかけています。さすがは生物の三大欲求の一つ、手強いですね…
「そ、そんなに?今度また作ってあげるから今日は我慢して頂戴、ね?」
「「分かったでやんす!その代わりたくさん作ってきてほしいでやんす!」」
何て
おっと、横道に逸れてしまいましたね。フカマル達の気が変わる前に軌道修正しましょう。
「その時は神様達の分も作ってお邪魔しますね。ところで神様達ってどんなポケモンなんですか?私、気になります!」
「そうでやんした。ヒメリパイがあまりに美味すぎて忘れかけてたでやんす」
「おい」
グレイシアさんのヒメリパイ、恐ろしいパワー。比較的無口だったリーフィアさんも思わずツッコミを入れます。そんなツッコミを気にも止めず能天気なフカマル達は神様たちのことを教えてくれました。
「まずは神様についてでやんすね。神様はオイラ達が住んでるバクバク砂漠の奥地にある湖の祠にいるでやんす」
「こんな砂漠に湖があるんですね…本当に実在するならまさにオアシス、大発見ですよ!ケイちゃんの喜ぶ顔が浮かびます」
「そういえばエレキ平原にも湖があったね。普通だったら湖なんて存在し得ないバクバク砂漠にもあるってことは神様在るところに湖在りと見て良さそうか」
「その神様は意志を司る神様なんだっけ?」
「石でやんすか…?」
「石じゃなくて意志。まぁまだ小さいフカマル達には分からないか」
お世辞にも学があるとは言えないフカマル達に難しい単語は通じないようです。
「それもそうですね。守護者様と大将さんはどんなポケモンなんですか?」
「オイラ達の大将はすっっごく強いでやんす!どんな敵もバッタバッタと薙ぎ倒して本当にかっこいいでやんす!オイラ達も大将目指して修行中でやんす!」
フカマル達の目がヒメリパイを食べる時さながらキラキラしています。大将さんは相当強いのでしょうね。"どんな敵もバッタバッタと薙ぎ倒して"というフレーズが気になりますが…もしかしてバクバク砂漠の情報が無いのって全員大将さんに薙ぎ倒されてるからなんじゃ…?
「フカマル達の大将はすごいポケモンなのね。守護者様の方はどんなポケモンなの?」
「守護者様はとても落ち着いてるでやんす。パワーは間違いなく大将の方が強いのに、あの大将が不思議と負け越してるでやんす」
「うげ…神様の周りは化け物しかいないのか。まぁ守護者様の方は話せば分かってくれそうなだけまだマシか。大将の方は会ったらすぐ逃げよう」
「賛成」
「賛成です」
○
*ドンカラスside
「レントラーやチェリムクラスのポケモンがまた2匹…今回もそう簡単にはいかなさそうだな」
「今回は前回と同じ轍は踏みません。先程も言ったようにチーム"スノードロップ"が頑張った成果を横取りすれば安全に…」
「なぁドンカラス。俺、あれからずっと迷ってるんだ」
「何ですか、藪から棒に。まさかチーム"スノードロップ"に感化されて、あの化け物じみた守護者とまた戦おうって言うんじゃないですよね?」
「あぁ、その通りだ」
「馬鹿言わないでください。確かにアカギ様に育てられた私たちは強い。それこそ2対1とはいえ暴走する前の守護者を圧倒するほどには。しかしながら、上には上が存在する。先程も言いましたが、命を懸けてまで危険なバトルをする必要はありません。暴走したチェリムと戦うこと自体が無謀だったんです。どれだけズルくてもいい。利用できるものは利用し、アカギ様の野望を達成できさえすればそれでいい。今も尚この胸に溢れる悲しみといういらない感情を消すために」
「敵はアカギ様を負かした相手だ。当然アカギ様の野望を達成しようとしたら阻止しようとしてくるだろう。その時お前はどうする?」
「アカギ様の野望を達成できるならその時は死んでもいい。アカギ様のいない世界で生き続けても意味は無いのですから」
「俺も少し前まではそう思っていた。けどチーム"スノードロップ"がどれだけ絶望的でも、どれだけボロボロになっても必死に戦う姿を見てこのままじゃアカギ様に合わせる顔が無いって思ったんだ。…俺たちでさえトレーナーのいない世界に飛ばされたんだ。アカギ様が無事に生きている可能性が万に一つも無いのは承知の上で、それでも俺は信じて戦い続けたい。もう一度アカギ様のエースとして戦えるよう強く在りたい」
「いつも冷静沈着な貴方がやけに夢想的ですね…感情はポケモンに迷いを生み弱くする。勝負の際はいつも通り冷静で合理的な判断をお願いしますね。せめても、今は亡きアカギ様の野望を達成するために」
アカギ様の野望を阻止したポケモンに復讐するために。そのためならどんなに姑息な手を使ったって構わない。