ポケットモンスター待雪草   作:プシュケ

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p.33 砂漠の花

*リーフィアside

 

フカマル達がヒメリパイを美味しく食べ終えたところで私たちは神様がいるという湖の祠を目指していた。エレキ平原よろしく無限に広がる砂の風景。エレキ平原の時と違うのは無理やり天候を上書きすることによる視界の確保、ヒメリパイで買収しt…げふんげふん、友好的な案内ポケモン、

 

「今回は視界も面倒な話もクリアでトントン拍子ね」

 

「それもこれも全部タマンタのおかげだね」

 

「なーに言ってるんですかぁ。砂嵐を晴らしているのもガバイトさんを倒したのも全部リーフィアさんじゃないですか」

 

「タマンタのサポートあってこそだよ。師匠譲りの交渉術でフカマル達を手懐けて、アクアリングで私たちのサポートまで。タマンタがいなかったら今頃私たちはガバイト達には勝てても、うだる暑さにヘバってその辺で干からびていただろう」

 

そしてタマンタのサポートによるところが大きい。決して派手な活躍ではないが、間違いなくこの旅のMVPーー縁の下の力持ち的な存在ーーなのである。

 

「よくもまあそんなに美辞麗句をつらつらと並べられますね…あんまり簡単に異性を褒めない方がいいですよ?コロっと恋に落ちてしまうかもしれないのですから」

 

「おいおい心にも無いことをよしてくれ。からかわれるのはネオラントからだけでお腹一杯なんだ」

 

「からかってなんかいません。これでもリーフィアさんには好意を抱いてるんですよ?」

 

タマンタがあざとい上目遣いでこちらを見つめてくる。あれ、タマンタってこんなことを言うポケモンだったっけか?確かに色恋には目が無い。しかし、それは他のポケモンの色恋に関してだ。タマンタにここまで純粋な好意を抱かれるとは1ミリも考えていなかった。記憶の無い私はこの好意にどう返すのが正解なのだろう。

 

「なーんて、冗談ですよ、冗談。好意を抱いてるのは本当ですがLOVEではありません。LIKEです。少しはドキっとしてくれました?」

 

「……ん、あぁ。LIKEの方で安心したよ」

 

「その様子だと1ミリもドキっとしてなさそうですね…いくら冗談とはいえ乙女タマンタ、ショックです。師匠みたいに色気が無いのがいけないのでしょうか」

 

「まずはその趣味の悪い冗談をやめようか」

 

「趣味が悪っ…師匠に言いつけますからね!忘れないでくださいよ?」

 

「タマンタもまだまだだね。師匠(ネオラント)ならそれくらい軽く受け流すよ」

 

「ぐぬぬ…リーフィアさんも中々趣味が悪いじゃないですか…」

 

師匠(ネオラント)に鍛えられてるのはタマンタだけじゃないってことだよ。ところでグレイシア、顔赤いけどやっぱりこの暑さは厳しそうか?無理そうだったら帰って休んでてもいいから」

 

「ぜ、全然大丈夫よ?タマンタちゃんのアクアリングのおかげでこれくらい余裕なんだから」

 

「あれ、もしかして()いちゃってます?まぁリーフィアさんは(たら)すだけ誑してこちらに(なび)く様子なんて微塵もない朴念仁(ぼくねんじん)ですが。グレイシアさんも相当頑張らないと振り向いてくれませんよ?」

 

「私への風評被害がすごいな…」

 

「それは本当のことだけど、私にはお守りのポケモン(パートナー)がいるから間に合ってるわ。いくらリーフィアが女誑しの朴念仁だからってからかいの標的を私に変えないでちょうだい?」

 

「おい」

 

「本当に仲がいいでやんすね」

 

「これが仲良くみえるか?」

 

「とっっても仲良くみえるでやんす」

 

「参った。降参」

 

 

 

 

タマンタside

 

リーフィアさんが素直なフカマル達に両手を上げ、降参の意を示す。さすがのリーフィアさんも素直な子供には勝てなかったようです。

 

それにしてもお似合いの2匹だと思うんですけどね…これだけお膳立てしてもお互いに靡く気配ゼロです。グレイシアさんの方は多少照れているのですが、それでもやはりお守りのポケモンの存在が大きいのでしょうか。記憶が無くなっても忘れられない一途な恋、それもまた素敵です。

 

「おーいタマンタ、戻ってこーい。アクアリングのコントロールが(おろそ)かになってグレイシアがヘバってるぞー」

 

「もうダメ…」

 

「ああすみません。ついつい素敵な恋バナにトリップを」

 

「今の会話のどこに素敵な恋バナが…?」

 

「恋バナはさておき」

 

「タマンタが恋バナをさておいた?今日は砂嵐のち日照りか…」

 

「帰ったら師匠にたくさんからかってもらえるよう伝えておきますからね」

 

「悪いとは思ってる」

 

「反省はしてなさそうですね…」

 

「で、タマンタが恋バナをさておいてまで話そうとしたことは?」

 

「リーフィアさんも師匠に似て段々いじわるになってきましたね…話自体は大したことじゃないのですが、バクバク砂漠って意外と平和だなって思いまして。さっきから野生のポケモンと全然バトルにならないというか…師匠から聞いた情報が本当なら、もっと凶暴なポケモンが跋扈しているものとばかり」

 

「確かに。野生のヒポポタスやカバルドン、スコルピやドラピオンも見かけるのに全然勝負を仕掛けてこないわね」

 

「きっと仲間のフカマル達が案内してくれてるから、悪いポケモンじゃないって分かってくれてるんだよ」

 

実際のところは瀕死のガバイトを担いでフカマル達を従えている姿に警戒し、距離を取られているだけなのだがーーそれを指摘する者はこの場には誰もいなかった。

 

 

 

 

*リーフィアside

 

「さて、そろそろでやんすよ」

 

フカマルの声に目を凝らしてみると、遠くに薄ら見えてきたのは話に聞いていた恵みのオアシスーーではなくトゲの無い扁平サボテンの群生地であった。その光景にグレイシアとタマンタはがっくりと肩を落とす。

 

「あぁ、私のオアシスはどこに…」

 

「本当にあるんですか?こんな砂漠に湖なんて」

 

それもそうだ。バトルこそ少ないものの、過酷な環境を相当なエネルギーを使って歩いてきているのだから。かく言う私もドッと疲れを自覚する。目の前の景色があまりの高熱にジリジリと歪むような…

 

それ自体は何も不自然な現象では無いのに、違和感が足を止める。疲れからでは無い。この感覚をどこかで味わったことがあると本能が告げる。

 

そう、この感覚は

 

 

ーーあの桜と同じだ。

 

 

よく見るとサボテンには本日の雲一つない快晴よりも澄んだ青色の花が付いており、神聖な力が漏れ出ている。間違いない、この先にいる。

 

エムリットが言っていた、もう1匹の神様が。

 

そして、その前に神様を守護するフカマル達の大将(ガブリアス)が立ち憚る。

 

「待ちくたびれたぞ!本当ならこっちから向かってやりたいところだったが、俺様はこの地を守らないといけねぇ…全く、めんどくせー役割だよな。この砂漠の風景と同じくらい変わり映えのしない日常に退屈で死んじまいそうだった。そんな時に風の噂で聞いたのがお前らだ。あのレントラーを負かし、暴走したチェリムと互角に渡り合ったって言うじゃねえか。思ったよりも弱っちい見た目だが、そんなことはどうでもいい。俺様にもその強さを、極上なバトルを味わわせてくれ!」

 

そう言うとガブリアスは雄叫びを上げ、こちらに突っ込んでくる。

 

"ドラゴンダイブ"

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