ポケットモンスター待雪草   作:プシュケ

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p.34 灼熱の壁

*リーフィアside

 

"ドラゴンダイブ"

 

"リフレクター"

 

咄嗟の攻撃に斜めにリフレクターを展開し軌道を逸らすと、リフレクターにはヒビが入り、ガブリアスは後方の地面へ突っ込み大きな砂飛沫を上げる。しかし、砂漠は衝撃を吸収する自然の絨毯であり、ガブリアスが突っ込んだことによるダメージは皆無と言っていい。

 

寧ろ、砂という不安定な足場であれだけのスピードと威力を伴ったドラゴンダイブを繰り出せる強靭な脚力を際立たせている。

 

「リーフィアのリフレクターに一撃でヒビを入れた?」

 

「ひえぇ…あんなの直撃したら一溜まりもありませんね」

 

グレイシアとタマンタが感嘆の声を漏らしていると、ガブリアスが間髪入れず2回目のドラゴンダイブで突っ込んでくる。

 

「俺様のドラゴンダイブはそんな薄っぺらい壁で防げるほど、柔な攻撃じゃねぇ!」

 

"ドラゴンダイブ"

 

本来は攻撃を5回程度受けられるリフレクターだが、常識外れの威力に2回で割れてしまう。

 

「あぁ、そんなこと受けた私が一番分かってるさ」

 

"アイアンテール"

 

瞬時に尻尾を硬化させて薙ぎ払うことにより、再度ガブリアスの軌道を逸らす。直撃は免れたが、リフレクターで弱めたドラゴンダイブのダメージとは別のダメージを知覚する。

 

「ッ…特性"鮫肌"か」

 

そのきめ細かい鱗を伴った鮫肌は硬くザラザラとしており、ダメージは通りづらい上に触れればこちらの体力も削られる。まさに近距離戦のスペシャリストという訳だ。

 

回復役のタマンタは元より、タイプ相性が良いグレイシアも暑さにより本領が発揮できておらず、近距離戦自体それほど得意ではない。これは事前に話し合っていた通り、私が何とかするしかないみたいだ。

 

「ガブリアスは私が何とかするからグレイシアとタマンタは今のうちに神様の所へ!」

 

分かったわ(分かりました)!」

 

「さっきはめんどくせーと言ったが俺様は仮にも守護者だぞ?そう簡単に行かせると思うか?」

 

直後ガブリアスは飛翔し、日本晴れによって強化された高温の炎を吐く。

 

"炎の渦"

 

それは通常の炎の渦とはスケールが違った。ポケモンを拘束するための炎の渦では無い。逃さないための灼熱の壁だった。進路も退路は塞がれた。温度も上がる一方だ。こうなると本格的にグレイシアの戦闘参加はもちろん、アクアリングの維持すら難しいだろう。無論、草タイプの私も炎技は苦手であり、考えうる限り最悪の相手と言える。バトルが長引けば3匹とも干からびてしまうのが関の山だ。多少無茶をしてでも早期決着を付けなければ…

 

「その深刻な顔、また1匹で無茶しようとしてない?」

 

「間違いないですね。また治療の手間を増やされては困ります!」

 

"オーロラベール"

 

"アクアリング"

 

見ると、グレイシアは自身とタマンタの周りだけではあるがオーロラベールを展開しており、気温が下がっていることが分かる。レントラーとの戦闘でオーロラベールの精度が高いことは知っていたが、やはりそのレベルはどの守護者にも引けを取らない。味方で良かったと心底思う。

 

温度の上昇が緩和され、3匹分のアクアリングも展開され続ける。とはいっても距離が離れている私の周りは温度が下がっておらず、それでもアクアリングを維持し続けられるのは流石と言わざるを得ない。

 

「ふふっ、ガブリアスがあまりにも理不尽すぎるから忘れていたよ。私の仲間はこんなにも頼もしかったってことを」

 

「面白え…弱っちい見た目に反してどいつもこいつも滅茶苦茶じゃねぇか。特に洗練された守り、回復は守護者レベルと言っても遜色ねぇ。…でもよぉ、相手が悪かったな。この世界にパワーで俺様の右に出る奴はいねぇ。俺様の前にはどれだけ強固な守りも意味を為さねえってこと、教えてやるよ!!」

 

"剣の舞"

 

青く透明な剣が複数出現する。その剣に実体は無く、攻撃力を高めるための技だ。

 

"ドラゴンダイブ"

 

有り体に言ってしまえば、2回も見せている単純で直線的な攻撃。それなのに自信を持ってこの技を選択し続ける理由ーーそれは微塵も負けると思っていないから。

 

風が悲鳴を上げる。先ほどまでと違うのは"剣の舞"によって高められたその威力。ただでさえ並外れたパワーが1段階…いや、2段階上へと押し上げられている。

 

"リフレクター"

 

それでも私は同じ技を選択する。記憶は無いけれど、ネオラントが言っていたーー「普通のリーフィアなら覚えない。大切なポケモンを守るための素敵な技。きっと、その技を教えてくれたポケモンも素敵なポケモンなのね」と。

 

 

パリンっ

 

 

しかし、無常にもリフレクターは一撃で破壊される。それはまるで粉々に割れて2度と元に戻ることのない私の記憶を暗示するかのように。

 

ドラゴンダイブの威力は殺せたが、ここからどうする?瞬発力に優れたアイアンテールは大してダメージが入らないどころか、鮫肌で返ってくる。ソーラーブレードはーーただでさえパワーの高いガブリアスが剣の舞で更に攻撃力を上げた。そこに真正面から迎え撃つのは自殺行為でしかない。

 

こうなることが分かっていながら尚、私はリフレクターを選択した。一撃凌げればそれでいい。私には頼れる仲間がいるのだから。

 

「グレイシア、頼んだ!」

 

「任せて!」

 

"アイスエッジ"

 

簡潔な言葉ーーそれだけで充分だった。私が作り出した隙にグレイシアが地面から氷塊を出現させる。いくら本領が発揮できていないとはいえ、ガブリアスに氷技は効果抜群。当たれば致命傷になり得る。

 

当たればの話だ。間一髪のところでガブリアスが後退していく。

 

「おっと危ねえ…良い連携だ。だが遅え。近距離戦は遠距離戦に比べて目まぐるしく戦況が移り変わる。1つの判断ミスが命取りになる世界。攻撃、防御も大事だが、そもそも攻撃に当たらない反応スピードも同じくらい大事と言える」

 

「そう簡単にはいかないか。せめてあのパワーさえ何とかなれば…」

 

この中でガブリアスのパワー、スピードの両方に対応できるのは私だけだろう。しかし、接近戦を仕掛けて大きな隙を作ろうにもリスクが大きすぎる。リフレクターで凌げはするものの、決め手に欠ける。何か良い手は無いものか…

 

「あのパワーを何とかすればいいんですね?」

 

突破口の見えないバトルに悩んでいると思わぬところ(タマンタ)から声が掛けられる。

 

「できるのか?」

 

「ええ。伊達に師匠の弟子をやってる訳じゃないんですよ」

 

"黒い霧"

 

苦労の色が滲む声と共に視界が黒に埋め尽くされる。時間にして数秒すると、黒い霧と共に青く透明な剣が消失する。即ち、元の攻撃力に戻ったということだ。

 

「私にできるのはこれくらいですが、治療の手間は減らせそうですか?」

 

「充分」

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