ポケットモンスター待雪草   作:プシュケ

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p.40 神様

*タマンタside

 

「リーフィアさん!リーフィアさん!起きてください!…私1人残されても神様相手に太刀打ちなんてできないですよ!」

 

私は泣きそうな声を必死に絞り出して叫び続けます。守護者ガブリアスを倒したというのに神様との連戦なんて聞いてません。嗚呼ーー今度こそ私たちの旅はここで終わってしまうのでしょうか、神様。って目の前にいるのが当の神様では…?こんな時は誰に願えばいいのでしょうか。

 

「安心して。隣の神様(アグノム)がサボテンに蓄積された成分を使って幻覚を見せているだけだから。

 

…にしても派手にやったね」

 

目の前に現れて頭が痛そうにこめかみを押さえてるのは見覚えのある神様ーーエムリットだった。

 

「それなら安心…できる訳ないですよね??何ですかその怪しい成分」

 

「そっちは大丈夫。神様の力でちょちょいと増幅させてるだけだから。それよりどんだけ無茶してるのよグレイシアもリーフィアも」

 

「本当ですよ全くもう」

 

「あなたもね。回復役が体張ってどうすんのよ。今回は私が回復してあげるから無茶はこれっきりにしてね」

 

"癒しの願い"

 

エムリット様が目を閉じ、両手を合わせると私たちの体を眩い光が包んでいきます。常識では考えられないほどの再生速度で傷が治っていくーー私のアクアリングとは比べ物にならない。治療をしてもらっているだけなのに、神様の力がいかに強大か思い知らされる。

 

「はぁ…はぁ…さすがに4匹にこの技を使うのはきついね…」

 

「こう言っちゃなんですけど、ガブリアスさんも相当なダメージを負ってましたもんね」

 

「は?元凶(あんなやつ)に使う訳ないでしょう?あんなやつ放っかっといてもそのうちまたバトルしようぜとか言い出すわよ」

 

「…え?じゃあ4匹目は誰に…?」

 

「…誰だっていいでしょ」

 

他に回復すべきポケモンなんていたでしょうか…?

 

…あぁ

 

リーフィアさんに切り捨てられたガバイトさんがいましたね。

 

 

 

 

*リーフィアside

 

「単刀直入に言うよ。助けてほしいポケモンが1匹いる」

 

「…意図が分からないな。私が見捨てるほど悪いポケモンに見えるか?」

 

「そのポケモンが記憶を奪ったポケモンだとしても?」

 

まるで意味が分からない。記憶喪失になったポケモンにその元凶を助けてほしいと…?

 

「まずは事情を説明してほしいな。敵ではないと言うなら」

 

「それはできない」

 

「なぜ」

 

「最初に言っただろう?意志の試練はまだ終わってないって」

 

「この選択も試練の1つと…それなら私は助けるよ」

 

「悪いポケモンかもしれないのに?」

 

「助けてから事情を聞く。神様が助けてほしいというポケモンなんだ。何かやむを得ない理由があったんだろう」

 

「ッハハ、変わってないなリーフィアは。記憶を失ったっていうのに全く動じてないのがリーフィアらしいや 。いいよ、意志の試練合格。君なら本当の意味で彼女を救い出せる」

 

「それってどういう」

 

意志の試練の間に入った時と同じように視界が霞んでいく。

 

「真相は己の手で辿り着いてこそ意味がある。じゃあ、また後でね」

 

 

 

 

*リーフィアside

 

…体が重…くない?

 

意志の試練が終わって現実に戻ってきたはずだというのにダメージが綺麗さっぱり消えている。

 

…若干の目眩はあるが。

 

「おはよう、タマンタ。この回復はタマンタが?」

 

「おはようございます。

 

…私、と言いたいところですが違います」

 

悔しさ滲むタマンタの視線の先にはここにいるはずのない神様。

 

「回復したのは私。全く、私がいなかったら皆どうしてたのよ。揃いも揃って後先考えずに」

 

「まぁまぁ。ボクは素晴らしいバトルだったと思うよ。うちの守護者が2匹とものされちゃうなんて想定外。体力が残ってればボクとも戦ってほしかったなぁ」

 

「神様ずりーぞ。まだ俺様は勝ててねーんだリベンジさせろ」

 

グレイシアとタマンタが首がもげるくらい横に振っている。

 

「はいはいそこまで。脳筋戦闘狂(バトルジャンキー)どもはすっこんでてねー」

 

もう1柱の神様とガブリアスにエムリットから天誅が下される。その様子を私たちはポカンと見ているしかない。

 

「あー、自己紹介が遅れたね…ボクはアグノム。意志を司る神様をやらせてもらってるよ」

 

タンコブを作りながら自己紹介する神様…何て威厳がないのだろうか。

 

「まずはバトルお疲れ様。皆喉乾いたでしょ。期待以上のバトルを魅せてくれた皆には特別にバクバク砂漠のオアシスに招待するよ」

 

「…?オアシスなんてどこにもないじゃない」

 

グレイシアの言う通り、四方に広がっているのは砂、砂、砂。水一滴すら存在する気配は無い。

 

「バトルし放題のオアシスか?」

 

「「「「んな訳あるか!」」」」

 

アグノムが案内する方へ着いていくと景色は同じだが結界らしきものが現れる。くぐった先には

 

広大な砂漠の中に神秘的な湖と目に鮮やかな真緑の扁平サボテンーー確かなオアシスがあった。湖の真ん中には神聖な雰囲気漂う祠が立っている。

 

「わ〜〜天国ってあったんですね!体カラッカラだったんですよ〜」

 

「本当素敵な場所ね!生き返る〜!」

 

うだる暑さに限界寸前だったタマンタとグレイシアに元気が戻る。

 

「いいところだろ?意志の試練を乗り越えた者達だけに与えられるご褒美だ」

 

「乗り越えられなかったら?」

 

「計画性なく突っ込んだのが悪いよね」

 

この神様サラッと恐ろしいこと言うよな。

 

「…計画性といえば何でガブ君は果たし状なんて送ったのよ!」

 

「…?果たし状を送る目的なんて1つしかないだろ。強いやつと戦いてえからだよ。何か悪いのか?」

 

「悪いよ!怪我人続出じゃない!大体アグ君もアグ君よ。そこは直属の上司として止めなさいよ!」

 

「…?実際楽しかったしいいじゃん」

 

「……はぁ。脳筋戦闘狂(バトルジャンキー)どもの思考はまるで理解できないわ」

 

「まぁまぁ。そんなにプリプリしてたら可愛い顔が台無しだよ」

 

アグノムのタンコブが(エムリットにグレイシアの幻影が)ダブルになった(重なって見えた)

 

 

 

 

*リーフィアside

 

「さて、せっかくここまで来た訳だし、この格式高い神様のボクに何か質問はあるかな?」

 

「「「「………………」」」」

 

「遠慮しなくてもいいんだよ?」

 

「…じゃあ私から遠慮なく行かせていただきます。アグノム様も『恐ろしい神話』に登場する神様の1柱なのでしょうか?」

 

「そうだよ」

 

「そのことなんだけど、ずっと考えていたんだ。巻物には明らかに3つのスペースがあった。エムリットは他に1柱の神様がいると言ってたけど、本当は3柱目の神様がいるんじゃないかって。その神様がアグノムが言ってた記憶を司る神様なんだろ?」

 

「なんだ、もうそこまで辿り着いてるんだ。正確には知識を司る神様だけどね。さすが知…」

 

「アグ君喋りすぎ」

 

「隠し事が下手なエムリットに言われたくはないな」

 

「怪現象の元凶はその神様なの?」

 

「……そうだね」

 

「悪い神様なんですか?」

 

「世の中には忘れていた方がいい記憶もある」

 

「リーフィアと私の記憶も?」

 

「…………」

 

重く冷たい空気が流れる。

 

「ほら、こうなるでしょ?ユクシーはひどく心を痛めて閉じこもってる。まだ気持ちを整理する時間が必要なの」

 

「いずれは解決しないといけないことだ。まだ不穏分子が残っている以上、そう先延ばしにもできない」

 

「だからって…」

 

「でも1から100まで教えて解決するとは思ってない。怪現象について教えられるのもここまでだ。リーフィア、グレイシア、改めてお願いしよう。知識の神、ユクシーを救い出してくれ」

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