「では、部員の各担当楽器を発表します。」
1年生の楽器体験も終わり、楽器発表に移った。
知名度が低いユーフォニアムやあまり人気のないチューバも第1希望者がいたようで安心する。
それとは逆に思ったより希望者が少なかったトロンボーンは日菜が
「やってみようよ、トロンボーン! 絶対楽しいって! 君達、身長高いし!」
と、彷徨っていた2人を引っ張って吹かせていた。
第1希望者も1人いたようだ。
クラリネットも、リサがおどおどしていた子を連れ込んで吹かせていた。
これも第1希望者はいたようだ。
すんなりと楽器が決まって安心する。
「まず、クラリネット。
牛込さん、羽沢さん。」
しゃあ! と、リサがガッツポーズをする。
「オーボエ、美竹さん。
テナーサックス、青葉さん。」
結局あののんびりした子はテナーサックスになったのか。
まあ、妥当だろう。
「ホルン、市ヶ谷さん。
ユーフォニアム、上原さん。
チューバ、奥沢さん。」
彩がほっと息をつく。
金管楽器が増えてよかった。
「トランペット、北沢さん、弦巻さん、戸山さん。」
あの騒がしい2人+猫みたいな髪の子だ。
…大丈夫なのだろうか。
「トロンボーン、花園さん、山吹さん、若宮さん。」
比較的みんな背が高い。
これも妥当と言えるだろう。
「パーカッション、宇田川さん、宇田川…あこさん。」
名字が一緒ということは、姉妹だろうか。
そう言われれば似てる様な気がしないでもない。
「今日はこのまま帰ってもらっても構いませんが、練習したい部員は残ってもいいです。
あとは…。」
そこまで言った時だった。
バーン! という大きな音と共に音楽室の扉が開け放たれた。
部員全員が静止する。
「へぇ…結構広いじゃん。」
現れたのは茶色い髪を高い位置でポニーテールにした女性だった。
「えっと…どなたですか。」
「杉原 さくや。吹奏楽部の顧問だ。」
この人が今年の顧問か。
去年の顧問よりは厳しそうだ。
「あんたが部長さん?」
「はい。そうですけど。」
「ふぅ〜ん。」
すると、杉原は興味無さそうな顔で友希那に近づいてきた。
そして、舞台上の友希那の隣に立つと、振り返って部員の方を見る。
「どうも、今年の吹奏楽部の顧問になった音楽教師、杉原です。
早速、貴女達に話があります。」
そう言うと、彼女は真剣な表情で続けた。
「アタシは、顧問になったのなら、良いとこまで行きたいと思ってます。
去年の花羽はA部門地区大会銅賞で評価はオールCだったみたいだけど、アタシは納得いってません。
やるなら本気でやりなさい。」
…。
「それを踏まえて、貴女達に聞きます。
今年も銅賞取りたいですか。
取りたい人、挙手。」
誰も手を挙げなかった。
杉原はニヤリとして言った。
「じゃあ、今年の目標は小編成部門で関東大会金賞です。
知らない子も居ると思うけど、花羽は部員数が規定に足りてないので小編成部門での出場となります。
全国には行けないけど、やる気があれば、全国レベルの実力にはなれると思います。
まだ貴女達の実力は知らないけれど、部長はしっかりしてそうなので、部長について行きなさい。」
暫しの沈黙の後、まばらに返事が上がった。
「声が小さい!」
「はい!」
この顧問となら、やっていけるかもしれない。
友希那は隣に居る杉原の顔を見て思った。