「甘楽と黄泉は付き合ったりしないのですか?」
朝の生徒会室にて、朝礼前の簡単なミーティングをしていた俺達に、生徒会長、
「毎度その質問飽きませんねぇ……」
さすがに呆れる俺、
「会長は私達がお付き合いしていない事を知ってるはずですよね?」
俺の隣で尋ねるのは
「もちろん分かっていますよ? ゆかりさん、その辺のところはしっかり弁えてるつもりです。ええ、それはもうっ、お二人がジュースの回し飲みを平気でしていても、お互いのスマホの暗証番号を当然のように知っていても、お互いのお弁当作って交換していたりとかしていても……、今も二人で資料を覗き込んで肩や腕どころか頭がくっついていたとしても……っ! 二人は付き合っていないのだと分かっています! ええ分かっていますよっ!」
「落ち着こうゆかりん。そんなことを言ってもこの二人はきょとん顔するだけだよ」
会長が何故か拳を作る中、黄泉先輩の対面に座る副会長、
「ええ分かってますっ! 分かってはいるんですっ! もはやこの二人にはこれ以上言っても意味がないと言う事をっ! ですから聞いているのですよ! 『付き合わないのか?』っと!」
「俺、彼女いますから」
「甘楽くんには彼女がいますので」
俺と先輩が口を揃えて言うと、なぜか会長は白けた様なうんざりしたような表情になって視線を逸らす。
「ここまで説得力の無い確実な証拠はなかなか聞けませんね。常人であれば浮気を疑われますよ?」
「ええっと……、荻内くん? 恋人ちゃんは二人の事―――?」
「もちろん知ってます」
マキ先輩に頷き返すと「そっかーー……」っと何とも表現しずらい声を力なく零していた。
「恋人ちゃんに何か言われたりしないの?」
「ええっと『お姉さんだからいいよ』って言ってました」
「ヨミヨミ恋人ちゃんにも好かれてるのかぁ……、これはむしろヨミヨミがすごくモテるという事な気がしてきた」
「あ、それは俺も同感ですっ!」
俺がマキ先輩に同意すると、こつん、っと、くっ付いていた先輩の頭が軽く打ち付けられた。
「お二人にしか好かれていない私より、何人にも告白されている甘楽くんの方が『モテている』と言えるのでは?」
「いやいや、俺はもうフリーじゃないですし? それに告白している相手って……ですよ?」
会長達がいるのでぼかして伝える。
主に妖刀蔵の狂いかけの女の子とか、屍の主人を求める腐女子とか、魅了効果暴走中の幼女淫魔とか、あとは周囲の迷惑も考えてくれない自称魔術師とか……。うん、さすが俺だ。ラインナップが常人じゃねえ。
いや、恋人が俺の命を狙う殺人姫の時点で常人じゃねえな……。
「甘楽くんはああいう人達にとっては理想の存在ですからね。普通はいませんよ? ……してきた相手を拒絶しないなんて?」
先輩もぼかしたけど、俺、好意もたれた相手に高確率で命狙われてるんだよね? 俺にとっては日常だけど、
「まぁ~~ったこれですよっ!? 二人でしか分からない会話で二人の世界っ! もうナチュラル過ぎて嫉妬も湧きません! ただ、ゆかりさんが独り身なのだと言う事が何故か猛烈に悲しくなってきましたよっ!?」
「落ち着こうゆかりん。高校三年生で独り身はまだ遅くない」
「マキしゃ~ん……っ!」
なぜか会長がマキ先輩に縋りついている。何か悲しい事でもあったんだろうか?
「でも、二人は本当に自然とイチャ付くよね? 結構最初からそんな感じじゃなかった? なんで?」
「なん、ででしょう……?」
初めて目が合った時から、先輩にはなんだか他人の様な気がしないというか、不思議と空気があった。
何となく、先輩を見つめていると次の行動が予想できる。その予想先が、自分の考え方と似ている気がしたのだ。
だからきっと、言葉にするとこう言う事なのだろう。
「相性が良かったんですよ。きっと」
「そうですね。きっとそうでしょう」
お互いに視線を向ける。
黄泉先輩の無機質な瞳に、俺の瞳が映り込む。
先輩の瞳が映る俺の瞳が映った先輩の瞳を覗き込む。先輩も同じように自分の瞳が映る俺の瞳を覗き込む。
なんだか可笑しい。そして安心する。互いの距離に隔てるものを感じない安心感がある。どこまでだって触れ合う事を許せるし、どんな事だって許容できてしまえる。先輩も同じ気持ちで、それが解ってしまえる。これほど相性がいい相手なんていないだろう。
「また見つめ合って通じ合ってるんですか? ゆかりさんそろそろ砂糖吐きそうなんですけど?」
「ここまでくるとどこまで許し合えるのかとか試したくなるよね? ポッキーゲームとかやらせてみたい」
マキ先輩そんなこと言ってきたが、既にそのゲームは経験している。
「あれって特に難しくないですよ? 最後まで食べきれましたし」
「え?」
「最後までって……? それって、したってことですか?」
「キスですか? はい」
先輩の無機質な回答に二人が同時に天を仰いだ。
うん、まあ、俺もそのくらいの常識はあるので分からなくもないんだが……。
「なんか先輩相手なら出来ちゃうんですよね? ま、いっか―――って感じで」
「私も甘楽くんが相手なら不快感はありません」
「むしろ付き合ってない方が不健全では?」
マキ先輩の切れの無いツッコミに続き、ゆかりさん会長が更に質問を続ける。
「黄泉、甘楽にお尻を撫でられました。許せますか?」
「はい」
「甘楽におっぱい揉まれました。許せますか?」
「はい」
「子供ができてしまいました。許せますか?」
「私個人の感情でお答えするのなら、はい」
「甘楽の彼女さんが触るなと怒ったら?」
「結芽さん、がですか? ……想像できませんが、お断りします。恋人でなくとも大切な人ですから」
「甘楽に結婚を申し込まれたら……?」
「結婚します」
「わ、別れると言われたら……?」
「分かれましょう」
「都合のいい彼女になれと言われたらっ!?」
「御随意に」
「アナタ達の境界線はどこにあるんですか~~~っ!?」
会長が壊れてしまった。またマキ先輩に抱き着いて泣いてる。
はは、でも仕方がない。先輩の答えは、概ね俺の答えと同じなので周囲からは呆れられてしまうだろうな。
でも、仕方いのだ。だってつまりそう言う事だからだ。
「会長、恐らくですが、私達の間には―――」
先輩の発言に合わせ、俺も声を揃える。
「「許容に対する境界線が存在しないんだと思います」」
「仲良しですねッ!?」
主人公は荻内甘楽でメインは比良坂夜見と結芽。サブキャラで本町警部と言う方が登場し、人食いや狂人が起こす事件を解決していくという話なんですが、現代モノでバトル系書こうとすると、色々現代ルールが邪魔で苦戦する事になりました。
結局書かなかったけど、この三人のキャラは好きなので、別の機会に絶対出してやろうと画策しています。