絶望鬼ごっこパロディ(アーカイブ) 作:絶望鬼ごっこパロディアーカイブ
ミスト
【1】
帰りは行きよりも早かった。
三日月・オーガスは『鬼』から逃走するために、もと来た道を戻ることを選んだ。それが一番シンプルな答えだからだ。ミカは基本的に単純な解決策を好む。それは自分の判断力が高くはないという自己分析と、信頼できるやり方を重視するという考え方からくるものだ。そしてもう一つ、理由がある。自分が出てきた鬼の牢獄に『子』を連れて行くのはこの鬼ごっこにおける正解だからだ。
かばんはともかく怪我人の佐山流美の足取りは決して早いものではなかったが、襲われた恐怖かミカへの恐怖か、足を止めることはなかった。三人が知ることはなかったが時間にすれば一時半ほどには神塚山の山腹に到着する。無言で歩き続けるミカに引っ張られた少女達は、少しして洞窟を見つけた。
「あ、あの!」
「……なに?」
かばんちゃんの声に、ようやくミカは足を止めた。戻ってきたはいいものの自分からあのショッピングモールに案内するのは怪しいと思い直し、そのまま通り過ぎてしまおうと思ったのだが、幸か不幸か入り口が見つかったようだ。
「ミカヅキさん、洞窟がそこに……少し休んでいきませんか?」
「わかった。」
既に流美の方は疲労困憊という有様だった。ここに来て拒否するのも不自然と思い一泊置いて賛意を示す。
こうして三人はこのゲームの肝となる場所に足を踏み入れた。
【2】
「なあU、アイツは一体何してるんだ?」
「あれは漢字ドリルですよ。」
「漢字ドリル?それってあの?」
「はい。落ち着きたいときはああやってドリルとかやるんです。」
「お前たちは映画見に来たんじゃなかったのか?」
「こういう時のためにいつも持ち歩いてる、とか言ってました。」
「……たまげたなぁ。」
精神統一のために一心不乱にドリルをやっている宮原葵とそれを眺める桜井悠、阿部高和の二人。彼らは打ち合わせ通り五階で合流し一階に移動したところであった。
夜神月と吉良吉影、二人のキラの口車により阿部さんが子供達を迎えに行くことになり、警戒はしたものの特になんの異常もなく行って帰ってこれて今に至る。軽く情報交換をしたところ、特に二人の知るショッピングモールと変わりがないようだ。阿部さんからすればやけに慎重に動いたがなんてことはない、今のところ単に無人のショッピングモールにいるだけ、とでも言えてしまいそうなほどなんにもなかった。
館内の時計を見る。既に一時を軽く回っていた。本当に鬼ごっこなどあるのだろうか?
「だんだん手のこんだドッキリに思えてきたな。前回もこんなふうだったのか、U?」
「ぜんぜん。最初は一体だった鬼がどんどん増えていって、最後の方は鬼のほうが多いぐらいでした。」
「となるとこいつはまだ始まったばかりってことなのか。何日もかかるのは考えもんだ、急ぎの仕事はないがな。」
「整備工、でしたっけ?」
振り向くと、月と吉良がいた。彼らは合流後このショッピングモールは安全性が高いと判断し、二人だけで地下を捜索していた。主に気分が優れない吉良のために医薬品などを見に行ったというが。
「ああ。そういうアンタは、サラリーマンだっけ。その戦利品もスーパー勤めの知恵かい?」
「私が万引きをするような男に見られていたとは……心外ですね。」
「冗談だよ、そんな顔してると男前が台無しだぜ? てことは――」
「ええ、僕です。」
ドン、とテーブルに置かれた食料品を満載した買い物カゴ。それを持ってきたLこと月は「気になることがあります」と続けた。
「O、U、二人に聞きたいんだけれど、このお惣菜に見覚えはあるかい?」
「そのシールはここの地下で売られてるお惣菜に貼られてるものと一緒です。」
「こっちの値引きシールもそうですね。」
「うん、なるほど。そこまではいい。では……このお惣菜、その値札の部分を見てほしい。何か気づいたことはないかな。」
「うーん……特に変わったところはないですよ。」
「……すみません、もう少し時間をください。」
「いや、大丈夫だ。多分君たちにとってこれはなんら異常の無いものだからね。」
紙袋に開けられた小さな穴の奥で、月の目が瞬いた。
「おそらく僕達は、別々の時間から連れてこられている。」
「まさか二人も二十一世紀の人間だとはな……」
「僕がゼロ年代後半で、二人が10年代中盤か。」
「平成ってなんだよ、昭和は俺だけか……」
月により食料と共にもたらされた仮設はすぐさま検証が行われ、秒でそれぞれの時代がてんでバラバラであることが確認された。当たり前すぎてわざわざ今が何年の何月かなどと聞きもしなかったが、聞けば一発であった。明らかにそれぞれの話に齟齬がある。なんなら時代どころか歴史が違うレベルで話が噛み合わない。
「桜ヶ島知らないんですか?」
「桜島ではないんだろう? 聞いたことないな。さくらテレビは?」
「それはどこのローカル局ですか? しかし誰も岸辺露伴を知らないとは。いや、私も詳しいわけではないんですが、週刊少年ジャンプで連載を持っている売れっ子漫画家らしい。」
「からっきしだな。俺はこの中じゃ一番時代が古いし、全部さっぱりだ。そういえばジャンプ作ってる集英社はあるのか?」
「集英社はあります。」
「集英社はありますよ。」
「集英社はあるでしょう。」
「集英社はあるんじゃないんですか。」
「集英社はあるのか……」
ひとしきりの会話でおそらくそれぞれが並行世界の人間であり時間も空間も違うところから集められたという仮設が強まっていく。問題は、それが真実であるかわからないということと、なぜそんな人間を集めて鬼ごっこをやろうというのかということだ。タイムスリップなどができるなら洗脳ぐらいできそうなので現状自分たちが何をされたかわからないということしかわからない。いくつかそれらしい理由を考えつくも妄想の域を出ず、手詰まり。そんな時だった。
「あの! た、助けて下さい!」
新たな世界からの参加者のエントリーだ。
【3】
「目が完全に抉れてる、とてもじゃないがここにある医薬品じゃ処置できない」「ど、どうなってるんですか? 目、目が、とても、どうなって」「ヒトですか?」「ジャパリパーク? フレンズ? また別の世界か?」「見えなくて、あの痛くはなくて」「公衆電話は使えなかった。期待はしてなかったが、クソっ!」「やっぱりこれってあの鬼ごっこだったんだ……」「どんな鬼に襲われたか、それが――」
(うるさいなあ。)
合計八人、新たな人間が加わることで人口密度が増えたショッピングモールの一階は、にわかに騒がしくなっていた。
明白に顔面を負傷し『鬼』に襲われたと言う少女。それを連れてきた指先の黒い少女と頸部に突起を持つ少年。この場に現れた三つの『異物』を五人には衝撃をもって受け入れる。
ここまでの彼らは、異常事態に直面しつつもパニックにはそうそう陥らなかった。それは互いに出会った人間が自分たちの周りにいてもおかしくない人間であったからだ。
どこにでもいそうな男女の小学生。なんの変哲もない。
ブルーカラーの男。素肌の上からつなぎを着ていることは奇異だが、話す限りは愛想の良い快男児。
ホワイトカラーの男。悪趣味なスーツを着ているが、立ち振る舞いは腰の低い紳士。
紙袋の男。最も奇怪であり他の人間の不審さを忘れさせるほどだが、ここまで初対面で属性もバラバラな集まりの会話を引っ張ってきた警察官。
いずれも、それぞれの奇妙な人生において出会うかもしれないタイプの人間であった。最も怪しいLですら現実味のないものではなかった。
だが、ここに来て新たに出会った三人は、その奇怪さの度が超えていた。
もっとも、この状況にほくそ笑む人間もいたのだが。
(三日月・オーガス、彼も『鬼』の一人だ。)
紙袋の下で月はこのチャンスを活かす策を練り実行に移す機会を探っていた。
他の人間にそうしたのと同様に実名を明かさないように求めたため名前を知らないが、流美に応急手当をしながら彼はデスノートを試す絶好の人柱をどう動かそうかと考えていた。かねてからの問題であったデスノートの真贋の確認、それを行う適当な人材が見つかったからだ。彼がこの場で名前を知るのは、桜井悠と吉良吉影の二人。この二人で試すことも可能ではあるが、閉鎖的な人間関係の場所での殺人にデスノートは極めて向いていない。言い変えるのならば、クローズドサークルでのトリックに使い難い。しかるにできれば外部の人間、すなわち他の『鬼』を対象にしたいところだが、そこで一つの問題がある。果たして『鬼』にデスノートが効くのか、そしてそれをどう確認するのか、ということだ。デスノートは人間でなければ使えないが、『鬼』というのは名前だけならば人外だろう。他の『鬼』たちは外見からしてそうだ。それに効果を確認する手段もない。これらの問題からデスノートを試用するのを先送りにしていたのだ。
しかし、それも終わりだ。この場に来た三日月・オーガス、彼は一見して人間に見え、名乗ってもいない。かばんを背負った少女、すなわちかばんちゃん達には名乗っている可能性もあるが、それはむしろ好都合。自分がデスノートを持っているという疑いを減らしてくれる――自分が無意識のうちにデスノートを軸に物事を考えていることに月は無自覚だった。
「これじゃどうにも……病院に運ぶ必要があります。それと最低限の手当てだけでもしないと。下のドラックストアに医薬品がありました、どなたか医薬品の知識がある方はいませんか?」
いるはずないだろうが、とは言わず月は一同に聞く。案の定いないため「僕が探してきます。どなたか一緒についてきて下さい」と言い残して駆け出す。名前を書くためには一度人目を避ける必要があるが、リーダーのポジションにいる自分はそう簡単には抜けられない、なら自分にしかできない要件を見つければいい。
「私が行きます。一度行ってますから。」
(『鬼』が二人地下に……余計なことを。)
(この男に一人で動かれるのは何かマズイ。監視しておくか。)
吉良がついてくることは望ましくないが、妥協する。この場で単独行動することは怪しまれかねないので人を誘った以上、これも覚悟の上だ。
足早にドラックストアへと男二人で走り、テキパキと吉良に棚に並ぶ医薬品を手に取らせていく。その間に月は従業員用の扉を開け身を滑り込ませた。既に頭の中で書き込む文面は考えていた、十五秒あれば書き終わる。
「Lさん、どうしました?」
「在庫の棚を調べます。まだ持てますか?」
『三日月・オーガス、しゃっくりが止まらなくなり23:55に死ぬ』
「ええ――おおっと!」
「――生理食塩水の箱がありました。戻りましょう。」
(なんとか間に合ったな。)
吉良が扉を開けて後に続いた頃には、月は棚から段ボール箱を取り出し今まさに出ようというところであった。正面衝突するような形になった二人は回れ右してもと来た道を戻る。その道すがら、月は満足げに微笑んでいた。
このデスノートの使用により、その効力の確認と同時に、『鬼』を一人制限時間の終了直前まで生存させることができた。これは擬似的なデスノートによる延命策である。別世界のL――本物の、竜崎の方――が、月に対して行った必死の策、それを他人に向けて施したのだ。これによって三日月・オーガスはその時間まで決して死ぬことはなく、それは間接的に『鬼』全体の勝利への大きな布石となる。一石二鳥にも三鳥にもなる一手であった。
「大変です! 容態が急に!」
「わかった、すぐに手当――は?」
「な、これは!?」
そして戻ってきた彼が見たのは。
「ミカヅキさんが急に倒れたんです!」
心臓を抑えてこと切れていた三日月・オーガスの姿であった。
【4】
「たぶん、二キロぐらい、で、格好は……」
「なるほど、しっかし子供の外見の『鬼』か。油断できないな――かばんだっけ? そこ抑えてくれ。」
「はい。」
意識を保つために流美へと話しかけながら看ている阿部さんの声を聞きながら、ミカは油断なく周囲に気を配っていた。彼は追跡してくる『鬼』に備えるということで一人入り口の前で警戒に当たっている。ときおりその体が微かに揺れる。どうも先からしゃっくりが出始めた。
(次は何をすればいい。)
一度戻ってきたが、彼はこれからの方針を決めあぐねていた。別段殺さなくてもいいらしいが、『子』をここまで誘導するのはなかなかに骨だ。それにせっかく集めた『子』をどう留めておくかも考えなくてはならない。はっきり言えば殺してしまった方が楽なのだが……
「?」
普段使わない頭を回していると胸に痛みを感じた。ギリギリと、思わず手で抑えるほどの。しかも止まらない。立っていられない。バルバトスに乗ったときのものより数倍の痛み、その痛みは心臓を早鐘のように動かして――いなかった。
「止まっ……てる……」
心臓が動いていない。そう理解したときには、デスノートに名前を書かれて40秒が経っていた。
デスノートには、実現不可能なことを書かれた場合それを無視するというルールがある。今回無視されたのは『23:55に死ぬ』という部分だ。たとえば、航空機の不調で一時間後に確実に死ぬ人間がいたとして、その人物の名前を二時間後に死ぬという言葉と共に書いたらどうなるか? 答えは単純、時間指定が無視される――つまり書かれてから40秒で死ぬ。
今回も同じだ。確実にその時間までに死ぬ、DEAD ENDフラグの立っている人間に対して、その寿命を超える時間を指定してデスノートを使用したのなら……
(まさか……この鬼ごっこは、『絶対に制限時間より早く終わる』のか!? いやそれよりまずは――)
「全員動かないで下さいっ!」
にわかに混乱した場に月の言葉が響いた。
【F-05/01時49分】
【かばん@けものフレンズ】
[役]:子
[状態]:怯え
[装備]:かばん、帽子
[道具]:未確認(背負っているかばんの中)
[思考・行動]
基本方針:誰かいないか探す。ここが何なのか調べる。
1:!?
2:鬼から逃げる。そしてサヤマルミさんを助ける。
※その他
[ルールの把握度]
自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。
現状を理解していないが、知ろうとはしている。
『おにごっこ』についてざっくり把握しました。
自分たちがバラバラの世界から集められた可能性に気づきました。
【佐山流美@ミスミソウ】
[役]:子
[状態]:右目と前歯喪失、失血(小)、顔に傷、恐怖、半狂乱
[装備]:『水晶』、包丁(服の下に隠している)
[道具]:
[思考・行動]
基本方針:殺される前に殺してやる。(目につく全員を殺すってわけではない)
1:!?
2:鬼から逃げる。こいつらに自分を守らせる。
3:「たえちゃん」を殺す。鬼は殺す。殺せそうな場合に限るが。
4:自分がどの役か知りたい。たぶん『子』だと推測。
※その他
[ルールの把握度]
自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。
参戦時期は第18話開始直後。金谷章吾を『鬼』と誤認しました。
彼が呼びかけた「たえちゃん」を「小黒妙子」のことだ、そして『鬼』だと思い込んでいます。
【阿部高和@くそみそテクニック】
[役]:親
[状態]:動揺
[装備]:青いツナギ、ベレッタM92F@魔法少女まどか☆マギカ、ベレッタM92F@バトル・ロワイアル
[道具]:デイパック
[思考・行動]
基本方針:親と子を探す
1:!?
2:思ったより面倒なことになったじゃないの、やれやれだぜ……
※その他
[ルールの把握度]
自分の役・各役の勝利条件・制限時間を把握、各役の人数・会場の地図を未把握。
原作終了後からの参戦です。
自分たちがバラバラの世界から集められた可能性に気づきました。
【桜井悠@絶望鬼ごっこ】
[役]:子
[状態]:動揺
[装備]:『水晶』
[道具]:若干のお小遣いなど
[思考・行動]
基本方針:死にたくない。
1:!?
2:大翔が巻き込まれていたら合流したい。
※その他
[ルールの把握度]
各役の勝利条件・制限時間を把握、自分の役・各役の人数・会場の地図は未把握。
自分たちがバラバラの世界から集められた可能性に気づきました。
【宮原葵@絶望鬼ごっこ】
[役]:子
[状態]:動揺
[装備]:『水晶』
[道具]:ドリルや若干のお小遣いなど
[思考・行動]
基本方針:死にたくない。
1:!?
2:大翔が巻き込まれていたら合流したい。
※その他
[ルールの把握度]
各役の勝利条件・制限時間を把握、自分の役・各役の人数・会場の地図は未把握。
自分たちがバラバラの世界から集められた可能性に気づきました。
【夜神月@DEATH NOTE】
[役]:鬼
[状態]:紙袋を頭に被っている
[装備]:ソード・カトラス@BLACK LAGOON、スマートフォン(鬼)@オリジナル
[道具]:デスノート@DEATH NOTE・ノートとペン@現地調達の入った四次元っぽい紙袋
[思考・行動]
基本方針:まずデスノートの真贋を確かめる、はずだったが……?
1:Lとして振る舞い、皆と鬼ごっこについて調べる。特に葵と悠に注視。
2:なんとかこの場を丸く収める。
※その他
[ルールの把握度]
自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間を把握。
四次元っぽい紙袋は効果を失いました。
桜井悠・宮原葵・阿部高和の顔を把握しました。
スマホによって全ての『鬼』の顔と名前を把握しました。
自分たちがバラバラの世界から集められた可能性に気づきました。
【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[役]:鬼
[状態]:ストレス、姿は川尻浩作
[装備]:スマートフォン(鬼)@オリジナル
[道具]:四次元っぽい紙袋、不明支給品2つ
[思考・行動]
基本方針:『親』の振りをしながら『鬼』以外を始末する
1:!?
※その他
[ルールの把握度]
自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間を把握。
バイツァ・ダストは杜王町でないことと本人が能力を把握しきっていないことで使用不可。
夜神月をキラークイーンで爆弾化しました。
自分たちがバラバラの世界から集められた可能性に気づきました。