絶望鬼ごっこパロディ(アーカイブ)   作:絶望鬼ごっこパロディアーカイブ

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だんだん戦闘が起きてきます。


わたしたちはここにいます

木の幹をに狙いを定めて、試しに一発撃ってみる。

映画で聞いた銃声とはまた違った音を立てて弾丸は発射され、狙いの丁度中央を貫いた。

反動は、まるで感じなかった。

 

 

「凄い…最初はおもちゃかと思ってたのに」

 

 

 緑色のスーツに、戦車をイメージさせる装甲の下で『りーさん』こと、若狭悠里は感嘆の声を上げた。

『るーちゃん』を探して二十分ほど歩き回ったが、当然の如く姿は見えず。

精神が限界を迎えようとしたところで、デイパックに何か人を探すのに役立つものはないかと思い立ったのだ。

入っていたものがチョコレートと役に立つとは思えないカードケースだったときは落胆し、ヤケになって投げ捨てようとしたが、

その瞬間カードケースから情報が流れ込んできたのだ、これは玩具ではないと。

流れ込んできた情報の通り水たまりにケースを掲げ、『変身』と叫ぶと一瞬にしてこのスーツを身にまとっていた。

 

 

「この力さえあれば……」

 

 

この力さえあれば、例え『かれら』が何人束になってかかって来ても負ける気がしない。

この力さえあれば、彼らに怯える必要はなくなる。

るーちゃんと一緒に、平和に過ごす事ができる。

理想ともいえるその時を想像して、悠里は顔をほころばせた。

その直後の事だった。

 

 

「あ、あら……?」

 

 

気が付けば、周囲の霧が濃くなっている気がする。

先程まで霧が出ていたとは言え周りの状況は分かる程だった。

今は、数メートル先の景色すら見えない。

何かがおかしい。そう思い、取り敢えず霧から出ようとした時だった。

 

 

「えっ―――!」

 

 

霧の中から、一条の閃光が走った。

それは悠里の喉に向かって真っすぐに突き進む軌道で飛んできており、彼女は咄嗟に身を伏せる。

 

 

「がっ……!」

 

 

しかし完璧に避けきることは叶わず、飛来物―――ナイフが緑のスーツと悠里の薄皮一枚を切り裂き、背後の木に突き刺さった。

鋭い痛みが走るが、気にしている余裕はない。狙いは正確かつ、無慈悲。

もし、変身していなければ、今頃後ろの木に縫い付けられていただろう。

自分は、狙撃されたのだ。

何故、とかどうして、の感情には一旦蓋をして事に当たらなければならない。

でなければ、待っているのは死のみ。

 

 

「くっ…何処に…やめて!」

 

 

ここで殺される訳にはいかない。

悠里は牽制のためその手のマグナバイザーを乱射する。

しかし、手ごたえはない。

銃撃は全て霧の向こう側へ吸い込まれ、動く気配にはかすりもしていないのだ。

 

 

「ざーんねん。外れちゃった。

ねぇねぇ、鎧で見えないけど貴方は女の子?男の子?」

 

 

蕩けるように愛らしい子供の声が響く。

しかし、その声は悠里にとってはこれ以上なく不気味に思えた。

状況的に狙撃した下手人は間違いなく声の主だろう。

声の無邪気さそのままに自分を殺そうとしたのだ。

また飛んでくるナイフを必死に躱す。

 

 

(私は……るーちゃんを見つけるまでは、死ねない!)

 

 

執念とも呼べる感情を抵抗の糧として、悠里はマグナバイザーを撃ち続ける。

マシンガンを超える乱射だが、霧に吸収されているのかあまり音は響かない。

その猛攻が功を奏したのか、ナイフの投擲が一旦止む。

相手も機関銃のフルオートに匹敵するスピードで弾丸を撃っているはずなのに、ちっとも弾切れしない銃の存在を警戒し始めたのかもしれない。

 

 

(……!あの霧の薄いところに)

 

 

何とか態勢を立て直し、逃げる準備はできた。

そのまま半身になってマグナバイザーを撃ちつつ悠里は後退する。

霧の外にさえ出てしまえばより精度の高い飛び道具を有しているこちらの方が有利だ。

その計算を胸に、霧が薄くなっているポイントを駆け抜けようとした時だった。

 

 

「うん――――そっちに行くと思ってたよ」

 

 

上手くいったと言わんばかりに喜色を含んだ声が霧の中から発され、その直後悠里の視界が回転する。

マグナバイザーを持っていたため受け身を取ることもできず、したたかに地面とキスをすることとなった。

足元を見れば、ナイフが落ちている。霧の中から此方が転ぶように狙ったのだろう。

呆然と飛んできた方向を見ると、子供ほどの背丈の人影があった。

 

 

「凄いね、その鎧!もしかして貴方サーヴァント?

…私たちとってもお腹が空いてるの。だから、食べさせてね」

 

 

そう言って人影は此方へ向かって突っ込んでくる。

 

 

「あ、あああああ!!!」

 

 

悠里は悲鳴を上げて、ほとんど恐慌状態でマグナバイザーを撃つ。しかしまるで当たらない。

銃の扱いが素人ということを差し引いても、余りにも相手が早すぎるのだ。

撃てども撃てども弾丸は影法師を撃つばかり、彼我の距離が三メートルを切った所で悠里は死を覚悟した。

 

 

(あぁ……ごめんね、るーちゃん。ごめんね…みんな)

 

 

今まで忘れていた妹と支え合ってきた学園生活部のメンバーの顔がよぎり、涙で視界がぼやける。

そして、遂に最後の弾丸を突破して処刑人が悠里の眼前へと降り立った。

 

 

「じゃあ―――さよならね?」

 

情け容赦ない鋼の光芒が振り下ろされ―――灼熱!

 

 

「がああああっ!」

 

 

仰向けで倒れていた悠里と、立っていた影の間を縫うように砲撃が着弾した。

直撃を受けた小さな影はバスケットボールの様に二度、三度バウンドして吹っ飛んでいく。

悠里が驚愕を張りつかせて砲撃の方角を見ると、そこには巨大なウシ型のロボットが咆哮を上げていた。

緑の巨人の正体は悠里が支給品として引き当てた『仮面ライダーゾルダ』のカードデッキ。

その契約モンスターであるマグナギガだった。

 

餌の供給源である契約主の危機を察知し、悠里がゾルダに変身するために使った水たまりから出てきたのだ。

そして、主を手にかけようとした暗殺者に不意の一撃を食らわせたのである。

そのままゆっくりと体を動かし、マグナギガは追撃を放つ。

人影は砲撃の猛攻を受け、さっきまでの人外の素早さは既になく、初めて悠里はその顔を見た。

 

 

そして、固まる。

だって、恐ろしかったはずの処刑人の顔に、髪の色に、小さな体に、■の面影が―――

 

 

 

「駄目ぇッ!」

 

 

 

気が付けば、砲撃からその子を庇う様に体が前へと出ていた。

 

 

 

 

 

「……どうして?」

 

 

十九世紀のロンドンを恐怖のどん底に突き落とした殺人鬼、ジャック・ザ・リッパーは驚きに満ちた顔で自分を抱きしめている者に問いを投げた。

だって、自分と緑の騎士は、さっきまで襲い襲われた関係で、そこに友好を築く時間などなく、

どちらかが死なない限り終わらない殺し合いを踊っていたのに。

それが何故、相手は自分を抱きしめている。

 

 

「……私が、お姉ちゃんだから」

「おねえ…ちゃん?」

 

 

緑の騎士は腰のベルトからケースを引き抜き、それと共に騎士の中身が露わとなる。

同時に、抱きしめていた体に装甲のゴツゴツとした硬さが消え、柔らかな感触がジャックを包んだ。

 

 

「ごめんね、今までずっと忘れてて。ごめんね、守ってあげられなくて。

これからはずっと一緒だから、私がこの力で貴方を守るから……」

「守……る?」

 

 

ジャックは呆然と、抱きしめる女性の顔を見た。

その顔は涙に塗れていたが、惜しみない慈愛の感情に溢れていた。

そして、その体からはおびただしい数の死の匂いがした。

 

―――ジャック・ザ・リッパーと言う英霊は孤児の怨念が群れを成し、切り裂き魔の逸話と融合することで生まれた英霊だ。

生の祝福を与えられなかった子供たち。時代に見捨てられし者達。

そんな彼ら/彼女らだからこそ、パンデミックの日から若狭悠里に染み付いた濃密な死の香りは子守歌の様に心地よかった。

 

そして、彼ら/彼女らは子供故に敵意や害意には敏感だが、見返りの求めない好意には脆い。

 

 

「おねえちゃん、ふしぎ」

 

お母さんじゃないのに、温かい。

気づけば、ジャックは目を細めて悠里の背に小さな腕を回し、抱きしめていた。

 

 

 

 

「美味しい、るーちゃん?」

「うん!とっても!」

 

 

チョコで口の周りをべたべたにしながら、ニコニコ笑顔でジャックは悠里に笑いかけた。

その雰囲気は先程命の奪り合いをしていたとは思えないほど、穏やかなものだった。

チョコレートが支給されていてよかったと、心の底から今は思う。

柔らかな手で、幻想の妹を撫でる。

心の底では彼女自身不思議だった。

目の前女の子の外見はるーちゃんにまるで似ていないのに、ゆきちゃん以上にるーちゃんと重なるからだ。

 

 

でも、そんなことはどうでもいい。

隣にるーちゃんが居てくれて、甘えてくれる。これだけで報われた気がした。

後はこのゾルダのデッキを持って、学園生活部のみんなの元へるーちゃんと一緒に帰ることができれば言うことはない。

 

 

「るーちゃん、おねえちゃんじゃなくて、りーねえって呼んでくれる」

「わかった。いいよ、りーねえ」

 

 

るーちゃんと呼ばれてもジャックは別段気にすることはなかった。

元々、ジャック・ザ・リッパーという名前すら、英霊になる際に獲得したもので、

水子である彼ら彼女らに与えられたものではないのだ。

だから、今更るーちゃんと呼ばれてもさほど気にならなかった。

 

 

「じゃあ、行きましょうか。頑張って二人一緒に帰りましょう?」

「うん、一緒にね」

 

 

この子を守るためならば、何でもできる気がした。

その為に、きっと神様はこのゾルダのデッキを与えてくれたのだ。

悠里はその手の中のゾルダのカードデッキをもう一度見て、薄く微笑んだ。

 

 

……彼女は知らない。いや気づいているかもしれないが目を背けている。

この鬼ごっこのルール上、『親』と『子』は揃って生還できないことに。

そして、襲ってきた時のジャックは生粋の殺人鬼であった事に。

その歪みの結果が、彼女に与えられた力が何を生むのかは、まだわからない。

 

 

【D-05/00:20】

 

【若狭悠里@がっこうぐらし!】

[役]:親

[状態]:健康、精神錯乱気味、

[装備]:ゾルダのカードデッキ@仮面ライダー龍騎

[道具]:チョコレート×10

[思考・行動]

1:るーちゃん(ジャック)を守り抜く。

※その他

自分の役・各役の勝利条件・制限時間を把握しました。

精神が錯乱してジャックをるーちゃんだと思っています。

 

【ジャック・ザ・リッパー@Fateシリーズ】

[役]:子

[状態]:健康

[装備]:『スマートフォン(子)』

[道具]:

[思考・行動]

基本方針:全員解体する。

1:美味しい魂の持ち主がいたら食べる。

2:りーねえについていく。

※その他

自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握

※霊体化及び神秘の纏っていない攻撃の無効化は制限されています




時系列的には二章と三章の間になると思います。
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