絶望鬼ごっこパロディ(アーカイブ)   作:絶望鬼ごっこパロディアーカイブ

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全員子。


「仲間が増えるよ!!」「やったねたえちゃん!」

「木じゃないな、石でもない。何できてんだこの家?あっちはガラスに鉄でできてるし。」

 

 地獄と思しき場所にある街並みを調べていたきり丸は驚き通していた。

 なにやら鬼ごっこらしきものをすることになったそうだったので一応警戒しつつ辺りを探っていたのだが、忍者が現役の時代と現代では隔絶の世である。何がってテクノロジーがだ。至る所でふんだんに使われた鉄、素材も使い道もわからない謎の物体、でっかい一枚ガラス、溶岩でできてるのかと疑う道、なにもかもがわけがわからない。と思ったら畑やら草やらは自分の知るものと特段変わりがあるように思えなかったりする。地獄とはなんか凄いところなんだなと感心していた。

 

「くっそお、持って帰れたら一儲け二儲けできそうなんだけどなあ。」

 

 鬼ごっこなぞ秒で頭から消えて考えることの内容はとっくにどうそれらのなんか凄そうなものを持って帰れるかに移っていた。場所が変わろうが何だろうがドケチの血は変わらない、ビジネスチャンスを見過ごすなどという手は無いのだ。

 しかし悲しいことに、考えれば考えるほどこの鬼ごっこという壁にぶち当たってしまう。彼の中では鬼ごっこはビジネスを行う上での壁として再定義されその解法を考えられていた。

 

「俺がなんの役なのかわかんないんだよなあ。親もいるってことろことろかよ。」

 

 ことろことろ、ことりことりとも呼ばれるそれは鬼ごっこの一種だ。親の役の後ろで子が列になり、親の妨害をかいくぐって子を捕まえる、というのがそのあらましである。現代ではノーマルな鬼ごっこに加えてケイドロなどにも負けるほどマイナーになってしまったが、その歴史はきり丸が生きた時代からしても下手したら千年近くある由緒ある遊びだ。きり丸はその遊びとの類似性には気づいたものの、しかしそこから先が続かない。

 

「逃げてるだけじゃダメっていう鬼ごっこか。とりあえず誰か探さないとダメだな……お?」

 

 一先ずの方針を確認したところで、きり丸の目が一つの人影を捉えた。少し距離があった上に暗いため判然としないが、自分より少し上ぐらいの子供が見えた、気がする。

 

「あれが鬼だったらヤバイよな……」

 

 声を掛けてみるべきだろうか?

 

 

 

(農協?香川?なんだこれ。)

 

 H-06と地図上ではされているエリアにある一際大きな建物の近くで、金谷章吾は周囲を伺う。手はポケットの中の式札に添えられいつでも引き抜けるようにしながらその建物に張られているポスターなどを見ていく。いかにもな畑を背景にしたそれはどう見ても農業関連のものだ。他のポスターや近くの掲示物を見ても、ここが農協であることはどうやら間違いなさそうであった。

 

(人の気配は……わからないな。出入りも簡単そうだし、中に人がいても……)

 

 気配無く移動しながら正面入り口を捉えられる位置に隠れると、章吾は逡巡した。この鬼ごっこ、どれだけの鬼や子がいるかわかったものではない。中にいるのが子ならばいいが、鬼に待ち伏せされていれば厳しい。夕焼け時のような真っ暗ではないが明るいとは決して言えない環境も相まって足を踏み入れるにはなかなか度胸がいる。

 

(前回は鬼の位置も逃げる場所もわかってたからな。迷子みたいな状況で鬼ごっこってこんなにキツイのか――!)

 

 ためらいながら心の中でグチっていたのが功を奏した。周囲に張り巡らせていた警戒心の網が、建物内部からの物音を捉えた。それはほんの微かな、風や動物が何かを動かしたということも考えられなくもない小さな小さなものではあるが、章吾はそれで中の人物が人間、つまりは子供であると判断をつけた。鬼であれば立てる音がやけに小さい、気がする。自分と同じように巻き込まれた子供が警戒しながら建物を調べているのではないかと想像した。

 新たに迷ったのは数瞬、接触することを決断すると音も立てずに入口から中に滑り込み目線を動かし索敵、パッと見て誰もいないのを確認すると人が隠れ潜めそうな死角目がけて移動する。建物の外は鬼の進行ルートが絞り込めないが、中であればそうではない。最低限の安全を確保すると壁に耳をつけて気配を探る。足音はしない。失敗だったか?と思うがこうなれば建物全てを調べるのみだ、ここが安心できる場所かどうかはどのみち調べることは考えていたのだ、などと考えているときであった。

 

「すみませーん。どなたか居ませんかー?」

 

 自分とさほど変わらない年齢と思しき少女の声が上方からした。

 

 

 

「鬼ごっこ……?ええっと……」

「からかってるわけでも冗談を言ってるわけでもない。関も見ただろ、あのビラを。この状況は普通じゃない。」

 

 農協で出会った金谷章吾と名乗る少年に真面目な顔をして言われて、関織子ことおっこは困った。

 彼と出会ったのはほんの少し前のことだ。ようやく見つけた人が同じ学年の男子だったことに若干驚いたものの持ち前の明るさで自己紹介をし、お互いに気づけばこの農協の近くにいたという話をしているときに、彼に言われたのだ。「俺たちは鬼ごっこに巻き込まれたかもしれない」と。

 

「おかしいと思わないのか。俺たちはどっちも香川どころか四国にも住んでない。たった数分でそんなところまで迷子になるわけないだろ。」

「それは……瞬間移動したとか?」

「あんたは今までにワープしたことあんのか?」

「ないけど……でも鬼ごっこなんて、なんで?」

「わからない。鬼がなにを考えてるかなんてな。」

 

 真剣な表情は嘘を言っているようには思えない。それでもおっこは今自分が強制的に鬼ごっこをさせられているなどとは思えなかった。どこの世界に若おかみな小学生を香川のよくわかんない島の農協にワープさせて鬼ごっこをさせようとする人がいるのだろうか。おっこの知る鬼にはよくイタズラをする鬼もいるが、こんな大規模でムチャクチャなことは絶対にしない。そのため少年の言っていることを受け入れられないのだが、さりとて嘘をついているようには見えないので困惑する。

 

「あの、じゃあ誰がそんなことをしてるの?」

「……鬼、だな……信じられないだろうから信じなくていいけど、俺たちは悪意をもって鬼ごっこをさせられている。」

「その鬼ってどんな鬼なの?大きさとか名前とか。」

「大きさ?まちまちだったな。小さいのはウサギぐらいで大きいのは牛ぐらいで、名前は、確かツノウサギとか牛鬼とか……」

「ツノウサギ……牛鬼……」

「……警告はした。俺は少し外に出てくる。」

「あっ、ちょっと待って!」

 

 教えられた情報と自分が知る鬼とを比べている間の沈黙をどう取られたのかはわからないが、少年は呼び止めるのも聞かずに出て行こうとする。慌てて追いかけながら、おっこは考えた。彼の言うことは信じられるものではないけれど、今ここで行かせてはダメな気がする。なんとなくだが、何か嫌な予感がする。そう思い後ろを着いていきながら引き留めようとするが、しかし少年は止まらない。そして入口まで来てようやく「あの時計が1時になる頃には戻る」とだけ言ったかと思うと本当に出て行ってしまった。

 

 数分ぶりに一人になっておっこは改めて考える。赤い空とかヘンだとは思うけど、それで鬼ごっこって、やろうとしてることが下らなすぎないだろうか。あの男の子もたかが鬼ごっこで随分と深刻な顔をしていた。状況が良く飲み込めない。

 おっこは遠ざかっていく背中を見た。今からでも追いつこうと思えば追いつける。もっと話を詳しく聞いてみるべきだろうか?だが1時には戻ると言った。なんとなく嫌な予感もするし外にはあまり出たくないし下手に動けば行き違いになることも万に一つはあるかもしれないし、ここで待つべきだろうか?

 自分の選択で何かが大きく変わりそうな気がしておっこは赤い空と少年を見比べた。

 

 

 

「まだ近くにいろよ……」

 

 農協で出会った和服の少女、関織子から別れ東へと向かう章吾はそう呟くと周りに目を凝らした。

 彼がおっこから別れたのは別に彼女の反応は全く関係ない。単に彼は農協の窓から人影を、ぬいぐるみを片手に彷徨う少女を見つけたからだ。

 たいていのゲームは数が多いほうが有利だが鬼ごっこも違いない。一人より二人、二人より三人の方ができることは多い。ある程度の人数で武器と作戦があれば、鬼に一矢報いることも不可能とは言い切れない、それが前回の鬼ごっこを経験した章吾の判断であった。

 

(よし、見つけた。)

 

 幸い少女は割と早く見つかった。農協から集落までは見通しが程々に良いため、彼女の白い制服と合わせて人を探す気でいればそこそこ簡単に見つけられる。それはつまり、鬼からも発見されやすいということだ。章吾はもしもの時のために足を残せるぐらいの早足で歩み寄る。

 

「だ、誰?」

(年上か?)

 

 少女の方も気づいたのか章吾を足を止めて待つ。そしてある程度近づき誰何してきたところで、章吾はその少女の違和感に気づいた。

 遠目からは気づかなかったが少女の体つきは章吾とさほど変わらないものだ。中学生と言っても通る体つきの自分と同じことは年上かと推測する。制服を着ていることから私立の子だと思ったが違ったようだ。それにあの汚いぬいぐるみ。家でぬいぐるみを持っている時に巻き込まれたのか?

 

「金谷章吾。桜が島小、って知ってるか?」

「ううん……」

「そうか……そっちは?」

 

 小学校の名前を知らないということは地元の子ではないな、関といい今回は日本の色んなところから集めてるのか、などと考えながら少女が名乗るのを待つ。しかしいつまでたっても応えはない。顔は良いが険の強いせいで怯えられていることやある事情からどちらの名前を名乗ればいいのか迷っていることなどつゆ知らない彼は、「あだ名で良いから教えてくれ」と急かす。

 少女は数秒固まって、「たえちゃん」と小さい声で話した。

 

 

 

「たえ……さん。」

「……」

「たえ……」

「……」

「たえ……ちゃん。」

「……うん?」

(本人に向かってちゃんづけで名前呼ぶのってすっげえ恥ずかしいな……)

 

 農協に向かってもと来た道を戻りながら章吾はたえちゃんとのコミュニケーションを試みる。縋るような目と怯えのこもった目の両方で見てくる彼女は章吾からするとやりにくい相手だ。だが彼はそういう相手に好かれるというイケメンオーラが出ているためたちが悪い。鬼ごっこが始まって一時間足らずで二人の女子と早くも出会った彼は、自分が生き残るためにそのオーラと戦っていた。

 

「……気づいたらここに?」

「うん……親戚の……おじさんの家に入ろうとして、ドアを開けたら、外に出ちゃって……」

「そうか。俺は、ショッピングモールに向かって歩いてたら空が赤いことに気づいて、それで人間を探してた。」

「……」

「あそこに建物があるだろ?そこで女子と会った。そいつも俺たちとおんなじようにここで迷子になってたらしい。三人で話せば、何か分かるかもしれない。」

「……うん。」

「……」

「……」

(会話が続かねえ……)

(なにを話せばいいんだろう……)

 

 戦いは困難を極めていた。章吾は元から口がうまい方ではない。むしろ口下手で、心を閉した女子をリラックスさせるような芸当などできるはずもない。結果、章吾がぽつりぽつりと話し、少女ことたえちゃんがそれに時々相槌を打つに留まっていた。

 気まずい時間は本人達の体感時間より短く、数分後には農協の前に到着する。だが章吾は農協を通り過ぎた。たえちゃんは困った顔でチラチラと見るが、章吾は無視する。そして100m程通り過ぎたところで、章吾はたえちゃんに耳打ちした。

 

「全力で農協まで走れ。俺の名前を出せば中のやつはたぶんお前を信用する。」

 

 突然の言葉に頭にハテナを浮かべるたえちゃんの背中を章吾は叩いた。ビシリ、と掌の形に背中に痛みが走る。それにより鞭の入った馬の如くたえちゃんは走り出した。章吾の行動に混乱し、とにかく動き出せと脳が身体に命令を下したのだ。

 章吾はそれを見送った。これでいい。足手まといは消えた。これで鬼ごっこに専念できる。靴紐を結び直した。

 

「さあ、出てこいよ。」

 

 章吾は建物の影に向かってそう大声で呼び掛けた。

 

 

(バレてたっ!?なんで!?)

 

 佐山流美は奥歯を鳴るほど噛み締めながら手にした物干し竿を握る。ステンレス製のそれはすっかり人肌に暖まり、持ち主の殺意に合わせて身を震わせる。それはゆっくりと地面から持ち上げられた。

 彼女がこの場所でも人を殺すことを言葉ではなく心で決意したのは、実は数分前のことだ。殺られる前に殺るとはいったものの、何も目につくもの近づくもの皆殺しにしようなどとまで考えるほど理性を失ってはいない。まずは自分の役の把握を優先しようと思い、民家で物資を調達したあとはヒントを求めて大きな建物を目指そうとしていた。そうして集落と農協どちらに行くかを考え、先にポツンと一つだけある方を調べようと農協に近づいたところで彼女は聞いたのだ。

 

 たえちゃん、と呼びかける声を。

 

 その名前を聞いて、彼女はここに来る前のことが問答無用で思い出させられた。彼女が愛し、憎み、殺した女、小黒妙子の愛称を、あの男は確かに言った。暗い上に距離も若干あるのでわからないが、男の方は中学生ぐらいである。そして女の方は、これまた中学生ぐらいで白い制服らしき服装の明るい髪色の女であった。

 

 それで佐山流美は一匹の獣と化した。

 

 本人の精神と赤い空という環境は黒い髪を明るく染まった髪へと変換させ、彼女の前に小黒妙子という人物を浮かび上がらせる。女からの声が聞こえないことと合わせて『たえちゃん』は『小黒妙子』へと完全に置き換えられたのだ。地獄から蘇ったどころか地獄に自分を引きずり込んだたえちゃんは紛れもなく鬼だ。ならばすべきは流美が出て行き鬼を殺す!非常にわかりやすい!たえちゃん死すべし小黒妙子死すべし!!

 

 そして彼女は農協を通り過ぎた二人を先回りして建物の影に潜んだ。武器は現地調達した包丁などの刃物と、物干し竿。取り回しは悪いが物干し竿をメインウェポンとしてチョイスする。鬼には少しでも近づかないに限る。そうして彼女は待っていたのだが、男の方が余計なことをしてたえちゃんを農協の方へ逃してしまった。これではたえちゃんを殺せない。ならどうする?

 

(だったら男から殺せばいいだろ!)

 

 即断即決。流美は民家から調達したタオルを顔に巻くと突貫した。

 

 

 

 摂津のきり丸は少女を見つけ追うか追わぬかで悩み、関織子は金谷章吾を追うか追わぬか悩む。

 金谷章吾と佐山流美は自分が戦う相手が鬼であると互いに判断し戦闘を開始しようとしている。

 そしてたえちゃんは一人農協に向かって走る。

 五人それぞれの選択が迫られていた。

 

 

 

【H-07/00時15分】

 

【摂津のきり丸@落第忍者乱太郎/忍たま乱太郎】

[役]:子

[状態]:健康

[装備]:忍者装束、忍具一式

[道具]:水晶

[思考・行動]

基本方針:生き残り、現世へ帰還する。

1:少女(たえちゃんor佐山流美or別の参加者)に声をかけるorかけない

2多くの親や子と早めに提携し、情報を集める。

※その他

各役の人数・会場の地図・制限時間の詳細は未把握。自分の役を子であると推測。

 

 

【H-06/00時15分】

 

【関織子@若おかみは小学生!】

[役]:子

[状態]:健康

[装備]:『スマートフォン(子)』

[道具]:紅水晶

[思考・行動]

基本方針:家に帰る。

1:章吾くんを追うor章吾くんの帰りを待つ。

※その他

自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。

 

 

【G-06/00時30分】

 

【金谷章吾@絶望鬼ごっこ】

[役]:子

[状態]:健康

[装備]:『式札』

[道具]:若干のお小遣いなど

[思考・行動]

基本方針:絶対に生きて帰る

1:少なくともたえちゃんが逃げられるまでは襲ってきた鬼(佐山流美)に対処。

2:自分以外の存在を捜索。

※その他

自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。

 

【佐山流美@ミスミソウ】

[役]:子

[状態]:顔に傷、血は止まっている

[装備]:物干し竿@現地調達

[道具]:包丁、『水晶』

[思考・行動]

基本方針:殺される前に殺してやる

1:たえちゃんを殺す。

2:そのために目の前の鬼(金谷章吾)を殺す。

3:自分がどの役か知りたい

※その他

自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。

現地調達した物資を近くの物陰に隠しました。内容は後続の書き手さんにおまかせします。

参戦時期は第18話開始直後。

 

【たえちゃん@コロちゃん】

[役]:子

[状態]:健康

[装備]:不明

[道具]:『コロちゃん』

[思考・行動]

基本方針:家に帰りたい

1:逃げる。

※その他

自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。

参戦時期は引き取られる直前

 

 

 




だんだん衝突も増えてくる頃。
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