絶望鬼ごっこパロディ(アーカイブ)   作:絶望鬼ごっこパロディアーカイブ

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現状唯一の対主催チーム。


空をこがして、世界をこの手に

「ふむ……」

 

沖木島の北部、鎌石村の消防分署。その一室。

筋骨隆々の老人『Dr.ヘル』は、配布された地図や書類、支給品を確認し、大量の白鬚をしごきながら作戦を練っていた。

 

自分に課せられた『鬼』の役の、やるべきことはこうだ。

24時間のうちに、広くもない島中に散らばる36名の『子』の、生きているうちの過半数……最大19名を捕まえ、主催者本部に連れて行けば勝利。

あるいは、『鬼』を除いた「生きている参加者」の過半数が『鬼』になれば勝利だという。

『親』が24名いるということは、親・子あわせて60名のうち、鬼が全員生きているとしても49名を殺さねばならない。

 

ついでに。

『子』の勝利条件は、鬼が全員死ぬか、制限時間まで逃げ切る(捕まらず、生き残る)こと。

『親』の勝利条件は、子が勝利条件を満たし、なおかつ生き残った子の数が親より多いこと。

どちらも困難だ。それも、子と親の勝利条件はバッティングする。子が勝利するには、親より人数が少ない状態で勝利せねばならないわけだ。

勝利すれば、その役は全員復活出来る。つまり途中で死んでも捕まっても、最後の数人に希望を託せばよい。

敵は鬼だけではなく、親と子でもあり得るというわけか。なかなか悪趣味なイベントではある。

 

さて、結論。鬼の側が勝利するには、効率上「子を捕まえる」方が明らかに手っ取り早い。

広くもない―――せいぜい数km四方とはいえ、山があり森は深く、民家もそれなりにある。

隠れんぼされては面倒だ。それに、親や子にも、然るべき武器は支給されていよう。自分ならそうする。

第一、子と親の勝利条件に『鬼が全員死ぬ』とある。鬼を殺せるほどの何かが支給されているはずだ。

他の鬼に貧弱な奴らがいれば、殺されるかもしれない。鬼の総数が減れば、親や子をより多く殺さねばならん。手間がかかる。

 

子を捕まえるならば、鬼が少々死のうとも、捕まえる人数は子の過半数である19名を上回ることはない。親は無視しても殺しても良い。

また「生きている子の過半数」を捕まえればよいのだから、適度に子を殺した方が手間は省ける。

 

50億人を殺した自分だ。今更殺すのに特に躊躇はないが、目的は殺戮ではなく、自分の復活。そして、主催者であろう兜十蔵との戦いだ。

そう。必ず奴は、自分を見ている。よりによって自分をこんなゲームに喚び出すなど、あいつの仕業でしかあり得ぬ。

ならば。奴が定めたこのルールに律儀に従って勝利するなど、気に食わぬ。奴の鼻をあかすためにも、思いもよらぬ方法でクリアしてくれよう。

全宇宙征服の第一歩、いや何百億分の一歩は、この島から。……地下に機械獣はおるまいが。

 

 

なぜか二枚あった地図のうち、一枚はどうも現実と違う。村々の表記もなく、向きが反対だ。手違いか、あるいは差異世界のものか。

何かの役には立とう。折りたたんで仕舞い、カラー地図の方を矯めつ眇めつ眺める。今自分がいるのは「C-05」だ。

 

「……で、要するに、この地図でいうF-05……神塚山山頂地下に、主催者本部があるというわけじゃが。

 兜十蔵はおるまいな。おればワシが全て擲ってぶっ殺しに来ることぐらい承知じゃろう。

 ここをぶっ壊すか……いや、ワシに何か細工がしてあって、反乱すれば爆死、ぐらいのことはするか……ブツブツ」

 

ヘルは、ふと窓の外の空を見る。飛行機だ。ビラやパラシュートを撒くのをいつの間にかやめている。

「あの飛行機を乗っ取るか。燃料補給なり連絡なりで、主催者本部の近くに降りてくるかもしれん」

だが、島の外には怪しい霧。いかに自分が鬼とは言え、飛行機で島の外へ出られるはずはない。

とにかく主催者本部へ戻り、偵察して情報を集める。それには「手土産」が必要だろう。

 

「……おっ、あれは……」

 

 

「なんなんだ、ここは……? どこかの島のようだが……」

 

故郷・ネアポリス王国から遥か遠く、極東の島国のとある島、を地獄に再現した舞台。

19世紀末の異国から招かれた男にとって、見るもの全てが珍しい。飛行機、パラシュート、瓦屋根の家々、港、看板。

 

「これは……『漢字(カラッテリ・チネージ)』か? 東洋のどこかってことか?」

 

東洋へ実際に行ったことはないが……シノワズリー(中国趣味)とかジャポネズリー(日本趣味)なら、

裕福な財務官僚の息子である彼にも、嗜み程度にはある。欧州とは異なる、奇妙な文明の地だという。

なんでそんな場所に? 決闘を妨害しようとする、何者かの仕業か? ナメやがって。

それにしたって、なんで自分が『鬼ごっこ(アッキアッピーノ)』なんてやらなきゃあならないんだ?

 

 

男―――『ウェカピポの妹の夫』に、ここが『地獄』だなんて発想はない。

自分は地獄に落ちるようなことなどしていないと、確信しているからだ。

 

女は男に、妻は夫に、全身全霊で仕えるべきものだ。夫の気に入らない妻は、言葉と暴力によって躾けねばならない。

それが気に食わないからと、裏でコソコソと『婚姻無効』の許可を取り付けやがった――――

妻の兄、あのウェカピポこそ地獄へ落ちるべきだ。正当なる決闘によって死を与えてやる。

それが彼の流儀であり、本当の男のすべき行いだと、彼は教育されてきたし、性に合っていた。

 

わけがわからんが、ここからネアポリスに戻るには、どうしたって与えられた『役』で勝利しなけりゃならんらしい。

面倒だが、暇つぶしと思ってやってみよう。そして主催者には責任を取らせなければなるまい。

とりあえず他の参加者と合流せねば……と、思っていた時。

 

「うッ!?」

 

ふ し ゅ う う う う ……

 

目の前に、奇怪な男が立っていた。

紫色の肌、金色の目、長い白髪と大量のヒゲ。筋骨隆々の肉体。小銃を背負っている。左手には槍のような杖のような、異様な武器。

右手には……顔面をその武器でしたたかに殴られ、気絶したと思しき一人の少女を、首根っこを掴んで引きずっている。

鬼だ。鬼の所業だ。そして、この威圧感。強い。自分では決して勝てない。太刀打ち出来ない!

 

ヒゲの男はこちらを睨みつけ、どけ、とばかりに杖を振る。

 

「おう、そこにも一匹おったか。親じゃな」

「は、はい」

思わず即答する。ヒゲの男は少し考え、こう言った。

「ワシは親に用はないが……親側の情報も必要じゃな。よし、ワシについて来い」

 

 

【チーム・ヘルインザ地獄】

【C-05/00時35分】

 

【Dr.ヘル@真マジンガーZERO】

[役]:鬼

[状態]:超健康

[装備]:バードスの杖(ただし現在は機能が停止しているため実質は頑丈な棍棒程度、本人はまだ気がついていない)

[道具]:四次元っぽい紙袋、『スマートフォン(鬼)』、不明支給品2つ(確認済み)、島の地図2枚、

     『お守り』(ターニャから説明書ごと奪取)、モンドラゴンM1908(小銃。ターニャから奪取)

[思考・行動]

基本方針:戦いに勝利し、この企画の主催にいるであろう兜十蔵をぶち殺す。その後に改めて世界征服に乗り出す。

1:従来のルール以外にゲームをクリアする方法があれば、兜十蔵の鼻を明かす為にもそちらを優先したい。

2:捕獲したターニャを主催者本部に連れて行き、偵察して情報を集める。ターニャにも内部を偵察させ、後で連絡をとらせる。

 

【ウェカピポの妹の夫@ジョジョの奇妙な冒険 第7部 SBR】

[役]:親

[状態]:健康、恐怖

[装備]:鉄球、剣

[道具]:デイパック(不明支給品3、未確認 なぜか支給品が3つある)

[思考・行動]

基本方針:決闘を汚した主催者に責任をとらせる(女なら殴りながら犯す)。親か子の参加者を探す。鬼ならば様子見、可能なら仕留める。

1:逆らえば殺されそうなので、ヒゲの男について行く。

※その他

自分の役・各役の勝利条件・制限時間を把握。

 

【ターニャ・デグレチャフ@幼女戦記】

[役]:子

[状態]:顔面負傷、気絶

[装備]:

[道具]:

[思考・行動]

基本方針:このゲームから早期の脱出を目指す。出来れば子と合流。

1:………。

※その他

自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。『お守り』については把握しているか不明。

いきなりヘルに襲われ、顔面をバードスの杖でぶん殴られ気絶。武器と道具を奪われる。




登場人物全員悪人。

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