絶望鬼ごっこパロディ(アーカイブ)   作:絶望鬼ごっこパロディアーカイブ

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アニメ化して映画化までしたのに若おかみは小学生の二次が増えないのも乾巧ってやつのせいなんだよたえちゃん!


第三の男

 H-06にある源五郎池の南岸、氷川村に近い辺りに農協はある。ちょうど金谷章吾が佐山流美と戦闘を始めた場所とは対岸にあるそこに向けて、たえちゃんは全力疾走をしていた。言われるままに駆けることへの疑問は横に置き、とにかく危険から身を遠ざけることを優先する。自分が何から逃げているのかいも何が危険なのかもまだわからないなが、しかしその足が止まることはなく走り切った。

 はぁはぁと荒い息をしながら金谷に言われた建物の外壁に手をつく。たった100m程だが、今までの人生で一番に心臓はドキドキと波打っていた。特段運動が得意な方ではないのもあるが、それ以上に鬼と異様な環境への恐怖が緊張を煽る。幸いなことにここまでの間、特に鬼らしきものを見ることはなかったが、他の人も見ていない。いよいよ寂しい気持ちになって歩くような速さで走りながら壁伝いに窓から中を覗くも、無人。人のいる気配はない。が、他に行動を決めるものもないためとりあえず言われたことに従い中に入ろうとする。そしてちょうど反対側に大きな入り口を見つけた。

 

「やっぱり、誰もいないのかな……?」

 

 少し息が落ち着いてきた口から出てくるのは不安の言葉だ。それでも、「とにかく中に入ってみよう」と緊張した面持ちで言うコロちゃんに勇気づけられ、ゴクリとツバを飲み込むと、えいや!と本人としては力一杯にドアを開ける。実際にはとても恐る恐るしたものであったが、たえちゃんとしてはそれこそ一年分の勇気を振り絞っての行動だ。それこそおじさんに引き取られることを決めたときと同じぐらいの心の力を使った。

 

「なんだろうこの階段?」

「とにかく上がってみよう。」

 

 しかし、やはり無人。近場の物になんとなく這わせていた指先に時々生暖かい温もりを感じ、誰かがここにいた気がするものの、一目見た範囲に人がいるようには思えない。色々見ている内に見つけた階段をコロちゃんを抱えて登るが、やはり同じ――ではない。ドアが一つ開いている。赤いドアだ。まるで自分を丸呑みにする怪物か何かの口のようなイメージを発するそれは、たえちゃんが今いる廊下の10m程先に存在していた。それを見てたえちゃんの足が誘われるように前に進む、なんてことはない。既にたえちゃんの勇気は逆さに振っても出てこないぐらいにからっぽだ。もしかしたら鬼がに隠れているのかもしれないところに、足を進める勇気はゼロである。現実逃避するようにたえちゃんは深いため息をついて目をつむり、壁に背中を預けた。

 目を閉じていると、自分の瞼の熱さに気づいた。じんわりと目に熱をもたせるそれは、顔・頭・首とどんどん拡がっていく。この鬼ごっこに巻き込まれて依頼ずっと続いていた体温の高まりと発汗、そしてその原因である体の震えを自覚すると、たえちゃんは自分の身体を抱き締める。

 改めて感じるのは、一人であることへの不安と孤独だ。いったいぜんたい、なんだって自分はこんなことをしているのかとここまで何度もした問いをまた繰り返す。まるで地獄のようなこの場所になんの脈絡も必然性もなく引き込まれたのだ、その疑問は当然であろう。だがここは鬼ごっこのステージ。そしてゲームは既に始まっている。不満に思うだけでは一歩の進歩も無い。つまるところ、現在のたえちゃんの行動は完全に無意味。完全に無価値。圧倒的無駄。だが彼女にはそれが必要であった。前に進むのではなく立ち止まる為に、へたり込むのではなく立ち続ける為に、心と体が要求した防衛行動。脳内に迸るエンドルフィン等の麻薬物質をコントロールし、挫けぬよう己を見失わぬようするための戦い。それが自分を締めつけるかのように抱くたえちゃんの戦いであった。

 自己をかけた防衛戦。それは、彼女の勝利で幕を閉じる。うっすらと開いた目には涙が波波とたたえられているが、しかしたえちゃん、泣かない。堪える。泣いてもなんにもならないことを、彼女はそれまでの人生で知っているから。

 

「たえちゃん!あの子じゃない?」

「えっ……?」

「ほら!あそこ!」

 

 だからたえちゃんの視線の先にある窓の更に先、コロちゃんが指し示した方向に一人の少女を見つけるのは、必然と言えた。

 

 

 

「それじゃあ、章吾くんはあっちに?」

 

 おっこ――関織子と名乗った和服の少女――は、農協の窓から源五郎池の対岸を指差す。たえちゃんが出会った彼女は、金谷とさっきまで一緒にいたと言った。なんでも突然飛び出した彼を追ってこの建物から出たものの、見つけることができずに戻ってきたらしい。実は彼とおっこは逆方向に進んだりそれぞれ池の対岸を通ったりして行き違いになっていたのだが、そんなことは少女達が知るところではなかった。

 

「突然走れって言われて……もしかしたら鬼がいたのかも……」

「章吾くんまた鬼ごっこの話ししてたんだ……」

 

 加えて二人には温度差があった。ほとんどパニック状態なのをなんとか堪えているたえちゃんに対し、おっこは不思議な存在や現象にも度々遭遇している――もとい同居しているため、『空の色を変なふうにして自分を迷子にさせたなにかが鬼ごっこをさせようとしているかもしれない』ぐらいの認識である。そして何より、人形であるコロちゃんと会話しているたえちゃんを見て、『たえちゃんさんは年上みたいだし人形でおままごとするはずもないし、きっとあの人形もなんだか不思議なものなんだろうなあ』という認識であった。なまじ身の回りに不思議なものが普通にあり、出会う人出会う人がみんな不思議な言動の人ばかりなので、ここにはそういう人ばかり集められたパーティーかなにかなんかじゃないかと思い始めていた。

 

「実は章吾くん、1時には戻るって言ってたんですよ。また行き違いになったら困るし、それまで一緒に待ちませんか?」

 

 結果起こるのは、状況の不正確な認知。なまじ先走って金谷を見失ったということもあり、おっこが提案したのは約束の時間までこの農協で待つということであった。

 その言葉に、たえちゃんはチラリと時計を見る。今の時間は一時まであと二十分以上ある。(もしかしたら章吾くんは助けを待ってるかもしれない)と、脳名によぎるのは不安。だが一度逃げ出した場所に戻るのは怖い。様々な気持ちが入り乱れる。だから、動けない。彼女は立ち続けられる意思を持ってはいるが、前に進むための意思は、まだない。

 

「あ、そうだ!実はここに来たときに変なものを持ってて。」

「……あ、それ私も持ってる。」

 

 沈黙したたえちゃんを気遣って話題を謎のスマートフォンについて変えたおっこに助けられた気分になりながら、たえちゃんも自分が気づけば持っていたスマートフォンを見せた。こうしている間にも取り返しのつかないことが起きているかもしれない、なんて怖い想像から逃れるために話を変えたかった。

 

 

 

(出て行くタイミングを失ったな。)

 

 そんな少女達の話に聞き耳を立てる男が、農協の中に一人。たえちゃんが見つけた赤い扉の奥、そこに潜んでいた草加雅人はポケットの中でデリンジャーに手を添えながら、階段の上で階下を伺っていた。

 草加がこの農協に来たのは、おっこが出て行きたえちゃんが辿りつくまでのちょうど隙間の時間であった。池の辺りにあるという目立つロケーションもあり、草加もここを当座の目的地と定めたのだが。彼が内部を捜索している間にたえちゃんがやってきた上おっこまで戻ってきてしまっていた。こうなる前にたえちゃんに声を掛ければ良かったのだが、それは彼女の異様な雰囲気を見て躊躇われた。なにより、草加からすれば彼女が『鬼』でないなどという保証はどこにもない。オルフェノクが人間に擬態しているときには見分けがつかないように、『鬼』が子供の姿をしていないとは限らないのだ。それになにより、たえちゃんのその所作が、忌まわしき無力な幼少期の自分を無意識のうちに想起させて癇に障るのだ。強さを手に入れ過去のものにした自分の姿を鏡で見ているような気分になるのだ。

 

(ま、足手まといを抱えなかったと思えばいいか……)

 

 音無く鼻を鳴らすと、草加は窓の外に目をやった。彼女達は支給品について話し始めたようだが、使い方をわからないらしく要領をえない。無論草加に干渉する義理は無く、彼は少女達に変わって周囲を警戒することとした。自分を守るついでぐらいには気に食わないとはいえ見張りを受け持ってやろうと。

 0時36分、また一つ小さく状況が動く。

 

 

 

【H-06(農協)/00時36分】

 

【たえちゃん@コロちゃん】

[役]:子

[状態]:疲労(小)

[装備]:『スマートフォン(子)』

[道具]:『コロちゃん』

[思考・行動]

基本方針:家に帰りたい

1:おっこと一緒に章吾くんの帰りを待つ。

※その他

自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。

参戦時期は引き取られる直前

 

【関織子@若おかみは小学生!】

[役]:子

[状態]:健康

[装備]:『スマートフォン(子)』

[道具]:紅水晶

[思考・行動]

基本方針:家に帰る。

1:たえちゃんさんと一緒に章吾くんの帰りを待つ。

※その他

自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。

 

【草加雅人@仮面ライダー555】

[役]:親

[状態]:健康

[装備]:日本刀@現実

[道具]:デイパック(確認済支給品1)

[思考・行動]

基本方針:真理が巻き込まれているかを確認し、いるならば保護する。

1:情報が纏まるまで下の子供達の様子を見ながら周囲を警戒する。

2:たえちゃんへの嫌悪感。

※その他

自分の役・各役の勝利条件・制限時間を把握。




映画若おかみは小学生は明日公開です。
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