絶望鬼ごっこパロディ(アーカイブ)   作:絶望鬼ごっこパロディアーカイブ

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まともな登場人物がいねえ……


見た目はオルフェンズ(除一名)

 まるでペットかぬいぐるみでも撫でているかのような優しい手つきで、BARにグレーテルは触れていた。

 重さ10キロを超すそれは少女然とした格好の彼女にはまるで不釣り合いな代物であるが、これこそが彼女好みの一品である。壁やテーブルに隠れようと盾ごと撃ち抜けるそれは、この鬼ごっこにおいても彼女の手の中で暴れられる機会を待っているかのように、少女の人形のような手にその巨体をしっくりと収めている。その彼のせいでしまわれている袋の奥底にある鬼からの支給品にグレーテルは未だ気づいていないのだが、そんなことは彼の知ったことではなかった。

 

「えい!」

 

 そしてそんな彼のケツはグレーテルによって容赦なく窓ガラスにぶつけられることとなった。

 ともすれば廃材で作ったのではないかと疑うほどにボロい掘っ立て小屋はそれだけでグレーテルの侵入を許し、内部のガラクタを100%OFFでバーゲンする。工具などの『オモチャ』とそれを運ぶための段ボールやビニール袋を手に入れたグレーテルは、出入り口付近に目当てのもの見つけニンマリと笑った。

 

 

 数分後、グレーテルは一台の軽トラを運転していた。日本で軽トラといえば誰でも思い浮かべるであろう後部が荷台となっている白いそれは、彼女が先程物色した、民家に併設された神社の社務所近くで見つけたものである(残念なことに家主が持つものらしき乗用車の鍵は見つからなかった)。ろくに道が整備されていないこの島では車で強引にじゃり道あぜ道を往くのは間違いとは言い切れないのだが、別に彼女はそんなことを考えで盗んだ車で走り出したわけではない。至極単純に足でこの島を動くよりは落ちてたものを拾って使った方が良いという判断である。どうやら自分がいる神社は集落とは山を挟んで反対らしいという事実は、とにもかくにも人との接触を目論む彼女には不都合であった。

 鼻歌交じりにグレーテルは砂利道を走らせる。町にいけば鬼ごっこを望む者、望まない者、情報を求める者、様々な人間が集まっているだろう。無論車など使えばこちらの位置を教えるようなものだが、彼女達双子は頭は回るのに狙撃され放題の場所にのこのこ出てきたりすることもあるためそのあたりのリスクはほぼ無視している。もっとも、たとえ位置を知られてもその頃には場所を移動しているという計算や立ちはだかる人間がいても撥ねてしまえばいいという発想があるのだが。

 

「ふふっ。みーつけた。」

 

 そしてその無鉄砲さはこの場ではうまく行ったようだ。ハンドルを握る彼女の目に、少女と男児が映った。グレーテルはアクセルとブレーキ、どちらを踏むか考えて――

 

 

「おら野原しんのすけ5才!こっちはエスターちゃん。」

「しんのすけとエスターね、よろしく。」

「……よろしく。それで、貴女の名前は?」

「……グレーテル、かしら。」

「ほうほう、やっぱり外人さんですか。春日部も国際色豊かになりましたな。」

 

 ハツラツとしたアジア系の少年と大人びたスラブ系と思われる少女に、グレーテルは車を停めて声をかけることとした。せっかく見つけた人間だ、殺すのは色々と聞き出してからにしたい。それになにより――一発で轢き殺してしまってはつまらない。前菜であっても味わっていただくのがマナーであるとグレーテルは心得ていた。

 適当に昔主演した作品の役名を名乗りながら、グレーテルは目ざとく二人を改める。半袖短パンの少年の方はともかく、ドレスの少女の方はどこに武器を持っているのかわかったものではない。名乗ったときの殺気の篭った目と合わせて、彼女からは『こちら側』の臭いがした。目を合わせれば睨んでくる彼女に微笑み返すグレーテルの視界に、いがぐり頭がわりこんでグレーテルは視線を下げた。

 

「エスターちゃんもグレーテルちゃんも日本語スゴく上手だぞ。ネガティブってやつ?」

「それを言うならネイティブだと思うわ。」

「そうとも言う〜。」

 

 グレーテルはしんのすけに答えながらも疑問に思った。自分は今まで母国語であるルーマニア語で話している。話してみたら通じたためしんのすけもエスターもルーマニア語が話せるもと思っていたのだが……

 

「しんのすけがルーマニア語が上手いだけよ。それより、私達は人を探してるの。気がついたらここで迷子になってて、あの寺院に向かおうとしていたんだけれど……」

 

 一方のエスターも同様にしんのすけには疑問を持っていた。デイパックから青酸カリの入った小瓶とパン屋と思われる紙袋を取り出したあと、中に切断された手首が入っていた紙袋は速攻で付近に隠し、小瓶のみを隠し持って島を徘徊すること小一時間、ようやくに見つけたしんのすけとはコミュニケーションがとれるのに会話は成り立っていなかった。そして自分もグレーテルなる少女もルーマニア語を話しているはずなのだが、なぜかしんのすけは日本語を話していると思いこんでいるようだ。とはいえ彼女にとってそんなことはどうでも良くまずは人のいる場所に向かうことが大事なのであるが。

 その後も簡単に情報交換を続けるものの、嘘とはぐらかしと適当な言葉の応酬では三人の相互認識が深まることもなく、全員が全員とも少し前から見たこともない島に来ていることぐらいしか情報の共有がならなかった。

 少しして、三人を乗せた車は未舗装の道路を南下していた。会話のオチとしては全員で人のいそうな島の南東の集落を目指すことになったのだ。この提案をしたのはしんのすけであったが、少女達は特段の反対も表明せずに車に乗っている。グレーテルからしてもエスターからしても、しんのすけという便利な弾除けを相手の手中にむざむざ渡したくないというのが本音である。特にしんのすけを自分の装備品として認識しているエスターは尚更である。自分の勝利条件を考えても幼子を守る良い子ちゃんを演じることを考えても彼という資産を手放す道はなかった。

 

「ふーん、しんのすけは妹がいるのね。」

「うん。妹のひまわりと、あとシロも。」

 

 車が舗装道路に差し掛かり南下をやめ東進を始めるのにさほど時間はかからない。もとより狭い島だ。神社までの道はそれなりに人通りが多いこともあって、それほど乗り心地に気を配られているわけでもない軽トラでも不快感は無い。それもあってかしんのすけはエスターの膝の上でいつも通りに話す。

 

「グレーテルちゃんは?」

「私?兄様がいるわ。」

「兄様?お兄さんがいるの?」

「そう。もしかしたらこの島にいるかも。」

「兄妹揃って迷子とは大変ですな。」

「しんのすけだって迷子でしょ。」

「んもぉ〜、エスターちゃんそれは言わないお・や・く・そ・く。」

「なにそれ……」

「アハハっ!あなたたち面白いわ。」

「いやぁ〜それほどでも〜。」

「褒められてないから。」

 

 気に入った、この男の子は殺すのは最後にしよう。デザートととしてなかなかの素材だ。だがこのままでは足りない。もう一手間が、ほしい。

 

(この子が死んだら、しんのすけはどんな顔をするのかしら。)

 

 グレーテルはその時のことを考えて楽しそうにエスターを見て。

 

「僕は……あ、えっと、古畑、です……」

 

 その三人の耳に放送が聞こえてきた。

 

 

 

「もしかして、学校で鬼ごっこをするんじゃないのか……?」

 

 その頃学校では、桜井リクが小一時間ほど捜索するもなんの手掛かりもなかったために二階の理科室で頭を悩ませていた。てっきり学校を舞台に命懸けの戦いがあるんじゃないかなどと警戒したのだが、どうやら違ったようだ。けっこう、いやかなり恥ずかしい。常識的に考えれば小学校を舞台に命懸けの鬼ごっこをしたり最後の一人になるまで願いを叶えるために戦ったりしないことに今更ながらに気がついた。

 さて、となると今リクの手の中にあるもの――拡声器――の持つ意味が変わってくる。学校を探す中でいくつか見つけたもののうち職員室にあるものを書き置きを残して拝借してきたのだが、これで人を呼ぶことは可能ではないだろうか。

 もちろんリスクがあることはわかっている。何か良くないものを呼び寄せてしまう可能性もあるが、それ以上に一人であることへのプレッシャーが大きい。そして自分と同じように感じている子がいるかもしれない。そのことは彼に拡声器を使わせることを考えさせるには十分なものであった。

 

「よし、やろう……!」

 

 自分にとってこれは武器だ。リクは一つ大きく息を吸うと第一声を――

 

「あ、あー。マイクのテスト中……」

 

 

 

「だめかぁ繋がらない……」

 

 一方その頃、今泉慎太郎は交番で本日何十度目かわからないがまた一回頭を抱えていた。

 おっかなびっくり周囲を見渡し一つの道路を渡るのに何分もかけてようやく辿り着いたこの交番。彼にとって救いへのゴール地点に思えたそこは、当然ながら無人であった。もちろん電話も繋がらず、目立つ建物であるため迂闊に出ていくこともできない。そんなこんなで交番で足止めを食らっていたのである。

 

「いったい僕が何したっていうんだよ……しかもこれって……」

 

 ため息をつきながらデイパックを引っ張る。口の空いたそこからは、彼の唯一の支給品である拡声器が顔を覗かせていた。この鬼ごっこ、親は二つの支給品を支給されるはずが、彼はこれ一つである。実は彼が警察手帳を不携帯であったために鬼がランダム支給品としてデイパックに詰めたらそれがたまたま本人に当たったというどうでもいいラッキーがあったのだが、それを計算に入れてもマイナスな引き運だ。もちろん彼としてはそれを使う気はない。こんなものを使えば鬼を呼び寄せるのは目に見えているからだ。しかし――

 

「あ、あー。マイクのテスト中……」

「わ!子供の声?」

 

 項垂れる彼の元に一つの声が聞こえてきた。それはまるで彼が今目にしている拡声器を使ったかのような、ノイズ交じりの声である。喋っているのは小学生から中学生ほどの男子または女子だろう。

 状況を考えれば、声の主が何を考えているかは一発でわかった。人を呼ぼうとしている。リスクも省みずに助けを求めようとしているのだ。

 

 今泉の視線が拡声器と学校を往復する。学校までの距離はそれほどでもない。全速力で走れば一分……は無理にしてもけっこうすぐ着くだろう。それに今自分は交番にいて自分の手元には相手と同じように拡声器がある。これは何かの縁なのではないか?

 

「僕は……あ、えっと、古畑、です……」

 

 迷いながらも気づけば今泉は拡声器を使っていた。しかし自分の名前を言うのは怖かったので上司の名前を名乗っておいた。最高であると同時に最低である。

 

 

 

 こうして島の中央部で拡声器による会話が始まろうとしていた。

 当事者の小学生と刑事、そしてそれを聞きつけた少女のような何か二つに嵐を呼ぶ五歳児。

 このことを知るのはもっと増えるかもしれないし増えないかもしれない。

 しかしとにかく午前1時、エリアを跨いで一つの鬼ごっこがスタートした。

 

 

 

【チーム見た目は子供】

【G-06南西端/01時00分】

 

【グレーテル@BLACK LAGOON】

[役]:子

[状態]軽トラを運転中

[装備]:BAR

[道具]:不明(社務所で狭軌として使えそうなものを中心に回収)

[思考・行動]

基本方針:皆殺し

1:みんなで町に行く。

※その他
自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握

 

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】

[役]:子

[状態]:健康

[装備]:『お守り』

[道具]:なし

[思考・行動]

基本方針:ネネちゃん家に行く。

1:みんなで町に行く。

※その他

自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。

 

【エスター@エスター】

[役]:親

[状態]:健康

[装備]:ハンマー、青酸カリ@バトルロワイアル

[道具]

[思考・行動]

基本方針:子のふりをして立ち回る。

1:子として親の庇護を受けつつ、参加者の情報を集める。

2:制限時間が近づいたら、親を減らす。

その他

自分の役、各役の勝利条件、制限時間を把握。

支給品の【サンジェルマンの紙袋@ジョジョの奇妙な冒険】は捨てました。

【サンジェルマンの紙袋@ジョジョの奇妙な冒険】

 吉良吉影の持ち物。中には切り取った女の手首が入っている。

 

 

【G-07(分校)/01時00分】

 

【桜井リク@ラストサバイバル】

[役]:子

[状態]:健康

[装備]:拡声器

[道具]:不明支給品

[思考・行動]

基本方針:絶対に生きて帰る

1:拡声器の声に応える

※その他

自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。

 

 

【G-08(交番)/01時00分】

 

【今泉慎太郎@古畑任三郎】

[役]:親

[状態]:健康

[装備]:警察手帳、拡声器@バトルロワイアル

[道具]:デイパック

[思考・行動]

基本方針:可能な限り参加者を生還させる。

1:子を守る。まずは拡声器で会話を試みる。

2:親を探す。

3:鬼には出くわしたくない。

その他

自分の役、各役の勝利条件・制限時間を把握。




これにてゲーム開始から1時間が経過、残り23時間です。
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