絶望鬼ごっこパロディ(アーカイブ)   作:絶望鬼ごっこパロディアーカイブ

88 / 114
パロロワっぽい展開も増えてくる頃。


一発の銃声・二発の弾丸・三人会って・目撃者は四人

 最大限控えめに見ても3m、たとえ椅子に手をかけぶら下がり距離を縮めたとしてもまだ2mはありそうだ。

 

「普段ならなんともないんだがな、ったく……」

 

 今もなお続く頭痛を気にしながら、木の枝に宙吊りになったパラシュートにぶら下がっている川田章吾は頭を掻くと、無いとわかっていてもタバコの一本でも転がっていないかとポケットを弄る。もちろんないが、一定の速度で触り布地の感触に集中すると、深く息を吸い、深く息を吐き、落ち着く。口ざみしいが一度頭をクールダウンだ。いつまでもこうしてはいられないが。

 

 川田が意識を取り戻してから体感時間で数分、彼は安全に降りる状況を考えていた。自分の意識が飛んでいたということは既にプログラムが始まって何分経つのかわからないということだ。数分かもしれないし十分ほどかもしれないし、もしかしたら数時間単位かもしれない。となると基本的にゲームに乗る人間は時間と共に増えるため戦闘が起きる危険性も増しているということである。加えて放送を聞き逃している可能性もある。首輪は無いようだが禁止エリアがある可能性がないというわけではない。空中から毒ガスなりを散布すれば、あぶり出すということ自体はできる。他にも情報面でのディスアドバンテージもあるかもしれない。なによりこの『かもしれない』が続くこと自体が大きなリスク。一刻も早くこの宙吊り状態から脱することが重要だ。

 だが同時に、彼は安易に脱け出すことの危険性もわかっていた。自分が頭部に負った外傷はどの程度のものか痛みと触診だけが頼りでほとんどわからない。その容態の自分が果たして飛び降りて耐えられるのかというと彼には自身が無かった。幸い下は土のようだが、だとしても自分が意識をまた失う可能性はある。そうなれば小学生だって自分を殺せるだろう。それに意識だけならまだいい方で、ちょっとした力みで血管に負荷が掛かりそのままオダブツなんてこともあり得る。マヌケな死に方だが、流血していないとはいえ骨や膜の内で内出血している恐れもあるのだ、十二分にありえる事態だ。

 

(どのみちここじゃ手当てもできないんだ。何迷ってる。)

「やるしかないだろ。」

 

 だが川田は弱くも確かにピシャリと頬を叩くと迷いを捨てた。時間は待ってくれない、多少の危ない橋を渡ることになってもやるべきことはやらなくてはならない。

 川田はまず取り出していたデイパックを投げ落とした。中身は確認したが、プログラムでなら入っているはずの筆記具や飲食物といったいつもの支給品は無く、あったのは拳銃とハリセンの二つのみ。そのうち拳銃だけを学ランに隠した。これであのデイパックを失くしてもさほど痛くはない。

 次に川田自身が、椅子からぶら下がる。懸垂の要領で地面までの距離を稼ぐが、やはりまだ距離はある。しかも目算より離れている。3mはあるだろう。が、やるしかない。覚悟を川田は決めた。

 

 ズドッ!

 

「っ……!」

 

 なんとか受け身を取り地面を無様に転がる。肺の中の空気が口から吹っ飛び声ならぬ声を上げるが、しかし、無傷。体に走った衝撃は痛みとダメージに変換されるが、この程度なら想定内。死にはしない。

 問題は頭だが……こちらはわかりようがないので大丈夫ということにしておく。立とうとしてみる。少しふらついた。でも立てる。歩ける。ならやれると自分を叱咤した。

 

「大丈夫、お兄さん?」

(人かっ!)

 

 この距離まで気づかなかったか!我が身の不覚を恨みつつ咄嗟に銃を取り、相手へと突きつけ――

 

(――死んだ。)

 

 川田は、己の死を確信した。

 

 意を決して飛び降りたところに声をかけてきた、銀髪の男。誰なのかは知らないし先の声との目の前との違いもわからないしそもそもまだ状況を飲み込めていないが、とにかく、男は川田に銃口を向けていた。いや、それは正確ではない。向けつつあった。それはコンマ数秒後に訪れる未来の光景であり、これから死ぬ川田の脳が先走って見せた走馬灯だ。川田も男に向けて銃口を向けつつある。だが遅い。回避運動を取りつつある男に銃口を合わせるには、十分の一秒足りない。同時に引き金を引けば、死ぬのは川田であり生き残るのは男だ。

 

(俺は――)

 

 最期に言葉を遺そうとして、頭の痛みに襲われて。

 唐突な手首への痛みと共に走馬灯が一足早く終わった。

 銃声が一つ木霊した。

 

 

 

「ぐあっ……」

「イったいなあぁ……いい加減離してよ?」

「ダメです。」

 

 同時に火を吹いた二つの銃口は揃って地面に向けられ不満たらたらと言わんばかりに硝煙を上げている。そんな銃をそれぞれ持つ男達の手は、一人の少女の手でガッツリと抑えられていた。

 川田と銀髪の男、ヘンゼルが「急に銃を向けてきた」ために思いがけず起こした早打ちを止めたのは、ヘンゼルと同行していた因幡月夜だった。

 元々、川田を先に『発見』したのは彼女であり、声をかけることを提案したのも彼女であった。E-02で起こったジャック・ザ・リッパーと若狭悠里との戦闘でジャック・ザ・リッパーが発生させた霧から逃れるように、北上した彼女達とは反対に南下した二人は、視覚で平瀬村を、聴覚で川田の引っかかった木の音をそれぞれ捉えた。そしてどういうわけか「面白そう」と言い残してそそくさと先行してしまったヘンゼルを追い、案の定剣呑な展開となっていたので両者の手首を抑えつけたという次第である。出会って5秒も経たずにバトルするような人間達など両方死んでもらっても構わないと言えば構わないが、状況が状況であるためここは穏便に場を収めることとした。

 

 ――ちなみにE-02では夜叉猿jr.と竜宮レナが同じように霧に巻かれつつあったが、南側に霧が流れたために霧を挟んで車で移動するグレーテル達や徒歩で南下するヘンゼル達よりも、北のヤンと雲雀の戦闘を強く感じたという事情がある。そしてこの霧によりヘンゼルとグレーテルはニアミスしたのだが、それは本人達の知るところではなかった。

 

 

(どういう、ことだ……!)

 

 そして、そんな事情に振り回された男である川田とヘンゼルの手首からミシリ嫌な音が上がる。苦痛に顔を歪ませながら、掴まれている川田は混乱の極みにあった。瞬間移動と言われても信じてしまいそうな意識の外からの踏み込みと、外見からは想像がつかない恐るべき握力、そしてあの場に躊躇なく突っ込んでこれる自信。全てが川田の生きてきた人生で未経験のものだ。これが桐山がやったというのならまだわかる。わかりたくないが、アレならできるだろうとわからされてしまう。だが目の前の少女は小学生とも見えるような容姿で、そんな人間がプログラムにいるのはおかしくて、そもそも銀髪の男のような外人が大東亜共和国にいることもおかしくて――

 

「そういうプレイ?」

「次は顎にし――あ。」

「あ。死んだ?」

「人聞きの悪いことを言わないでください。脈はあります。」

 

 僅か30秒ほどの間に起こった状況の変化はデータとして脳を蹂躙する。

 膨大な何かに頭を内側から破裂させられるような感覚を感じながら、川田はこの地獄で二度目となる失神を経験した。

 

 

 

(これは――大変なことになりました!)

 

 そしてそれを目撃していた女が一人。

 大和亜季はもう一つの支給品であるACOGを望遠鏡代わりにして倒れた男の前で子供たちが武器を持って何やら話しているのを見つけた。

 あのあとY-12との短い話し合いで自分の機関銃と相手の銃とドスのセットを交換し、ダンボール片手に屋根によじ登った亜季。彼女はダンボールの下で屋根に伏せ、銃声のあった方向を警戒していた。身軽で体が小さい亜季が屋根に上がりその下でY-12が機関銃を手に襲撃に備えるというフォーメーションであったが、この考えが功を奏したのか、木に引っかかっているパラシュートを発見するとその近くの人影にも気づいたのだ。

 ――もっとも、彼女が見たのは地面に川田が倒れた後からだが。

 

(あんな子供たちが人を……い、いや!まだ死んだと決まったわけでは……)

 

 銀髪のゴシックな感じの子供が男を撃ち殺した、そうとしか思えない状況に亜季は戦慄した。スコープ越しに見えるのは彼女達が守るべき『子』の役に類するような子供にしか見えないが、しかし目の前の光景がその認知を否定する。困惑と恐怖の中で、銃を持つのとは違う銀髪の和風な感じの子供と視線が合った。スコープ越しなのに確かに。

 

(え?なんで――)

 

 そして、目があった少女の姿が、消えた。

 

「Y-12殿ォ!位置を変えますっ!」

 

 弾かれたように立ち上がると片手でぶら下がりくるりとベランダへと降りる。あれは、あれは何かとてもマズイものだ。亜季の本能が告げている。今すぐ逃げなければ死ぬと!

 

(……また面倒なことが起こった気が……)

「で、この人どうする?」

 

 一方自分が一方的に脅威と認定されたことをなんとなく厄介事として認識した月夜だが、盲目の彼女はもちろん亜季と目を合わせてなどいなかった。ただ単に超聴力で音源を割り出しそこに意識を向けただけである。が、そんなことは亜季にとっては知ったこっちゃない。既に彼女は月夜達二人を恐るべき子どもたちだと認識した。そして月夜はそのことを知らない。そのことがどんな影響を及ぼすのかをこの時知っている人間はいなかった。

 

 

 

【F-02/01時03分】

 

 

【川田章吾@バトルロワイアル】

[役]:親

[状態]:頭に打撲、失神

[装備]:S&W M19@現実

[道具]:デイパック(ハリセン@バトルロワイアル入り)

[思考・行動]

基本方針:状況を把握する。

1:???

 

【ヘンゼル@BLACK LAGOON】

[役]:子

[状態]健康

[装備]:拳銃、鉈、金槌

[道具]:釘

[思考・行動]

基本方針:皆殺し

1:因幡月夜と同行する事にしました。機会が来れば、或いはグレーテルと合流したら因幡月夜を殺すつもりです。

※その他…自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。

特別支給品の有無は不明。

 

【因幡月夜@武装少女マキャヴェリズム】

[役]:子

[状態]健康

[装備]:摸造刀:亜鉛合金製で重量は日本刀と変わらないが強度は脆い。

[道具]:不明

[思考・行動]

基本方針:人を探す。

1:倒れた人物(川田)と謎の音源(亜季)に対処する。

2:ヘンゼルを警戒しつつも同行する。

※その他

自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。

※ビラに書かれていた事はヘンゼルに尋ねて把握しました。

※霧はジャック・ザ・リッパーの発生させたものでした。E-02東南部を中心にまだ残っている可能性があります。

 

【大和亜季@アイドルマスター シンデレラガールズ】

[役]:親

[状態]:戦慄

[装備]:ACOG@現実

[道具]:

[思考・行動]

基本方針:帰還する。親や子と合流し、情報を集め協力する。

1:銀髪の子供達(ヘンゼルと月夜)から逃げる。

2:Y-12殿をひとまずは信用する。

3:鬼と遭遇したら…この機関銃を撃っていいものか?

※その他

自分の役・各役の勝利条件・制限時間を把握。

M60機関銃@現実、デイパック、飲食物・医療品少しをY-12に渡しました。

 

【ACOG@現実】

いわゆるスコープ。電源がなくても使えるなど幅広い状況に対応できることから米軍を始め各国の軍隊などに導入が進んでいる。一応M60にも着けれる。




悪人が銃を持っても善人がそれより強ければ問題ないって全米ライフル協会も言ってた(大嘘)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。