なのでプロットはまるで練っていないですし長期連載として書く予定もありません。
強さに拘るのがサイヤ人だ。
それは戯れに行われる戦闘力測定における態度でもわかる。
なぜなら普段から顔を見合われば対抗意識をむき出しにしている飼われたサイヤ人共が、今日という日は明確な比較があるというのもあってそちらに夢中になるからである。
そして、そんな俺達を嘲り、見世物として楽しむ連中らが集まる会合でもあるのだ。
いわゆる“富裕層”に類する連中。上位のツフル人らが集まり、自らの保有するサイヤ人の戦闘力や戦歴を自慢する場所でもあるのだ。
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分厚い強化ガラス越しに、数人の男らが真下の様子を眺めていた。
「ほほ、どうやら陛下お気に入りのあのベジータとかいう男。また戦闘力を上げたようですな」
サイヤ人に比べて半分以下の身長をした種族、ツフル人。そんなツフル人の大臣が豪奢な格好をした男へと媚びへつらい、彼の所有物であるサイヤ人の一人──ベジータを褒め称える。
「カカ、どんな戦場に送り込んでも生き残ってくる逸材よ。どうやらワシに隷属するのが気にいらんようだが、猿は少々生意気なくらいな方が活きがよくて丁度よい」
ツフル人の王である男──ナバナは自身が飼っているサイヤ人ベジータのことを特に気に入っていた。
すでに戦闘力にして5000を超える彼の存在は、他の惑星への抑止力となるほどである。
無論ツフル人の誇る科学艦隊の方が遥かに強力だが、極地戦においてはやはり単騎で高い戦闘力を誇るサイヤ人の有用性は高い。
一部の突然変異やフリーザ一族にはさすがに敵うまいが、それでも銀河においてトップクラスの戦闘力を誇る種族を手駒とできたのは重畳と言えた。
「おお、そういえば陛下! 近頃変わったサイヤ人がいるとのお話、ご存じですかな?」
「ああ、王子が飼っている“ロマネス”とか名付けられたサイヤ人か。どうやら私のところのベジータが戦場で拾ってきたようだが、以前の持ち主はどうしたのだ?」
「……それが、惑星フィトサで運動を楽しまれていたところを心臓発作で……」
「ああ、あの金持ちの豚か」
「は。幸い奴隷のサイヤ人は重傷を負った際に記憶をなくしていたようでしたので、権利関係の放棄は恙無く済ませることができました」
飼われたサイヤ人は一種の資産である。その為、主人が急死してもその権利はまず血族にあるのだ。それを放棄するためには本人の口から主人を鞍替えする旨を言わせねばならない。飼われたサイヤ人の待遇は基本的に悪いものではないため、義理固い者などは環境が変わることを嫌い新たな主人を断ることもある。
「ご苦労。して、何が変わっているのだ?」
王は話の本題を求め大臣の方を向く。
「は、なんでも異常に礼儀正しいとのことです。粗野で乱暴なあの猿めらと同種族とは思えないとは王子の言葉ですが、なんでも最近は共に食事を楽しまれるほどの気に入られようだとか」
「くだらん。ペットを気に入って甘やかしているにすぎんわ。さっさと猿を戦場へ投入するように言付けよ」
王は自らの息子の凶行に顔をしかめ、早く死んでしまえばいいとばかりにサイヤ人を飼う者の義務である戦役を課すよう告げる。極地戦が主とはいえ、サイヤ人には最低でも三ヶ月に一度戦場へ送り込まれる義務がある。
「いえ、すでに戦役は3度ほどこなしております。その活躍はどれも地味ではありますが、よく記録を見れば何やら自分を試しているようだとか。疑問に思った王子がロボット兵士と戦わせたところ、なんと辛くも勝利して見せたとのことです」
「なにぃ……?」
ロボット兵士といえば惑星プラントにおける主要防衛戦力である。その数は優に100万を超え、一体一体が戦闘力3000に匹敵する出力を備える。
ツフル王はこれらを連携させればフリーザ一族にさえ匹敵すると考え、さらなる改良型であるメタルミュータントを開発させていた。
「ですが流石に辛勝だったらしく、回復ポッドが必要な怪我を負われたとか。これを王子が心配したらしく、その平伏する態度もあって今では護衛として連れ歩いているとのことです」
「……ふうむ。少々気になる部分もあるが、妙な点があれば報告するよう監視の者にも伝えよ。では、ワシは少し科学塔へと赴いてくる」
「は、かしこまりましてございます」
ツフル王は奇妙な胸騒ぎを感じていた。自身の所有するベジータには匹敵しないものの、高い戦闘力を有するサイヤ人の誕生。しかも礼儀正しいというのが、所詮は猿と見下していても何故か含んだものを感じてしまう。
「ふん、所詮猿に何ができる。反乱なぞできるものならばしてみるといい」
ツフル王は笑みを浮かべながら、自らが計画する“全宇宙ツフル化計画”の進捗を確認するべく科学塔へと向かうのであった。
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ここ惑星プラントの重力は高い。平均的な惑星の10倍はあるほどだ。
そこで育つことによってサイヤ人は大きな戦闘力を手にいれ始めたのではないかとも言われている。
どうやらこの星に来た当初の原始サイヤ人の戦闘力は、高いとはいえ通常時はそれほど頭抜けていたわけではなかったらしい。
ベジータに助けられてから一年ほどの時間が過ぎた。あの頃の俺のマスター、ようするに飼い主は既にいない。なんでも心臓発作で死んだらしい。
危うく俺も戦役処分とかいう使い捨てにされそうだったが、偶然通りかかった身なりの良さそうなガキに平身低頭することで何とか取り入ることができた。
このガキはどうやらツフル王の息子、ようするに王子らしく、名前をモヤリチェといった。
俺にロボット兵士をけしかけてくるようなクソガキだが、辛勝に見せかけてわざと怪我を負いながらも忠誠を誓う俺にガキはいたく感動したらしく、戦役は課されたが以前以上の厚待遇を受けている。
好奇心から一緒に食事を誘ってきたんで、うろ覚えのテーブルマナーもどきを披露してやったらとんでもなく驚いていやがった。
あれから俺の全身には無数の傷が増えた。フリーザに挑んだ馬鹿で勇敢なサイヤ人バーダックを思わせるが、おかげさまで俺の戦闘力はかなり上がった。
勘で戦闘力をコントロールする方法も覚えた俺は、多分だが既に戦闘力は6000を超えるくらいだと思う。大猿化して60000。目標にはまだまだ全然足りない。
どうやら最近ベジータはロボット兵士に指示を出す科学塔への破壊工作を企んでるみたいで、俺を誘ってきていた。
ならばと俺は囮になることを申し出た。ついでに王子を人質にとることも。
今現在サイヤ人で有名なのは間違いなくベジータだ。圧倒的な戦闘力は奴隷のサイヤ人らにおいても人気は高く、荒野などの辺境で暮らすサイヤ人もその戦闘力を肌で感じたことはあるだろう。
くくく、まあ偉そうな顔ができるのも今のうちだ。すぐに誰が最強のサイヤ人かを知ることになる。
とはいえ、今は少しでも強くなるためにトレーニングが必要だが。
「しっ……!」
俺が今行っているのは、シンプルにパンチを繰り返すトレーニングだ。
だがただ繰り返しているわけじゃない。パンチを出す際の体重移動。骨の動き。筋肉の流れまで全てを意識し集中してやっている。
一撃、一撃。繰り出す度にその鋭さは増し、重さは倍増する。
不思議なことに、荒々しい気分で打つよりも穏やかな気持ちで打ったときの方がパンチは鋭かった。
静かに、全てに溶け込むかのようにただひたすらに拳を振るう。
最近は戦闘力をコントロールできるようになったついでに、気というものの存在も理解できてきていた。
サイヤ人なら無意識でやっていることの多くがこの気と密接に関わっていた。
おかげで色々と技のレパートリーも増やすことができた。特に斬撃系の技を身に付けられたのはでかいな。
クリリン、て男がやっていた気円斬も、まあ擬きならできないことはない。にしてもやってて思ったが、あの男がやっているのは天才的な気の制御だ。
なにせ気を高速で回転さえ、収束し、維持した上でそれを遠くまで放つというのだから。一体一度にどれだけのことを同時にこなしているのか俺には理解できないほどだ。
「さて、ベジータの奴はどうするつもりかね」
俺達の敵はロボット兵士だけではない。忌々しい尻尾の根本に付けられたリング。これが最も厄介だ。
これは飼われる奴隷のサイヤ人全員についているもので、無理に外そうとしたり、飼い主の命令に逆らうと神経に直接電流が流れるようになっている。
サイヤ人の尻尾は神経の塊みたいなもんだから、そんなことをされた日にはまず動けなくなるだろう。無理矢理動くことも可能だが、それでも精細にはかける。作動され続ければどうにもならない。まあ、俺は案外簡単にそれを攻略する方法を知っているけどな。恐らくベジータも知ってはいるが、それをすれば最悪反乱がままならなくなるのもわかっているからやらないんだろう。
なにせ、こいつの制御もロボット兵士と同じく科学塔だからな。あれを壊せば、ツフル人の支配体制そのものをひっくり返せるかもしれないというのは夢じゃない。
「くく、だが王になるのはこの俺だ。精々華々しく戦ってくれよ? ベジータ」
俺は高揚する気分を落ち着かせ再び拳を振るう。
部屋のなかに、再び風を切る音が繰り返された。
◇▫️◇▫️◇▫️◇▫️◇
「がっ……! あぐぅ、うぎ、あがぁ、っ……!!」
小柄なツフル人の老人が、手足を拘束されたサイヤ人の女──ハナシアを責め立てる。
裸にされたハナシアは尻尾に取り付けられた器具によって全身の自由を奪われている。薬物を注射された彼女の手足にはリング状の拘束具が取り付けられ、そこから流れる高圧電流が彼女の自由を奪っていた。
「きひひっ! ほらどうした! もっと抵抗してみせろっ!!」
「ぐあああああああっ~~!!」
つい数時間前までツフル王を前にかしずいていた老人が、女でありながら上位の戦士でもあるハナシアを鞭で叩き拷問していた。
皮肉な話だが、こうして週に一度与えられる拷問のダメージが彼女を強くしているのも事実だった。同時に、彼女の中で抗えない恐怖も育てていたが。
そうして数時間彼女を散々になぶった老人は、役に立たない自らの下半身を眺め舌打ちすると、乱暴にハナシアへと鞭を叩きつけてその場を後にした。
「……」
ハナシアは拘束を外され、痛む体を抱えながら静かに震える。
必ずあの男を殺してやると。だが、そのことを考えるのと同時にどうしようもない恐怖が彼女を襲うのだ。
万が一失敗すれば自分はどれほどの痛みを味合わされるのかと。
ゆえに彼女は涙を流し、震えながら耐える以外の選択肢を持たない。それさえも老人の思惑通りだと知りながら。
物語としては5話くらいですかね。どこを終わりにするかは決めてませんが、主人公が王になった時点で目的は果たしてしまうので。
まあ、実験作ですね。